往年のジャズ テ箪検Д薀奪僂離蝓璽澄屡


★★★★★
Chet BAKER "Love Song" (Baystate-BMG: BVCJ-5021)
I'm a fool to want you you and the night and the music 'round midnight as time goes by you'd be so nice to come home to angel eyes caravelle
Chet BAKER (vo, tp) Harold DANKO (p) John BURR (b) Ben RILEY (ds)

チェット・ベイカーは,ヴォーカルも嗜むトランペット吹き。ジェームス・ディーン似の甘いルックスと,鼻にかかったハスキーな声とで人気を博し,往時は黒人代表のマイルスと人気を二分したものでした。しかし時が経つにつれ,長年の麻薬癖は徐々に彼の体を蝕みます。やがて彼の甘いルックスは見る影もなく荒み,ラッパの音色はくすみ,麻薬に冒された喉からは中毒者特有のしゃがれた声が漏れるばかりとなります。破滅的な生きざまで彼は全てを失ったのでした。しかし,彼が単なるアイドルとしてではなく,本当の意味でジャズ演奏家になったのは,実にこの最晩年からでした。15年ほど前に出たこの盤は,彼の破滅的な頽廃美が最も妖しく光を放つ一瞬を鮮やかに切り取った畢生の一枚。ぽつり・ぽつりと語られる一音の凄みは,モティーフが甘美なバラードであるがゆえにこそなお,聴く者を圧倒せずにはおきません。エヴァンス派の好手ハロルド・ダンコの抒情溢れるバッキングも絶品。

★★★★3/4
Joe WILDER "Wilder N' Wilder" (Savoy: SV-0131)
cherokee prelude to a kiss my heart stood still six bit blues mad about the boy darn that dream
Joe Wilder (tp) Hank Jones (p) Wendell Marshall (b) Kenny Clarke (ds)

ジョー・ワイルダーは,一言でいえばラッパ職人。例えば有名なミシェル・ルグランの「ルグラン・ジャズ」。お持ちの方はひっぱり出してみましょう。ホラ,名前がある。このように彼は,人知れず大編成物の作品には必ず請われて参加しているような存在です。こんな人なので,一般に名前が知られていないのも仕方ないと言えるかもしれません。もちろん,その程度の実力でしかないならいいのですが,この人の場合は明らかに過小評価。これほど巧いラッパ吹き,みすみす知らずに済ますのは勿体ない話です。滅多にソロを取る機会のない者だけが知っている一音の重み。彼の希少なリーダー盤であるこの作品の魅力はまさしくこの点に尽きます。気品溢れるタッチに掛けては当代随一の名手ハンク・ジョーンズの絶妙なサポートを得たこの作品は,美しいバラードばかりを題材に,一音たりとも疎かにはしない真摯なソロと官能的な音色とで,しっとりと歌い込まれた傑作です。

★★★★1/2
Lee MORGAN "At the Lighthouse" (Bluenote-EMI: TOCJ-6039)
intro.. by L.Morgan beehive something like this speedball* nommo the sidewinder
Lee MORGAN (tp) Benny MAUPIN (ts) Harold MABERN (p) Jymie MERRITT (b) Mickey ROKER, Jack DeJOHNETTE* (ds)

人気トランペッター,リー・モーガンは1972年,愛人に射殺されて他界します。そんな生き方そのもののトッポイ音色で,彼は1960年代に大きな成功を収めました。今でこそなつメロにしか聞こえないファンキーなジャズ・ロックの曲の数々も,この当時はポップス並みに人気があったのです。彼はジャズ・ロックの歴史的有名盤「サイドワインダー」で時代の寵児となりましたが,それは逆に言うと,モーガン=ジャズ・ロックの烙印を押されることでもありました。きっと本当は,彼はもっとホットでストレートアヘッドなジャズを思う存分やりたかったのでしょう。この作品は彼が唯一遺したライヴ音源として,知る人ぞ知る一枚。レーベルからの圧力の掛からないライヴで,彼は思う存分吹きまくり,欲求不満を発散していたのでした。音楽へのあくなき欲望が洪水のように溢れだした壮絶ライヴ。

★★★★1/2
Tony FRUSCELLA "Tony Fruscella" (Atlantic-East West Japan: AMCY 1184)
I'll be seeing you muy metropolitan blues raintree county salt his master's voice old hat blue serenade let's play a blues
Tony FRUSCELLA (tp) Allen EAGER (ts) Danny BANK (bs) Chauncey WELSCH (tb) Bill TRIGLIA (p) Bill ANTHONY (b) Junior BRADLEY (ds)

マイルスが実は,裕福な医者のセガレであったこと,ご存じでしょうか。自分のバンドでも麻薬を禁じていたマイルスは,実際には育ちのよい坊であった部分があります。彼を人気者にした哀愁を帯びた音色は一面,リアリティを伴わぬがゆえ「お洒落」になり得たところがあるのです。本盤の主役トニー・フラセラはその点,あまりにリアル過ぎたのでした。あまりに彼の荒んだ実生活を反映したそのラッパは「シャレになって」おらず,オシャレなブルジョア・ファンの方がたを,皆引かせてしまったのでした。しかし,それだけにこの盤は,同じ目論みをしながらただただ運・ツキがなかった彼が,リーダー作録音という千載一遇の機会に持てる全てを投入した,鬼気迫る一枚です。本盤にはもう1つ,アレン・イーガーのテナーという聴きものもあります。レスター系の流麗なフレージングを持ちながら,この作品以外ではタッド・ダメロンの盤などで僅かに聴ける程度と,フラセラ以上に過小評価された人。裏ズートとも言うべきその演奏を聴くにつけ,ただただ勿体ないお化けが飛び交うばかりです。

★★★★1/2
Richard WILLIAMS "New Horn in Town" (Candido-Teichiku: TECW-20377)
I can dream, can't I ? I remember Clifford Ferris wheel Raucous notes blues in a Quandary over the rainbow Renita's bounce
Richard WILLIAMS (tp) Leo WRIGHT (as, fl) Richard WYANDS (p) Reginald WORKMAN (b) Bobby THOMAS (ds)

ジジ・グライスのコンボで名を挙げたリチャード・ウィリアムスは,ここに紹介したルイ・スミスやジョニー・コールズといった,クリフォード・ブラウンの系譜にあるラッパ吹き。このCDの日本盤を解説した寺島某氏の言うように,ブラウニーやルイ・スミスのような力強さはないものの良く通る高域とメロディックな歌心を持つB級名手でありました。デビュー作となったこの盤は,そんな彼の歌に溢れたラッパの魅力が良く出た作品。「アイ・リメンバー・クリフォード」や「虹の彼方に」で見せる,衒わぬリリカルな歌心は,例え歴史の最前線に立つ事はなくとも時を越えた輝きを放つのです。余談ながらこの作品を録音後,彼のリーダー作は途絶えてしまいますが,前ページで紹介したミュージック・インクへの参加など,サイドメンとしては活動を続けたようです。ワイルダー盤やこの盤を聴くにつけ,こういう幾多の知られざる名手の人身御供の上に花を咲かせるジャズという音楽の,残酷な美しさに慄然たる思いを禁じえません。

★★★★
Louis SMITH "Here Comes Louis Smith" (Blue Note: 52438)
tribute to Brownie Brill's blues ande stardust south side Val's blues
Louis Smith (tp) Cannonball ADDERLEY (as) Duke JORDAN, Tommy FLANAGAN (p) Doug WATKINS (b) Art TAYLOR (ds)

クリフォード・ブラウン系のスムーズな音色に,クラーク・テリーやディジー・ギレスピーへ通じるトボけた味わいをブレンドすると,ルイ・スミスになります。デビュー作にもかかわらず,これだけ豪華な脇役を迎えられたという事実だけをみても,いかに彼が期待されていたか分かろうと言うもの。果たしてこの作品は,持ち前の澱みない技巧を丁丁発止と繰り広げた力作となり,一躍彼はクリフォードに続く第二世代の最前線へと踊り出たのでした。ところが,この作品に続いて「スミスヴィル」を録音後,彼は呆気なくシーンから姿を消してしまいます。なぜでしょう?彼はジャズの理解が低いアメリカを見限って,欧州へと渡ったのでした。彼と同様に,この時代には多くの演奏家がアメリカを離れ,欧州へと移住しました(例:ケニー・ドリュー/フィル・ウッズら)。今でこそジャズの国だと大見得を切るアメリカですが,実際にジャズを評価し続けたのはむしろ彼岸の国々だったという,何とも皮肉なお話です。

★★★★
Woody SHAW "Love Dance" (Muse-Sony: SRCS 9495)
love dance obsequious sunbath zoltan soulfully I love you (black spiritual of love)
Woody SHAW (tp) Steve TURRE (tb) Rene McLEAN (sax) Billy HARPER (ts) Joe BONNER (p) Cecil McBEE (b) Victor LEWIS (ds) Guillherme FRANCO (perc) Tony WATERS (conga)

1970年代は,クラシック,ロック,民族音楽などから様々な形で攪乱され,ジャズが最も混迷の淵にあった時代です。ウディ・ショウはそのような時代に,やや遅れて登場してきた新主流派プレイヤーでした。フレディ・ハバードに迫る優れた才能を持ちながら,彼がアングラ演奏家に終わってしまったのは,実に彼が本格的にソロ作を発表し始めた時期が,あまりに悪過ぎたためでした。この作品は彼の残した作品の中でも,特に意欲的に作られたものの1つ。あまり取り上げられない盤ですが,12分を超える,筬イ蓮ぃ慨匹寮彩なアレンジが行き届き,あの「ミュージック・インク」を思わせる壮大なコンセプト・アルバム仕立ての大作となっています。ジャズ冬の時代とされる1970年代。しかしそんな当時にも,こうした水準の高い主流派ジャズは脈々と作られていたのでした。

★★★★1/4
Art FARMER Quartet "Sing Me Softly of the Blues" (Atlantic: AMCY-1201)
sing me the blues softly ad infinitum petite belle tears I waited for you one for Majid
Art FARMER (flh) Steve Kuhn (p) Steve SWALLOW (b) Pete LaROCCA (ds)

アート・ファーマーは,1960年代になると抒情的なラッパ吹きに変貌を遂げます。それに連動して彼は,より中低域の音が柔らかいフリューゲルホルンを愛奏するようになります。モダンなテイストを持つ新主流派系のサポートを得たこの作品は,そうした彼の耽美かつ頽廃的な演奏の魅力が最も色濃く出た一枚。サイドメンの3人は,ラロッカの「バスラ」,スワロウの「スリー・ウェイブス」をともに録音していた仲で,当時飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭でした。彼らの優れた援護射撃がファーマーから引き出すより耽美な世界は,時を超えて妖しい美しさを放ちます。

★★★★1/2
Clifford BROWN featuring Zoot SIMS "Jazz Immortal" (Pacific Jazz-EMI: CDP 7 46850 2)
daahoud fingers keepers joy spring gone with the wind bones for Jones blueberry hill tiny capers tiny capers (alt.)
Clifford BROWN (tp) Zoot SIMS (ts) Bob GORDON (bs) Stu WILLIAMSON (v-tb) Russ FREEMAN (p) Joe MONDRAGON, Carson SMITH (b) Shelly MANNE (ds)

クリフォード・ブラウンはマイルスと並ぶくらい,ジャズの世界では人気のあるラッパ吹きです。有名盤も数多ありますが,その多くはドラムのマックス・ローチと組んだ「ブラウン=ローチ五重奏団」のものや,東海岸のバッパーとの共演もの。そこへいくと,西海岸の白人メンバーで固められたこの盤はまさに異色の一枚といえましょう。この当時ブラウニーは,ローチ五重奏団とともにカリフォルニアでツアーを行なっている最中。最高傑作とされる「イン・コンサート」(1954年4月/8月)はこの時の録音です。実はこの異色作,このツアーで西海岸を訪問中に録音されたもの。いわば,「イン・コンサート」の裏盤なのです。テナーマンにして名アレンジャー,ジャック・モントローズが編曲から人選までこなし,西海岸を代表する名手が一堂に会したこの作品,絶好調ブラウニーの輝かしいソロは勿論の事,ズート,ゴードンらのソロまでが洒落た編曲で楽しめる,まさしく垂涎の品。意外なところに,大物の隠れた裏盤はあるものです。

★★★★★
Booker LITTLE "Booker Little and Friend" (Bethlehem-Nippon Columbia: COCY-75744)
victory and sorrow forward flight looking ahead if I should lose you calling softly booker's blues Matilde
Booker LITTLE (tp) George COLEMAN (ts) Julian PRIESTER (tb) Don FRIEDMAN (p) Reggie WORKMAN (b) Pete LaROCCA (ds)

この盤は有名なので,「アングラCD」の趣旨には些か馴染まないような気もしますが,この作品に満ち溢れるじっとりと陰鬱な緊張感,やはり到底ジャズの表通りへは出せそうにありません。主役のブッカー・リトルは夭折の名トランペッター。クリフォード・ブラウン(ハード・バップ)からフレディ・ハバード(新主流派)へと続く道のりの,ちょうど間隙に位置した人です。すでにこの当時バップの語法は行き詰まり,演奏家はみな,バップに残るかモードへ転向するかの二者択一を迫られていました。しかし彼だけは,あくまでバップの語法を放棄することなく,その上に新しい語法の開拓を目指していました。この作品を録音後に彼が夭折してしまったことで,そのもう1つの道は途絶してしまいます。しかし結局,バップを放棄したはずのモード・ジャズは,その精緻化の過程でリトルの目指した語法に行きついたのでした。ひとり時代の遥か先を見切っていた,驚くべき才気。この遺作にはそのエッセンスが凝縮しています。G.コールマンの助演が光るディープ名盤です。