サイコ Psycho
公開:
1960年
サイコ
製作:
パラマウント・スタジオ

アルフレッド・ヒッチコック
監督:
原作:
ロバート・ブロック
脚本:
ジョセフ・ステファーノ
撮影:
ジョン・L・ラッセル
音楽:
バーナード・ハーマン
出演:
アンソニー・パーキンス

ジャネット・リー

ヴェラ・マイルズ

4万ドルの現金を横領して逃走した女性秘書は、恋人のもとへ向かう途中、道に迷いノーマン・ベイツが経営するモーテルに泊まるが、正体不明の女性にシャワー室で惨殺される。失踪した彼女の行方を追ってきたボーイフレンドと妹は、ノーマン・ベイツのもう一つの人格を目の当たりにする。上映開始からラストまで、あっと驚くどんでん返しの連続で、今観ても十分に楽しめるサイコ・スリラー映画のはしりとなったアルフレッド・ヒッチコック監督の代表作。

原作は、実在の連続殺人鬼エド・ゲインの二重生活にヒントを得たロバート・ブロックの同名小説。映画化権の購入に際して、ブロックにはヒッチコックが映画を手掛けることは伏せられていたため、彼はわずか9500ドルで映画化権を売り渡してしまう。ヒッチコックは若手の脚本家が手掛けた第一稿に満足できず、元作曲家のジョセフ・ステファーノに指示して原作に忠実な脚本を執筆させる。ヒロインのマリオン役にヒッチコックは『北北西に進路を取れ』に起用したエヴァ・マリー・セイントを希望するが、都合がつかずジャネット・リーを起用。ヒッチコックは55年から放送が始まった人気テレビ・シリーズ『ヒッチコック劇場』で培った制限された状況の中で作品を作る経験を生かして、撮影はテレビのクルーを使って短期間で行い、大スターで主人公であるはずのリーを物語の途中で殺し、青春映画スターだったアンソニー・パーキンスをマザコンの服装倒錯者に仕立て上げて、観客の予想をことごとく裏切る先の読めない映画を作りあげる。事あるごとに映画研究家たちの研究の対象となる有名なシャワー・ルームでの殺人シーンには、撮影に一週間も費やされ、45秒のシーンのために70回もカメラのアングルを変えて、ナイフを犠牲者の体に一度も触れさせずに、モンタージュを巧みに利用してリーが14回も刺されたように見せかけた。ヒッチコックは模型を使ってナイフが腹に刺さるショットも撮影していたが、映画には使用しなかった。このシーンでは血の代用品としてチョコレート・ソースが使われ、母親の扮装をしたシルエットのノーマン・ベイツはパーキンスではなく代役の女性が演じた。ヒッチコックは生々しい殺人シーンのインパクトを和らげるためにこの映画をモノクロで撮影するが、ヒッチコックのプライベート・コレクションにはこの作品のカラー版があると言われている。アメリカ映画協会はこの映画の殺人シーンには文句を言わずに、「服装倒錯者」という言葉のみを脚本から削除するよう指示するが、ヒッチコックはこれを無視する。作曲家のバーナード・ハーマンはこの映画のために史上初の弦楽器のみで構成されたオーケストラを指揮して、あの耳をつんざくような鋭利なサウンドトラックを作りあげた。ヒッチコックは映画の内容が公開前に漏れるのを防ぐために一般公開前の試写を一切禁止し、映画の公開が始まると『サイコ』を上映する全ての劇場で上映開始後の入場を禁止した。パラマウント社は、このヒッチコックの要請が守られているかどうかを調べるために私立探偵を各劇場へ派遣させる。わずか80万ドルの制作費でつくれられたこの映画は、ショッキングな内容が観客の絶賛を浴びて初公開だけで1500万ドルもの収益を上げる大ヒットを記録する。特にドライブイン・シアターでは熱烈な歓迎を受け、ニュージャージにあるドライブイン・シアターでは『サイコ』を観に来た車が高速道路上に約5キロメートルもの列を作ったを言われている。この作品の成功の後、ハリウッドでは似たような作品が続々と制作されるが、いまだにこの作品を超える作品は登場していない。

この作品以後、パーキンスには常にノーマン・ベイツのイメージが付きまとい、83年には本編の後日談を描く『サイコ2』で再びベイツを演じ、3年後に発表された『サイコ3 怨霊の囁き』ではパーキンス自ら監督と主演を務め、90年にはベイツの少年時代を描くテレビ・ムービー『サイコ4』でもベイツを嬉々として演じる。また、98年にはガス・ヴァン・サント監督がこの作品を新しい俳優を起用して、カラーでフレームの細部までほぼ完璧に撮り直したリメイク版を製作した。


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