往年のジャズА柄竿漫



★★★★1/4
Terry GIBBS Quartet "Take It from Me" (Impulse-Victor : MVCJ-19098)
take it from me el fatso oge Pauline's place 8 lbs., 10ozs. gee, dad, it's a deagan all the things you are honeysuckle rose
Terry GIBBS (vib) Kenny BURRELL (g) Sam JONES (b) Louis HAYES (ds)

スイング時代の鉄琴はライオネル・ハンプトンで,モダン期以降はミルト・ジャクソン。巨大な権威が立ち塞がった鉄琴界は,ただでさえ品薄なのに,ますます新人の出にくい土壌ができてしまいました。下で紹介するテディ・チャールスのように変化技に走るくらいしか,逃げ道はなかったのでしょう。しかし,中にはマイペースで頑張った人もいたわけです。このテリー・ギブス氏はそうした中の一人。1950年代後半から活躍し人気もそれなりにあったようで,ビッグ・バンド編成で幾つも駄作を量産しています。この盤はそんなギブスの残した好内容盤。あまり多いとはいえないコンボ編成なうえに,脇役が素晴らしい。寛いだ雰囲気でグルーヴィーなジャズをやっており,真っ当なメインストリーム・ジャズとしてお楽しみいただけると思います。

★★★★1/4
Curtis COUNCE Group "Landslide" (Comtemporary-Victor : VICJ-2084)
landslide time after time sonar mia Sarah a fifth for Frank
Curtis COUNCE (b) Jack SHELDON (tp) Harold LAND (ts) Carl PERKINS (p) Frank BUTLER (ds)

西海岸のジャズというとどうしても白っぽい演奏がイメージされてしまうのですが,中には例外も。それら例外をなす数名の演奏家のうち,なんと3人までもが参画したこのグループは,その白眉ともいうべき存在です。パーキンスとリーダーが,このあと程なくして呆気なく他界したために,本グループは結局大きな知名度を得ることなく消えてしまいました。しかし,ラッパのシェルドン以外全員黒人のグループ・エクスプレッションはグルーヴ感最強。リーダーの重厚なラインに乗って展開されるファンキーなハード・バップは,東海岸のそれと比較しても全く見劣りのしない高水準の内容。大袈裟でなく,1960年代のホレス・シルヴァー・クインテットの,あのカッチリとしたグループ表現と肩を並べるものを有していたと思います。即興の緊密度だけで行くと,録音の若干悪い『カールズ・ブルース』のほうがやや上ですが,この盤のグループ全体から発せられるオーラの大きさは,やはり看過できません。

★★★★1/2
Johnny GRIFFIN Quartet "The Kerry Dancers" (Riverside-Victor : VICJ-23761)
the Kerry dancers black is the color of my true love's hair green grow the rushes the londonderry air 25 1/2 daze oh, now I see hush-a-bye ballad for monsieur
Johnny GRIFFIN (ts) Barry HARRIS (p) Ron CARTER (b) Ben RILEY (ds)

ジョニー・グリフィンは黒々とした音色と,抜群のテクニックを利したマッシブな爽快感を併せ持つ男っぽい演奏が魅力。ウエス・モンゴメリーやセロニアス・モンクら巨匠の名盤(例えば,「フル・ハウス」)など,グリフィンの参加なしには語れない「歴史的銘盤」はいくつもあります。それほど強烈な個性と技量の持ち主でありながら,リーダーとしての評価がもう一つ抜け切れなかったのは,良く言われる「良い意味での品のなさ」のほかにも,ややもすると過熱して吹き過ぎたり上滑りするところにありましょう。民謡に題材をとった異色の傑作であるこの盤は,彼がブロウ一辺倒に走らず,悠々と持ち前の歌心と鳴りの職人芸を披瀝する秀盤。個人的にはグリフィンの作品中でも最高の出来であると思います。デビュー当時のロン・カーターも参加していますが,若気のアンかまだちょっとラインは破綻気味でご愛嬌。

★★★★1/4
Teddy CHARLES, Idrees SULIEMAN, John JENKINS, Mal WALDRON "Coolin'"(Prestige New Jazz : OJCCD-1866-2)
staggers songs of a star the eagle flies bunni reiteration everything happens to me
Teddy CHARLES (vib) Idrees SULIEMAN (tp) John JENKINS (as) Mal WALDRON (p) Addison FARMER (b) Jerry SEGAL (ds)

テディ・チャールスは,どうしても実験野郎のイメージが強い演奏家です。チャールズの出てきた頃にはミルト・ジャクソンやライオネル・ハンプトンが鉄琴界の大黒柱。つけ入る隙もありません。そんな中で生き残るために彼がクール・ジャズと接近し,理知的な実験ものに走ったとしても責められますまい。事実,彼の脇役や共同リーダー作には,穏健なバップ・ジャズを演奏したものも沢山あります。ここに挙げた盤はその典型。顔触れからしてモロB級ですが,出てくる音も顔触れどおり。ただ,そこはテディ氏。一見するとバップ風でありながら,テーマのリフにさりげなく倍音効果を狙ったりと,やはり薬味が利いています。お構いなしにバップ1色の管陣営と,微かに共鳴するマル。その奇妙な精力地図が,全員の程よい緊張感となって,意外な秀演を引き出しました。バップ系の演奏がお好きで,なおかつアドリブ狂の方,お薦めです。

★★★★★
Sonny STITT & Bud POWELL "Stitt, Powell and J.J." (Prestige-Victor : VICJ-23702)
all god's chillun got rhythm Sonny side Bud's blues sunset fine and dandy (take 1) fine and dandy (take 2) strike up the band I want to be happy taking a chance on love afternoon in Paris (take 2) Elora (take 2) teapot (take 2) blue mode (take 1) blue mode (take 1) afternoon in Paris (take 1) Elora (take 1) teapot (take 1)
Sonny STITT (ts) Bud POWELL, John LEWIS (p) J.J.JOHNSON (tb) Curley RUSSELL, Nelson BOYD (b) Max ROACH (ds)
ジャズ界に燦然輝くバド・パウエル御大。にもかかわらず彼のプレスティッジ録音はなぜこの一枚だけか?その滑稽な顛末が絡んでいるのが,この傑作盤。詳しくは国内盤の解説にありますが,何でもリーダーのスティットに「あなたはやっぱり素晴らしい」と煽てられ調子に乗ったパウエル氏,側にいた男に「おい,そこのデブ,ちょっと行ってハンバーガーを買ってきな」と,言った相手がプレスティッジ社長(笑)。そんな不幸な結果を生んでしまったとはいえ,スティットの煽ては見事奏効。この後程なく,麻薬治療禍ですっかり絶頂期のテクを失ってしまうパウエルの,最絶頂期の輝かしい演奏が,紅の豚より速く疾走。木にも天にも登ります。

★★★★1/2
Charles McPHERSON "Be-Bop Revisited!" (Prestige-Victor : VICJ-23776)
hot house nostalgia variations on a blues by Bird (passport) wail embraceable you si si
Charles McPHERSON (as) Barry HARRIS (p) Carmell JONES (tp) Nelson BOYD (b) Al HEATH (ds)

本盤の主人公,マクファーソンは,遅れてきたバップ奏者。時代がバップからモードへと転換を遂げた時代に,遅刻して登校しビ・バップ回帰を謳ったところで評価されるはずもなく,結局,B級アルト吹きに転落してしまいました。これは本作に参加している彼の師匠バリー・ハリスにもそのまま当てはまる事で,ハリスもまた優れたものを持ちながら,ちょっと遅刻したがために美味しい果実を掴み損ねてしまったのです。しかし,2000年の扉も開いた今日に,たかだか5年の違いなど大したことであろうはずもありません。要は中身が良ければ好いのです。時機に恵まれなかったのがB転落の理由だけにこの師弟,いずれ劣らぬ芸達者。熱情的で艶っぽい高域の吹き抜けがイカしてる(死語)マック氏に,コード感強めで聴きやすいハリスのバッキング絶妙。で,このあっしは今もって「バップってどんなの?一枚紹介してえな」と言われるたび,つい,この盤を挙げてしまうのでございます。

★★★★1/4
Garrett 5 "Garrett 5" (King : KICJ-2022)
feeling good little dixie but beautiful little Melonae computer 'G' la bamba Lee Hall's blues Tokyo tower odoriko united we waltz
Kenny GARRETT (as) Wallace RONEY (tp) Mulgrew MILLER (p) Charnett MOFFETT (b) Tonny REDDUS (ds) Rudy BIRD (perc)

いまだリンカーン・センターに君臨するラッパ吹きウイントン・マルサリスの登場を嚆矢とする,1980年初頭の4ビート・ジャズ回帰運動によって,その後多くの優れた若手演奏家が世に出る事となりました。新伝承派と呼称された,それら若手ミュージシャンは多くの好内容盤を残し,今日のようなアコースティック・ジャズ隆盛のきっかけをなしました。この盤はそれら新伝承派の残した快作の一つ。十数年経った今では大御所然としている方もいるようですが,皆このころはまだパッと出の新人。現代流のバピッシュなスタイルで溌剌と若さ溢れる演奏です。

★★★★★
Bill EVANS "Loose Blues (Unknown Session)" (Milestone : MCD-9200-2)
loose bloose loose bloose (alt.) time remembered funkallero my bells there came you fudgesickle built for four fun ride
Bill EVANS (p) Zoot SIMS (ts) Jim HALL (g) Ron CARTER (b) Philly JOE JONES (ds)

ビル・エヴァンスの代表作は?と言われると,まず誰でも挙げるのはリバーサイド時代の,スコット・ラファロ/ポール・モチアンのトリオによる4枚。物憂げな風情の中に,世紀末的な頽廃美を伝える同トリオの演奏は確かに素晴らしいものがありました。1960年代に入る頃,そのラファロを失ったエヴァンスはショックを隠せず,一年の空白を経験することになります。その上,復帰後の演奏は,スタイルはもちろんタッチまで別人のように変わってしまいました。この作品は,その復帰直後のもので,フレディ・ハバードを迎えた有名な「インタープレイ」の裏盤。競演陣がズートにフィリー・ジョーと異色だったためか,或いは当時他に例のないオリジナルのみの作品で,彼の音楽史的に彼を語る上で座りが悪かったからか,埋もれてしまいました。しかし,きイ覆漂Fでも頻繁に演奏される演目が,皆ここからのものであることを見落とすべきではありませんし,標題「ルース・ブルース」が,あの『カインド・オブ・ブルー』と韻を踏んでいることも見逃すべきではないでしょう。同じようにオリジナルで固めたマイルス盤は,その実エヴァンスとの共同作業の産物でした。エヴァンスがラファロの死を,モード概念の体現によって乗り越えようとしたと考えると,このアルバムは以降のエヴァンスへと連なる分水嶺であり,極めて重要な意味を持った作品でもあるのです(2003.8.10補筆)。

★★★★1/2
James CRAY and David 'Fathead' NEWMAN "The Sound of the Wide Open Spaces" (Riverside-Victor : VICJ-23072)
wide open spaces they can't take that away from me some kinda mean what's new figger-ration
James CRAY, David 'Fathead' NEWMAN (ts) Wynton KELLY (p) Sam JONES (b) Arthur TAYLOR (ds)

豪快で野趣溢れるトーンを持ちながら,中間派やソウル・ジャズ系のサックス奏者(ベン・ウェブスターやジーン・アモンズ)特有の泥臭さはなく,バップの延長でじゅうぶんに愉しめるのが,テキサス・テナーの大きな魅力です。この作品はテキサス・テナーを代表する手練れにして,知名度薄のジェームス・クレイの代表作。5曲しか入っていない上に長尺ですが,脇を固めるのはご存じバップ史上最強の名脇役ウイントン・ケリー一派。これで名盤にならないわけがありません。颯爽としたハード・バップ演奏はまるで長さを感じさせません。

★★★★
Jimmy RANEY and Sonny CLARK "Together!" (Xanadu-Nippon Crown : CRCJ-5514)
once ina while pennies from heaven yesterdays there will never be another you body and soul Stella by starlight you go to my head jumping for Jane* invention*
Jimmy RANEY (g) Sonny CLARK (p) Red MITCHELL (b) Bobby WHITE (ds) Gosta THESELIUS (ts)* Elaine LEIGHTON (ds)* Simon BREHM (b)*

玉を転がすようなポロポロしたタッチで,わが国ではことの外人気の高いソニー・クラークが一般的な人気を博したのは,ブルーノートに移籍し自己のリーダー作を録音するようになってからです。もちろん有名人になってからのご本人を愉しむのも良いのですが,意外なところに意外な大物の無名時代を探すのもまた一興。エヴァンス派の名匠ドン・フリードマンが,無名時代にはウエスト・コースターだったというのは意外に知られていませんが,驚くなかれソニー・クラークもまた,無名時代にはウエスト・コースターだったのです。ラス・フリーマンを思わせる当時(1954年)の彼のアドリブ,およそのちの彼とは思えないほど軽妙ですが,典型的西海岸サウンドに乗せたレイニー/クラークの瀟洒なアドリブ飛び交うこの作品。良くも悪くもアク皆無。出来は安定しており,のんびり座って聴くにはもってこいの好内容盤。