1990年代のジャズァ.團▲諒圈複機


★★★★1/2
Claes CRONA Trio "Crown Jewels" (Dragon: DRCD 345)    
what is this thing called love Laura darn that dream blues for Laila waiting for Felix willow weep for me limehouse blues Pia’s blues lover man I thought about you stompin’ at the savoy
Claes CRONA (piano) Hans BACKENROTH (bass) Petur ÖSTLUND (drums)

クラエ・クローナというこのピアニスト,スウェーデンの出身ながら世界各地を股に掛け,かなり芸歴も豊富なベテラン・ピアニストらしいのですが,迂闊にも全く知りませんでした。ヨラン・ストランドベルイ・トリオの骨太くん,ハンス・バッケンロスの名前を見て購入したのですが,これが大正解。北欧ジャズには珍しいくらいグルーヴィーで威勢のいい頑固一徹ブルース・オヤジの怪腕うなり,ピーターソンそこのけのドライヴ感溢れた痛快作です。

★★★★★
Cyrus CHESTNUT "Revelation" (Atlantic: AMCY- 1131)    
blues for Nita elegie lord, lord, lord macdaddy sweet hour of prayer little ditty 187 dilemmas revelation proverbial lament cornbread pudding
Cyrus CHESTNUT (piano) Christopher THOMAS (bass) Clarence PENN (drums)

小気味良く,洒落たピアノが持ち味のチェスナットはわが国でも良く知られたピアニスト。その小粋さゆえに彼の人気は良く理解できるところなれど,正直小生はこの人のミスタッチの多さ,どうにもいただけません。彼の作品は多いので何枚も買いましたが,彼の作品に感心させられたことは余りありません。そんな彼がほとんど唯一,私をノックアウトしたのがこのアトランティック盤。レイ・ブライアントあたりにルーツがありそうな,ゴスペル色豊かな彼の魅力が思う存分披露され,その他の盤とはまるっきり別人の如く素晴らしい演奏に,私はすっかり惚れ込んでしまったものです。チェスナット嫌いで本盤を未聴な方,ぜひご一聴を。

★★★★
Chad LAWSON Trio "Chad Lawson Trio" (CLT: 1400)    
time without red couch fair sky in Wichita I suppose hearsay a moment for Joe
Chad LAWSON (piano) Rick DIOR (bass) Ron BRENDLE (drums)

ノース・カロライナ州のシャルロットという町で活動しているらしいチャド・ローソンは,以前ご紹介のデイブ・ペック同様,全く無名のピアニスト。レーベル名からご想像の通り自主製作のこのCD,録音はベーシストが担当し,おそらくは地元のジャズ・クラブで録音されたものと思われます。見るからにアヤシイ感じですが,中身は驚くほど良質。演奏スタイルは典型的なエヴァンス派。全てオリジナルですが,訥々と歌に徹するスタイル,テクニック的にもそれほど目立つところがないというところまで,内容はあのデイヴ・ペック盤と酷似。いわば兄弟盤と思っていただければ結構です。ペック盤で地方潜伏名手漁りに目覚めた方には,安心してお薦めできる上ものです。

★★★★1/4
John HORLER Duo / Trio "Lost Keys" (Master Mix: CHECD 00109)     
I’m a fool to want you mood river abstract No.4 waltz blue in green this is my lovely day lost keys Re: person I knew abstract No.2 ma- bel / gentle peace
John HORLER (piano) Jeff CLYNE (bass) Trevor TOMPKINS (drums)

ジョン・ホーラーはイギリスのエヴァンス派ピアニスト。彼を最初に聴いたのは,このアルバムに続くスポットライト盤の「ジェントル・ピース」でしたが,正直甘いだけで少しも面白くなく「つまらんから注視する必要なし」ピアニストとして脳裏に刷り込んでいました。その同じピアニストが,ところ変われば変わるものです。ベースとのデュオで地味に語るこのマスターミックス盤,派手なところは微塵もありませんが,エヴァンスゆかりの佳曲を集め,ゆったりとたゆたう実に品の良い作品です。特に私と同様,3作目から入った方,騙されたと思って今一度,彼に付き合ってみてください。

★★★★1/4
Thierry LANG Trio "Between a Smile and Tears" (Plainisphare: PL 1267- 108)  
your notes I fall in love too easily the Persian between a smile and tears echi peau douce peace
Thierry LANG (piano) Ivor MALHERBE (bass) Marcel PAPAUX (drums)

ティエリー・ラングは1956年スイスはローモント(Romont)生まれのピアノ奏者。クラシック・ピアノを学んだのちジャズに開眼し,最近トリオ作も出たシルヴァーノ・バザンも教えているスイス・ジャズ・スクールのベルン校へ進んで研鑽を積みました(お弟子さんかも知れません)。クラシック上がりらしく,キース・ジャレットを思わせる端正なピアノ・タッチと明晰な技巧を持ちながらも,北欧のピアノ弾きに比肩するほど甘美なロマンティシズムを併せ持った俊才で,1997年には腕を買われブルーノートへ移籍。デビュー作が大きな反響を得て,世界的な評価を確立しました。この作品は彼がまだ有名になる少し前,1991年にTCBへ録音したもの(TCB 91300)で,最近国内盤で再発された『プライベート・ガーデン』と並ぶ,マルハーブ〜パポーとのトリオ時代の録音。ブルーノートへの移籍を契機に,1998年になって再CD化されました。ベースのマルハーブはやや芯の抜けた演奏で,ブルーノート盤でゴリゴリしたベースを披露するエイリ・ケンツィヒに比べるとやや格落ちなんですが,却ってそのことが,彼のメロディストとしての側面を浮き立たせる効果をもたらしました。昨今の彼の録音にはない,ゆったりとした詩的情緒を楽しめる好トリオです(ナカジマ氏より原盤についてのお尋ねをいただきましたので,事実関係を調査の上,補筆しました。2004. 2. 19)。

★★★★1/2
Calderazzo - Watts - Gagnon "Simply Music" (Lost Chart: LC 1010) 
Odyssee Catania speak no evil blutain it’s you or no one Mikell’s take off your blues the more I see you
Joey CALDERAZZO (piano) Jeff WATTS (drums) Sylvain GAGNON (bass)

マイケル・ブレッカーのグループでも大活躍,ケニー・カークランドの弟分よろしく跳ね回る元気なピアニスト,カルデラッツォ君がカナダのレーベルに人知れず残したこの作品,かなりの拾いものです。ベースは余り知らない人ですが,このベースがカッチョええことカッチョええこと。田原俊彦も真っ青のベースびんびん物語さながら唸りをあげての豪速球。ジェフ・ワッツの太鼓までがどかんどかんと煽りまくってもう大変。ここまでお膳立てが揃って,カルデラッツォの魅力であるパワフルなモーダル・ピアノ,爆発せん訳がありません。白眉の熱演Г鯢頭に,三者一体となっての阿鼻叫喚教師びんびん物語であります。

★★★★1/2
Nathalie LORIERS Trio "Silent Spring" (Pygmalion: 595182) 
recurring dreams silent spring novecento continuum la croix du sud the party entre chien et loup prao vivement dimanche
Nathalie LORIERS (piano) Sal La ROCCA (bass) Hans Van OoSTERHOUT (drums)

ベルギーの女傑ナタリー・ロリエ女史のリーダー作。リニー・ロスネス似のエキゾチックな美貌に( ̄¬ ̄) ←こんな顔して購入しようものなら肘鉄を食らいます。この人を聴いてすぐに思い出したのは,ミシェル・ハー。女だてらのテクニックはおそらく,相当クラシックの修練を積んだものでしょう。全曲オリジナルの作品は,エヴァンス寄りではありますがより先鋭的。エヴァンス派というよりは,リッチー・バイラークやミシェル・ハーの影響をより強く受けた,故国の第二世代と解釈するほうが的を得ていると思われます。

★★★★1/4
Antonio FARAÒ "Black Inside" (Enja: ENJ- 9345 2)  
memories black inside latin dance just in time Basel sweet brother Kenny chaotic romance dumb show my one and only love
Antonio FARAÒ (piano) Ira COLEMAN (bass) Jeff WATTS (drums)

この不敵な面構えを見てやってください。俺はヤワなピアノは弾かんぞというマッチョな決意に溢れた不適な面構え。思わずこちとらもそのお顔に釣られて投げ銭 銭型平次。そしたらこれが見事に大当たり。猛烈なテクニックでどす黒い毒気を振りまわし,ケニー・カークランドも真っ青のモーダル・ジャズ大盤振る舞い。上記のカルデラッツォ盤同様,ここでも熱血系御用達のワッツの太鼓が入っていやがおうにも盛り上がります。カルデラッツォに似ていますが,もっと毒があります。まさに『ブラック・インサイド』のタイトルに偽りなしの強力作。骨っぽいジャズをお探しの貴方に。

★★★★1/2
Steve KUHN "Remembering Tomorrow" (ECM: 1573)     
the rain forest oceans in the sky lullaby trance life’s backword glance all the rest is the same Emmanuel remembering tomorrow the feeling within bittersweet passages silver
Steve KUHN (piano) David FINCK (bass) Joey BARON (drums)

スティーヴ・キューン15年ぶりのECM録音。好々爺然とした演奏に円熟の余裕を感じさせる昨今のキューンですが,この盤ではECMならではのレコーディング・ポリシーに触発されてか,かつての瑞々しく透明感溢れる演奏に立ち戻ります。ECMへ録音した当時のキューンはまだ30代。演奏も鋭角的でした。この盤のキューンは60代。当時の鋭角的な切れ味はありません。しかし,かつてのキューンにはなかった雄大さ,全てを包み込むような壮大な暖かさに溢れます。ジョーイ・バロンが少々カシマシイという難点があるとはいえ,透明感溢れる詩的世界に時を忘れます。名盤。

★★★★1/2
Vladimir SHAFRANOV "White Nights" (Jazz Alliance: TJA- 10018)    
love walked in I remember Clifford giant steps white nights bluesnost tin- tin- deo sad to say lester left down I’ve never been in love before ’round midnight one by one django vova-nova I mean you
Vladimir SHAFRANOV (piano) George MRAZ (bass) Al FOSTER (drums)

スカンジナビア半島からアメリカへと渡ったウラジミール・シャフラノフが,東海岸を代表するリズム隊を向こうに回して製作したリーダー作品。北欧のピアニストというと,すぐECMを連想してしまいたくなりますが,選曲が物語るように彼の持ち味はバップ系。演奏は4分前後がほとんどと短めなのですが,その分内容は濃密。三者一体となってのスインギーな熱演に喝采です。そういえばベースのG.ムラーツは元亡命組。どこか象徴的なものを感じてしまいます。