2000年代のジャズ vo. 14


★★★★3/4
Mike Holober "Canyon" (Sons of Sound : SSPCD016)
canyon Ansel's easel heart of the matter same time, same place roc and a soft place spin in so many words you and the night and the music stardust

Mike Holober (p) Tim Ries (ts, ss) Wolfgang Muthspiel (g) Scott Colley (b) Brian Blade (ds)
まるで一般受けしないにも拘わらず,どうにも外せない縁の下の力持ち的な役回りのピアニストが,どんなサブカテゴリの中にも出てくるから面白い。本盤の主人公マイク・ホロバーはまさにそんなピアノ弾きの一人。随分前にご紹介したアンディ・パーソンズとジーン・レヴィンの双頭コンボ『ファンドメンティア』に加わっていた人です。初リーダー作にも拘わらず,ご覧の通り腕利き集合。加えて,プロデュースをフレッド・ハーシュが買って出るこの事実。主人公のセンスの良さが,分かる人には分かることの何よりの証左と言えるのでは。リーダーはビンガムトン大学を出てハーパー・カレッジで修士号を獲ったのち,ニューヨーク市立大学の助教授も務め,フィンランド国立ジャズ楽団,ストックホルム・ジャズ楽団などの北欧系ビッグ・バンドに請われて作編曲もこなしている知性派。これがデビュー作ながら活動歴は1970年代終わりからと長く,1996年には自己のクインテットでヘネシー財団の最優秀賞を受賞しています。果たして,いわゆるブルックリン新世代流儀を咀嚼しながらも,クリス・チークやマーク・ターナーのようにロック色を押し出し過ぎない,しっとり控えめな変拍子メインストリーマーぶりに快哉。結構新しめの音が基調にも拘わらず,それらしい山師がかったところがまるで感じられない丁寧な仕立て上がりに,控えめな彼の人柄を見る思いがします。ベン・モンデールのくすんだ音色が如何にも適いそうな,水墨画の如く薄もやの掛かったギターの和音が背景を埋めて思索的な雰囲気を作り,柔らかくハスキーな脱力テナーがアンニュイにソロを吹く。適度にメカニカルで意外性を孕んだコード・パターンを的確に打ち出していくタイトなリズム隊。強者揃いの人選により,借景とフロント陣のコントラストは見事なまでに具体化されていると思います。掉尾の有名曲2曲は無くても良かった気はしますが・・いいレコードです。職人気質に仕立てられたこういう作品は,やっぱりちゃんと評価されていて欲しいですねえ。

★★★★
Riitta Paakki Trio "Enne" (Texicalli-Impala : 009)
Spikernikof Enne rantanplan Sir Dickson syli tarvo él mo sara toffee predator tienoo

Riitta Paakki (p) Ape Antila (b) Mikko Hassinen (ds)
3年ほど前,謎のフィンランド・レーベル【インパラ】から,ロック乗りのタイトなリズムと,パラパラ颯爽と回転するシャープなピアノをメカニカルに合体させたピアノ・トリオ作を発表し,鮮烈な印象を残したリータ・パーキ女史の新譜が出ました。内容云々の前に,このジャケット見るまで,リーダーが女性とは知らなかった事を告白しなければなりません。前作は変拍子多投でこそないものの,ロック風味のリズムに乗せて,北欧版チック・コリアみたいなピアノを弾いていたと記憶するんですが,本盤ではかなり雰囲気が変わっているのに吃驚。タテノリ度の高かったリズムはシャッフルが入ってジャズ度が増し,楽曲もバップ風味,モード,ロックからフリーまでバラエティ増幅。何よりピアノが変わりました。フレーズはメロディックになりましたし,タッチにはトミフラ風の円味が加わり,コロコロと良く転がるようになりました。左手のみマニュエル・ロシュマンで,右はトミフラ・・と形容すると良いでしょうか。個人的には前のメカニカルなピアノ路線でそのまま進んで欲しかったのですが,逆に言えば間口を広げた格好。アルバム全体の仕立ての良さは前作より上だと思います。お顔立ちはちょっち和田アキ子似ですけど,ずっと可愛らしいですし,そろそろ日本でも人気が出て欲しい気がしますですねえ。ところで,インパラといえば,気になるのが弟分ペッシ・レヴァントの新譜。個人的には大化けすると予言しているだけに,首が千切れそうなほど長くして新譜を待ってるんですが・・まだかな〜まだかな〜。こうして姉貴も出したんですし,そろそろ一発お願いしますう。

★★★★1/4
Stefano Battaglia Trio "The Book of Jazz vol.2" (Symphonia Odyssey : SYO 01708)
Rosetta lazy bird the opener Mabel unquity road/unity village quasimodo Tabarka up jumped spring smooch

Stefano Battaglia (p) Paolino Dalla Porta (b) Fabrizio Sferra (ds)
似たような名前のピアノ弾きステファノ・ボラーニからは,今や大きく水をあけられてしまった感の漂うステファノ・バッターリャは1965年ミラン出身。1988年,ジャズ・ミュージック誌上で最優秀新人賞の受賞歴があるほか,1997年には国立ブリュッセル放送協会の若手芸術家賞を受賞。1988年からシエナのワークショップで教鞭を執っている人物です。本盤は2001年にそのシエナで録音された,彼のスタンダード演奏プロジェクト第2弾。2枚目が出た・・ということは,前作がそれなりの評判を得たと言うことなのでしょう。基本的な演奏スタイルは変化なし。ややか細い打鍵ながら現代音楽を消化した思索性の高い和音と,隙間をたっぷり使ったピアニズムで,マイナーなスタンダードを低温貯蔵していく。類似の企画として,キースのスタンダーズとつい比べたくなりますが,ここで演奏されるスタンダーズが,あくまで演奏家たちの書いたスタンダーズであることは留意しておく必要があるでしょう。その真意はともかく,キースの二番煎じではないぞという,彼らなりの拘りやスタンスが反映されているのでは。前作に比して,唯一変わった点があるとすればスペース・ジャズ・トリオ出身の太鼓。意識してかどうか,明らかにブラシが主体のバッキングになり,脆いリズム感を出さぬよう気を配っている。名を捨てて実を取ったことで,もっさり気味だった太鼓のアラは霧散され,トリオとしてのまとまりもだいぶん良くなりました。記憶が確かなら,小生は前作のレビューで,最も知名度が上の筈の太鼓がバタついていて,馴染みであるピアノとベースのハネムーンを邪魔してるようだ的なことを書いた気がしますけれど,やっぱり彼(ら)にも思い至るところがあったんでしょう。キースのスタンダーズは2集で打ち止めになってしまいましたので,ちょっと心配。二番煎じと誹られぬためにも,ぜひ第三集を作ってくださるよう切望します。

★★★★1/2
Olivier Hutman Trio "Five in Green" (RDC : REF 6401252)
papa charles blues no lies? three for Vee five in green slow waltz grepsn party a gal in Calico I concentrate on you

Olivier Hutman (p) Thomas Bramerie (b) Bruce Cox (ds)
ルイジ・トルサルディやリシャール・ロウら仏人のハード・バップ作でちょくちょく脇にその名をお見かけするオリヴィエ・ユトマンは1954年,パリのブローニュ=ビアンクールに生まれた中堅。実は,1978年にガーナ都市部の大衆音楽に関する論文で民俗学博士号を獲ったインテリさんなんですが,それに拘ることなくさらりと身を転じ,1983年にはトニー・ラベソン,マルク・ブルトーと組んで,あっさり初リーダー作『6つの歌』をものにしました。そんなはしこさが示す通り,軽妙で人懐こい,全天候型のピアノ・スタイルが彼の持ち味です。当然ながら得意分野は伴奏者。アメリカ勢だけとってもクラーク・テリー,ジェイムス・ムーディ,ペッパー・アダムス等の長老勢から,アントニオ・ハートやマーロン・ジョーダンに至るまで悉くお手合わせ済み。映画音楽も手がけ,ニューヨーク・フィルに委嘱までされている。ただ,間口の広さが災いしてか,3枚目のリーダー盤『ブルックリン8』(1997)はマッコイ奏法の演奏,垢抜けないリフ・チューン,民族音楽テイストを加えた編曲がちぐはぐにミックスされ,散漫な作品に留まっていました。反省もあったのかも知れません。6年ぶり4作目となる本盤は,初心に返ってトリオ編成に。持ち前のオーソドックスかつ間口の広いピアニズムへと環流しました。瀟洒な楽曲は,何気ない風を装いながらさりげなく練られている。演奏の基調は,音数を削ったコロコロと良く転がるトミフラ的なピアノ・タッチの右手と,適度にモーダルな左手。そこにエヴァンス,ウィントン・ケリー,ピーターソンの薬味を,オーソドックスな核を崩さぬよう案配しながら添えていく心憎いもの。頻出する手癖がクサ味を与えてB級を主張する。脇役で重宝される彼ならではです。太鼓はあのピーター・マドセン盤でお馴染み。目立たぬながら曲想を壊さぬシュアな仕事が光ります。

★★★★1/4
Andrea Beneventano Trio "Trinacria" (Alfa Music : AFMCD106)
I remember you lua branca he was great trinacria lines for RG soul eyes Traversi's blues aniram my one and only love gippo's groove

Andrea Benebentano (p) Pietro Ciancaglini (b) Pietro Iodice (ds)
リーダーは聖チェチーリア音楽院ピアノ科を経てレスピーギ音楽院に進み,ジャズを学んだ御仁。スティーヴ・グロスマンやジョン・ファディス,ゲイリー・バーツ,ステファノ・ディ・バティスタらの脇を務めて名を上げたようですが,実際はローマ音楽大学やテスタッチョ大衆音楽学校で教鞭を執る教育者が本職で,活動歴は専らサイドメン。録音では専らピネ・サルスティとか,ミモ・カフィエロなどという,失礼ながら私も名前を聞いたことのないプレーヤーの脇ばかりを固めておいでです。リーダーのピアノは,伊ロマン派流儀でエヴァンスを適度に消化してはいるものの,バップ・ピアノを基調に据えたオーソドックスなもの。左右の腕の絡みやゴツついたタッチなどを聴くにつけ,基調の部分ではバリー・ハリスとハンク・ジョーンズ(ただし後年)から美味しいところを半々ずつ切り取ってきたようなイメージでしょうか。そんな田舎の頑固オヤジめいた飾り気のないロマンティシズムに,彼の作曲センスがさらなる彩りを添える。牧歌的な香りのする伊ロマン派流儀で書かれた楽曲群は,都会暮らしの伊首都圏ジャズメンのように洗練されたものではないにせよ,丁寧な推敲が施され好ましいカラーを備えています。惜しむらくは,レーベル同様,演奏陣が全員小粒なことでしょうか。例によって例の如く太鼓は,バタバタした粗いドラミングの典型的マイナー症候群罹患者。ピアノもリズムが硬く,スムースなスイング感を期待するとがっかりするかも知れません。少々技術的に不器用でも,丁寧に作られたトリオなら愛せますという方に。

★★★★1/2
Charles Loos - Weber Iago "O Sonho e O Sorriso" (Igloo : IGL 160)
os laços e a paz sencilla buddy sol cigano o sonho e o sorriso parfum latin peine perdue passiflore

Charles Loos, Weber Iago (piano)
昨今,国内盤が出て知名度も上がってきたシャルル・ルースは1951年ベルギー生まれ。1972年にバークリー音楽院へ留学し,故国を中心に脇役稼業の傍ら,1990年代以降はリーダー作も精力的に録音しています。1997年にジャンゴ賞の受賞経験があるほか,自身のコンサートで2度に渡る表彰経験を持つなど,彼の地では一足早く,1990年代後半には評価を確立しました。本盤は,彼が2001年に発表したピアノ・デュオ作品。購入の目的は当然,ルースのほうだったんですが,驚いたのはむしろ対するウェーバー・イアゴの,まるで引けを取らない作編曲センス。主役のお株を奪い,イ任△辰気衂限蟠覆留匹鮠,措茲襪曚標事なもので,インディアン風の怪しい風貌とは裏腹の叙情家ぶりに快哉を叫びました。彼はブラジル出身で,1987年に渡米。西海岸を拠点に活動するも,専ら他人のバンドの編曲など裏方稼業ばかり。ようやく長い下積みを買われ,2001年に初リーダー作を録音させてもらったばかりでした。しかし,実は本国ではリオ音楽院管の首席ピアノだったこともあるクラシック弾きで,1973年,74年の2年連続でアルフレド・メジーナ国際に優勝,さらに1974年にはアニタ・サレス国際オルガン・コンクールでも優勝した俊才。成る程この才気。移民にも拘わらず編曲で飯を食えるわけですよ・・。演奏は全編,臆面抜きに甘美なエヴァンス志向。映画音楽のように美しく詩情に富んだ自作曲と,趣味の良いピアノの饗宴。それ系の音に目がない方は目尻が下がって仕方なくなること請け合いです。

★★★★3/4
Antoine Hervier Trio "My Queen of Heart" (DJAZ : DJ 547-2)
jubilation my queen of heart tropic bop I fall in love too easily Vernell's party conception C.T.A. Cheryl lush life bouncin' with Bud Ray's idea hot house

Antoine Hervier (p) Guillaume Souriau (b) Sangoma Everett (ds)
アントワーヌ・エルヴィエはフランスのピアノ弾き。シャトルロー音楽院とトゥール音楽院を出てマノロ・ゴンザレスとサミー・アブナイムに師事したのち,1996年にトリオを結成(当初ドラマーはシャルル・ベロンツィだったとか)。その後はミルト・ジャクソンやスティーヴ・グロスマン,デボラ・ブラウンなどの脇を固めて頭角を現してきました。本盤は彼の初リーダー作ですが,ジュニア・マンスの,忙呂泙辰謄僉璽ーの─ぅ丱匹劉,レイ・ブラウンのにタッド・ダメロンのと,見事なくらいにバップ一色。そこへ白一点?白い中和剤のΑ淵献隋璽検Ε轡▲螢鵐虻遏砲入って,そのまま音になったこの分かり易さ。下手な小細工を労することなく,バッピッシュな楽曲を快刀乱麻に料理する痛快さ一本で勝負の心意気が持ち味です。ところで・・アントワーヌ・エルヴィエってどっかで聞いたような気がしません?そう,少し前に澤野商会から出た「アントワーヌ・エルヴェ・トリオ」。まるっきりそっくりなお名前で「まさか同じヤツ?」「誤植?」・・色々調べてみましたが,やはり別人でした。実は,今年に入った頃から気になっていたこのCD。今まで買わなかったのは,これが原因。いや,良かったです。というのも,くだんの澤野盤。某氏が「今年の上半期で間違いなくベスト」だと太鼓判を押していたにも関わらず,私にはどうにも甘ったるくてヌルくて。まるで面白くなかったからです・・。

★★★★1/2
Gösta Rundqvist Trio "Bernhard's Boat" (Sittel : SITCD 9234)
spiral if I should lose you vågspel kroksta blues Bernhard's båt trilobiten dansar dinolog breakthrough sofrosyne

Gösta Rundqvist (p) Filip Augustson, Yasuhito Mori (b) Frederik Rundqvist, Jukkis Uotila (ds) Toots Thielemans (hmca)
スウェーデンのピアノ弾きヨスタ・ルンドクヴィストは1945年,北部イッゲスンドの生まれ。14才で演奏活動を始め,苦労時代にはユーディクスバール(Hudiksvall)で就職して生活の糧を得ながら,演奏活動を続けたとか。1976年,演奏仲間ホーコン・レヴィンと共にサンドウィク・ビッグ・バンドに入団し,サンドヴィーケンへ移住。教職を務めながら10年間に渡ってバンド活動を継続したのち,自身のグループを持つようになりました。本トリオはオーパス3から出た『ツリーサークル』に続くもの。その前のアルバムが『アンティル・ウィ・ハブ・フェイセズ』。本盤の中身を一口に形容するなら,これらリーダー盤を時系列上に並べ,古い方から新しい方へと延ばした延長線そのまま。ピム・ヤコブスやトミー・フラナガンの傍系から,エヴァンス派の前作を経由して,かなり模範的な北欧叙情派ピアノへと変貌しました。確かにテクニック的にはやや小粒ではありますけれど,ご尊顔そのままに実直でデリケートなピアニズムは相変わらず。楽曲も良く推敲されていて,出来は手堅い。ダグ・アルネセンやイヴァー・アントンセン,ヴィグレイク・ストラースの流れがたまらないという方であれば,半ば予定調和的に興じ入っていただけるのでは。

★★★★3/4
Florian Ross Trio "Blinds and Shades" (Intuition : INT 3372 2)
soundcheck toss & turn ev'ry now and then: pause and think again getting there: is half the fun grande tristesse farewell bookend Julia bye bye blackbird goodbye

Florian Ross (p) Remi Vignolo (b) John Hollenbeck (ds)
ナクソスから2枚ほどのリーダー盤を出しているフロリアン・ロスは1972年生まれ。コローニュ音楽院でジョン・テイラーに学び,ビル・ドビンズ,ドン・フリードマン,ジム・マクニーリーらに師事したのち,1998年に初リーダー作を発表。どうやらケルンを拠点に活動しているようです。本盤はお世話になったナクソスを離れて初となる新譜。前半は西ドイツ放送,後半はドイツ放送の肝煎りを得て,2002年にケルンで録音された2音源を併録したものです。リーダーのピアノは,アブストラクトな右手のフレージングに,初期スタンダーズ好きを臆面もなくアピールする,硬いタッチとコード打ちのキース信奉者。いっぽうで,アルペジオに叙情性を絡めながらも,劇的な移調や,左手の充分に利いたメカニカルな変拍子など,作編曲面で当時代性を作っていく,メルドー・イデオロギーにどっぷり染まったスタイルが身上。なにぶんにも若いのでやや青臭いところもあるものの,技量は確か。キースからメルドー方向のベクトルを,グループ表現の精緻化から捉える視線は如何にも現代的で,単純なキース・フォロワーとは似て非なるもの。彼はナクソスにも,管弦楽を付帯したトリオ盤なんか作ってますし,フィリップ・ヴィレやスヴェンソン・トリオも充分に意識した上でのグループ本位なアルバム作りの姿勢は,明確な意志の上に成り立っていることを伺わせるものです。まだ未熟な部分は多々あれど,今後の深化への期待も込めて,こちらに。未知の領野(Terrae Incognitae)が悉く渉猟され,「発見・創造」への期待がすっかり困難になってしまった現代。既知の大地に安住して,残された厳しい岩壁へ取りついていく次代の冒険者に侮蔑や憐憫の目を向けるのはたやすい。しかし,敢えて困難に挑む彼らの試行錯誤が,結局は次代を切り開く縁になると私は信じます。彼らに暖かい視線を向け,愛でることに臆病でない方はぜひ御一聴を。余談乍ら本盤,2004年2月のステレオプレイ誌上で月刊最優秀アルバムに選出された模様です。

★★★★1/4
Moutin Reunion Quartet "Red Moon" (Nocturne : NTCD 337-NT98)
la mer' red moon Apollo 13th soraya jazz married taking off sailing through the clouds New-York silly elle aime stompin' at the savoy

François Moutin (b) Louis Moutin (ds) Baptiste Trotignon (p, ep) Rick Margitza (sax)
バイラークやミシェル・ピルクのトリオ作で注目を浴びたベースに,ミラバッシ・トリオの連作で一気に知名度を上げた太鼓。単独でも評価されている両雄が,フランスの若手では最大排気量なトロティニョンと,シルヴェン・ブフを迎えてムータン・リユニオン四重奏団を結成したのは1998年のこと。2002年には処女作『パワー・ツリー』を出し,一部でちょっとだけ話題になりました(ちなみに「リユニオン」のゆえんについて一言。ご兄弟は一度,1991年に組んで『パルクール』を録音しています)。本盤は,サックス吹きが代わって2003年に出た第2作。トレーン傍系からしなやかに解脱し,滑らかな深みのメロディストへと変貌したマーギッツァは今が旬。チーム構成員の技量はもう理想的でしょう。果たして,出てくる音は重量級。どんなテンポにも悠々と余裕を残し,ゆったり操縦席を包み込むような腰の据わったインタープレイは心憎いばかり。アドリブに関しては技巧,センスの良さともに充分5つ星クラスでしょう。しかしですねえ,ここまでバンドが理想的になってくると,どうにもご兄弟の作曲センスの冴えないのが目立っちゃうんですよねえ(笑)。えてして日陰に入ってしまうベースとドラムの特性からでしょう。彼らも,どうやったら自分達にスポット・ライトを当てられるか熟考する。で,範にするのが,バックも対等な扱いを受けているウェザー・リポート。音作りの上ではリズム隊のセンスと技巧が最大限に映えるブレッカー兄弟および弟ブレッカーのソロ盤を参照。それらの上に立脚してメカニカルなポリリズム・ジャズを目指している。テナーを交替し,ブレッカー的なプレイもできる元ヤング・ライオンを持ってきた人選からも,これは明らか。実際,最近はすっかり滑らかで音数を削ったメロディストだった彼のプレイは,近年例がないほどブレッカーを意識したものになってます。それだけに,本家に比べてどうにも垢抜けない意匠が惜しいの何の。フロントの二人(特にマーギッツァ)は有能な曲書きなのに・・。なまじアドリブ最強なぶん,隔靴掻痒の感が残るのはあっしだけじゃありますまい。ど〜しても自分たちで書きたいなら,ニューイングランド音楽院あたりで1,2年勉強してからにしませんか?

(2004. 6. 24)