アラスカの安酒場で働く女性歌手サルの父親が金鉱の地図を盗まれ殺害される。寄席芸人のデュークとチェスターは偶然その地図を手に入れるが、頼みもしないのに地図の争奪戦に巻き込まれてしまい、2人は追っ手から逃げ回りながら一攫千金を狙って金鉱を目指す。歌手のビング・クロスビー、コメディアンのボブ・ホープ、そしてセクシーな美女ドロシー・ラムーアのトリオが織り成す歌と笑いに満ちた傑作ミュージカル・コメディ。
パラマウント社は、当時ハリウッドで流行していた南海を舞台にした逃避映画として、『Road to Mandalay (マンダレイへの道)』というタイトルの冒険喜劇映画を企画。
しかし、出演をオファーされたフレッド・マクマレイとジャック・オーキーは映画に興味を示さず、スタジオはジョージ・バーンズとグレイシー・アレン夫婦とビング・クロスビーの共演で企画を進めるが、
バーンズとアレンが降りてしまったため、代わって39年に2つのラジオ番組でクロスビーと共演したことがあり、ラジオ界での人気を二分していたボブ・ホープを共演者に抜擢してクロスビーとホープの映画初共演が実現する。
ヒロイン役にはエギゾチックな魅力を持つドロシー・ラムーアが起用され、マンダレイでは暗い感じがするという意見があって、3人の行き先はシンガポールに変えられた。
クロスビーとホープの絶妙な掛け合いとギャグを満載した『珍道中』シリーズ第一作『シンガポール珍道中』が40年に公開されると、絶大な人気を博してその年の興行成績トップを記録する大ヒットとなる。
以後シリーズ化されることになり、クロスビーとホープ扮する凸凹コンビが異国の地で出会ったラムーアと恋に落ちて、彼女を危険から助け出すという基本的なプロットのもと、『アフリカ珍道中』(41)、『モロッコへの道』(42)、『アラスカ珍道中』(45)、『南米珍道中』(47)、唯一のテクニカラー作品『バリ島珍道中』(52)、『ミサイル珍道中』(62)の全7作が作られて、ハリウッド史上最も収益をあげたシリーズとなる。
シーリーズを通してトリオはシンガポール、アフリカの小島ザンジバル、モロッコ、カナダのクローンダイク、リオデジャネイロ、バリ島、香港と世界中を駆け巡り、アメリカではシリーズのタイトルが全て『ロード・トゥ 〜』で始まることからロード・ムービーと呼ばれている。その後ロード・ムービーという言葉は『珍道中』シリーズだけでなく主人公が旅をする映画全般に使われるようになった。
『シンガポール珍道中』と『モロッコへの道』では、後に『革命児サパタ』(52)と『炎の人ゴッホ』(56)でオスカーを受賞する名優アンソニー・クインが悪役に扮しており、『ミサイル珍道中』では当時48歳のラムーアは特別出演のみで、彼女に代わって29歳のジョーン・コリンズがヒロインをつとめた。
『珍道中』シリーズの魅力はクロスビーとホープの掛け合いにあるが、2人はそれぞれ専属のギャグ・ライターを抱えていて、彼らが書いたジョークやギャグで笑いの応酬をくりひろげていたため、2人が脚本のセリフ通りに喋ることは非常に少なかったといわれている。
また、このシリーズの見所の一つである歌は、ジェームズ・ヴァン・ヒューゼン(『シンガポール珍道中』のみ監督のヴィクター・シャーツィンガーとジェームズ・モナコが担当)が作曲を手掛け、ジョニー・バーク(『ミサイル珍道中』のみサミー・カーンが担当)が作詞を手掛けて、シリーズ最大のヒットとなった『モロッコへの道』の「月光とあなた」をはじめ、「トゥー・ロマンティック」「コンスタントリー」「バット・ビューティフル」など数多くのヒット曲を生み出した。
しかし、7本も製作されると観客も映画の流れが読めるようになり、クロスピーが歌っている間はストーリーが進行しないことを知っていた観客は、彼が歌いだすとお手洗いに行ったり、飲み物やポップコーンを買いに行ったりしていた。
前作から3年ぶりに公開されたシリーズ第4作『アラスカ珍道中』は、それまで脚本を手掛けてきたフランク・バトラーとドン・ハートマンに代わってノーマン・パナマとメルビン・フランクが担当。
雪原をソリで行くクロスビーとホープがサンタ・クロースとすれ違ったり、雪山の周りに突然星が現れて映画を製作したパラマウントのロゴ・マークになったり、ラストの意外な楽屋落ちなど、2人は映画業界を笑い飛ばしたパロディーや意表をついたギャグをストーリーに溶け込ませ、これらはクロスビーとホープのアドリブと相まって絶妙な効果を発揮した。
また、今作では『少佐と少女』(42)や『奥様は魔女』(42)の名コメディアン、ロバート・ベンチュリーを物語のナレーターとして登場させ、彼のストーリーにはほとんど関係のない数々の解説はクロスビーとホープのかけあいとは違った面白さを提供する。
今シリーズの見所の一つである歌はヒューゼンとバークのコンビが担当し、人気を呼んだ「Personality」をはじめロマンティックなものからコミカルなものまで7曲が用意された。映画が公開されると、面白さは珍道中シリーズ中最高と評価されて、その年の興行成績第4位となる大ヒットを記録。
アカデミー賞ではシリーズ中唯一のオリジナル脚本賞へのノミネートを果たし、パナマとフランクは62年のシリーズ最終作『ミサイル珍道中』の脚本も担当した。
今シリーズの成功によって、44年にパラマウントはラムーアを主演に迎えて『珍道中』シリーズの路線を受け継いだ『南の島でラブハント』を製作。87年にコロムビア社は5100万ドルもの莫大な制作費をかけてウォーレン・ベイティとダスティン・ホフマンを主演に迎えた『珍道中』の現代版『イシュタール』を製作するが興行的に惨敗した。
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