
(シーザー、舞台上手から登場。女性たちの黄色い歓声に投げキッスで答えてから、何を思ったか演壇にドッカリと腰を下ろす。)
主催者「えー・・・オホン。演説中は腰掛けてはいかんよ」
(シーザー、顔色ひとつ変えずに座ったままの姿勢でジャンプ。そのまま演壇の上空に浮き上がって座ったままの姿勢で演説を始める)
「あー、おれの名はシーザー・ツェペリ。おれがこの苗字を名乗るようになったのはごく最近だ。
おれは小さいとき母をなくし、おやじはおれが10歳の時におれと兄弟たちを残し失踪した。
母親が早くに死んで短い結婚生活だったというのにおやじは子沢山だった。おれの精力絶倫なのは父親譲りかも知れねえ。(会場笑う)
おれたちはあっという間に親戚に父親が残した財産をだまし取られ、おれは性格が荒れてケンカに明け暮れ施設に入れられた。
その後、貧民街に暮らすようになってからは、悪の道をまっしぐらに堕落していった。ケンカ・・・盗み・・・強盗・・・放火・・・(会場ざわめく)
やってない犯罪は殺人だけだと書かれたが、婦女暴行や痴漢行為もやってねえ。オレはいつも女性を尊敬し、合意の上でしかヤッたことは無い。(会場爆笑)
まあそれでも相当のワルで腕っぷしだけは誰よりも強かった。そしてこの頃のオレはおやじを恨み、自分の家族をまったく省みなかった。
だからツェペリの姓を名乗らず、おれの通り名は「シーザー」だけだった。
そんなおれが16の時、街で偶然おやじを見つけた。生き別れてから6年も経っていたが、憎しみ続けたその顔は忘れられなかった。
おれはおやじを追った。その時、おれは生まれて初めて「殺人」というものを犯してしまう予感がした。それも実の父親を・・・
そしておれはおやじのあとをつけ、おやじがどんなにひどいことをしていたかを確認するために後をつけた。きっとヤツはどこかで幸せな家庭を築いている・・・
おやじはおれたち兄弟を見捨てて他の女のもとに走ったんだ・・・おれはそう思っていた。そのときの煮えたぎるような憎しみは
このままだとおやじの新しい家族ごと皆殺しにしてしまうほどの勢いだった。(会場ざわめく)
おれはおやじの後を追ってローマの町を歩いた。『おやじはこんな夜更けにどこかに遊びに行くんだ・・・?』
するとおやじはコロッセオの地下に降りていった。『こんなところに何が?』おれはつけていった。すると目の前に壁に埋まったような奇妙な石像があらわれた。
おれはおやじの姿を見失いその石像に目をやった。キラキラと光る宝石がその手にあった。
オレは『これはすごい!ついでに盗って帰ってやろう。どの娘に似合うかな』などと思いながらその宝石を外そうとした。
その時!おれは誰かにどなられた。宝石を横取りしようとするヤツか?オレは一瞬そう思ったがそれはおやじだった。
おやじはおれに向かって『あぶない小僧!』と叫んだ。おやじはおれが誰かわからないらしい。しかし必死になっておれにむかって叫んでいる。
その時壁のすき間が光り、何か細長いものが何十本もそこから一斉に飛び出してきた。『逃げろ!』おれはおやじに突き飛ばされた。
そしておやじはその無数の釣り針がついたようなひもに貫かれ、壁の中に引きずり込まれてしまったんだ。
『近づくな!これはやつらのワナなんだ!』やつらというのはこの壁の中に埋まっている男たちのことで、おれたち人間をこうして誘ってエサにしているらしかった。
おやじはズブズブと壁に飲み込まれ、そしてその最後の言葉をおれに伝えた。
『リサリサという女性にこのことを話してくれ。これに対抗できるものは彼女の他にはない』と。(会場ざわめく)
おれはおやじへの憎しみをすべて忘れて呆然とした。いま、おやじに突き飛ばされなかったらこのおれが代わりに壁の中に引きずり込まれただろう。
おれはおやじに命を助けられてしまった。殺そうとするほど憎んでたおやじに・・・しかもおやじはおれのことを最後まで息子のシーザーだとわからなかったようだ。
息子でもない、ただの少年のために体を呈して助けようとした一人の男・・・それがおやじだった。それはおれにとっておやじの死以上にものすごい衝撃だった。
そうまでして人の命を助けようとする男がなぜ、家族を捨てて失踪したのか・・・そして壁にうまっている男たちとリサリサという女性との関係は!?
おれは迷わずリサリサという女性を探した。そして会った。
『対抗できるのは彼女だけ』と聞いていたから、ものすごくデカいアマゾネスみたいな女かと思っていたのに、女神のように美しい女性だった。(会場笑い)
オレは惚れた。だけどそれは心に秘めていた。それよりおやじのことだ。おれはリサリサ・・・先生からすべてを聞いた。
おやじの父親・・・おれの祖父ウィル・ツェペリのこと・・・そのまた父親がかぶった石仮面の話から、
おやじの父親が『波紋』という力で石仮面をかぶった化け物を倒そうとしたこと・・・その意志をついでおれの父親もまたいろいろと調べているうちに
この壁に埋まった不思議な男たち見つけてしまい、それを倒す方法を求めるため家族を置いて失踪し、世界中を旅していたことを聞いた。
おやじは・・・おやじは自分が亡き父の意志を継いで、人類の敵というべき強大な敵に立ち向かおうとしているくせに、
息子のおれたちが同じように大きな宿命を背負うことを心配し、それをさせないために身を隠したのだ。(会場すすり泣き)
水くさいぜおやじ・・・言ってくれればおれもあんなに荒れずにすんだものを・・・それにこんなに美しいリサリサ先生のことも内緒にしているなんて・・・
いや、やっぱりおやじはおれと同じ女好きだったのかも知れない。(会場笑い)
まあそれは置いといて、おれはきれいさっぱりと今までの自分を捨て、身も心も清らかになってリサリサ先生の下で波紋の修行に入った。
おやじには波紋の才能はあまり無かったらしいが、おれは隔世遺伝でじいさんの才能を受け継いでいたらしい。リサリサ先生には『筋がいいわ』と言われた。
そりゃあこんな美しい先生に教わるのなら気合も入るってもんよ。だけどリサリサ先生は修行の時は鬼だった。(会場笑い)
おれは最初、彼女を恋愛の対象として見てしまっていたが、だんだんと尊敬を抱くようになっていった。そりゃおれは全女性を尊敬しているけど、
リサリサ先生は別格だ。おれに母親が居なかったせいかも知れないが、母親を通り越して女神のように神聖なものに思えてきた。手を触れるのも恐れ多い。
今思えば先生を押し倒してしまわなくて良かったと思う・・・まあ絶対押し倒せやしなかったろうが、親友のお袋さんとデキちまわなくて何よりだ。(会場笑い)
そこんところは、3部の花京院典明くんにも言っておきたい。(会場爆笑)
そしておれは後にジョセフ・ジョースターと出会った。最初いけすかないヤツと思っていた方が、後で仲良くなるっていうのはジョジョだけじゃなくて少年漫画の常識だな。
ともかく一緒に修行していくうちにおれたちの間には友情が生まれた。
ヤツがおれと同じに、父親と祖父を『石仮面』で出来た怪物のために亡くしていることも関係しているし。
それにヤツの祖父とおれのじいさんも一緒に戦ったそうじゃないか。いわば因縁のつながりだ。血が繋がって無いのが不思議なくらいだ。
まあ、おれがもうちょっと長生きしてたら、リサリサ先生と再婚してあいつのおやじになっていたかも知れねえ・・・いやそれは無いか、恐れ多くて。(会場笑い)
おれたちは厳しい修行に耐え、壁から出てきた男たちと戦った。おれは勇み足で先に死んじまったけど、後悔はしていねえ。
それは、おれがおれのおやじとその父親から受け継いだ、『ツェペリ魂』を持って戦えたからだ。おれはワムウひとり倒すことが出来なかったが
ヤツのピアスだけはぶん取ってやった・・・わが友ジョセフのためにな。
おやじは自分の息子でもない少年のために死ねるような、博愛の心を持っていた。おれはそこまでは出来ねえ。でも親友のために死ねて満足だ。
だからおれは言いたい。今の自分がここにあるのは、自分を育ててくれた親や、そのまわりの人のおかげなんだ。
そしてその人たちもそれぞれの親や、まわりの人々によって生かされ、それをおれたちに伝えて生きてきた。
石仮面とか、波紋とかに関係ない、普通の人の普通の人生だって同じことだ。みんなが、あとの世代に伝えていって、それが人の世を創っていくんだ。
自分の子供でもない、たった一人の少年の未来のために死んだおやじのように、何かを後世に残すのはとても尊いことだと思う。
それが命を賭したものであっても無くても、形が有っても無くても、一生懸命に生きた証があれば、それはきっと誰かに何かを残していくし
それはまた受け継がれていくんだ。リサリサ先生の生き様が、おれの心を浄化してくれたように、誰かの心に吹くそよ風のようなものが伝わっていく。
おれは20歳で死んだ。だけどおれの生き様をきっと誰かが受け継いでくれる。ジョセフか、リサリサ先生か、ジョジョを読んでいるキミたちか。
それとも何人ものセニョリータを愛したオレには、知らないうちに隠し子の一人や二人出来ていたかも知れねえ。(会場ざわめく)
それでいい。未来に続くツェペリ魂よ・・・届けキミの心に。(投げキッス)チャオ!」(座ったままのポーズで空中浮遊しながら退場)
(会場拍手喝采)
<<おわり>>