Image WELCOME TO MY HOMEPAGE
劇団PITのジオ掲示板

「倫敦の今井雅之」後記
Icon In Reply to: 今井雅之 完結編
しこう - 2001年07月06日 09時43分13秒
 カーテンコールも終わり、全ての役者もハケ切り、終了のブザーが鳴って、薄明かりから完全明転していく。観客はぞろぞろと隣りのバーへと移動していき、出入り口が混雑する。出口がバーの向こう側というのもあるのだけど、何人かは雑談しながらバーに残っていく。新鮮な空気をと急いで外に出たオイラは、ポケットよりマッチを取り出し、手元で巻いた、紙巻きタバコを口にくわえてそれに火を付ける。シュボッと。

 プハー。うまいね。

 芝居の終わった小屋の前で、帰っていく人の群れを見ながら、その日の公演を反芻するのはいつもの癖だ。いや、いつもなら隣りに演劇関係者が居て、延々、他人の反省会という要らぬお節介をしてるかな?プハー。

 日本人の群れが出てくる。ニコッとする相手はもう居なくなっている。入り口に溜っている人々は、こんな小さな劇場じゃなくて、もっと大きな国立劇場でやるべきだ、とのたまっている。少し首を傾げる。出てくるガイジン達の反応も上々のようだ。プハー。

 突然、知らない日本の戦中を語られ、輪廻転生の話をされ、特攻隊の話を聞かされ、頭の中が洗濯されたみたいになっただろうか。なってくれてたら素直に嬉しい。一様に皆、お褒めの言葉を残していく。お褒めの言葉…。すごく引っ掛かる。英国の特徴、お褒めの言葉。何か長くなりそうだから、これについてはまたいつか。

 タバコを吸い終わり、もう一巻き巻いてから、役者が出てくるのをちょっと待ってみようと思った。ちょっとミーハーに。倫敦で落ち合おうと言っていた友達に遅れるとの電話を入れて、入り口前でもう一本、火をつける。そしてもう一本…そしてもう一本…

 出てこーへんやんけ!!!

 たまに大道具さんが出てきて、使っていたドライアイス入れ(ドラム缶)を道端で処理している。
「あの?手伝いましょうか?」
「お前だれやねん」
「え、劇団PITの獅狗です。」
「……誰?」となっても何だし、やっぱり立ち尽くしたまま。イラついても仕方ないから周りに溜った日本人達の会話に耳を傾ける。ガイジンに英語で話してるようだ。
「アイ・カム・フロム・コーベ(私、神戸から来ます)」
(来ましたって言おうよ)
「オー・ソーリー、アイ・ドント・ノウ(あ、ごめん、知らないや)」
「デュー・ユー・ノウ?(知ってる?)」
(知らへんゆーてるやろが!)
その内、女の子に声をかけてナンパし始めた。ま、若者として健全やね。

 そうこうしていると、中からぞろぞろとファンを連れて役者達が出てきた。え?ファン?んなアホな。しかも、さっき誉めてたにいちゃんは、めちゃイケイケの眼鏡かけて、決めまくってるやん。あいたた。

 そのお兄ちゃんがパブの方向に消えていくと、ぐっと集団は減っていく。そんなのがまた一回。そしてもう一回。燃え上がったミーハー力も、ちょびちょびと消火されて、風前の灯火。この人達と、一体、オイラは何を話せると言うのだろう。日本からやってきて、少しお洒落な街、倫敦を、一時、味わい去っていく。オイラの焦燥感は何処へ向かえばいいのだろうか。

 間もなく、今井さんがやってきた。出入り口のまだ奥の方で、カメラの前、にっこりしながらファンサービスを繰り返す。しばし待ったが、待ちきれなくなって歩みより、オイラはまっすぐ手を出した。

「男やったら、最後の最後まで格好つけんかい、このお調子者がぁ!!!」と言う代わりに、
「あのぉ、握手だけでも」

 ぐっと握手。

 握手したオイラはスキップしながら、夜の闇へと走り去ったのでした。
(わーい。今井雅之と握手握手〜!)

 ちゃんちゃん。


Icon

この投稿へのコメント
| インデックス | ホームページ |

GeoCities