めまい Vertigo
公開:
1958年
めまい
製作:
パラマウント・スタジオ

アルフレッド・ヒッチコック

ハーバート・コールマン
監督:
原作:
ピエール・ボワロー

トーマス・ナルスジャック
脚本:
アレック・コペル

サミュエル・テイラー
撮影:
ロバート・バークス
音楽:
バーナード・ハーマン
出演:
ジェームズ・スチュワート

キム・ノヴァク

バーバラ・ベル・ゲデス

高所恐怖症のため警察を辞めたスコティは、旧友の妻で不審な行動をするマデリンの尾行を依頼される。彼は尾行を続けるうちにマデリンに惹かれてゆくが、彼女が教会の鐘楼から飛び降りようとした時、スコティは高所恐怖症のために彼女を見殺しにしてしまう。自責の念にかられるスコティの前にマデリンに瓜二つの女性ジュディが現れ、事件の意外な真相が明らかになる。サスペンスとラブロマンスを見事に絡み合わせた、サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の最高傑作。

フランスのアンリ=ジョルズ・クルーゾー監督の傑作サスペンス『悪魔のような女』(55)の原作者ピエール・ボワローとトーマス・ナルスジャックは、ヒッチコックによる映画化を想定して書き上げた小説『死者の中から』を発表。パラマウント社は小説の映画化を獲得して、『悪魔〜』に触発されたヒッチコックに映画化を依頼する。 高所恐怖症に悩まされるスコティ役には、ヒッチコックと同じく小説の映画化に興味を示したジェームズ・スチュワートを起用。ヒッチコックは妻のアルマと共に『Listen Darkling』のタイトルがつけられたアウトラインを執筆。その後、脚本家のマックスウェル・アンダーソンが脚本を手掛けるが、彼が書き上げた脚本はヒッチコックとスチュワートを満足させることが出来なかった。後を引き継いだアレック・コペルの脚本も二人を満足させることが出来ず、三人目の脚本家として『麗しのサブリナ』(54)の原作者で、サンフランシスコ生まれのサミュエル・テイラーが雇われる。テイラーは舞台をパリからサンフランシスコに移し、不必要なプロットを削除して、登場人物たちに人間的な深みを与えた素晴らしい脚本を1年かけて完成させる。 ヒロインのマデリン役にヒッチコックは若手女優のヴェラ・マイルズを想定し、彼女をこの映画で本格的に売り出そうと考えていた。マイルズはマデリン役の衣装を着てカメラ・テストを行い、マイルズをモデルにしたマデリンの曾祖母カルロッタの肖像画も描かれたが、ヒッチコックが胆のうの手術を受けたために撮影開始は予定よりも大幅に遅れてしまう。ヒッチコックの病気が回復して撮影を開始できる時点になると、今度はマイルズの妊娠が発覚。彼女の映画出演は不可能となり、彼女の降板はヒッチコックを大いに失望させる。 パラマウントは、代役としてコロムビア社の専属スター、キム・ノヴァクを抜擢。しかし、ヒッチコックはノヴァクの起用に乗り気ではなく、撮影中ヒッチコックははノヴァク冷たく接する事が多く、マデリンのキャラクターについて話し合うことを拒んだり、彼女が嫌いなグレーのスーツを強制して着させたり、泳げないノヴァクをサンフランシスコ湾に飛び込ませたりした。 1957年の9月からサンフランシスコで撮影は開始され、撮影は脚本とストーリー・ボードに忠実に沿って進められた。北カリフォルニアにある聖ファン・バテスタ教会が中盤とクライマックス・シーンの撮影に使われたが、鐘楼は何年も前に火事で焼失していたためスタッフは模型と絵で鐘楼を再現した。 教会の鐘楼内部の階段シーンのため、スタジオ内に21メートルもの高さのセットを製作。スコティの「めまい」を表現する映像の撮影では、実物大のセットのてっぺんにキャメラを取り付けると莫大な費用がかかるために、セットのミニチュア模型が製作され、この模型を横にして手前の風景を拡大しながらキャメラを引く撮影方法によってクラクラした感じを表現した。 また、マデリンに扮したジュディとスコティがホテルでキスをする場面では、キャメラが二人のまわりを半円移動できる特別なセットを製作。二人の抱擁を撮りながら、背景をホテルの部屋から教会内部にスムーズに移行させることによってスコティが想像することを編集なしで表現した。 衣装デザイナーのイーディス・ヘッドは、ヒッチコックの色でキャラクターの感情を表現したいというリクエストを受けて、ノヴァクのミステリアスな美しさに華を添えるシンプルながらも豪華さを兼ね揃えた衣装をデザイン。タイトル・デザイナーのソウル・バスは、ヒチコックの発案による渦巻きをもとにした心理学的な抽象画を使って、映画の神秘性を表現した鮮烈なオープニング・タイトル・シーンとポスターを手掛ける。 ヒッチコックは最初、スコティが虚脱状態で真犯人逮捕のニュースをラジオで聞くというラストを用意していたが、教会でのシーンのインパクトが強かったため、そこをラストにする。 批評家の意見は否定的なものが中心で、84年の再公開時には絶賛した批評家のアンドリュー・サリスも初公開時は今作をあまり高く評価せず、興行的にも大きな成功を収めることは出来なかった。しかし後年、ヒッチコック作品の再評価によって『めまい』の評価も上がり、現在ではヒッチコック映画の最高傑作の一つとして認知されているだけでなく、彼の映画の中で最も頻繁に研究の対象にされる作品となる。

映像と音が劣化していた『めまい』は、2年の歳月と100万ドル以上の費用をかけて本格的な修復作業が行われ、サウンドは6チャンネルのステレオにリミックスされ、映像は公開当時のテクニカラーに限りなく近い状態に修復されて96年に再公開された。


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