2000年代のジャズ vol. 3

★★★★1/2
Jacob Elijah Aginsky Trio "...And Some" (Noir : NR 0029)
atiluap she's so Neeto sentimental mood dear J.S. then again sunshine goodbye evidently so god bless the child
Jacob Elijah Aginsky (p) Richard Duke, Gregory Kehret (b) Tim Carter, Matthew Grippo, Eric Garland (ds)
マーカス・シェルビーの2枚のトリオ盤で一躍,注目の的となったノワールの名前を久々に目撃し購入。ハードボイルドそのもののシェルビー盤からして,このレーベルは一癖ありますが,このトリオもまさしく曲者。タイム感にかなり癖があり,ちょうどモンクにアーマッド・ジャマールやクリス・アンダーソンの影響が入っていると言って良いかも知れません。最近のピアノ弾きでは,ちょっと前に話題となったオリン・エヴァンスの白人版と形容すればよろしいでしょうか。渋いです。ハードボイルドです。シェルビー盤が当たったからか,ニック・ウェルドン盤彷彿のベースの録音が格好好い。い世姥て親愛なる人物が誰か分かったら,あなたは大した人物です。自慢のリフを換骨奪胎され,泣く子も黙る大家の彼も墓の下でさぞ苦笑いしていることでしょう。

★★★★
Sarah Jane Cion "Indeed!" (CAP : CAP941)
the unlearned lesson my heart stood still just a simple tune* stay the same if I love again I'm alone again so, what do you think? ease it body and soul
Sarah Jane Cion (p) Darryl Hall (b) Willard Dyson, Tony Reedus (ds) Antonio Hart (as) George Petropoulos (tp) Victor See Yuen (perc) Carolyn Leonhart (vo)*
グレート・アメリカン・ジャズ・ピアノ競技会の第17回大会優勝者サラ・ジェーン・シオンのデビュー作。この後,ナクソス・ジャズからもリーダー盤を出しているようです。ジャケットはアイドル風なうえ,冒頭´い抜鼎瓩粒擽覆続くので,沢山ジャズを聴く方は舐めてかかってしまいそう。ムード音楽風のヴォーカルが入るな佞蠅如ぜ个當阿しておられた方は停止ボタンを押してしまいかねません。しかしこのCD,そこで止めては勿体ない。折角買ったCD,ちゃんと聴きましょう。ちょっと注意すれば,耳のある方ならピアノの非凡な演奏技量に唸ること請け合い。右手のタッチが素晴らしく丸く,トミフラの右,レッド・ガーランドの左と言っても良いほど滑らかで転がること転がること。かなり巧い。歴とした実力者です。前半でゲンナリなさった諸兄は,ご存じジェームス・スポルディングにそっくりなアルト吹きアントニオ・ハートの参加で,一気に温度上昇の後半戦を聴きましょう。

★★★★1/2
Joey Calderazzo "Joey Calderazzo" (Columbia : CK 69886)
the oracle toonay haiku detonation time remembered Catania slings and arrows the charmer
Joey Calderazzo (p) John Patitucci (b) Jeff Watts (ds)
既にその筋ではそれなりの話題になったこのCD,今更という感もありますが,中古で発見し購入しました。カルデラッツォといえば,すぐに思い出すのはあのロスト・チャート盤。パティトゥッチ〜ワッツという重量級サイドを迎え,あの怒濤のモード・サウンドをまた堪能できるものと期待して購入しましたが,果たして予定調和というか期待以上に秀逸な出来で,大いに溜飲を下げた次第です。マイケル・ブレッカー盤でお馴染みГ筬´い覆謬淆調のナンバーばかりでなく,リリカルなバラード演奏にも真骨頂を発揮。ずいぶん懐が深くなりました。

★★★★1/4
Laurent Fickelson Trio "Secret Mood" (Shaï : SHA 531 2)
when I fall in love evil Elsa if you could see me now love song reincarnation of a love bird you and the night and the music anouchka
Laurent Fickelson (p) Clovis Nicolas (b) Philippe Soirat (ds)
最近トルティニョン絡みで注目していたShaï に素敵なエヴァンス派トリオ発見。この際最近復調著しい仏ピアノをまた聴いてしまいましょう。選曲からして趣味モロ出しですが,これは好いですよ。ピアノは秀才型で,クラシックの鍛錬が相当あるご様子(最近では珍しくないのか)。トルティニョンのような天才肌ではなく彼のような怪気炎を上げることはないものの,端正な演奏を披露。フレーズにまとまりと明晰さがあり,バラード中心の選曲でも甘さに流れない好演連発で駄演なし。ベースはトルティニョン盤でお馴染み。ここでも目立たぬながら骨の座ったいい音で,全体を引き締めます。

★★★★1/4
Michael Beck Trio "Michael Beck Trio" (JHM : 3623)
loose ends 928 point turnagain farewell the theme of the defeat open doors three men in a boat everything I love detour ahead loose ends (alt.)
Michael Beck (p) Bänz Oester (b) Samuel Rohrer (ds)
スイスのピアニスト,ハイダー率いるJHMから充実のエヴァンス派作品登場。リーダーは,速いパッセージになると技巧不足からやや運指が重くなるなど小粒なところはあるものの,´ΝГ覆鼻し欧鯣瓦い銅駝の好い作編曲と甘さに流れない静謐なピアノ・タッチが素晴らしい。ジャケットのデザインもセンス好く,綺麗。ジャケットは中身を語るの言葉通りです。自由度の高い演奏もあり,以前ご紹介したバート・シーガーの秀作『レゾナンス』辺りをイメージしていただけると好いと思います。ユージン・マスロフ(『オータム・イン・ニュー・イングランド』当時)からデイヴ・ペック,ファウスト・フェレイオロ辺りの作り出す,慎み深い端正なピアノ盤に目がない方は,間違いなく興じ入っていただけます。ちなみに,ベースはあのG.A.S.のメンバーです。スイス・ジャズの層の厚さを感じさせる一枚と申せましょう。

★★★★
Arild Andersen "Achirana" (ECM : 1728)
achirana diamond cut diamond valley mystic the spell she's gone fable song for Phyllis monologue
Arild Andersen (b) Vassilis Tsabropoulos (p) John Marshall (ds)
 
ベースのアリルド・アンデルセンをリーダーとするこのトリオ,しかし,注意が向かうのは無名のピアノ弾き,ヴァシリス・ツァブロプーロスという御仁。他のECMピアノと同じく,タッチは抜群に綺麗。キースの影響下に北欧的な透明感のあるピアノですが,いわゆる北欧ピアノに比べ,少しだけ単旋律重視の演奏をするのが特色なようで,その分,楽曲にしても演奏にしても民族色が強い(線が細いとも言える)のが持ち味でしょうか。そのあたりをルーツに根ざしたオリジナルなワールド・ミュージックとして好意的に受け取るかどうかで好みは分かれるところです。

★★★★1/2
Bill Mays Trio "Summer Sketches" (Palmetto Jazz : PM-2070)
summer night estate (summer) fireflies indian summer summer sketch (gotta to go) summer school early August the things we did last summer summer serenade once upon a summertime
Bill Mays (p) Matt Wilson (b) Martin Wind (ds)

最近何かと元気なパルメット・ジャズから届いた新譜は,燻し銀の中堅ピアノ,ビル・メイズのレギュラー・トリオ。恥ずかしながら彼の演奏は初めて耳にしましたが,聴いて吃驚。軽妙なタッチの中に,溢れるばかりの詩情とエレガンス。先月ご紹介したマイケル・ベックと似て,ユージン・マスロフ,トミー・フラナガンなどを思わせる静謐かつ上品なピアノ・タッチ。なおかつ過度の甘さに流れない慎みのあるピアノはただただ趣味が良いのひと言です。夏のスケッチと題された通り,夏にゆかりのあるスタンダードとオリジナルを中心に演奏され,レギュラー・トリオだけにデリカシー溢れる演奏の統一感も見事です。

★★★★1/4
Rosario Giuliani Quartet "Luggage" (Disque Dreyfus : FDM 36618-2)
luggage portrait of Jennie dear Tucci the awakening of the creature love for my mother oriental folk song road song I hope you care thinking of you Remi
Rosario Giuliani (as) Pietro Lussu (p) Pietro Ciancaglini (b) Lorenzo Tucci (ds)
イタリーの若手アルト吹き,ジウリアーニのリーダー作です。とは言え既に幾つも客演がありますし,数年前にはピアノのフランコ・ダンドレアとデュオで秀作『デュエッツ・フォー・トレーン』を出したりしましたので,そのキャノンボール〜ウッズ似の扇情的プレイと大音圧はお馴染みでしょう。基本的にパーカー派トーンとフレーズ作りでトレーン風シーツ敷きまくりというスタイルに変化なし。まだまだベクトルが定まらないところはあり,情感に欠けるきらいもあるものの,進境著しくバカテクな上に空フレーズも減ってきました。サイドメンいずれも手練れ揃い。ピアノはW.ケリー色強めのレニーニ風で軽快に乗りまくります。個人的には,気合い一発,組み上がったフレーズで力感溢れる吹け上がりのバップ・チューンに溜飲を下げました。

★★★★1/4
Noah Becker "Where We Are" (Entour Records)
paintings where we are the taste of now inhuman beings snowflake office theme for Ernie hunter's pool
Noah Becker (ts) Kurt Rosenwinkel (g) Peter Griesinger (g) George Colligan (ep) David Ephross (b) Joshua Dixon (ds)
最近話題のカート・ローゼンウィンケルは今や,暗愚楽音楽で挙げるのも憚られるほど有名です。そこで今回は裏盤的一枚をご紹介。N.Y.で活動中のテナー奏者ノア・ベッカーのリーダー作。リーダーはテッド・ブラウンやウォーン・マーシュらクール派を思わせるハスキーでクールなトーンと,ジョーヘンを思わせる肉感的なモード奏法が持ち味。2ギターにエレピが入る異色な編成で,(おそらくは和音がぶつかるのを防ぐために)複数のモノラル・マイクを左右に振りまくった集音は些か時代錯誤な気も致しますが,楽曲と演奏の周到さがこれを補って余りあります。カート君とエレピのコリガン以外は無名で演奏も小粒。有名どころのような腰の据わった演奏は望むべくもありません。しかし代わりに,滅多に録音の機会のないB級ジャズメンが一致団結して丁寧に作ったという,作品への愛着が満面に横溢。ダンディな新主流派〜1970年代のクロスオーヴァー・ミュージックに無機的なリフを乗せたもので,好意的に解釈すれば新時代のクール・ジャズでしょうか。有名な2人以外は(特にドラム)演奏小粒なので★にするとやや評価が辛くなりますが,アルバム・トータルの 出来は星勘定以上に充実。

★★★★
Jon Hazilla Trio "Tiny Capers" (Double Time : DTRCD-180)
Vernell hello young lovers tiny capers saindo Tivolli fractals paper moon footprints misty night / lights are low
Jon Hazilla (ds) John Lockwood (b) Bruce Barth (p)
ボストン系のドラマー,ハジラの5枚目のリーダー作品。主役は無名ですが,ピアノに進境著しいブルース・バースを迎えているのがミソ。最近のピアノ弾きはクラシックの訓練を積んでいるためか才気闊達。皆凝ったオリジナルで凝ったソロを演奏しますな。そういう中にあってブルース・バースは珍しく地に足の着いたメインストリーム路線を進んでいるピアニスト。リーダー盤では時折メルドー趣味も見せる等,欲目と若気の至りが見え隠れする彼ですが,脇役参加が奏功したか,この盤の彼は軽妙で好いです。主題をいじりすぎず,小気味よくメロディックな演奏に終始して,良いところが出ました。ぜひこのままマルグリュー・ミラーの如く手堅いサイドメン道を進んでいただきたい。ベースはあのビーヴァン・マンソン盤でもお馴染みです。

(2001 .8 .5 upload)