往年のジャズ vol. 13


★★★★1/2
Bob Brookmeyer "Bob Brookmeyer and Friends" (Sony : SRCS 9187)
jive hoot misty the wrinkle bracket skylark sometime ago I've grown accustomed to her face who cares
Bob Brookmeyer (tb) Stan Getz (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Elvin Jones (ds)
スタン・ゲッツ,ズート・シムズの脇や双頭リーダーを務め,多くのセッションに請われて参加。作編曲家としても大いにその才能を発揮したバルブ・トロンボーンの名手,ボブ・ブルックマイヤーが1960年代半ばに残した代表作。人望からでしょうか。ご覧の通り,マイルス・グループに居たハンコックとカーター,コルトレーン・カルテットのエルヴィンと,当時飛ぶ鳥を落とす勢いの豪華メンバー大集合。さぞかしエゴ丸出しのブローイング・セッションなのではないかと思いつつ聴いてみますと,意外にもアンサンブル重視で均整のとれた一枚。これは,プレイヤーとしては勿論のこと作編曲家としても有能であったリーダーの統率が巧かったということでしょう。ずば抜けた名演奏こそないものの全編に破綻なく,安心して楽しめる快演オンパレードです。

★★★★1/4
Herve Sellin "Happy Meeting" (Atelier Sawano : AS 0015)
all of you I should care happy meeting in a sentimental mood speak low finestra sul mare speak no evil a crazy one in a sentimental mood speak low
Herve Sellin (p) Riccardo del Fra (b) Eric Dervieu (ds)
個人的には最近ちょっとネタ切れ疑惑を持っている(失礼)澤野商会から,キーボードも嗜む隠れた好ピアニストの1985年作を。キーボード弾きといえば,ちょっと前にご紹介したチャールズ・エレンツィヒのトリオ盤がありました。せかせかと神経質に,良く言えば溌剌とメリハリのあるタッチで淀みなく歌うタイプ。もう少し潤いを込めて弾いて欲しい気もしますが,技量はかなり確かでフレーズの歌心も豊か。無名なままにしておくのは勿体ないものを持っていると思います。ベースのデルフラも,エディ・ゴメス似の音で,かなりメロディックな才長けたソロを取ります。それだけに残念なのが集音。音にリッチな膨らみを与える低域が抜け,タイトで乾きのある,カサカサと神経質な音場。デルフラのソロがエレキベースみたくペラペラに聞こえるのは勘弁してくだされ。

★★★★★
Tubby Hayes & Ronnie Scott "The Couriers of Jazz"(Carlton : STCD 116)
mirage after tea stop the world, I want to get off! in Salah star eyes the Monk my funny valentine day in, day out
Tubby Hayes (ts, vib) Ronnie Scott (ts) Terry Shannon (p) Jeff Clyne (b) Bill Eyden (ds)
1950年代後半の彼は同じテナー奏者のロニー・スコットと組んで『ジャズ・クーリアーズ』という双頭コンボを結成して活躍しました。再発されている音源の多くが音質に難を抱える中,これは特に録音が好く,彼ら双頭コンボ名義のものの中では演奏内容ともども代表作と呼んで宜しいでしょう。本家ソウル・ジャズのようにドロドロしてはいませんが,どこかジーン・アモンズとソニー・スティットの『ボス・テナーズ』を思わせる貫禄たっぷりの歌い回し,そして溢れるばかりの歌心が溢れます。ところでテナーによる双頭コンボと言ってすぐに思い出すのが『アル&ズート』。アルの凡庸さばかりクローズアップしてしまうアンバランスなあのチームに比して,こちらのチームはヘイズよりベニー・ゴルソン臭いテナーを吹くロニー・スコットも巧い。バランスの取れたテナー・バトル・チームであり,このコンボが当時イギリスを代表するコンボだったというのも頷ける,ハイレベルの快演集といえるのではないでしょうか。

★★★★★
Sonny Stitt "Sonny Stitt Plays" (Fresh Sound : FSR-CD 92)
there'll never be another you the nearness of you biscuit mix yesterdays afterwards if I should lose you blues for Bobby my melancholy baby
Sonny Stitt (as) Hank Jones (p) Freddie Greene (g) Wendell Marshall (b) Shadow Wilson (ds)
チャーリー・パーカーと同じ時代に生き,同じアルトを吹き,そしてまた同じバップスタイルであったスティットはおかげで,随分割を食ってしまったカワイソーな人です。彼自身も自分がパーカーと比べられ,真似しんぼと思われるのが余程イヤだったらしく,結局パーカーが死ぬまで,アルトを吹くのを一切止めてしまいました。この盤は,彼がアルトを解禁にした直後の貴重な録音。絶頂期にあった彼の素晴らしい音圧とアイデア一杯のバップ・フレーズ。そして,トミー・フラナガンがまだシーンに現れる前のこの時期,最もエレガントで美しい中間派寄りのバップ・ピアノを弾くハンク・ジョーンズに,リズム・ギター一本で何でもスイング・ジャズ風にしてしまう名脇役フレディ・グリーンという豪華な顔触れ。果たして内容はお約束の中間派ビ・バップまっしぐら作品。このメンバーの取り合わせで悪いわけがありますまい。この時代のジャズ好きの方は安心してお求めいただけましょう。

★★★★3/4
Mulgrew Miller "Keys to the City"(Landmark : LCD-1507-2)
song for Darnell inner urge everytime we say goodbye promethean milestones portrait of a mountain Saud's run warm valley
Mulgrew Miller (p) Ira Coleman (b)Marvin Smith (ds)
最近ではすっかりサイドメンとしての信頼度が高くなったマルグリュー・ミラーが,1985年に出した懐かしいデビュー作。俗に新伝承派などと呼ばれた1980年代のアコースティック・ジャズ回帰運動には,現在でも批判があるようですが,それほど実績を持っていなくとも優れたピアニストであればどんどんCDを出せ,しかも売り物になる状況を作ったのは間違いなく素晴らしいことでしょう。華々しく登場した当時の彼のピアノは,まさに怖い者知らずなマッコイ奏法。ドラム・ロールで重量感満点のスミッティ・スミスをはじめゴツイ脇を従え,輝かしいばかりにマッシブな運指技巧を駆使して,ハイ・テンションなモード・ピアノを展開しています。この後彼は些かスランプに陥ってしまいますが,見事に脱却。勢い一本調子から手の内多彩な燻し銀ピアノへと解脱して,今でも第一線で頑張っています。

★★★★★
Carl Perkins "Introducing Carl Perkins" (Dooto-Freshsound : FSR-CD 10)
way cross town you don't know what love is the lady is a tramp marblehead woody'n you westside just friends it could happen to you why do I care Lilacs in the rain Carl's blues
Carl Perkins (p) Leroy Vinnegar (b) Lawrence Marable (ds)
クリフォード・ブラウンのサイドメンとして名を挙げたのち,多くの西海岸ジャズ作品に参加して,その大半を自らの非凡なピアノで名盤に昇格させてしまった名手中の名手,カール・パーキンス唯一のリーダー作です。彼は幼少期に小児麻痺に罹患してしまったため,左手が自由に使えないというハンデを抱えてしまいました。しかしそれにめげることなく,左手の肘まで使ってコード打ちをやるという離れ業を会得して,独自の分厚いハーモニーを編み出しました。まるで障害を感じさせない闊達な運指と,普通のピアニストより遙かに分厚いハーモニック・センス。そして小児麻痺からくるゴツゴツと武骨な,しかしレイ・ブライアントにも比肩するほど達者なスイング感。それらは皆,この人の非凡な才気を伝えるもの。それだけに,クリフォード・ブラウンと同じ車に乗り合わせ,これからという時にあっけなく事故死してしまったのは,本当に大きな損失でした。この盤は西海岸を代表する重量級サイドメンを迎えて,彼の持てるピアニズムの全てが刻印された秀逸作。ノリノリの,筬Δ鰐渭澄ぅ丱蕁璽匹劉↓┃のバタ臭くすらある装飾音の洪水には「これで小児麻痺?」と目が点になること請け合いです。

★★★★1/2
Joe Haider Trio "Katzenvilla" (JHM : 3622)
my little darling fate of a child katzenvilla EJP and now? capricorn

Joe Haider (p) Isla Eckinger (b) Pierre Favre (ds, perc)
自己のレーベルJHMから,最近は枯淡の境地に達した穏健なハード・バップ・トリオ作を出しているジョー・ハイダーが1971年に発表した初めてのトリオ作がCD化されました。1971年といえば,アメリカでは公民権運動が実を結びつつあり,そうした社会的状況を背景にしたブラック・ミュージック・ムーヴメントも真っ盛りの頃。「ジャズと呼ぶな。ブラック・ミュージックだ」などといっていたミュージシャンもいましたっけ。そんな彼岸の状況を知ってか知らずか,ここでのハイダーのプレイも前衛あり,ルーツ志向の民俗音楽風ありと,時代を反映した音作りとなっている。タッチそのものは現在とそれほど変化がなく,モード手法を消化しつつ,外連味のないフレージングで良く歌うピアノです。その意味では欧州版スタンリー・カウエル的位置づけと言えば分かりやすいかも知れません。しかし,一方でイ覆匹膨阿れる,ECMの傾向を先取りしたような垢抜けたピアニズムは,ヨーロッパに腰を据えてアメリカのジャズの帰趨を見つめていたハイダーならではのものといえるでしょう。貴重な再発です。この時代特有の,どこか神秘主義的な音作りを味わいたい方はどうぞ。

★★★★1/4
Howard McGee "Trumpet at Tempo" (Jazz Classics : CD-JZCL-6009)
intersection lifestream mop mop stardust trumpet at tempo thermodynamics dialated pupils midnight at Minton's up in Dodo's room high wind in Hollywood Dorothy night mist Coolie-Rini night music turnip blood surrender sleepwalker boogie stop time blues you night mist-alt. / turnip blood-alt.
Howard McGee (tp) James D.King, Teddy Edwards, James Moody (ts) Vernon Biddle, Jimmy Bunn, Hank Jones, Dodo Marmarosa (p) Milt Jackson (vib) Bob Kesterson, Ray Brown (b) J.C. Heard, Roy Porter (ds)
何事もタイミングは重要。少し外してしまうと,歴史の中では過小評価なままに終わってしまうもの。ハワード・マギーは,マイルスもかつて羨望の眼差しを送った技巧派であり,スター選手でした。そんな彼がバップの大波に乗りきれなかった理由。それが彼のキャリア上の中途半端さにあった感は否めないでしょう。スイング時代のトランペッターであるロイ・エルドリッジやクーティ・ウィリアムスよりはモダンでバピッシュながら,ディジー・ギレスピーやファッツ・ナヴァロらバップ黎明期のミュージシャンよりは微妙にキャリアが上で,絶頂期もバップ勃興期に止まった彼。結局その歴史の転換点とキャリアの僅かなズレが,2つのイディオムの間に広がる奈落へと彼を落としてしまいました。本盤は最絶頂期の彼の輝かしいプレイが横溢する代表作。スイング・ジャズ色の残る前半(1945年〜1946年)の演奏に比して,後半はメンバーもぐっとモダンに。リーダーの歴史上で務めた損な役回りが透けて見えるようです。ドド・マーマローサにテディ・エドワーズと,それぞれの事情で時流に乗りきれなかった隠れ名手がサイドを務めているのは,今となっては何とも皮肉に見えてしまいます。

★★★★1/4
Denny Zeitlin Trio "Live at the Trident" (Sony : SRCS 9194)
St. Thomas Carol's waltz spur of the moment where does it lead lonely woman my shining hour quiet now at sixes and sevens what is this thing called love
Denny Zeitlin (p) Charlie Haden (b) Jerry Granelli (ds)
ビル・エヴァンスの愛奏曲として名高い『クワイエット・ナウ』の作曲者としても有名なデニー・ザイトリンは,1960年代に頭角を現してきたエヴァンス第2世代のピアニストの1人。同じ第2世代にはドン・フリードマンやポール・ブレイ,クレア・フィッシャーなどがいます。ザイトリンはエヴァンスの語法を消化しながらも,フリー・ジャズへ大胆に接近した鋭角的なピアニズムと,群を抜くテクニックの素晴らしさで,彼らの中でも抜きんでた存在でした。しかし,本職が精神科医で,大学でも心理学の講義を持つなど多忙であった彼の活動は安定せず,実力をだしおおせたリーダー作は僅少です。この作品は,彼の絶頂期に残されたライヴ録音で,代表作。フリーなアプローチを散りばめつつ,全編モーダルかつ闊達な技巧を以てバリバリ淀みなく弾く。ハービー・ハンコックがアイドルにしていたというだけに,チック・コリア出現以前では恐らく最も闊達で淀みない運指技巧に惚れ惚れします。なお,彼は最近になってヴィーナスから秀作『音楽がある限り』を出して復活しました。こちらは年齢を重ね,より中庸でエヴァンス・ライクな演奏が聴けます。

★★★★1/2
Fred Jackson "Hootin' 'n Tootin' " (Blue Note : CDP-21819)
dippin' in the bag southern exposure preach brother hootin' 'n tootin' easin' on down that's where it's at way down home stretchin' out Mr. B.J. Egypt land Teena on the spot minor exposure little Freddie
Fred Jackson (ts) Earl Vandyke (org) Willie Jones (g) Sam Jones (b) Wilbert Hogan (ds)
ブルーノートには,一枚ないしは二枚しかリーダー盤を残せずに消えてしまったジャズメンが沢山いますが,1960年初め流行していたソウル・ジャズ路線で頭角を現していたフレッド・ジャクソンもその1人。編成からして明らかな彼のスタイルは,こってりとしたソウルフルなもの。アイク・ケベックやスタンリー・タレンタインに似ているでしょうか。ソウル・ジャズというと,ひたすら泥臭いものを想像しますが,彼のテナーは意外に歯切れが良く都会的なもので,路線は違いますがバップ・ジャズよりも黒っぽいテキサス・テナーのジェームス・クレイに通じる方向性を,ソウル・ジャズの典型的フォーマットで(つまりはオルガン・ジャズで)目指していた感じといえば分かりやすいでしょう。バップ・ジャズのファンが聴いても違和感は殆どなく楽しめる反面,ソウル・ジャズ好きからは本家ジミー・フォレストやジーン・アモンズに比べ薄味だと思われてしまったのでしょう。アドリブは良く歌い,工夫のないブルースてんこ盛りのソウル・ジャズに比して洗練された作編曲が異彩を放つ秀作でした。本リーダー作録音後,彼は2,3のセッションに脇役参加したものの消息を絶ち,それ以降の録音は皆無です。

(2002. 5. 30)