あの名場面の直前を描く!
「先生、出番です!」第五回


S(スティール氏)「ん〜疲れたな・・・本番前なのにもう疲れた。だいたいこんなド田舎でロケなんて聞いてないよ〜」

J(助監督)「本当のサンディエゴ・ビーチは観光地でホテルとか立ちまくってますからね、19世紀の雰囲気が出ないんですよ」


S「それならいっそCGとかでイイんじゃない?こう、青い幕を張ってハメコミ映像で」

J「
監督が本物志向ですからそーゆーの好きじゃないんですよ」

S「メンドくさいなもう・・・臭い・・・臭いって言えばさっきから窓の外スッゲ臭いんだけど」
J「ああ、エキストラと馬たちが相当数集まって居ますから・・・簡易トイレが・・・」


S「トイレどうしたの?」
J「ええ、簡易トイレがあふれ出してスゴい事になってます」

S「ウッソ!マジィ?信じられねー!!」
J「なんせ出場者と観客だけで1万5千人居ますから」

S「うわあ・・・考えて用意しとけよ・・・トイレくらい」
J「まあそれもリアリティということで、脚本にそういうのも追加しておきました。これ新しい台本です」

S「そこ置いといて」
J「あ、でももうすぐ本番ですから、覚えて貰わないと・・・」

S「ボクは台本は覚えないよ。セリフはカットごとにマネージャーに口伝えにしてもらうから」
J「またそんな事言って〜!今回はカット割り無しの長回しなんですから、そういうワガママ言わないで下さいよ〜」

S「だってこれはボクが主役なんだよ?ジァイロだかジョニィだか知らないがソイツらが出てくるまではこのレースを企画した『スティーブン・スティール』の物語なんだから」
J「はい、だから番外編の撮りもこのあと有りますんで・・・先生の得意な人間ポンプの見せ場も用意してありますよ」

S「ん〜久しぶりだな〜金魚飲み。昔はよくやったモンだが・・・」
J「先生の出世ネタですもんね」

S「何言ってんのー!?ボクはアレだけで売れたんじゃあないんだよ〜?他に一発ギャグもいっぱい持ってるし、冠番組も最高週8本も持ってたんだから」
J「そうですよね。だけどやっぱり先生と言えばあの芸を見たいじゃあないですか。だからわざわざ番外編の企画を出したんですよ」

S「でもねえ・・・吐けるかな今・・・金魚、出てこなかったらコレ(カットの手振り)でヨロシクね」
J「そんなあ・・・」

S「ところであの子来てんの?あのアイドルの」
J「はい、奥さんのルーシー役の子ですね。もうスタンバってますよ」

S「何?来てんの?なのに楽屋に挨拶も来ないの?何考えてんだろうね最近のコは・・・事務所の教育がなってないね」
J「ええ、あ、いや、今日彼女ギリギリまで取材とかが入ってて忙しかったみたいですから・・・」

S「ふーん・・・そう。でもまあ、あの子をこの役に指名したのはこのボクだからね。そこんトコちゃんと伝えといてね」
J「先生、そんな事あんまり言ってるとセクハラ扱いされますよ?世間はそういうところに厳しいんですから」

S「まー事務所の先輩芸人もそれで議員下ろされちゃったし、あんまりおおっぴらにはアプローチ出来ないがな」
J「先生、どうぞ穏便に・・・」

S「それにしてもねえ・・・一応台本に目ェ通したけどツマンナイねえ〜!脚本家変えたら?ウチの事務所の作家にやらせようか?」
J「これは新喜劇じゃあないんですよ。シリアスな冒険アクションなんですから、ギャグなんか一切ナシで」

S「え〜?入れようよギャグ。なんならダジャレも考えようかボクが?」
J「やめてください!勝手な事しないで下さいね。何度も言いますがカット無しで取るんですから余計なアドリブ入れないで下さい。もし入れたら最初から撮り直しで出演者のみなさんみんなに迷惑がかかりますから」

S「わかったわかった・・・いいの考え付いたんだけどな・・・『アイス』で『あ〜イイっすね〜』とか」
J「ダメです!」

S「・・・ところでこの衣装なんとかなんないの?いくらボクがお笑い芸人だからってこの帽子は変でしょこれは」
J「あーこれは原作者の荒木飛呂彦先生がデザインしてるんですよ。なんでもミラノの最新流行のファッションを取り入れたとかで」

S「ふ〜ん・・・なんかカッパかカリメロって感じなんだけど・・・まあいいか笑いが取れれば」
J「取らなくていいんです!」

S「これがカパッと外れて下からハゲヅラが現れるとか、なんか書いてあるとか・・・花が咲いたりとかはベタかなあ」
J「やらないで下さいよそんなこと!」

S「・・・ちぇ。」
J「あ、先生!共演者の方が挨拶に見えましたよ!」

S「なんだ今頃・・・まあ挨拶に来ただけヨシとするか。最近のアイドルは・・・」
J「あ、女の子じゃあないです。部下役の方ですよ。」

S「部下役かあ・・・今回カラミが多いからな。チョイ役だろうが向こうから挨拶に来たのはいい事だ。今後の仕事の繋ぎになるだろうと思っての事なんだろうが、そうやって大物芸人に取り入るのは悪いことじゃあないね。ボクもそうやってコツコツ点数稼いできたから・・・」
J「(ドアを開けて)・・・!」

S「(後ろを向いている)入っていいよ〜。ごくろう様・・・(入ってきた人を見て)!し、師匠!!」








(部下役の芸人さんの方が大物だったというオチ)

                                          《END》