1990年代のジャズ vol. 22


★★★★3/4
Peter Beets Trio "First Date" (Quintessence : QS 900.751-2)
blues for the date tricotism bebop con alma it has happened dégage groovin' high first song
Peter Beets (p) Marcus Beets (b) Jeff Hamilton (ds)
最近,クリス・クロスからトリオ盤を二枚出して,トリオ好きの間で話題を呼んだピーター・ビーツは,1971年オランダ出身。1988年にポール・モール・エキスポート・スイング・アワード,1989年にクリスティーナ妃杯で優勝,1998年にはマーシャル・ソラール国際で3位に入賞するなど受賞歴も豊富な若手ピアノ弾きです。1983年にプロ入りした彼は,本盤でも共演している長男のマリウス君,次男のアレックス君らと組んで【ビーツ・ブラザーズ】を結成。結構な枚数のアルバムも出し,本国では結構人気があるのだそうです。1996年に録音された本盤は,管見の限り彼の初リーダー作。何とジェフ・ハミルトンが太鼓を叩いています。この顔合わせは録音に先立つこと一年,彼がハミルトンのマスター・クラスで学んだのが縁で実現に至ったのだとか。,良限蠅鮓るにつけ,ハミルトンのような大御所と共演できることになって,余程嬉しかったんでしょう。一聴,彼のスタイルはオスカー・ピーターソンにどっぷり浸かった上での白人ファンキー・ピアノ。本家のような圧倒的手数と超人的技巧は期待できない代わり,本家よりずっと端正で品位も高い。トミフラ風味を絡め小気味良く歌う趣味の良いスタイルには,ハミルトンがラリー・フラーと組んでいた頃のトリオ盤を彷彿させるものがあり,適度に小粋でグルーヴィな演奏に頬も緩みます。欲を言えば,一部に細かい音符上の粗も垣間見えはしますし,もう少しタッチにふくよかさが欲しい気もしますけれど,気になるほどのものではありません。曲解釈も破綻なく,安心して聴ける優れたトリオ作じゃないでしょうか。

★★★★1/2
Stefan Karlsson Trio "Live at Vartan Jazz" (Vartan Jazz : VJ 010)
from the bottom up you must believe in spring she was too good to me quantum carmen's song you don't know what love is we will meet again I will wait for you beutiful love
Stefan Karlsson (p) Eddie Gomez (b) Eliot Zigmund (ds)
リーダーは,スウェーデンのヴァステルヴィク生まれ。1985年に北テキサス大学へ留学し,1991年に修士号。そののち,現在も母校でマスター・クラス,即興演奏の教鞭を執っている人物です。本盤の共演でゴメスに認められ,翌1996年から彼のグループに入ってサイドメンを務めているほか,映画音楽の作曲も手がけ,なんとあの【メルローズ・プレイス】の音楽も彼が担当しているのだとか。本盤は彼の4枚目のリーダー作で,1995年の録音。リーダーがコロラド州に住んでいた当時,デンバーにあるヴァルタン・ジャズ・クラブの肝煎りで作られたライブ盤です。採り上げられた9曲中,他人の曲は7曲ですが,どれも模範的なまでにエヴァンス絡みだ・・と,ご覧になった方はすぐお気づきになるのでは。△忙蠅辰討呂發呂筌┘凜.鵐垢梁緻昌譴任垢掘きГ皀┘凜.鵐垢亮作曲。おまけにゴメスの書いたイ蓮ぅ魁璽豹聞圓殆ど『リ・パーソン・アイ・ニュー』そのまんまじゃないですかい!(笑)・・実際,脇役の2人はモロにエヴァンス・トリオの元構成員。ここまで書けば,種明かしは済んだようなもの。分かりやすいにも程がある彼のピアノは,好きでたまりませんの念を臆面もなく丸出しにする,模範的なまでのヴァーヴ期エヴァンス奏法。本家がそうであったように,カールソンの演奏もまた,何を採り上げて演奏しても破綻なく,軽妙に転がってはソツなくまとまっていく。悪く言えばどれも同じような筆致でワン・パターンなんでしょうが,本家彷彿の安定した秀作に仕上がっていると思います。エヴァンス好きの方は自動的にお気に召すことでしょう。安心してどうぞ。

★★★★3/4
Lars Jansson Trio "Invisible Friends" (Imogena : IGCD 055)
invisible friends learn to live the great belonging freedom and destiny I freedom and destiny II at least often free for three the white cliff autumn blues presence the quiet mind the return to zero I have nothing to say and I am saying it under the bodhi tree

Lars Jansson (p, syn) Lars Danielsson (b) Anders Kjellberg (ds)
最近は頻繁に来日して女性ファンを増やしているスウェーデンのトップ・ピアニスト,ラーシュ・ヤンソンの1995年作。鉄壁の布陣を誇る自己トリオの録音です。総じてキースのスタイルを端正な方向へ引き継いだようなピアニズムと,自費出版で自分の作品を売るくらい自負のある甘美な作曲センスがヤンソンの持ち味。スウェーデン・ジャズ・ピアノ界のお仲間エスビョルン・スヴェンソンやヤコブ・カールゾンと比べて保守的なイメージが強いのですが,実は結構試行錯誤も多い人。この作品に続く『ザ・タイム・ウィ・ハブ』ではフリー・フォームのジャズを,更に『ギヴィング・アンド・レシービング』では木管とリズム・マシーンを加えたクロスオーヴァー指向のジャズをやったりしています。しかし,注意してみますと,後者『・・レシービング』の前作にあたるのが,持ち前の甘美でおセンチ極まりない作曲センスを臆面もなく横溢させた名トリオ作『ホープ』であり,前者の前には本『インビジブル・フレンズ』が,ちゃんと下支えを作っているのが分かる。自作を聴いても一聴瞭然なほどおセンチな彼は,それが本人の思惑以上に表出してしまうと,つい照れ隠しもあって,2度3度と目先を変えてしまうんでしょう。本トリオが彼の素の部分にアプローチしている事は,各曲の標題や内ジャケットなどに見える東洋思想への傾倒からも明らか。頽廃の雨に打たれ,慈愛,平和,相互理解などの文言がアナクロ色に錆びついてしまった現代。照れながらもナルシスティックに東洋思想への情緒的憧憬を寄せ,ユートピア的幻想を抱いてしまう彼を見るにつけ,つくづく生真面目で純朴な人なんだなあ・・と思います。

★★★★1/2
Gary Thomas "Kold Kage" (Bamboo : POCJ-1070)
threshold gate of faces intellect infernal machine the divide peace of the korridor first strike beyond the fall of night the kold kage kulture bandits: to be continued

Gary Thomas (ts, fl, synth, rap) Joe Wesson (rap) Kevin Eubanks, Paul Bollenback (g) Mulgrew Miller (p) Tim Murphy, Anthony Perkins, Michel Caine (synth, p) Anthony Cox (b) Dennis Chambers (ds) Steve Moss (perc)
1980年代終わりに『バイ・エニー・ミーンズ・ネセサリー』で一躍注目を浴びたゲイリー・トーマスが,1991年に発表したリーダー盤第5作。彼の名を一躍有名にしたのは疑いなく『・・ネセサリー』でしょうけれど,同盤は音楽的にややイデオロギー先行が目立つ内容。特に,恩師ジャック・ディジョネットからの影響は露骨過ぎるほどに顕著。その思想的分かり易さから評判にこそなりましたけれど,あれこれと手を出しすぎるあまり,些か散漫な仕上がりに陥ってしまいました。本盤は1987年の独り立ちから4年,『・・ネセサリー』から僅かに2年後の作品ではありますが,さすがにこの辺りになると,貪欲に取り込んだ今風黒人音楽の消化が進み,彼自身の音楽として随分整理され,こなれてきたなあという印象を持ちます。折からM-BASE派の主要構成員たちも徐々に大物化し,自分のコンボで好き勝手なベクトルを執るようになってくると,M-BASEの潮流も多様化して曲がり角に差し掛かり,落ち着いてきます。そうした背景も多分に反映しているのではないでしょうか。ファンク,ラップなどの要素がM-BASE流儀で緊密に再解釈され,凝った変拍子の下で即物主義の色づけを施されて現前される。欲を言えば縁故を頼って参加したジョー・ウェストンのラップが些か貧相ですけれど,試行錯誤した結果を彼の中で上手く咀嚼して,理念あるファンク・ジャズにまで高めた手腕に感心しました。こののちM-BASE派のイディオムは,よりロック寄りのテイストを施し,黒人優位のM-BASEサウンドを普遍化した変拍子ジャズを目指すブルックリン派新世代=スモールズ一派へ取り込まれていくことになります。

★★★★1/4
Pete Malinverni "The Spirit" (Saranac : SR 1001)
projection Bergen Street if only asia minor this I dig of you the spirit pescara why was I born
Pete Malinverni (p) Ralph Lalama (ts) Pat O'Leary (b) Mel Lewis (ds)
1957年ナイアガラ・フォールズ出身のピート・マリンベルニは,1981年にマンハッタンへ進出。ニューヨーク州立大学クレーン校を卒業したのち,同音楽院でアンソニー・ニューマンに作曲法とピアノを学び,修士号を取りました。控えめなピアノ・タッチが物語るとおり本業は教育者。ニューヨーク大学,ウィリアム・パターソン大学ピアノ科の教授を務める傍ら,前者ではクラシックの聴音の授業も持ち,1999年にはそれらの功績が評価されてマーク・クロフォード・ジャズ教育者賞を受賞しています。彼が日本でも有名になったのは,1996年に【ニューヨーク・ピアノ】シリーズで一世を風靡していたレザボア・レコードから,ヴァン・ゲルダー録音のトリオ作を出して以降でしょう。オーソドックスなバップ・ピアノを基調とし,隙間を充分に取った遠慮がちなフレージングはバリー・ハリスを思わせますが,そんなスタイルが現代の耳にも違和感なく堪能できるのは,ひとえに彼のセンスの賜物。聴音の講義まで持つ耳の良さが示す通り,ふっくら膨らみのある丸いコロコロ・タッチと,エヴァンス的なリリシズムを籠めつつ,最低限に仄めかされる和声感で構成された【スモール・イズ・ビューティフル】な演奏は,ロコツな叙情性とマッシブな変拍子を駆使した暴走族ばかりが席巻する現在のジャズ・シーンでは得難いものです。本盤は彼の2枚目のリーダー作で,彼がまだサド=メル楽団の一員に過ぎなかった1989年の録音。既にこの当時から,自前のスタイルは完璧に出来上がっており,マイナー盤とはいえヴァン・ゲルダーのリッチ過ぎるほどにリッチな集音がコロコロ効果を倍増。加えて,楽団つながりの脇役に暖かく支えられた演奏は安定感豊か。殆どレザボア盤と同じ乗りで,安心して聴けました。失礼ながら殆ど初耳だったラルフ・ララマも柔らかトーンで巧いです。ところで本盤,メル・ルイスのラスト・レコーディングになってしまったんだとか。リーダーの回顧録は,英語の読めるあなたならちょっぴり泣けることでしょう。

★★★★1/2
LaSpina - Hersch - Hirshfield - Bergonzi "E.T.C. plus One" (RED: RR 123-249)
splurge days gone by once more Hank without you phantom of the bopera Evanessence april nights conclusive evidence splurge: take 2

Jerry Bergonzi (ts) Fred Hersch (p) Steve LaSpina (b) Jeff Hirshfield (ds)
いまいちコントロールも雑なうえ,ロヴァーノ風からやざくれようとするも中途半端な印象しか残せないテナーマン,ベルゴンツィ。そんな彼がビリー・ハートと並ぶヤバイ太鼓奏者ハーシュフィールドと合体。期待していなかった一枚ですが,内容は意外にも秀抜でした。原盤は1991年に出たもので,三人名義の【エトセトラ】にテナーが入る共作盤。最大の貢献者は,他の3人とは最も合わなそうに思えるピアノのフレッド・ハーシュでしょう。速い曲ではさすがにやや指が摩滅し,タイム感が崩れるも,リーダー盤でも余り記憶にないほどソロが歌っている。好調だったのでしょう。タッチも粒立ちも良く,フレージングにメカニカルな緊密さがあり,ケニー・ワーナーかと錯覚するほどにハードボイルド。ベルゴンツィもいつになく肉感的な節回しでジョーヘン風を気取り,かなりの健闘。ベースと3人で持ち回った新主流派風のオリジナルも良く書けているうえ,問題の太鼓も意外なほど周囲に馴染んでいます。もともとこのリズム隊は,以前もマーク・シランスキーやジェラルド・ダンジェロら,やや線の細い白人エヴァンス派の後ろに回るといい仕事をすることがありましたから,今回はハーシュのお陰でバランスを保てた面が多分にあったのでは。安く見かけることがありましたら,ぜひお試しになってみてください。

★★★★1/2
Herlin Riley "Watch What You're Doing" (Criss Cross : CRISS 1179 CD)
watch what you're doing New York walk John Lewis soscalalh blues sunshine in my pocket coodie coo warm all over Myrosa's mirage blood groove
Herlin Riley (ds) Ryan Kisor (tp) Vycliffe Gordon (tb) Victor Goines (ts, ss, bs, cl) Fario Barron (p) Rodney Whitaker (b)
1980年代に隆盛を極めた新伝承派は,かなりの程度ウイントン・マルサリスを中心に回っていた部分がありました。新主流派の頭目VSOP,ハード・バップの頭目ブレイキーの両方とコネを持ち,おまけにクラシックも本格的に吹けるがゆえ劣等感もなく白豪主義者と渡り合える彼は,大ボスを演じることで,ジャズ再興を果たした功績者といえましょう。ハーリン・ライリーもまた,1988年から1993年までウイントンのグループに在籍。その後も1989年にリンカーン・センター付属のジャズ・オーケストラに参加するなど,ウイントン一派屈指の優等生として活動を続けています。もともと彼は,1982年から1987年までアーマッド・ジャマールのコンボに居たこともある実力者。虚無僧然とした音選びと,控えめながら堅実なサポートぶりには,ウイントンが腹心の部下と頼むのも頷ける安定感があります。本盤は1999年に出た初リーダー作で,メンバーの多くはリンカーン繋がり。エリート集団だけに巷のシーンでは余り名前を見かけない方が多いながら,さすがに演奏技量は高水準です。ときにセカンドライン乗りを絡め,ニューオリンズ起源のクラシック・ジャズ臭を現代風の解釈を絡めて再現前する流儀は,いかにもリンカーン・ウイントンの薫陶直下。明らかに,より伝統的なのはクラシック・ジャズにも拘わらず,我々は,すっかりモダン・ジャズを,オーセンティックなジャズの中心に置いて聴いている。微妙に異なる彼らの視線が,モダン・ジャズに支配された耳に奇妙な違和感を形成する。アンビバレントに,ウイントンのジャズ再興イディオムを良く表した作品といえるのではないでしょうか。

★★★★
Mike Nock Trio "Not We But One" (Naxos : 86006-2)
threeplay cry me a river endgame cyberspace shuffle transitions not we but one kiss antartic ice Hadrian's wall your smile praxis
Mike Nock (p) Anthony Cox (b) Tony Reedus (ds)
若手豪州ジャズメンの経歴を調べてみますと,かなりの確率で名前が挙がってくるマイク・ノックは,1940年ニュージーランドの首都クライストチャーチに生まれたピアノ弾き。豪州ジャズが認知される以前から,世界水準で活動し,こんにちの躍進の嚆矢を作った立て役者です。1961年にアメリカへ乗り込んだ彼は,程なく同校を中退してボストン・クラブのハウス・ピアニストに就任。1963年にユゼフ・ラティーフのバンドへ入って名を上げます。1970年代から1980年代の初頭まではフュージョンに転びますが,この間もデイブ・リーブマンの脇で数枚録音を残しているほか,ジョン・ハンディやジャズ・メッセンジャーズなんかとも仕事を重ねていたようです。彼の名前が再び知られるようになったのは,1982年にECMへ吹き込んだトリオ作『オンダス』あたりからでしょう。その後,1985年に豪州へと戻った後は,1991年から自身のカルテットを率いて,三年連続で豪州ジャズ批評家大賞を得たほか,1989年に発表した『ビューティフル・フレンドシップ』でニュージーランド年間最優秀ジャズ・アルバム賞を獲得。完全に大ボス化している模様。そんな名誉高々な彼がなぜにナクソス?の真相は,1996年から2001年まで,同レーベルの音楽監督を務めていたことに由来していました。道理で素人離れした人選だったわけですよ。ソリストとしてのノックは,決して技巧闊達ではなく,タッチもさほど美麗とは言い難い。急速調ではもたつく一面も。しかし,良い意味で自分の力量を良く知っているピアノ。ときにフリー・フォームを併用しつつも,訥々と一音ずつ丁寧にソロを紡ぐスタイルに至誠が滲み,炭焼き爺さんのように味わいのある渋みのエヴァンス派。悪くないと思います。これが数百円で買えちゃうんですから,ナクソスは本当に素敵なレーベルですよねえ。

★★★★1/4
Chris Wiesendanger Trio "Live at Moods" (Brambus : 199920-2)
all or nothin at all between the worlds nothing was ever before brooklin blues how far can we go? lem decision airegin
Chris Wiesendanger (p) Dominique Girod (b) Elmar Frey (ds)
リーダーは1965年スイス出身。もともとはクラシック・ピアノ弾きを目指していたようですが,その後ジャズに開眼。ニュー・ヨークのジュリアード音楽院でピアノと楽典を学んだのち,16才でプロ入りしました。本盤は彼の名前が知られるきっかけとなったライブ盤で,1998年12月にチューリヒのクラブ【ムーズ】で録音されたものです。スイスのピアノ弾きで一番有名なのはティエリー・ラングでしょうが,ラングのようなオーソドックスな北欧ピアノは実のところそれほど多数派ではなく,より硬質でカサカサしたタッチを備えた人物が多い。この人もその好個の例でしょう。左手の和声選びにメルドー君の影響をちらつかせつつ,音数を削った単音で,淡泊に歌う右手の語り口。この辺りの乾いた肌触りは,同郷のエイドリアン・フレイやハンス・フェイゲンウィンター(G.A.S.)に通じる,スイス人ピアノ特有の風合いといえるでしょう(実際問題,ドミニク・ジロはエイドリアン・フレイのサイドメン)。ゆえに,上記スイス勢がお好みの方であれば,まず大きくイメージを損なうことなく耳に出来ることでしょう。贅沢を言えば,上記ピアノ弾きたちとは異なるライヴ盤だからか,全体にタッチ神経質で乗りも硬め。サイドメンも少々粗いですねえ。このため,技術面で排気量小粒なのが少しばかり目立ち,気になるのも確か。決して派手なミスタッチや弾き遅れがあるわけではないので,気にしなければそれまでですが,人によっては評価を分けることになるかも知れません。余談ながらリーダーは,この後フレッシュサウンドから,懇意にしているマーク・ターナーを加えたカルテット盤を一枚,トリオ盤を一枚出しましたけれど,基本的に路線は変わっていないようです。

★★★★1/2
Louis Hayes Quintet "Quintessential Lou" (TCB : 99652)
progress report Clarence's place mystified tenderly decision Lion's den alter ego that's the thing our quiet place interlude
Louis Hayes (ds) Abraham Burton (ts) Riley Mullins (tp) Dave Haseltine (p) Santi Debriano (b)
黄金期の生き証人と称されるジャズメンが次々と世を去る中,いまだ現役で活躍し,しかも立派に通用している人は本当に数少なくなりました。1956年に,最絶頂期を迎えつつあったホレス・シルヴァーの五重奏団に抜擢されたデトロイト出身のドラマー,ルイ・ヘイスは,数少ない生き証人の一人。そういえばデクスター・ゴードンが1976年に帰米し,ハードバップ再興の象徴となった際にも,脇を固めていたのは彼でした。ますます多様化し,スキゾ化していくジャズ・シーンの中で,ともすれば地味に受け止められるハードバップ。しかし,過去の遺産を地道に継承している中核が健在だからこそ,ジャズは空中分解を起こすことなく踏みとどまっていられるのかも知れない。変拍子ジャズが席巻する現在のNYで看板を掲げ続ける彼には,ブレイキー亡き後の継承者として,少なからぬ自負があるのでしょう。1999年に,シルヴァー時代を彷彿させる2管編成で録音された本盤は,分かり易くオーソドックスな今風ハード・バップ。ケニー・ドリューの有名盤『アンダーカレント』所収のΑぅ瓮奪札鵐献磧璽困離團▲涼討ジェームス・ウィリアムスの´Г鮗録。他にもフレディ・ハバードの◆ぅ蹈螢鵐困劉ァぃ複淵献腑鵐愁鵑劉Г函ぅ瓮奪札鵐献磧璽才蹐澆離廛譟璽筺爾作曲した曲ばかり選ばれているのも決して偶然ではない。次世代型メッセンジャーズ志向ゆえ,脇役も後輩陣。ともに40代のキャリアを積んだベースとピアノが,腰の据わったグルーヴを繰り出す中,ハンク・モブレー風の年若いテナーは柔らかく吹けてますし,初期ハバード風のラッパも,やや線は細いながら好演。フロントを暖かく包む年長組の視線が好ましい演奏は,目新しいところはなくとも,全曲手堅くまとめられている。個人的にはヘイゼルタインの好演が嬉しい。最近すっかり印象が薄くなってしまった彼。今一度この当時の覇気を取り戻して欲しいと思うのはあっしだけでしょうか。

(2006. 7. 26)