独断と偏見で選んだ「空飛ぶモンティ・パイソン」傑作スケッチ(長いです)

男の生きがいは、公衆の面前で裸になること
一人の紳士(テリー・ジョーンズ)が海岸で水着に着替えようとするが更衣室が見当たらない。仕方なく物陰で着替えようとするが行く先々で邪魔が入り恥をかきながら着替える場所を求めて移動する。変態扱いされ、ヒドイ目に遭いつつも頃合いの薄暗い建物に逃げ込んだこの紳士、すっかり安心してまた服を脱ぎ始めたがそこは・・・
ビジュアルに訴えるサイレント映画スタイルのこのスケッチ。キートンやチャップリンを彷彿とさせるスタイルでセンス抜群です。でもそこはパイソンズ、この紳士が最後に入った建物は場末のストリップ劇場だったというオチ。あやしげなストリップ音楽が流れる中、ヤケになったか目覚めたのか知りませんがすっかりその気になって踊りながら脱いでゆくこの紳士、妙に嬉しそうです(笑)。
テリー・ジョーンズは裸のオルガン奏者といい、このスケッチといい、やたらとヌードが似合う人で、本人も実は嫌いではないようです。

世捨て人・・・断崖に岩がごろごろした辺ぴな場所で、原始人のようにボロをまとった二人(エリック・アイドル&マイケル・ペイリン)の世捨て人が腰掛けて何やら熱心に話している。二人とも些末な世間の噂話にはさぞや嫌気がさし、ストイックな哲学論でも交わしてるのだろうか?どっこい、そこらのオバサンまっ青の世捨て人界の噂話に花が咲いちゃってる。しかもなんだか小指を立ててオカマ言葉。あまりのヒドさにとうとう強引な大佐(グレアム・チャップマン)にスケッチをやめさせられ、どこかに追っ払われてしまう。
エリック・アイドルのオカマしゃべりが最高。煩悩から逃れようと宗教に走る人、山にこもる人、いろいろですが結局皆さんこんな風に下世話になってしまうんでしょうか?

乱視のキリマンジャロ登山家
登山家のジョージ・ヘッド卿(ジョン・クリース)の事務所にキリマンジャロ登山隊に参加すべく面接にきた青年(エリック・アイドル)。ところがこのヘッド卿、何でも二つに見えてしまう体質らしく、二人(一人だってば)の青年達に握手を求めたり、「君たち二人の自己紹介を」とか「キリマンジャロの二つの頂上(だから一つだってば)に橋をかけるのが今回の目的だ」とか、全てでたらめ。しかも登山の知識は全くなく、「登山家」って言葉を辞書で調べて「登山、登山、登山家・・・山登りをする二人の男か、ふむふむ。」・・・青年は不安を募らせてゆく。
貴族を馬鹿にしたパイソンズらしい名スケッチ。最後にはチャップマン扮する山男に事務所をすっかり破壊されてしまう。クリースの演技が光っています。

オカマの床屋〜ランバージャック〜
町の床屋(マイケル・ペイリン)のもとに紳士が機嫌良く散髪に訪れた。だけどなんだか様子がヘン。そう、この床屋、実は散髪恐怖症。お客をかみそりやハサミで切り付ける恐怖に脅え(既に前科はあるららしい)結局散髪できずに紳士に泣き付く情けない奴なのだ。彼の本当の夢は実は「森の木こり」になる事だった!そしていきなり白衣を脱ぎ捨て腕まくりをしてガールフレンドを小脇に抱え、この床屋は「木こりの歌」を歌い出すのです。コーラス隊はカナダの森林警備隊(写真右)。「おいらは陽気な森の木こり、昼は木を切り、夜は寝る。水曜日にはスコーン買って・・・」さわやかな歌である。ところが歌い進むうちにだんだんと歌詞が怪しくなってゆく。「木を切って、スキップに押し花、女装してバーをうろつくの♪」森林警備隊にも、恋人にも見放されてしまうこの男。当たり前である。
マイケル・ペイリンの独壇場。アブない床屋ぶりといい、目をギラギラさせて歌う木こりの歌といい歴史に残る名演技と言っていいでしょう。コーラスの右上二人はパイソンズのクリースとチャップマン。これも笑えます。

人事異動〜飛び降り自殺でギャンブル〜・・・とあるオフィスビルの一室。二人のビジネスマン(クリース&アイドル)が机に向かい合い、事務仕事に精を出している。と、窓の外で誰かがビルから下へ続けざまに二人も落ちるのが見えた。なかなか気付かない同僚に「ほら、今二人も(するとまた一人落ちていった)、いや三人も落ちたんだから!」ようやく上では上役の人事が行われてるのを把握した二人。どうするのかと思いきや、「今のは〇〇だ」「あいつはゴルフが上手かった」などとのんきな会話である。次は誰が落ちるかで二人はなんと賭けを始め、「落ちろパーキー!」「ちょっと待てパーキー!」罵声を飛ばして夢中になり、仕事はそっちのけになっちゃうのです。
すごく好きなスケッチです。トボケた顔でブラックなジョークを飛ばすのがウマイこの二人。短いながらすごくキレててこれくらいの英語なら私も字幕を追わずに笑える範囲ですね(笑)。

警察署コント〜シリー・ボイス〜・・・とある警察署の受け付けで、一人の男が空き巣に入られたと被害届けを出しに来た。しかし対応した警官はキンキン声しか聞こえないという異常体質の持ち主。「もうすこしカン高い声でお願いします。」男は必死でキンキン声で「家にあった2千ドルが盗まれて・・・」と訴えるがすぐに警官の勤務交替の時間になってしまう。次の警官は「ゆっくり低い声」でしゃべらないと理解できない体質。そして「超早口」の上官が登場し、無茶苦茶な会話が飛び交う中、男は・・・
困り切った様子の男(テリー・ジョーンズ)と、彼を錯乱させるすまし顔の警官達のコントラストが最高です。特にエリック・アイドル扮する上官は上記全ての喋り方を4人に向って流暢に言ってのけるんです!すごい技です。

上流階級バカ決定戦
イギリスの全貴族の中の選りすぐりのおバカ達5人で繰り広げられる障害レースがアナウンスつきで始まった。参加者は全ていわく付きのバカ貴族。皆すごいバカ面で混戦が予想される。マッチ箱を並べた障害物越え、死んだウサギを縛り付け猟銃で至近距離から撃つゲーム、マネキンのブラジャー外し、とまだまだここに書くのもはばかられる内容の馬鹿らしい毒たっぷりのレースが続き・・・
5人それぞれの顔と容姿に注目。すごいアホです(笑)。これまた貴族をからかった傑作ですがオックスフォードにケンブリッジと、名門校を卒業した5人はかなり貴族達に屈折した感情があるようですね。アナウンスがレースを盛り上げ、会場は異常な興奮と声援に包まれて盛り上がっています。最後には自分で自分の頭を打ち抜いちゃった彼らの棺桶が表彰台に並べられ容赦はありません。

シリーウォーク〜バカな歩き方省〜
雑貨屋でタイムズ紙を買って出勤する背の高い紳士(J・クリース)。通りに出るや、長い足を振り上げ、見たことも聞いたこともない妙な格好(シリー・ウォーク)で官庁街(日本でいう霞ヶ関)を歩き始めた。着いたところは「バカな歩き方省」そう、彼は立派な中央官庁のお役人だったのである。省内では廊下をすれ違う同僚も、お茶を運んで来るOLもみ〜〜んなシリー・ウォーク!馬鹿歩きの補助金を申請に来た男性に、紳士はますます変な歩き方で部屋をうろつきながら、「うちも楽ではないんです。昨年は国防費を下回る予算で・・・」となかなか良い返事はしてくれない。
すべてのシリーズの中で、多分もっとも有名で、人気のある伝説的スケッチ。J・クリースの天才的でダイナミックなこのくねくね歩きは見る者を圧倒し、爆笑を誘います。お堅い人、エライ人はこのように、必ずパイソンズのコントネタにされ、こき降ろされてしまう運命なのです。

「嵐が丘」手旗信号バージョン
Eブロンテの小説「嵐が丘」は私も10代の頃読みましたが、何度か映画化されているようですね。パイソンズが映画化すると人妻キャサリンと恋人ヒースクリフの密会はなぜか遠くからの手旗信号の会話。くそ真面目な字幕が失笑を誘います。続いての「ジュリアス・シーザー」〜点滅信号編〜、「OK牧場の決闘」〜モールス信号編〜とドンドン怪しくなってゆきます。

ティミー・ウイリアムズの部屋
ティミー・ウイリアムズのモデルとなった人物は、当時英TV界では押しも押されぬ有名人だったそう。悩みを抱え、落ち込んだ友人ナイジェル(T・ジョーンズ)を待ち合わせの喫茶店で見つけたティミー(E・アイドル)は「わぁお♪ナイジェルじゃな〜い?会えてスーパーうれしいわ♪」と超業界ノリで迎え、相席に自分の取材記者は座らせるわ、店のオーナーから店員にまで「スーパー♪スーパー♪」と愛想を振りまき、果ては友達との歓談(?)の様子をVTRに収める始末。友人が恐る恐るお金の無心を切り出すも、当の本人は電話中で聞いちゃいないのである。エリック・アイドルはこういう浮ついたキャラが目茶苦茶上手いです。

戦場1914
第一次大戦中の英軍塹壕内では底をついた食料確保のため、5人の軍人のうちの一人が犠牲になるという過酷な選択をせまられる。言い出しっぺの少佐(G・チャップマン)はくじ引きでもじゃんけんでも負けてしまい、悔しまぎれに「死にたくないやつは両手を上げろ!」すかさず皆手を上げるが、既に戦闘で両腕を失った部下パドレ(J・クリース)にはあまりの仕打ち。自分が皆の食料になれば丸く納まるとすっかり自虐的になったパドレは・・・
須田泰成さん著のモンティ大全によりますと、このスケッチは実際にあった大戦中の実話(もっと悲惨)をもとにした戯曲「審判」のパロディだそうで、こんな感じの極限状態カニバリズムネタはシリーズを通じて何度か登場します。

美しく青きドナウ〜爆発バージョン〜
ビジュアル傑作スケッチ。のどかな英国の田園風景の中、オーケストラが指揮者のタクトのもと、ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」を演奏中。「た・たらったった〜♪たった・たった♪」と美しい演奏のもと、タクトに合わせて楽団員が次々に爆発してゆくというキッツ〜い一発もの。タクトを振る手のもう一方の手で指揮者がダイナマイトのスイッチをリズミカルに押しているのが遠目にもよくわかります。

フィッシュ・スラッピング・ダンス(魚のハリセンダンス)(videoclipはこちら)
まずはビデオクリップで本物のハリセンダンスをご覧ください。百聞は一見にしかず。J・クリースとM・ペイリンの息の合った一発芸です。
パイソンズのスケッチにはいろいろな食材がネタに使われています。なかでもここに出て来る生のお魚とか羽根をむしったニワトリといったものは失笑を買う格好の道具であると同時に人をぶん殴る凶器とみなされています。「フルーツ護身術」というスケッチではやはり凶器としてバナナをはじめとする各種果物が登場。凶器とは違いますが死んだ動物というのも格好のネタで、血まみれのアホウドリ、剥製のテン、死んだオウム(名スケッチ)など、あげてゆくとキリがありません。


SOSマザーグース号
冒頭、映画「タイタニック号」のモノクロ沈没シーン。一方豪華客船マザーグース号の船長室では沈んでゆく船から脱出するべく、何故かドレスを着込みながら船長がアナウンス。「みなさん、救命ボートには女性と子供を優先してください。」見ると船員たちもせっせとドレスや半ズボンに着替えているではないか。さらに入ってきた船員は「すみません、これしか見当たらなくて」とインディアンの格好。続いて宇宙服を着込んだ船員もやってきた。船長は「訂正します。救命ボートには女性と子供、インディアンと宇宙飛行士を優先してください。」・・・さらに悪のりしているうちに豪華客船マザーグース号は沈没した。

ガンビーのガンビーによる脳外科手術
上品な脳外科医のオフィスを訪れたガンビー(M・ペイリン)。「ア〜ロ〜、ドクター!ドクター?」と先生を探しながら部屋の備品をぶち壊す。しかし、やっと現れた脳外科医(J・クリース)もガンビーだった。
ガンビー(gumby)とはゴム・ブーツの事で右の写真のようにちょび髭に半ズボン、サスペンダー&ゴム長靴で頭にハンカチといういでたちのオツムの弱い名物キャラクター。フライング・サーカスでは度々登場しますが、このスケッチでは登場人物がみんなガンビー。頭痛がすると訴えたガンビーをオペする医者もはじめはまともだが、「メス」「髭」「ハンカチーフ」と身支度され、立派なガンビーに。ガンビーの麻酔係は笑気ガスのボンベで患者を殴りつけてるし、とにかくひどい話です。

訪問・軟体動物ドキュメンタリー
面白いTV番組がなくて退屈していた夫婦(T・ジョーンズ&G・チャップマン)の所に、出張TVドキュメンタリーがやってきた。「軟体動物の生態」を喋り続けてヒンシュクを買った出張アナウンサー(J・クリース)はTVを消されそうになって、あわてて話題を「軟体動物の性生活」に変更。これが夫婦には大受け。「好色な軟体動物の単純な頭の中はアノ事で一杯です。貝類の中で一番淫乱なカサ貝は婚外交渉が非常に盛んで、メスは岩にくっつく暇もありません」「強姦魔のホタテ貝の淫乱ぶりもハマグリにはかないません。」「バイ貝は生っ粋のホモ野郎で・・・」と興味深いドキュメンタリーに夫婦はすっかり満足。
G・チャップマンの女装が秀逸。長身のドレス姿で意外にお化粧がよく似合ってて美人。髭のお堅い少佐の時とはまるで別人です。

チーズ・ショップ
ギターの生演奏に合わせて古風なダンスを踊る男が二人。そんな奇妙なチーズショップに一人の紳士が図書館での調べ物に疲れ、空腹を耐えかねやってきた。ところがここは、客がどんなチーズを注文しようといっさい在庫のないトンでもないチーズ屋だった。
日本のTVコメディではまずありえないセンス抜群のスケッチです。むきになって知ってるチーズを並べ立てる博識ぶった客(J・クリース)とのらりくらりと客の注文をはぐらかす店主(M・ペイリン)の絶妙な会話が物悲しいギターのBGMとともに展開されるのですが、最初はダンスに好意的だった客も、店主とのやりとりにブチ切れて「その踊りをやめんかい!!こら!」と八つ当たり。人を馬鹿にした店主はあえなく射殺されてしまいます。

デニス・ムーア
怪盗デニス・ムーアはちょっとお間抜けな正義の味方。さっそうと現れては金持ちからルピナスの花(つまらん雑草です)を巻き上げ、貧しい家に分け与えます。役にも立たないルピナスばかり持って来るムーアに、貧民は怒り爆発。やっと金目の物を巻き上げる事に気付いたデニス・ムーアは・・・
"Dennis Moore, Dennis Moore, galloping through the sward,
Dennis Moore, Dennis Moore, and his horse Concorde.
He steals from the rich, he gives to the poor, Mr Moore, Mr Moore, Mr Moore"
軽快なコーラスに乗って、ギャロップで去ってゆくデニス・ムーアですが、間抜けな事ばかりするので、最後にはコーラスにも手を抜かれ、「ふんふんふーん♪」とハミングになってしまいます。

ビクトリア女王障害レース
実況競馬中継。日本でも○○宮杯なんてレースがありますが、これは出走が馬の代わりに全部ビクトリア女王というけったいなレース。「各馬一斉にスタート。ビクトリア女王ビクトリア女王、一馬身遅れてビクトリア女王、続いてビクトリア女王、追い上げるビクトリア女王・・・」と白熱した実況が続く。
質実でお堅い印象で知られるビクトリア女王が、太股までスカートをまくり上げて障害を飛び越え、ドカドカと競馬場を全力疾走する姿に失笑すること請け合いです。

さて、ながながとご紹介しましたが、これらは数ある傑作スケッチの中のほんの一部です。フライング・サーカスシリーズは'69年から'74年まで全4シリーズ続いたイギリスのコメディ番組です。この番組を自作自演したパイソンズはTVだけではなく、ライブに、映画製作にと多肢にわたる活躍をしています。このページがきっかけとなって、彼らパイソンズに興味を持っていただけたら、あるいは懐かしい思いに浸って頂けたら幸いです。(なお、モンティ・パイソン・フライングサーカス全シリーズはビデオ、DVDで発売されており、レンタルが可能です。映画のほうも、「アンド・ナウ」「ホーリー・グレイル」「ライフ・オブ・ブライアン」「人生狂想曲」etcとレンタル可能なものばかりですので、一度恐いもの見たさで借りてみては如何でしょうか。

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