メリー・ポピンズ Mary Poppins
公開:
1964年
メリー・ポピンズ
製作:
ウォルト・ディズニー・スタジオ

ビル・ウォルシュ
監督:
ロバート・スティーブンソン
原作:
パメラ・L・トラヴァース
脚本:
ビル・ウォルシュ

ドン・ダグラディ
撮影:
エドワーズ・コールマン
音楽:
アーウィン・コスタル
出演:
ジュリー・アンドリュース

ディック・ヴァン・ダイク

デヴィッド・トムリンソン

1910年のロンドン。仕事中毒の両親を持つジェーンとマイケルのもとに、二人が夢に描いた理想の家政婦メリー・ポピンズが風に乗ってやって来る。彼女は得意の魔法で家事をこなし、煙突掃除人のバートと共に子供たちを奇想天外なファンタジーの世界へと誘う。彼女の魔法は、子供たちだけでなく仕事に魂を売った大人たちの心をも開いてゆく。「チム・チム・チェリー」、「鳥に餌を」を始めとする15曲の名曲にのって笑いあり涙ありの物語が展開する、ディズニーらしさに溢れたファンタジー・ミュージカル。

ウォルト・ディズニーは、娘が持っていた空を飛ぶ魔法使いの乳母の話を集めた本に興味を示し、44年のはじめにロンドンの空襲を逃れてニューヨークに来ていた原作者のパメラ・L・トラヴァースに映画化の話を持ちかけるが、映画を野蛮な芸術と考えていた彼女は映画化の話を断る。その後、ウォルトは何度か小説の権利を入手しようと試みるが、トラヴァースはアニメーションとして映画化されることに抵抗を感じて映画化を許可しようとはしなかった。ウォルトの映画化に対する熱意は日増しに高まり、60年には自らトラヴァースと会って自分が本のイメージ通りに映画化できる唯一の人間だということをアピールする。ウォルトの人柄に惹かれた彼女は、映画をアニメーションにしないことと、最終的なシナリオの承認を得ることを条件に映画化を承認する。原作ではポピンズの設定が中年女性だったので、ウォルトは最初ベティ・デイヴィスを起用しようと考えたが、映画の中で歌を唄う必要が生じたため、ブロードウェイの大スター、メアリー・マーティンに話を持ちかけるが、彼女は映画の出演に興味を示さなかった。ウォルトの秘書は舞台ミュージカル『マイ・フェア・レディ』で注目を集めて、当時ブロードウェイで『キャメロット』の舞台に出演していたジュリー・アンドリュースを推薦。『キャメロット』を観たディズニーは、終演後アンドリュースの楽屋を訪ねて熱心にポピンズ役を薦めた。最初、アンドリュースは空とぶ乳母役に抵抗を感じて映画出演を断るものの、ウォルトの熱意に負けて出演を承諾し、夫のウォルトンも衣装デザイナーとして映画に関わることになるが、彼女の契約書には映画版『マイ・フェア・レディ』(64)の主人公イライザ役に起用された場合は『メリー・ポピンズ』を降りることが出来るという条件が含まれていた。しかし、『マイ・フェア〜』の製作者ジャック・L・ワーナーは、アンドリュースにはセックス・アピールがないと感じて、アンドリュースに代わって興行的にも人気のあるオードリー・ヘプバーンを起用する。ウォルトはロンドン旅行時に出会った、ワンマンバンドや歩道の絵描きといったストリート・パフォーマーたちをポピンズの友人の煙突掃除人バート役に取り入れ、映画がイギリス的になることを避ける為にテレビ・ドラマ『ディック・ヴァン・ダイク・ショー』で人気を集めていたアメリカ人俳優ディック・バン・ダイクを抜擢する。脚色はスタジオのトップライターのビル・ウォルシュとドン・ダグラディが手掛け、監督には英国生まれで英国風のユーモアのセンスを身につけたロバート・スティーブンソンが起用される。また、ウォルトは技術研究部長のアブ・アイワークスにディズニー・アニメーションの古典的雰囲気を残しながら現代的に見せるアニメと実写の特殊合成撮影の開発を依頼。アイワークスが開発した画期的な合成法「色彩トラベリング・マット合成」は、『三人の騎士』(44)や『南部の唄』(46)を越えるアニメーションと実写の違和感のない合成シーンを生み出して高く評価され、その年のアカデミー特殊視覚効果賞に輝く。数々のディズニー映画の作詞・作曲を手掛けたリチャードとロバートのシャーマン兄弟が歌を手掛け、15曲の親しみやすい名曲を書き上げる。ポピンズたちが漫画の国で歌う「スーパーカリフラジスティックエクスピアリドーシャス」。この長い曲名の由来は、ロバートが子供の頃夏休みの退屈しのぎに考え付いたおまじないの言葉だった。出演者は歌の録音までに6週間の特訓を受け、バックグラウンド・ミュージックの録音には更に2ヶ月もかかった。 ウォルトは「アニメーションにしない」というトラヴァースとの約束を破って映画を完成させ、映画を観た彼女はアニメーション・シーンをカットすることを要求するが、ウォルトはストーリーの承認は脚本のみであって、映画そのものに対しては適用されないと説明して映画の内容の変更を拒否する。完成した映画はアメリカ映画史上第6位の興行収入を上げ、封切りだけで全世界で4千4百万ドルもの売上を記録する大ヒット作となり、アカデミー賞では作品賞を含む13部門でノミネートされて5部門を獲得。アンドリュースは『マイ・フェア〜』のイライザ役を断られたことに同情票が集まって、この映画デビュー作で見事主演女優賞を獲得、ワーナーでさえアンドリュースに票を投じたと言われている。


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