20世紀初頭、工業化の進むの南部のギデンズ家。
心臓を患う裕福な銀行主ホレイスの妻レジーナは、兄と結託して綿工場建設の資金を工面しようとしているが、
ホレイスはレジーナの兄を嫌って出資を拒否する。
この計画のために自分の資産が横領されたことを知ったホレイスは、
レジーナに全ての遺産を娘のアレクサンドラにゆずるよう遺言を書き直すと言い渡した直後、激しい心臓発作に襲われる。
鎮静剤を求めるホレイスをレジーナは黙殺。
強欲にとり憑かれた自分の母親と従兄弟に耐えられなくなった清純なアレクサンドラは、レジーナを見捨てて家を出ていく。
家族同士の裏切りや対立を通して南部貴族の没落を描いたウィリアム・ワイラー監督の傑作ドラマ。
女流作家リリアン・ヘルマンは1939年に母方の家族をモデルにした戯曲『The Little Foxes (小狐たち)』を発表。
ギデンズ家の屋敷の居間だけに舞台を限定したこの三幕の密室戯曲は、タルラ・バンクヘッドの主演でブロードウェイ公演がはじまると絶賛を浴びて大ヒットを記録。
この辛口の芝居は映画化に向かないと思われていたが、映画化に興味を示したサミュエル・ゴールドウィンは権利を獲得。
契約を交わしていたヘルマンに舞台の脚色を担当させる。
ゴールドウィンはレジーナの悪女ぶりに観客が当惑すると考え、ヘルマンに原作が持つ衝撃を弱めずに親しみの持てる作品にするよう依頼。
ヘルマンは舞台には登場しない新聞記者デヴィッドを加えてアレクサンドラとのラブストーリーの要素を増やし、ギデンズ家の外の場面を作って物語を更なる深みを与えた。
度重なる書き直しに疲れたヘルマンはアーサー・コーバー、アラン・キャンベル、ドロシー・パーカーの三人の友人をリライトに推薦したが、
彼らに大した仕事は出来ないと悟ったゴールドウィンは三人を解雇した。
ゴールドゥインは主演のレジーナ役をベティ・ディヴィスにオファーするが、
彼女と専属契約を交わすワーナー・ブラザーズ社はドル箱スターのデイヴィスの貸し出しを拒否。
しかし、第一次世界大戦の英雄アルヴィン・C・ヨークの伝記映画『ヨーク軍曹』(41)の主役にゴールドウィン専属の人気スター、ゲーリー・クーパーを使いたいワーナーは、
クーパーをワーナーに貸し出すことを条件にディヴィスの貸し出しを許可した。
ディヴィスにレジーナと彼女の娘アレクサンドラの二役を演じさせるという案もあったが、
新人女優を売り出したしたいゴールドウィンは、ブロードウェイの舞台『Life with Fater』での演技が話題になっていた若手女優テレサ・ライトを抜擢。
レジーナの夫ホレイス役には『月光の女』(41)でもデイヴィスの夫を演じたハーバート・マーシャルが起用された。
監督にはヘルマンが脚本を手掛けた『この三人』(36)、『デッド・エンド』(37)を演出したウィリアム・ワイラーが起用され、
『黒蘭の女』(38)、『月光の女』(40)で立て続けに一緒に仕事をしたデイヴィスとワイラーは、
個人的に微妙な気持ちを持ち合っていたといわれているが、今作ではレジーナをどう演じるかを巡って激しく対立。
舞台を観たデイヴィスはバンクヘッドのように演じるべきだと考えていたが、レジーナを複雑な性格の女性だと考えていたワイラーはこれに反対。
ワイラーは彼女を従わせようとして何度も撮り直しを命じるが、反抗したデイヴィスの演技は撮り直しの度に毒々しくなり、セットの中でも外でも二人の怒鳴り声が響いていた。
撮影中、デイヴィスは身体の不調を理由に3週間ほど撮影を休んだが、ワイラーとの確執が原因で映画を降りたのではないかという噂が流れた。
ワイラーは演劇的効果を高めるためにモンタージュをあまり使わず、
パン・フォーカスと長まわしを多用。
『市民ケーン』(41)でパン・フォーカスを駆使してオーソン・ウェルズの意図を視覚化した
撮影監督のグレッグ・トーランドは『市民ケーン』以上に効果的で洗練された映像を披露。
特にクライマックスで、後景で発作に襲われたホレイスが、車椅子から降りて2階にある鎮静剤を取るために階段を上ろうとする姿と、
前景で椅子に座ったまま彼を見殺しにしようとするレジーナの表情を同時にとらえて、レジーナの恐ろしさを浮き彫りにした場面は高く評価された。
完成した映画は原作者のヘルマンをはじめ、ほとんどの批評家が舞台よりも映画のほうが優れていると評し、観客からも熱烈な支持を受けて興行的にも大ヒットを記録。
第14回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、監督賞を含む9部門にノミネートされたが、無冠に終わった。
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