ニューヨーク行きの豪華客船。女詐欺師のジーンは、父親のハリントンと共に、ヘビ学者でビール会社の青年御曹司チャーリーを手玉にとって一儲けを企むが、二人は恋に落ちてしまう。しかし、チャーリーは彼女が詐欺師である事を知ってしまい、二人の恋には破局が訪れる。彼の仕打ちが許せないジーンは、社交界の花形「レディ・イヴ」になりすまして再び彼の目の前に現れる。旧約聖書のアダムとイヴのエピソードを基にして、プレストン・スタージェス監督独特のテンポの良い台詞と、スタンウィックのカード詐欺師からイギリス貴族への華麗で痛快な変身ぶり、そしてスラップスティックなギャグをふんだんに取り入れたスクリューボール・コメディの快作。
スタージェスは『偉大なるマッギンティ』(40)と『七月のクリスマス』(40)に続く3本目の監督作として、パラマウント社が所有していたモンクトン・ホッフ執筆による19ページのアウトライン『Two Bad Hats (二人の悪党)』を基にして、スタージェスが38年に口述した物語を脚色。前2作の予想外のヒットに気を良くしたスタジオは次回作に有名スター起用の許可し、スタージェスはヘンリー・フォンダ、バーバラ・スタンウィック、チャールズ・コバーンの3人の人気俳優を主演に迎える。
今作はパラマウントの専属衣装デザイナー、イーディス・ヘッドのキャリアの分岐点となり、彼女はスタンウィックのために夜会服を25着、フォンダの着替えの衣装を14着デザインする。スタンウィックのダンスで鍛えたスリムなプロポーションを最大限に生かしてデザインされた数々のスタイリッシュな衣装はスタンウィックだけでなく観客や批評家からも絶賛され、中でもラテン・アメリカン・スタイルのドレスは「レディ・イヴ・ドレス」と呼ばれてアメリカ中でコピー品が出回るほどの人気を博す。またスタンウィックはそれまで映画の中でファッショナブルな衣装を着こなした事はなかったが、この作品の成功によって40年代のトレンド・セッターとしての地位を確立。以後、映画の衣装だけでなく私生活でのドレスも全てヘッドにデザインを依頼するようになる。パイク家で行われる晩餐会のシーンでは、スタージェスは本物らしさを出すために自分のアンティークの銀食器を貸し出す。
スタージェスの監督作としては最高額の予算で製作された今作は、観客と批評家の両方から好評を持って迎えられ、41年のニューヨーク・タイムズのベストテンではオーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』(41)を押さえて堂々のベストワンに輝く。世界的に評価の高い作品ながら、日本では94年まで劇場では公開されなかった。
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