1990年代のジャズ vol. 13


★★★★1/4
Shedrick Mitchell "Introducing Shedrick Mitchell" (Shedrick Mitchell : SM 0497)
one said. you said. last words king John IV music for J.E.H. because he lives don't remind me how far the distance mama's prayer ah sh_T! don't believe this! song for Cain da schwang amazing grace
Shedrick Mitchell (p) Richie Goods (b) Reggie Washington (eb) Marlon Browden, Eric Harland, Ali Jackson (ds) Daniel Sedownick (Perc) Sherman Irby (as) Derrick Gardener (tp) Mark Shim,Keith Loftis (ts) Stephon Harris (vib)
ケニー・ギャレットのグループでピアノを弾いていたシェドリック・ミッチェル氏の自主制作デビュー盤。ニューヨークの若手陣が曲ごとに手を変え品を変え参加します。エレキ・ベースを用い,ファンクやラテン色を採り入れ,4ビートには拘りません。アコースティックでありながら極めて現代的な黒人音楽。予算の都合か録音はペラペラの肉薄。酷いもので到底誉められたものではありませんが,内容はかなり良いです。Г蓮ざ惷隋ΑΑ

★★★★
Roman Schwaller Quartet "Some Changes in Life" (JHM : 3612)
tramline Jonny come lately I've got a crush on you brutsch over troubled water some changes in life the loco motif in a sentimental mood in your own sweet way
Roman Schwaller (ts) Oliver Kent (p) Thomas Stabenow (b) Jimmy Cobb (ds)
スイスのテナーマン,ローマン・シュワラーのライヴ録音。リーダーは1970年代後半に,ドラマー,クラウス・ワイスのグループにいた人物。ヨーロッパにフィル・ウッズやケニー・クラークら多くのジャズメンが流出したのは良く知られていますが,この盤はそうしたジャズの流出が生み出した副産物といえる作品です。何しろこのリーダー,ジョニー・グリフィンにそっくり。そんなバップ万歳野郎が本家大御所ジミー・コブを迎えれば盛り上がらぬはずもありません。グリフィン真っ青のソウルフルかつ意気軒昂な節回しで大はしゃぎ。気分はいやがおうにも1950年代回帰。さらに吃驚なのは,初リーダー作が素晴らしかったオリヴァー・ケント。徹頭徹尾ウィントン・ケリーを再現し心憎い脇役根性発揮。「コイツこんなに器用なヤツだったのか」と吃驚すること必定です。こんな懐かしい香りのバップ作品,今やアメリカでだって滅多に聴けるものではありません。バップ・ジャズ・ファン必携の一枚。

★★★★3/4
Aaron Goldberg "Turning Point" (J-Curve : JCR 1004)
fantasy in D turning point Turkish moonrise Jackson's actions the shadow of your smile con alma head trip mom's tune
Aaron Goldberg (p, ep) Mark Turner, Joshua Redman (ts) Carla Cook (vo) Reuben Rogers (b) Eric Harland (ds) Karsh Kalé (tbla)
あのブラッド・メルドーの後を受けてジョシュア・レッドマン・グループのピアノ弾きに抜擢,大活躍中のゴールドバーグのデビュー盤。本人の書き下ろしによるオリジナルは現代的で都会的。ハンコックの『ワン・フィンガー・スナップ』のコード・パターンをいただいたГ覆匹ら見ても,旧来の分類でいうと新主流派的音作りということになるのでしょうか。しかし,スキャットのみのヴォーカルを加える,覆匹妨られるセンスは,むしろブラコンやAORなど,1970年代以降のブラック・ミュージックを巧みに昇華した新世代のメインストリーム・ジャズと言い換える方がしっくり来ます。彼のピアノは最近良くいるクールなタイプとは違い,暖かい温度感があるのが魅力。,虜邏兵團轡澄次ΕΕルトンに通じるコロコロした単音ソロと,達者なテクニック。本家には弱いリーダーとしての華が好ましい。余裕をたっぷり残した,丸く軽妙な運指闊達。既にデビュー作にして,完成されたものを持っているのはさすがとしか言いようが御座いません。甲種推薦。

★★★★★
Anders Persson Trio "At Large"(Dragon : DRCD 286)
autumn in New York bye bye blackbird nature boy Berlin waltz for Billy magic man I'll remember April all of you lintune django le fruit défendu
Anders Persson (p) Yasuhito Mori (b) Magnus Gran (ds)
オキ・ヨハンソンのグループでも太鼓を叩いていたマグヌス・グランの参加で買った本盤。蓋を開けてみれば驚くほど出来の良い北欧系ピアノ・トリオでした。リーダーは1958年グーテンベルク生まれた中堅。1979年に生地の音楽院へ進んでジャズ・ピアノと編曲法を学び,1983年に卒業。その後はアンデシュ・ベリクランツやボブ・バーグなどのサイドメンとして活動し,その傍ら教育者としても1987年からインゲスンド音楽院で,1994年からオレブロ音楽院で,1997年からはノドルドジスク音楽院で,それぞれピアノ科教員として奉職してきた人物です。ベースの森泰人氏は,ネフェルティティ・ジャズ・アンサンブルのリズム・セクションを担当したのが縁でリーダーと知遇を得たそうで,かれこれ20年来の付き合いとか。脇の2人のソツのない絡みも巧いながら,この盤で特筆すべきは何と言ってもピアノです。キースを消化しつつも,メロディックでオーソドックス。音数を削った演奏と,丸みのあるタッチ,オリジナルのみならずスタンダードもきっちり演奏できる趣味の好さがとにかく素晴らしい。非常に出来のいいトリオ盤と思います。甲種推薦。

★★★★1/4
Joris Teepe "Bottom Line" (Mons : MR 874 770)
whisper not Amsterdom Avenue* lion's love Jeannine the end of the tunnel the shadow prelude to a kiss so what next don't get around much anymore bottom line
Joris Teepe (b) Tom Harrell (tp) Don Braden (ts, ss) Darrell Grant (p) Carl Allen (ds) Noah Bless (tb)*
最近プレイヤーとしても一皮剥けたドン・ブレイデンと仲の良いベーシスト,ジョリス・ティーペのMons第2作。ゴージャスな顔触れで,外れはないだろうと思って購入しましたが,果たして期待通りの快演盤です。内容はブレイデン,グラントにカール・アレンという顔合わせからご想像通りの今風ハード・バップ。昔ので言えばジャズ・メッセンジャーズ,最近ので言えばワン・フォー・オールの諸作品などをお気に召した方は,すんなり興じ入って頂けるものと思います。´きЛは言わずと知れたスタンダードで残りがオリジナルですが,良いのはオリジナルの方。リーダーの作編曲の才能が豊かで,豪華メンバーの演奏もツボを熟知した周到な内容。願ったり叶ったりの一枚と申せましょう。余談乍ら┐呂△離泪ぅ襯攻覆諒垓丙遏8橋覆膨垢ぅ織阿付いて,『+(プラス)NEXT』という洒落。そういえば最近の一押し盤ランディ・ポーター・トリオにも同じ趣向が。最近あちらではこういう編曲遊びが流行っているんでしょうか。

★★★★1/2
E. S. P. Trio "A Reason to Believe" (Philology : W 161.2)
a reason to believe sha rock over the rainbow this time Melbourne night playing love blues in the dark variazione 6 calasetta rue Rivoli nature boy terra do sol Esinho variazione 7 moon tiver Elisa
Roberto Cipelli (p) Attilio Zanchi (b) Gianni Cazzola (ds)
イタリアの元前衛風ラッパ奏者パオロ・フレスのクインテットでも活躍したピアノ弾き,ロベルト・シペリのトリオ盤。初期のフレス盤で彼が尖っていた頃の演奏をご存じの方は,「ESP」というトリオ名も相俟ってつい避けてしまいそうですが,聴いてみると意外にも穏健。この人くらい徹底して変身したピアノ弾きは,昨今のスティーヴ・キューンくらいしか思いつきません。エンリコ・ピエラヌンツィやファウスト・フェレイオロなど,イタリアには甘美でロマンティックな曲を生み出す土壌があり,この盤も彼等ロマンティストの流れに位置する作品。この手のトリオ盤を愛好する方なら,すんなりと聴いていただけるのではないでしょうか。ジョン・ホーラーの『ロスト・キーズ』を彷彿させる室内楽的で慎み深い響きが好ましい一枚です。

★★★★1/4
Michael Wolff Trio "Jumpstart" (Jimco : JICL-89636)
pinocchio ballade noir cannonblues little M fall shades of gray nefertitti jumpstart I fall in love too easily all of you
Michael Wolff (p) Christian McBride (b) Tony Williams (ds)
これは国内でも評価されたCDですが,その後ぱったりと名前を聞かなくなり,ファンは冷たいというか,飽きっぽいというか。僅か数年でこれもアングラ盤の仲間入りでしょう。日本制作盤らしくブランド志向モロ出しの人選で悪かろうはずもありません。リーダーは´キГ硲涯覆皀轡隋璽拭雫覆鬚箸蠑紊欧詈佞蠅膿笋靴特里襪戮轡癲璽秒討。そうした趣味が物語るこの人の演奏は徹頭徹尾のハンコック狂。ハンコック特有のファナティックなスケール・アウトを何とか真似ようという,熱い憧憬の念がひしひしと伝わって参ります。ただ,彼が憧れれば憧れるほどに,演奏から匂い立つあの黒人臭がないのが,却って空々しく響いてしまうのは皮肉と言うべきか,哀しいというべきか。音楽を人種で聴くべきではないと仰る方も居ましょうが,印象主義を英国人がやるとシリル・スコットの如く猿真似になってしまうように,白人でありながら黒人よりも黒人になれるというのは過度に楽天的であり理想主義的ではないでしょうか。その意味で,自分がやりたいものと,自分が持ち合わせているものとの両方を,冷静に観察できることと言うのはやはり重要なことだと私は思います。 自分のルーツ,相手のルーツを尊重した上に本当の相互理解や音楽的普遍性はあると思いますし,そうした点をこういう盤は良く教えてくれます。とまれ,彼の熱意,好きなんだという思いが演奏の隅々にまで行き渡り,丁寧な推敲も相俟って,この盤を単なる猿真似の凡盤以上の作品に。それだけに色々考えさせるところの多い作品です。

★★★★1/4
Tardo Hammer "Hammer Time" (Sharp Nine : CD 1014-2)
gnid no problem reflections ski ball moment to moment I concentrate on you plan B time Celia you leave me breathless
Tardo Hammer (p) Dennis Irwin (b) Leroy Williams (ds)
「最近のピアノときたら,どいつもコイツもエヴァンスとキースのケツばかり追いかけやがって」とお嘆きの方。ぜひこの盤をお試しになっていただきたい。リーダーのタルド・ハマー氏は1975年にニューヨーク州立大学を卒業後ニューヨークを拠点に活動。ウォーン・マーシュ・グループの一員になったのを皮切りにチャーリー・ラウズ,ジョニー・グリフィン,アート・ファーマーら大御所の脇役を歴任。その壮々たる共演歴から,リーダー盤が一枚もなかったにも拘わらず「ニューヨーク・ジャズ地下の帝王」と呼ばれていたとかいないとか。この盤は彼が満を持して吹き込んだ初リーダー盤。強面の顔そのままの武骨なビ・バップ直球ピアノに趣味丸出しのバップ曲が居並ぶ様はただただ壮観です。脇役の2人はあのピート・マリンベルニ盤でお馴染み。演奏に適度なふくらみと丸みを与える巧い助演を展開しております。どっしりたっぷり音を膨らますヴァン・ゲルダーの録音芸術も冴え渡る。

★★★★3/4
Tommy Flanagan Trio "Sea Changes" (Alfa : ALCB-3907)
sea changes verdandi Dalarna eclypso how deep is the ocean see see rider between the devil and the deep blue sea beat's up I cover the waterfront relaxin' at camarillo dear old Stockholm
Tommy Flanagan (p) Peter Washington (b) Lewis Nash (ds)
ジャズが新世紀の扉を叩くのを見届けるかの如く,2001年暮れ世を去ったフラナガンは,バップ黄金期をリアルタイムで経験した生き証人の一人でした。バップ全盛の半世紀前,正規の音楽教育は敷居が高過ぎました。和声を伴うピアノの場合,これが持つハンデの大きさは計り知れません。バップ期のピアノ弾きの大半は,舌足らずな語り口と,たどたどしい運指で弾くことを強いられたのでした(逆にそれを「バップ・アクセント」と呼び,教化されぬ演奏として珍重する向きもあるが,一種のアナクロでしょう)。しかし,バップ弾きが皆舌足らずなわけではありません。ロネル・ブライトやハンク・ジョーンズらは,ピアノ本来のエレガンスを存分に生かした演奏をし,バップ・ジャズが一目置かれる機会を供したのです。フラナガンはそんな流麗なバップ・ピアノの代表格。バド・パウエルのいないバップ・ピアノは魅力がないでしょう。しかし,トミフラの存在がなければ。バップ・ピアノの語法はキワモノ扱いに終わり,今ほど普遍化されなかったかも知れない。ロリンズやトレーンのジャズ史に残る有名盤で彼が脇を務めたのは,決して偶然ではないのです。本盤は彼が亡くなる少し前に録音したもの。もともと天才肌ではない彼にとって,『オーバーシーズ』という突出した有名盤を持ったのは,ある意味幸福でしたが,その後に録音した多くのエレガントな秀作が影に隠れ,生涯に渡って彼を呪縛のうちに置いた点では,不幸でした。「Sea」が「Changeする」という標題に漲る秘めた決意。初期録音を遙かに凌ぐリリシズムと歌心で,『オーヴァーシーズ』超えを狙ったこの作品は,彼が生涯の最後に,かの有名盤を超えようと心血を注いだ秀作。過去の遺産に阿ることのない進取の気性によって,1990年代のバップ・ピアノとして呼吸するものへと昇華した見事な作品といえるでしょう。(2003. 10. 29 補筆)

★★★★
Brian Dickinson Trio "Brian Dickinson Trio"(Jazz Inspiration : JID 9304)
alone together blues in the closet I wish I knew good morning heartache long ago and far away all of you never let me go beautiful
Brian Dickinson (p) Kieran Overs (b) Jerry Fuller (ds)
カナダはトロントを拠点に活動するキース系ピアニスト,ブライアン・ディッキンソンがぽつりと残したリーダー作。サイドメンの2人は長らくリーダーの演奏仲間。トロントではご意見番的な存在であり,特にベースのキーラン・オヴァースはチャーリー・ヘイデンを思わせる懐の深いベースを利して,多くの客演をこなす人物です。リーダーともども技量はやや小粒。腰の据わった演奏は望むべくもありませんが,エヴァンス系の歌ものばかりを題材に,淡々とキース系のメロディックな単音ソロを紡ぎ上げていく演奏は,ガラス細工のように丁寧で好感が持てます。デイブ・ペック・トリオを好きな方なら,兄弟盤的にすんなりと聴いていただけるのでは。余談乍あっしのCDにゃイ縫丱阿あるんですが,何度お願いしても一向に交換に応じてくれない。ってゆ〜か返事すら来ない。ちょっとムカツク・・(八つ当たり)。

(2001.6.19 upload)