失われた週末 The Lost Weekend
公開:
1945年
失われた週末
製作:
パラマウント・スタジオ

チャールズ・ブラケット
監督:
原作:
チャールズ・R・ジャクソン
脚本:
ビリー・ワイルダー

チャールズ・ブラケット
撮影:
ジョン・F・サイツ
音楽:
ミクロス・ローザ
出演:
レイ・ミランド

ジェーン・ワイマン

フィリップ・テリー

売れない貧乏作家のドンは、アルコール漬けの惨めな毎日を送るうちに自尊心を失い、酒を買うため兄から借りたお金も使い込み、仕事に必要なタイプライターまで売ってしまって兄だけでなく恋人からも見放されてしまう。刑務所に入れられて、幻覚症状に襲われるようになったドンは、自殺を決意するが、見限ったはずの恋人が彼に助けの手を差しのべる。アルコール中毒による恐怖と幻覚から立ち直るまでの主人公の葛藤をドラマティックに描いてニューロティック(異常心理)映画のはしりとなった作品。

ビリー・ワイルダーはニューヨークに向かう列車内でチャールズ・ジャクソンの小説を読んで感銘を受け、パラマウント社に小説の映画化権の購入を依頼する。脚本を手掛けたワイルダーとチャールズ・ブラケットは原作にはあまり忠実に従わず、自分達の体験をもとに物語を膨らませてゆく。作家のドン・バーナム役にはブロードウェイの名優ホセ・フェラーに交渉されたのち、レイ・ミランドに回ってくる。ミランドは自分が泥酔者の役をこなせる自信がなく、コメディ映画の監督ワイルダーにシリアスな映画は撮れないと思って出演に躊躇するが、上層部と妻の薦めによって出演を承諾。彼は役作りの為に体重を減らし、酒の量を増やし、映画の撮影にも使用されたベルビュー病院でリサーチを行う。映画の撮影の大部分は、映画の舞台となるニューヨークでロケーション撮影され、ミランドがタイプライターを質入れする為にニューヨークの通りをさまようシーンは、質屋が休業の日曜日に行われて、ミランドがニューヨークの通りを歩きながら開いている質屋を探す様を、撮影隊はキャメラをトラックに隠して通行人には悟られないようゲリラ的に撮影される。ベルビュー病院のアル中患者病棟でミランドがおぞましい体験をするシーンは実際に病院内で撮影されるが、病院側が脚本を見たいと言ってきたので、ワイルダーは偽の脚本を書き上げて病院内での撮影許可を取る。しかし、映画に登場する病院のイメージがあまりにもひどかった為に、この作品以後ベルビュー病院では病院内で映画の撮影を行うことを全面的に禁止する事を決定し、ジョージ・シートン監督がハートウォーミングなファンタジー『34丁目の奇蹟』(47)での病院のシーンを撮影する許可を求めた時も病院側は撮影を許可しなかった。最初のスニーク・プレヴューでは、お酒を飲むシーンがあまりにも多く、お粗末で不愉快な映画と評判があまり芳しくなかったために、パラマウントは一般公開を躊躇して、制作費110万ドルのこの映画を更なる損失を出させない為にお蔵入りしようとした。また、醸蔵業界がこの映画の公開によってアルコール反対運動が起こることを恐れて、映画をパラマウントから500万ドルで買い取る計画があるという噂まで流れる。しかし、映画がロンドンで先行公開されると次第に評価が高まっていき、映画は無事全米でも公開され、批評家と観客の反応もよく、アカデミー賞では作品、監督、脚本、主演男優の4部門を制覇、二枚目の役ばかり演じて大根役者のイメージが強かったミランドは、この映画でオスカーを受賞した事によって演技派俳優の仲間入りを果たし、アルコール中毒者、精神異常者、不具者などを演じればオスカーをとりやすいという風説も生まれる。この映画の粗編集版を観た一人の技術者は、ミランドのオスカー受賞を確信し、それを疑うミランドと50対1で賭けをして、技術者は250ドルもの臨時ボーナスを受け取る。


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