ロンドンに招かれたブロードウェイ・スターのジェリーは、ホテルの階下に滞在するアメリカ人モデルのデイルに一目惚れ。
ジェリーは得意の歌と踊りで彼女のハートを射止めるが、デイルは彼が概婚者だと勘違いしてしまい、当て付けに衣装屋のアルベルトと結婚してしまう・・・。
ハリウッドを代表する名ダンス・コンビ、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの最高傑作と評された、アーヴィング・バーリンの名曲に彩られた古き良きダンス・ミュージカル。
アステアとロジャースの初主演作『コンチネンタル』(34)の評判と成功に気を良くしたRKO社は、
『ロバータ』(35)に続く二人のコンビ3作目として『コンチネンタル』の路線を踏襲した『トップ・ハット』を企画。
製作者のパンドロ・S・バーマンは、人気作曲家アービング・バーリンに作曲を依頼。
監督のマーク・サンドリッチの要望で、ハリウッドに招かれたバーリンはストーリーに先行して歌を作曲し、ストーリーはその曲に合うように執筆された。
アステアはバーリンが音楽を手掛けることを歓迎していたものの、出来上がった脚本を読むと、
バーリンの歌に頼りすぎた『コンチネンタル』を焼き直しただけの物語と、ダンス以外に見せ場のない自分の役柄に大いに失望。
手書きで3ページにわたる手紙を送って脚本の変更を要請し、バーマンはアステアの機嫌をとるため脚本を手直しして彼の役柄に内容をもたせることを約束した。
映画化にあたってバーマンは主に『コンチネンタル』に関わったスタッフや共演者たちを起用。
『コンチネンタル』で笑いを提供したエドワード・エヴァレット・ホートン、エリック・ローズ、エリック・ブロアの三人も似たような役柄で再登場した。
バーリンは今作のために「No Strings」、「Isn't This a Lovely Day?」、「Top Hat, White tie and Tails」、「頬よせて」、「The Piccolino」の5曲を提供。
アステアはダンス・リハーサルに5週間かけていつもながらの完璧なダンスを披露。
アステアが30年にフローレンス・ジークフェルドの舞台ミュージカル『スマイルズ』で踊った「Say Young Man of Manhattan」を再現した
「Top Hat, White tie and Tails」では、アステアは舞台と同じトップ・ハット、白タイ、燕尾服に身を包み、同じ衣装を着たバック・ダンサーらと共にテンポの速いタップ・ダンスを披露した。
衣装デザイナーのバーナード・ニューマンはダンス・ナンバー「頬よせて」のロジャースの衣装として、1500ドル分のオーストリッチの羽をあしらった豪華なドレスをデザイン。
しかし、アステアを含むスタッフたちはこのドレスを快く思わず、サンドリッチは羽のドレスではなく『コンチネンタル』で着たドレスを着るべきだとロジャースに提案。
彼女は一度着た衣装をもう一度着ることを拒んだため、サンドリッチはしぶしぶ羽のドレスの着用を許可したが、
ダンス・リハーサルではドレスの羽が抜け落ちてしまい、それがアステアの踊りの邪魔をして練習が出来なくなってしまう。
衣装デザイナーがドレスを点検して、これ以上羽が飛び散ることはないと保証したので翌日にリハーサルは再開されるが、
羽は依然として抜け落ちたために、怒ったアステアはロジャースに当り散らしてその日の撮影は中止となった。
最終的に衣装デザイナーが羽を一枚一枚ドレスに縫い付けることで問題は解決したが、抜け落ちる羽が目立たなくなるまで何十回も撮り直しが行われた。
映画に使われたテイクでも舞い散る羽は写っているが、完成したシーンは撮影時の騒動は微塵も感じさせない素晴らしいものとなり、
この事件で教訓を得たアステアは以後の作品では撮影前に必ず自分のダンス・パートナーの衣装を点検するようになった。
ラストのナンバー「The Piccolino」は元々アステアのために書かれたものだったが、彼はこの曲を気に入らなかったので、アステアに代わってロジャースが歌った。
62万ドルの制作費をかけて映画は完成。
アステア=ロジャース作品の中でも最高の評価を得て、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールでは記録的な大入りとなり、300万ドル以上の興行収入を上げて『ロバータ』に次ぐヒットを記録。
第8回アカデミー賞では作品、美術、振付、主題歌(「頬よせて」)賞の4部門にノミネートされたが無冠に終わった。
映画に使われたバーリンの曲も全てヒットしたが、中でも「頬よせて」はスタンダード・ナンバーとして末永く人々に愛される名曲となり、
バーリンは36年の『艦隊を追って』と38年の『気儘時代』でもアステアとロジャースに曲を提供した。
ウディ・アレン監督はファンタジー映画『カイロ紫のバラ』(85)のラストで「頬よせて」のダンス・シーンを効果的に使って、この映画にオマージュを捧げた。
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