往年のジャズ


★★★★1/4
Duke Jordan "Two Loves" (Steeplechase - Videoarts : VACE-1147)
subway inn my old flame blue Monk no problem two loves glad I met pat here's that rainy day Green Dolphin Street embraceable you wait and see I'll remember April lady Dingbat Jordu
Duke Jordan (p) Mads Vinding (b) Ed Thigpen (ds)
この盤は“入門盤”として有名な『フライト・トゥ・デンマーク』の裏盤。この盤については不安いっぱいの自称ビギナーの皆さんに申し上げておくべきかも知れません。ジャズ・ファンの「玄人趣味」というのは実のところ案外下らない,取るに足らないものだったりするわけで,「ボク,『フライト・トゥ・デンマーク』好きです」といえば鼻で笑う人間が,全く同じ日に録音された「『トゥー・ラヴズ』好きです」になると途端に眼差しが一変する・・という程度のものに過ぎません。同日に録音されたこの盤も,デンマークも内容はほとんど変わらずどちらも良質。セッション録音から歌ものを抜き出したデンマークがしみじみとした歌の魅力なら,こちらはより普段着のジョーダン節であるというくらい。どちらもほのぼの好い作品です。さあ,あなたもこの2枚を駆使して自称玄人をからかってみましょう!

★★★★
Charles Sullivan "Re-entry" (Trio - P.J.L.: MTCJ-2012)
re-entry body and soul carefree waltz for cricket Mabe's way body and soul carefree
Charles Sullivan (tp) René McLean (as) Kenny Barron (p) Buster Williams (b) Billy Hart (ds)
日本ではほとんどまともに評価されていないチャールス・サリヴァンの幻盤にして最高作。この盤は,批評家としても活躍の悠氏が1970年代後半に企画監修した "Why Not" レーベル録音中の一枚。リーダーはライオネル・ハンプトン楽団のラッパ吹きで1960年代終わりに登場,その後ロイ・ヘインズのグループでも活動するなど実力者で,ここでもウディ・ショウを思わせるブリリアントなソロを吹いております。メンバーもご覧の通り豪華B級でアンサンブルも充実。バスター・ウィリアムスのぺろぺろ感は好き嫌いが分かれますが,70年代らしいモーダルな音がお好きな方は穴盤として重宝することになるのでは。

★★★★1/4
Kenny Drew Jr. "The Rainbow Connection" (Jazzcity : D28Y0203)
confrontation there is no greater love serenity Boo Boo's birthday Nelson Avenue morning coral sea rhythm-a-ning the rainbow connection invitation
Kenny Drew (p) Charnett Moffett (b) Codaryl Moffett (ds) Terrence Blanchard (tp)
ケニー・ドリューの実息ドリュー・ジュニアのデビュー作。今では誰一人省みることのない作品で,確かにこの作品相当に荒削り。コディ・モフェットの太鼓はお世辞にも上手いとはいえず,リズム・キープも満足に出来ていません(始めと終わりでテンポが違う)し,ドリューのピアノもクラシック上がりらしさが抜けず情感不足。しかし,技術的な問題を差し置いて,これはやはり好いアルバムだと思います。´キΔ離リジナルはどれも黒人らしいフィーリングに溢れ良く書けており,編曲も丁寧。自分の作品ができることへの素直な驚きと喜びが演奏の隅々にまで行き渡り,彼のアルバムに対する打ち込みようと愛着が全面に溢れ,すがすがしく微笑ましい作品になりました。こういう作品,「プロ」になってしまうと出来なくなるんですよなァ。

★★★★1/4
Stan Getz "Stan Getz at Large" (Verve - Polydor : POCJ 2770/1)
night and day Pammie's tune amour I like to recognize the tune when the sun comes out just a child the folks that live on the hill Cafe Monmartre blues too good for me younger than springtime goodbye Land's end in your own sweet way in the night
Stan Getz (ts) Jan Johansson (p) Dan Jordan (b) William Schöpffe (ds)
1940年代はクール・ジャズの旗手として,トリスターノ門下いちの優等生だったゲッツは1950年代に入ると,西海岸ジャズやバップ・ジャズと少しずつ接近し,トーンは柔らかくなり,無機的だったフレージングはメロディックに変貌します。それから10年ほどは彼の黄金期ともいうべき時代。幸運にも彼は,その絶頂期に数多くの録音を遺してくれました。この盤は彼が欧州を外遊した時に録音した2枚組作品。スウェーデン現地の脇役のうちピアノは知る人ぞ知る名手。審美的で抑制の利いた彼のピアノが抜きんでた存在感。主役そこのけの見せ場を作ります。当時の彼の欧州吹き込みでは『イン・ストックホルム』が遙かに有名ですが,バラード多めの同盤に比べ,ゲッツ一流のスウィンガーぶりが良く出るミデイアム・テンポ中心で,なおかつ脇役の緊密な演奏が圧倒的に勝る本盤の方が小生的にはお薦めです。

★★★★1/4
René Urtreger "René Urtreger joue Bud Powell" (Universal : 014 182-2)
dance of the infidels Budo Parisian throughfare so sorry please bouncing with Bud a la Bud Mercedes Celia
René Urtreger (p) Benoit Quersin (b) Jean-Louis Viale (ds)
「パリのジャズ」と題された,ユニバーサル・ミュージックによる,仏ジャズ音源大量復刻の中のひとつです。ユルトルジェと言えば澤野商会から3枚組が出ましたが,これは最も商品価値の高そうな1955年のバークレイ盤。オリジナル・ジャケットではない代わり(内ジャケがオリジナルになっています)滅法安い。私は1200円ほどで買えました。白人らしい外連味のない軽めのバップ・ピアノ。本家の超絶技巧と熱情には及ばず,急速調ではテンポにフレーズ作りが追いつかない点も若干あるようですが,良く歌うピアノで,内容はかなり好いと思います。そういえばフランク・アヴィタビレのデビュー作,よく考えたら同じバド・パウエル集。この盤を買ってやっと彼の真の意図が分かった小生,まだまだ青二才でございます。

★★★★1/4
Earl Hines "Here Comes" (Flying Dutchman - BMG : R25J-1019)
save it pritty mama bye bye baby smoke rings shoe shine boy the stanley steamer Bernie's tune dream of you
Earl Hines (p) Richard Davis (b) Elvin Jones (ds)
最近ではあまり話題に上らなくなりましたが,この盤は,スイング時代の巨人アール・ハインズが,ポスト・バップ世代の若手2人を堂々従えた貫禄盤として,少し前はそれなりに話題にもなっていたCDです。何しろスイングとモードといえば,世代で言えば明治と平成ほども違い,おまけにリーダーはルイ・アームストロング絶頂期から第一線だったわけですから,この当時は完全に老境でした。技巧は見る影もありませんし,彼の名を有名にした「トランペット・スタイル」は,若手を前に蘊蓄を垂れるにはいかにも古臭い感が否めません。にも拘わらず,演奏から溢れるばかりの彼の生気と若さはどうでしょう!スイング時代の語法で育ってきていながら,モダン・ジャズとして聴いてもほとんど違和感のない演奏に仕上がっているのは,ただただ貫禄のなせる技でしょう。驚異のポリリズムを披露し時代の寵児となっていた暴れ馬エルヴィンが,ここでは借りてきた猫のように大人しい!

★★★★★
Jan Johansson "8 Bitar / Innertrio" (Heptagon : HECD-005)
prisma she's funny that way skobonka de sålde sina hemman rebus night in Tunisia willow weep for me blå vit 3,2,1,go! bolles vaggvisa svallvågor I found a new baby the chant snälltåg the thrill is gone innertrio premiär
Jan Johansson (p) Gunnar Johnson, Georg Riedel (b) Ingvar Callmer, Egil Johansen (ds)
最近続けざまにその録音が日の目を見て,再評価著しい夭折のスウェーデン人ピアニスト,ヤン・ヨハンソンのトリオ録音。スタン・ゲッツの伴奏者としてくらいしか認知度のない人だけに,この再発は嬉しい限りです。彼は1931年生まれで,1968年に自動車事故で他界したときには,まだ37歳だったということになりますが,録音は多く,アルバムも20枚分ほどの音源が残っております。その中でも特に傑作の誉れ高いのがこのヘプタゴン盤。クラシックの鍛錬があるのでしょう。アンドレ・プレヴィンを思わせる端正で品の良いタッチ,クラシックや北欧民謡の素材を巧みに融合し,アメリカのそれとは明瞭に一線を画した理知的な佇まいに富む作曲センス,クレア・フィッシャー彷彿の鋭敏な線的対位法感覚,運指は決してスイングしていないにも拘わらず,見事に乗れている演奏,いずれもまさしく秀逸の一語。ヨーロッパ・ジャズが次第にアメリカのジャズの模倣から巣立っていく,その嚆矢の一瞬を鮮やかに切り取った作品として,ぜひ耳にしていただきたい一枚です。傑作。

★★★★1/4
Lawrence Marable Quartet feat. James Clay "Tenorman" (Blue Note : CDP 7 84440 2)
the devil and the deep blue sea easy living minor meeting airtight willow weep for me three fingers North lover man marbles in a sentimental mood
Lawrence Marable, Peter Littman (ds) James Clay (ts) Sonny Clark, Bobby Timmons (p) Jimmy Bond (b)
西海岸を代表する名ドラマー,ローレンス・マラブルのリーダー作ですが,事実上の聴きものはテナーのジェームス・クレイ。彼はいわゆるテキサス・テナーの代表選手でありながら,録音は極めて僅少で,この盤はそんな彼の演奏がワン・ホーンで目一杯楽しめる穴盤。乾いたトーンでいて艶めかしく,手癖もありながら好く歌うテナーはソウル系テナーよりはメリハリがあり,バップ・テナーより黒い。いわゆるメインストリームな巨人の誰とも違ったスタイルであり,ワン・アンド・オンリーな個性を強く持ったテナーマンでした。案外と,そうした同時代性のなさが,過小評価につながったのでしょう。この後さらに録音を続けていれば,もっと素晴らしいアルバムを沢山作ったでしょうに。殆ど活躍の場を与えられなかったのが残念です。

★★★★
Jazz in Paris "Saxophones a Saint-Germain de Pres" (Universal : 014 060-2)
a fine romance they can't take away from me you go to my head cat on the stairs these foolish things I only have eyes for you Penitas de amour mighty low don't blame me black coffee we'll be together again early and later part 1 early and later part 2 blues pour flirter no.2
Hubert Fol Quartet (1-3) : Michel De Villers Octet (4-7) : Sonny Criss Quartet / Quintet (8-14)
上にもご紹介した「パリのジャズ」シリーズの一枚。この盤はソニー・クリスが1962年にパリを訪問した際に現地のミュージシャンを迎えた録音を含んでおります。もちろん,聴きものはバラード中心の選曲でいつになく切々と歌うクリスのアルトなんでしょうが,カップリングも面白い。パーカー派のフレーズにも拘わらず,異様にポール・デスモンドやソニー・レッド臭いユベール・フォ・カルテット,ウディ・ハーマン・セカンド・ハードやスタン・ケントン楽団を思わせるクールな西海岸ジャズをヨーロッパ流に再構築したミシェル・デヴィエーのオクテット,いずれも水準高く,大いに溜飲を下げて聴けるのではないかと思います。これで1200円はやはり,安い!

★★★★1/2
Alan Broadbent "Song of Home" (Atelier Sawano : AS 013)
what is this thing called love solar song of home oleo U.M.M.G. sophisticated lady
Alan Broadbent (p) Andy Brown (b) Frank Gibson Jr. (ds)
コンコード盤『パーソナル・スタンダーズ』で有名なニュージーランド出身のエヴァンス派ピアノ弾き,アラン・ブロードベントの1985年作品。ジャケットの彼も若いです。それだけに,演奏はコンコード盤の落ち着いた雰囲気からすると,ぐっと手数多く軽妙。外連味のない饒舌な表現で,ピエロ・バッシーニやロブ・マドナに近い乗り。同じエヴァンスでも,後期のエヴァンスを連想していただけると好いかと思います。弦高の低いぺろぺろ・ベースに,『パシフィック・スタンダード・タイム』で足を引っ張った相棒のドラムスと,少し脇役が弱いのは難点ですが,内容は全曲通して安定しており,エヴァンス派のみならず,広くお薦めできる作品と申せましょう。

(2001. 8. 5)