1990年代のジャズ 全般


★★★★
John Stubblefield "Morning Song" (Enja : ENJ-8036 2)
blues for the moment king of hearts so what morning song blue moon a night in Lisbon the shadow of Newark in a sentimental mood slick stud and sweet thang here and there here's one
John Stubblefield (ts, ss) George Cables (p) Clint Houston (b) Victor Lewis (ds)
私的にはこの盤,ゴスペルやR&Bの影響顕著ない函だ搭蹐淵吋ぅ屮襯垢箸瞭鷭伝姚┐任箸匹瓩鮖匹靴泙后ジョセフ・ジャーマン,アンソニー・ブラクストンらとの共演歴のあるリーダーは,経歴でいうとかなりアクの強そうなサックス奏者でつい敬遠してしまいますが,このリーダー盤意外なほど穏健なR&B寄りの主流派ジャズ。何しろソロが抜群に歌っており,前衛出身で音色に気を遣わないからかはたまたお年のせいで息が続かないからなのかヨレ気味で,相当に不安定なコントロールも補って余りある演奏といえるのではないでしょうか。音以外は二重丸。変態プレイもOKという方に。

★★★★1/4
Elias Haslanger "Kicks are for Kids" (Heart : 0020-60017-2)
kicks are for kids patience two tone Eugene and Marie* dweet di diddle it history book easy walk free for three just squeeze me* kicks are for kids
Elias Haslanger (ts, ss) Fredrick Sanders (p) Edwin Livingston (b) J.J. Johnson (ds) Tito Carrillo (tp) Ellis Marsalis (p)*
テキサス州ヒューストンで活動するサックス吹きのリーダー作。1994年録音の隠れ名盤『スタンダーズ』に続くこちらも快作です。おそらく地元の気心知れた演奏仲間との録音だったのでしょうが注目はエリス・マルサリスの参加。彼に限らずベテランはこうやって,地方を巡っては土地土地の手練れを拾い出して録音し,ファンへの啓蒙をしてくれるものです。そのお眼鏡にかなう力量は確か。ちょっとヨレ気味なれど,ソプラノなどカウボーイ気質のテキサスらしくぶっきらぼうな吹きっぷりはロリンズ風。モンクのアクセントが入ったジャズ・ファンク風の洒落たビートに乗せて,今風のハード・バップ。小粒で荒削りなところもありますが,内容はかなり良くできていると思います。強いて難を挙げるとすれば,今ひとつ乗り切れないピアノでしょうか。ミスタッチを連発するそのピアノ,好く言えばモンク風でもあるのですが(笑)。

★★★★3/4
Myriam Alter "Alter Ego" (Intuition : INT 3258-2)
no more stress warmness funny story worry stay close to me change in rhythm slow waltz getting dark carousel calm down
Billy Drewes (sax, cl) Ron Miles (tp) Kenny Werner (p) Marc Johnson (b) Joey Baron (ds)

皆さん聞いたことのない名前でしょうが,よく御覧ください。この豪華なリズム隊を!女流ピアニスト兼作曲家のミリアム・アルター女史がリーダーなれど出る幕もありません。代わって参加したピアノのケニー・ワーナーの出来が素晴らしいの何の。リリカルで品位高く,近年の彼のベスト・プレイと断言して好いのではないでしょうか。作曲で参加したリーダーは女流らしく,日本の歌謡曲めいた大甘な作風を展開,下手すれば凡作以下にもなりかねないところ。ピアノで出しゃばって演奏しなかった彼女の慎み深さが全てを救いました。作曲70点,プレイ満点。

★★★★3/4
Joachim Schonecker "Common Language" (Double-Time : DTRCD-122)
blues&fashion Bud's beaux arts snapshot contemplation ain't misbehavin' please talk after the beep Marie I hear a rhapsody back and fourth 'round midnight my shining hour
Joachim Schonecker (g) Larry Fuller (p) John Goldsby (b) Jeff Hamilton (ds)

ドイツから登場したギタリスト,シューネッカーのデビュー作。当然まだ無名です。しかし,ヒルベルサム音楽院卒,ケルン音楽院で教職にも就いているという,あちらでは結構な実力者。音色はジョー・パスなんかに近く,オクターブ奏法もあるスタイルはピック付きながらウェス直系。かなりファンキーで黒っぽく,技巧は闊達。ファンキー御用達の共演陣の素晴らしさで買った私も,このリーダーの旨さには吃驚。近頃珍しい隠れ名手です。

★★★★
Johannes Enders "Home Ground" (Enja : CD 9105-2)
high spirts Dolores Carla Maria doghouse trixi one pirx home ground Black Nile trixi two evidence panta rhei
Johannes Enders (ts, as) Roberto Di Gioia (p) Thomas Stabenow (b) Guido May (ds)

オーストリア国際ジャズ・コンペで優勝なさったというドイツのサックス吹きのリーダー作。アイドルにしているのは昨今ウィーンでも活動しているデイヴ・リーブマンだそうで,そうなると間接的にはコルトレーン系ということになるのでしょう。演奏から受ける印象は作編曲を含めてむしろジョー・ヘン寄り。ジョー・チェンバースに似たシンバル捌きがやや扁平なドラム,トリオ・コンセプツでは骨太だったのにここではロン・カーター風で妙にペロンペロンなベース,小粒ながらマッコイ奏法で奮闘のピアノというバックで,当人は粘度の低いジョーヘン風。さらに録音が良くも悪くも宜しくなく,1960年代ブルー・ノートのヴァン・ゲルダー風に録れていると聴いて涎が出る方ならお気に召すでしょう。

★★★★1/4
Mimi Verderame "Game Over" (A-Records : AL 73185)
unknown tower kidnapping skylark Mimi I'll remember be-bop Ana Maria game over my flower Jack is jack humpty dumpty
Rosario Giuliani (as) Eric Legnini (p, rhodes) Bart de Nolf (b) Mimi Verderame (ds)

ナタリー・ロリエ盤なんかにも参加しているイタリアのドラマーのリーダー作ですが,彼を目当てにこの盤を買う人はほとんどいないんじゃありますまいか(失礼)。となればお目当ては異様に上手いマッシモ・ウルバーニ賞受賞のアルト吹きジュリアーニとベルギーの剛腕投手レニーニの頂上対決。短い間奏風の曲が複数入り,アルバム単位ではちょっと聴き足りないところもあるものの,演奏は滅茶苦茶上手いです。ピアノ好きのあっしにはのエレピ・トリオがたまりません。楽器フリーク必聴盤。

★★★★1/4
Michael Weiss Quartet "Power Station" (DIW : DIW-924) 
power station Atlantis orient express soul journey some other spring alone togerther badlands mountain man
Michael Weiss (p) Eric Alexander (ts) John Webber (b) Joe Farnsworth (ds)

1990年代に出てきたテナー吹きでは恐らく一番巧い一人じゃないかと個人的には思っているエリック参加で買いのこの盤,しかし,聴いてみるとリーダーのピアノもなかなかに捨てがたい魅力があります。今時貴重なウイントン・ケリー丸出しのピアニズム。極めてオーソドックスなハード・バップになったのも,この人の演奏あっての物種でしょう。と,いいことずくめなので,ひとつ本盤の解説について文句を。プレーヤーが幅を利かすこの世界で,完全にリスナーと消費者の側に立ち,しかも新しものをちゃんと聴いてくれる某寺●氏。その姿勢は好ましく思うのですが,正直売れてから彼の書くものは堕落したと思うのはあっしだけではありますまい。最初の頃は一応客観的なデータをフォローしてものを書いていたはずですが,いつからあんな主観的,排他的,不遜な自己偏愛の文体になったのか。聴き手重視を標榜しながら矛盾も甚だしい。ちょっと思い上がってない?

★★★★
Eric Legnini "Rhythm Sphere" (Sowarex-Igloo : IGL 117)
prima vista Duke Ellington sound of love the sorcerer for Jan rhythm sphere you don't know what love is Mr. the hipster inner urge le jardin des Sables
Eric Legnini (p) Joe Lovano (ts, ss) Philippe Aerts (b) Félix Simtaine (ds)

ロヴァーノのサックスをフィーチャーしたエリック・レニーニのカルテット作。ハンコック『ザ・ソーサラー』,ジョーヘン『インナー・アージ』という選曲からしてご想像通りの新主流派的な作編曲は丁寧で,レニーニも好調。安定した名人芸が楽しめます。ロヴァーノって誰かに似てると思っていたら,ジョー・ヘンだったのですなと妙に納得。ひとつだけ欲を言えば脇役。レニーニくらい上手いピアニストにはぜひ最高のリズム隊をつけてもらいたいもの。どうも彼の作品,いつも脇役が力不足に感じられてなりません。ジェフ・ワッツ,ビリー・ドラモンド,ルイス・ナッシュあたりに叩かせたら,さぞもの凄い作品が出来るでありましょうのに。

★★★★1/2
Steve Grossman with Michel Petrucciani "Quartet" (Dreyfus : FDM 36602-2)
ebb tide inner circle song for my mother Parisian welcome you go to my head body and soul why don't I don't blame me theme for Ernie in a sentimental mood
Steve Grossman (ts) Michel Petrucciani (p) Andy McKee (b) Joe Farnsworth (ds)

マイルスに見出されたリーダーのグロスマンは,デクスター・ゴードンの音量感に,ジョニー・グリフィンの野放図さを加えたようなタイプ。このため,凄みはあるものの音の大きさにリップ・コントロールが付いてゆかずやや不安定。近年のアーチ・シェップ,デヴィッド・マレイ辺りに共通する傾向です。しかし,アドリヴが素晴らしく歌います。脇を占めるペト氏はさらに抜群。正直,私は過去耳にしたペト作品で100%の満足を感じたことはなかったのですが,この盤については文句なし。よく歌い打鍵は屈強で正確。諸手をあげての助演男優賞。これからと言うところでの死はつくづく惜しい。合掌。

★★★★1/4
Oscar Peterson "Meets Roy Hargrove & Ralph Moore" (Telarc : CD-83399)
tin tin deo Rob boy blues for Stephane my foolish heart cool walk ecstacy just friends truffles she has gone north York
Oscar Peterson (p) Roy Hargrove (tp) Ralph Moore (ts) Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) Lewis Nash (ds)

50年代ハードバップの持つ,垢抜けしない大らかさ。最近のプレイヤーからはなかなか聴くことができません。この盤は久々で50年代全開の楽しい作品でございます。リーダーはいわずと知れた巨匠中の巨匠。猛烈なテクニックで何人たりとも寄せ付けない大物だった氏も,1993年には心臓疾患で倒れられたそうで,諦観の境地に至ったか丸くなりウイントン・ケリー風。だからなのか。却って脇役陣が生き生きし,一致団結して主役を盛り立てます。ジミー・コブ風にオカズを入れるナッシュ。ソウルフルなのに辿々しい節回しでハンク・モブレーを彷彿させるムーアのテナー。ジャズ・ベースはどれもこれも音感がヒドイ中,まるで聞き苦しさを感じさせぬペデルセンの重厚なソロ。分けても,つまらん新伝承派もどきだったハーグローブの出来は秀逸。いつの間にかクラーク・テリーとアート・ファーマーを足して二で割ったような,人を食った味わいを身につけていたのには吃驚。全員の助演の暖かさにかつてのジャズ人情をかいま見る快作です。