2000年代のジャズ vo. 15


★★★★1/4
Robert Glasper Trio "Mood" (Fresh Sound : FSNT 153)
maiden voyage lil tipsy alone together mood don't close your eyes blue skies interlude in passing L.N.K. blues
Robert Glasper (p) Bob Hurst (b) Damion Reed (ds) John Ellis, Marcus Strickland (ts) Mike Moreno (g)
マーカス・ストリックランドやジェレミー・ペルトの周辺で既に名前を見せていたロバート・グラスパーが,満を持して初リーダー作を発表しました。彼はテキサス州ヒューストン生まれの25才。ジェイソン・モラン,エリック・ハーランドらと学友だったというヒューストン音楽学校を経て,マンハッタン新芸術院の学費全免生に。本盤で脇を固めた大物ロブ・ハーストの『アンリハースト』に加わるなどして頭角を現しました。ウィントン筋のハーストが絡む時点である程度予想可能な中身は,果たしてストリックランド同様の今風新伝承派。屈強なサイドメンに両脇をガードされて自在に転がるリーダーのピアノは,マルグリュー・ミラーやロニー・マシューズ辺りを消化した音楽性と,ケニー・バロンを思わせる丸いタッチが小気味良く,高い資質を裏づけるもの。ストリックランド盤で彼のピアノに瞠目した方であれば,十中八九満足していただけるのではないでしょうか。欲を言えば,キャリアの浅い彼は,まだ作編曲面が青臭い。´の大スタンダードは弄りすぎてますし,Δ亮意識過剰なカデンツァも無意味に長すぎる。ここぞの場面で,才気を披瀝したいのは人情。しかし,その色気を聴き手に気取られるようでは底が浅い。プロなんですから,これ見よがしの無粋は早々に卒業した方が良いでしょう。テナーに参加したジョン・エリスは,以前ご紹介したアンドリュー・アデルの『ステイツ』にも参加していた人物。その際にも「マーク・ターナー被れ」と申し上げましたが,よりNYコンテンポラリーな音の本盤を聴いて,思いは確信に変わりました。ターナーさん素敵な後輩が出来て良かったですねえ。

★★★★★
Steve Davis "Meant To Be" (Criss Cross : CRISS 1248 CD)
bright side choices as fate would have it lost in thought waiting Angelina blues across the world*
Steve Davis (tb) Jimmy Greene (ts, ss, fl) Xavier Davis (p) Dwayne Burno (b) Nasheet Waits (ds) Ray McMorrin (ts)*
1967年マサチューセッツ州ウースター生まれのリーダーは,当年とって37才。ハートフォード大学でジャッキー・マクリーンに見いだされてプロ入りしました。恩師マクリーンに可愛がられ,彼のグループで演奏する一方,アート・ブレイキーにも引き合わせて貰い,一時は次期メッセンジャーズに加わる話も持ち上がっていたとか。エリック・アレキサンダーやデヴィッド・ヘイゼルタインら元若手ジャズメンが集まって作ったハード・バップ再訪グループ,ワン・フォー・オールへの参加で知名度を確立。1995年発表の初リーダー作『ザ・ジョーント』から数えてクリス・クロス録音も6枚目となり,そろそろ次世代の育成に取り組む余裕も出てきた様子。本盤では,これがデビュー録音というマクモラン君をマクリーン経由で引き入れています。そんな余裕が示す通り,内容は安定したいつも通りの今風ハード・バップ。保守中道型の典型,大いなるワン・パターンというべきものです。ますます恰幅の増したリーダーのトロンボーンは,いっそう音が柔らかくなり,カーティス・フラーに似てきました。しかし本盤を素晴らしいものにしたのは,デイヴィスに請われて集まった共演陣。調律の甘いピアノにもめげず「ジョエル・ワイスコフですか?」と見紛うほどの端正なピアニズムとコード打ちの妙を見せるピアノに,ますますジョーヘン化して安定感の増したテナーが絡み,いつもの下地にワイスコフ一派のカウンター・パンチを当てている点は見過ごせませんし,輪を掛けてリズム隊2人の腰の据わり具合が素晴らしい。シャープな斬れがあり,なおかつドスが利いている。本盤のナシート君は,ブライアン・ブレイド並みにいい仕事をしているんじゃないでしょうか。リズム隊を聴くだけでも,充分に買う価値はあります。ハードバップ好き必携盤。

★★★★1/4
Thomas Clausen Trio "My Favorite Things" (Stunt : STUCD 01242)
leaves Stella by starlight over the rainbow my favorite things Teqora jasmine deep in my heart ballad for Bley things you are alone 2 if you are but a dream playtime
Thomas Clausen (p) Jesper Lundgaard (b) Peter Danemo (ds)
恐らくデンマークの叙情派としては,かなり古参の部類に入るクラウセンは1949年生まれ。王立デンマーク音楽院でピアノと作曲を学んだのち,コペンハーゲンのジャズ・クラブ『カフェ・モンマルトル』のハウス・ピアニストになり,マクリーンやデクスター・ゴードンらの渡欧組と数多共演した実績の持ち主です。伴奏者として名を上げた事実が物語るように,彼は固定スタイルの持ち主というよりは,割と器用に何でもこなすタイプ。その後1970年代はフュージョンに転び,最近はラテン音楽に傾倒するなど,本人も半ば確信犯的にやっているきらいがある。多く録音を残している割に今一つ話題に上らないのも,そうした器用貧乏なキャラクターが災いしているのでしょう。彼は長いキャリアのうちに2度,レギュラー・トリオを組んでおり,このトリオは3度目(ちなみに一度目はニールス・ペデルセン,アーゲ・タンゴーと1979年から1983年まで,二度目はマッズ・ヴィンディン,アレックス・リールと1987年から1996年まででした)。本盤は彼らによる初めてのトリオ録音で,2001年に吹き込まれたもの。エヴァンスを消化した,オーソドックスな美意識の光る内容です。分けても,叙情性と知性溢れるミディアム以下の演奏センスは独壇場で,オリジナルの作曲センスも高い。充分に和声を肉付けしたΔ藁匹ぐ嫐で後年のデイヴ・マッケンナを思わせますし,ポール・ブレイの頽廃的な審美主義ピアニズムに捧げたと思われる┐嶺覆蠅鯊咾咾織螢螢轡坤爐砲蓮に眠ぅ坤譴靴討い覆ぜ駝の良さがありありと伺える。それだけに,ちょっと演奏技術の面で至らない点が見え隠れするのは勿体ないですねえ。運指のストロークが小さく乗りが硬いのは白人ピアニストに多い傾向ですから目を瞑るとしても,ちょっとミスタッチの多いのが気になります。テクニックよりも,趣味の良い作編曲とハーモニック・センスが光るバラード演奏で力を出すタイプでしょう。ヴィーナスさんは,こういうピアニストを使って,一連の吹き込みをすればいいのに,と思うのですが如何?

★★★★
David Friesen - Jeff Gardner "Grace" (Khaeon : KWM200203)
esquecendo blues for Hawk grace all the things you are change of heart preludio para Rita achados e perdidos dad's dream Mr. Vertico my funny valentine
David Friesen (b) Jeff Gardner (p)
多言を要しない重鎮フリーゼンは1942年ワシントン州タコマの生まれ。軍属として欧州へ渡った際にジョルジュ・アルヴァニタやテッド・カーソンと知り合ってジャズに傾倒。1973年にはポートランドに自分のジャズ・クラブを構えます。その後もカーソンやケニー・ドリューら渡欧組との共演で名を上げました。彼は録音に意欲的なうえ二重奏好きで,古くはグレン・ムーアと組んだ『イン・コンサート』(1975)があるほか,1993年には,様々な楽器の演奏家と吹き込んだ,その名も『トゥー・フォー・ザ・ショウ』なるCDもあり,2001年には地元のピアノ奏者ガリー・ヴァルサスと組んで『ウィズ・ユー・イン・マインド』も出しました。近年復活したジャズするお医者さんデニー・ザイトリンとは特に懇ろで,自分でDATを持ち出してCDを作ってます。本盤は,ベルギーのアントワープで1999年暮れに吹き込まれたライブ録音。今が熟れ頃なジェフ・ガードナーに目を付け,すかさず録るシビアな慧眼は,同じく二重奏好きのウォルター・ノリスと,ある意味良く似ている。さすがクラブ経営者。実際,ガードナーのプレイは,代表作『ミュージック・オブ・チャンス』から数曲を持ってきた選曲が物語る通り,近年の耽美主義モード横溢。見込み通りの成果を挙げている。分けても,20年前にも同じ独奏で録音したΔ惑鯣。モチーフが同じ分,数段深みを増した筆致が一目瞭然。透過された奏者の20年に,ジャズの真実が垣間見える。ところが本盤,どういうわけか録音が酷いの何の。まるで頭を抑えられたまま穴蔵に首を突っ込んでいるような,聴くも息苦しいレンジの狭さ。おまけにどう聴いてもモノラル録音。5万円のパソ子ですらWAVE録音できる21世紀のこのご時世に,こんな酷い集音のCDを平気で出すレーベルの神経が信じられません。C級以下の貧乏会社だからという言い訳は見苦しい。チロル在住のヘルマン・エルラッヒャーなる人物の制作したヘマージという銘柄をチョイスし,拘っているらしいベースの音も,酷い録音のせいでペロペロ。お二人さん・・一応それなりにビッグ・ネームなんですから,も〜ちょっとレーベルに我が儘言いましょうよ・・。折角の演奏も泣いてます。

★★★★★
Anders Persson Trio "In Person" (Spice of Life : SOL SC-0006)
in persson love is a many splendored thing everything I love nuages summer knows globetrotters what kind of fool am I so long, Frank Lloyd Wright fregatten milonga
Anders Persson (p) Yasuhito Mori (b) Magnus Gran (ds)
数年前に,リリカルなピアノ・トリオ作『アット・ラージ』で印象を残したアンデシュ・ペーションは,1958年グーテンベルク生まれ。1979年に生地の音楽院へ進学し,ジャズ・ピアノと編曲法を学んで1983年に卒業しました。日本で名前が知られるようになったのは最近ですけれど,現在のトリオで『アット・ラージ』を発表する前にも,2枚のカルテット録音を残しており,アンデシュ・ベリクランツやボブ・バーグなどのサイドメンとしても活動。教育者としても1987年からインゲスンド音楽院で,1994年からオレブロ音楽院で,1997年からはノドルドジスク音楽院でそれぞれピアノ科教員として奉職。もう実績の上では立派に中堅の部類に入るでしょう。北欧の弾き手の多くがそうであるように,彼のピアニズムも,基調はキース・ジャレット。しかし,彼の場合は,いわゆる北欧系のピアノ弾きに比べて,ずっとオーソドックス。原メロを大切にした,よりメロディックなピアニズムは破綻がなく,素材を選ばず実に安定感豊か。ラーシュ・ヤンソンやヤコブ・カールゾン,エスビョルン・スヴェンソンらご当地の有名人が,みな基本的に自作曲をメインで録音するのに対し,いつもスタンダードを折半して構成するアルバムの体裁を見ても,この人の穏健で中庸なアプローチはご想像いただけるのではないでしょうか。本邦初お目見えとなった本盤は,森泰人,マグヌス・グランといつもの顔触れによる3枚目のトリオ作で,2003年録音。単音主体の右手が織りなすメロディアスな主旋律と,いかにも北欧ジャズメンらしい凝った和声のコンビネーションで,音数控えめにしっとり歌う丁寧な演奏は,このアルバムでもほとんど不変。しみじみと良いトリオです。『アット・ラージ』を気に入った方であれば,殆ど違和感なく興じ入って頂けるのではないでしょうか。

★★★★3/4
Najponk Trio "Autumn in New York" (Cube-Metier : MJCD 2318)
Mr.beautiful back at the chicken shack if I fell dreaming dream for two Nine Eleven 2001 harlem waltz autumn in New York girl of my dreams in the groove I'll remember 2st May
Jan 'Najponk' Knop (p) Petr Dvorský (b) Martin Sulc (ds)
リーダーは,カプースチンの生地としても知られるゴルロフカで1972年に誕生したウクライナ人。ナジポンクはあだ名で,本名はヤン・ノップさんというそうです。5才の時,チェコに移住。彼は9才でプラハ音楽院へ進学し,1990年に自己のトリオを結成してプロの道へ進みます。彼の名が知られるようになったのは,恐らく1994年にジョージ・ムラーツ・トリオのサイドメンに抜擢された頃からでしょう。その後の活動は順風満帆。翌1995年にはオストラヴァ国際ピアノ・コンクールで優勝。チェコ・ジャズ協会から1998年度の年間最優秀グループに選ばれ,1999年にはトリオ名義の第1作がカレル・ヴェレプニー賞,2001年にはチェコ大衆音楽協会のスラティー・アンデル賞を獲得しました。本盤は彼らのトリオ名義で4枚目にあたる新譜。過去2枚がいずれもハルモニア誌で年間最優秀ジャズ・アルバムになった名うてのトリオだけに,まだ30そこそことは思えないほどシュアな演奏にびっくり。ウィントン・ケリーの影響が一聴明らかな右手のシングル・ノートと,ボビー・ティモンズやジュニア・マンス界隈に色目を感じさせるグルーヴィな手癖,そこに仄かなモードの知性を絡めていくオーソドックスな今風バップ・ピアノ。彼らより少しテクは小粒かも知れませんが,ドイツのティロ・ワグナーやスウェーデンのヤン・ラングレン(ただし一昔前の)と同じベクトルに位置する,小粋で上品なピアノ・トリオをお望みの方にはお薦めいたします。

★★★★1/2
Alexi Tuomarila Quartet "02" (Finlandia : 0927-49148-2)
tribu shades of gray noaidi sacrament goodbye little godfather solar esperanto for example bone-yard jive*
Alexi Tuomarila (p) Nicolas Kummert (ts) Christophe Devisscher (b) Teun Verbruggen (ds) Samuli Edelmann (vo)*
リーダーは1974年フィンランドのポーリに生まれたピアノ弾き。4才からスズキ・メトードでピアノの英才教育を受け,1980年から1992年までエスポー音楽院で,さらにヘルシンキに出てオウルンキラ大衆音楽大学で1994年まで学んだのち,ベルギーへ渡って王立ブリュッセル音楽院でディーデリク・ウィッセルズ,ナタリー・ロリエに師事。1994年に修士号を取得しました。日本ではまだ無名な彼も,欧州では若手の俊才として早くから注目されており,1993年のフィンランド若手作曲コンテスト2位を皮切りに,1997年にはベルギーの第19回ヘイルアート国際ジャズ・コンテストで最優秀若手グループおよび芸術振興賞を受賞。翌々年の第21回大会では優勝するとともに最優秀ソロイスト賞を受賞し,2001年にはモナコのモンテカルロで開かれた第3回国際ジャズ・ソリスト競技会で一位になりました。本盤は彼が率いる4重奏団の第2作。前作と同じメンバーによる吹き込みで,スタイル的にも大きな変化はなし。リーダーはスタイル的にも音楽的にも,ヤコブ・カールゾン辺りに近いベクトルを進む。2作目ということも手伝って音楽性も幾分定まり,グループも一体感を増してきたようです。本家カールゾンに比べると,やはり若干脇役の弱さは否めないところがあり(特に太鼓),リーダーがやや浮き気味との感は前作同様残る。個人的には一人図抜けたピアノを弾き,卓越した作曲力を披瀝しているだけにちょっと惜しいですか。この辺りで,腕利きのサイドメンと対流試合をして欲しいと思うんですけど・・いかがなもんでしょう?

★★★★1/2
Manusardi - Santoro - Bergonzi - Lewis "Within" (Soul Note : 121281)
I will be white black there is no greater love I wish I knew blue beard charlot freams Laura since grape stone laura: take 2

Guido Manusardi (p) Dave Santoro (b) Jerry Bergonzi (ts) Victor Lewis (ds)
1960年代から盛んに外遊,イタリアのジャズ・ピアノ界を代表するベテランに成長したマヌサルディが,元ヤングライオンのベルゴンツィと組んだカルテット作品です。原盤は2002年録音。既にかなりのご高齢と思われるマヌサルディですが,本盤を聴く限りでは相変わらず意気軒昂。確かに,時折ミスタッチが出るところはあるものの,並みのピアノ弾きを遙かに凌駕する技巧は健在。ときにマッコイ・タイナーを絡めつつ,ピーターソン・ライクな節回しで明快に転がるスタイルは,良い意味で現代イタリアのジャズ・ピアノにおける一つの典型をなすもの。冒頭,急速調の,任蕨討亮紊気魎兇犬燭發里痢ぅ潺妊アム・ファスト・テンポの以降はバランスも取れ,演奏はかなり出来が良いです。いっぽうベルゴンツィはややリッチ・ペリー風に偏倚しつつも,やはりジョーヘン風。若獅子だと喧伝されていた頃より数年,こちらも良く力の抜けたいい音が出るようになりました。数段巧くなりましたねえ。往年,日本盤でもてはやされた元サムシンエルス,ブルーノート系列若手テナーマンは,皆さん後で苦戦しているようですけれど,マーギッツァにしてもこの人にしても,着実にオリジナルなテナーマンに成長しています。皆さん,もっと聴いてあげましょう。

★★★★★
Gianni Capiello Trio "Paseada con Bruno" (Splasc(h) : CDH 754.2)
forse con quelle gambe e la chiamano estate cosa hai trovato in lui il problema dei piccoli è il più grande baciami per domani martinsamba Jessica feelings
Gianni Capiello (p) Pietro Ciancaglini (b) Mauro Beggio (ds)
ブルーノ・マルティノは1925年生まれのジャズ・ピアノ弾き。ピエロ・ピッチオーニ楽団のピアノ奏者として活動したのち,1947年に自分の楽団を組んでデンマークへ渡り,彼の地ではナポリ民謡をジャズ編曲して人気者に。帰国後はカンツォーネを題材に数多くのオリジナル曲を書いたほか,自分でも喉を披露。ジャズ作曲家として人気を博しました。「マルティノって誰?」と仰る方も,今やスタンダード化しているの「エスターテ」はご存じなのでは。演奏するジャンニ・カピエロについては浅学のため良く知らないのですが,1999年に『インセンディ・マリーニ』で世に出た若手。本盤でも脇を固めるマウロ・ベッジョはエンリコ・ピエラヌンツィのトリオで活躍していた人物ですから,恐らくは彼の肝煎りで世に出た新人さんでは。2001年発表の本盤は,2枚目のリーダー作。標題で名前の出てくるブルーノ・マルティノへのトリビュートを標榜し,彼の作品を中心に選曲。マルティノは2000年6月12日,ローマで亡くなっていますから,恐らくはこの企画も彼への追悼の意味が多分にあってのものでしょう。欧州もの全般に見受けられる傾向ながら,このトリオもやっぱりサイドメンは僅かに小粒。しかしながら,リーダーのピアノがそれを補って余りあるほど良いのが美点。後期エヴァンスにハンク・ジョーンズを趣味良くミックスするオーソドックスなスタイルで,同じイタリア人で喩えるなら,ルイジ・マルティナーレやマルチェロ・トノロを少し快活にしたようなタイプですか。メロディックな右手の単音フレーズで外連味なく歌う演奏は,なるほどこういう歌ものにはぴったりなのかも知れません。

★★★★1/2
Robert Hurst "Unrehurst" (Bebob : BR-1111)
Mr. Thomas bu waynea unrehurst April foolproof unflurgenized colorations Dr.Bleuss thowed
Robert Hurst (b) Robert Glasper (p) Damion Reid (ds)
少し前に初リーダー作を発表したロバート・グラスパーといえば,マーカス・ストリックランドのグループで新主流派を消化した軽快なピアノを弾き,印象を残した新鋭。そのストリックランドと並び,早くからグラスパーを見初めて応援していたのが,元ウイントニアンのロバート・ハーストです。本盤は2000年初頭に録音されたハースト名義のトリオ盤。△縫轡隋璽拭爾量樵阿隠れていることが示す通り,現代NYのメインストリーマーらしい,オーソドックスな新主流派イディオムのピアノ・トリオです。まだ殆どプロとしてのキャリアは浅かったグラスパーですが,既に往事のマルグリュー・ミラーを思わせる端正なピアノ・タッチと,メカニカルで闊達な運指技巧で淀みないソロを披露。もともと演奏レベルは新人離れした高さを誇っているうえ,ハーストの睨みが程良く利いて,青臭いナルシシズムも適度に抑えられたお陰か,グラスパー単独名義のリーダー盤『ムード』よりも,まとまりは良いと思います。にも拘わらず,どういうわけか全体がバタバタと聞こえる。一体なぜかと思って良く良く聴いてみましたら,どうも太鼓がバタついている。『ムード』ではシャープに切れていた彼が,一体どうしたことかと思ってさらに耳をそばだたせて見たところ,どうやら原因は録音環境。どんな機材なのかは不明なままですが,版元のビバブ・レコーズの自社スタジオで録られた模様。せっかく一線級の演奏でしたのに。安物の機材で音の肌理が粗くなり,太鼓はバタバタ,ベースはカスカスに録れちゃったのは勿体なかったですねえ・・。

(2005. 2. 8 USW Standard Time)