[Sindt whistleの様々な角度からの写真]



<Sindt whistle>

金属部はすべて※alloy 260(銅70%亜鉛30%/日本名は真鍮)を使用しています。
この種類の真鍮は特に日本の場合はイエロー・ブラスという名称で認知されているようですね。
Johnにこの選択の理由を聞くと、
1)alloy 260はまず入手が最も容易な材料である為。
2)音色の差異なども含め、さまざまな状況を想定した場合、
あえて他の種類のalloyを選択する理由は見当たらない。
以上がJohnの回答でした。
また、Johnはsterling silver(純銀)製のwhistleも製作
(sterling silver製はマウスピース、チューブ、どちらもD管のみ取り扱い)していますが、
これも「alloy 260との差異は取るに足らない程わずか」ともコメントしています。

※銅から発生する緑青は人体には猛毒だという迷信が今でも根強いのですが、無害です(かといって食事に使う醤油だって沢山飲めば人間は死にます、つまり、毒性という点では、醤油と同じようなものだと思って良いと考えます)。むしろ銅や亜鉛は人体に必要不可欠なミネラルであり、健康に良いとさえ言えるかも知れません。ところで、銅から発生する緑青が無害だという事が実験などではっきりしたのは意外に遅く、1970年代に入ってからの事です。1980年代に入ると厚生省も正式に無害である事を認め、公式にその旨を発表しました。私も昔、栃木県で起こった足尾鉱毒事件などに関連して、銅は有害だ、という知識が自然と入ってしまっていて誤解していたのですが、実際は銅は関係なく、油などの燃料から発生する亜硫酸ガスが原因だったようです。ひょっとすると、私が足尾銅山の話を歴史で習った頃は、銅の緑青が無害だという事はまだはっきりしていなかったのかもしれません。


<Sindt whistleのマウスピース部分>

プラスチックはDuPont社のDelrinです。
Delrinは音響特性が、African Blackwood(グレナディラ)に非常に似ています。
African Blackwoodというのは湿度などの影響を受けにくい性質をもっている為、
楽器製作にも良く利用される木材です(Delrinはプラスチックですから、もちろん湿度の影響を受けません)。
このDelrinはホルムアルデヒドが原料の素材なんですが、
この物質は塵や気体となって空中に放散した状態では、
人体に有害という話を聞いた事があります。固体だから関係ないのかな?
そのようなわけで、少々気になる部分ではあります。
管体に比べて、Sindt whistleのマウスピースは厚みがあって重いので、
楽器全体のバランスとしては、いわゆるトップ・ヘビー。
またマウスピースの構造そのものが非常に凝っていて、思わずながめてしまいます。
まず、実用本位と思われるコンセプトなのになぜマウスピースの構造がこれ程凝っているのか?
次に、このようにマウスピースをわざわざ重くする必要があったのか?
これらの質問にJohn Sindtは次のように答えてくれました。

※「もちろん。なぜならマウスピースは、whistleのハート(心臓部)です。
技術上の特性に起因する制限はありますが、美的感覚も私にはとても重要でした。
そして誤差を非常に厳しく千分の一インチに至るまで修正していくことで、
一貫した音色が保証されるのです」「材料よりも材料の厚みの方が音にはるかに影響します」

※私の理解では、材料の重さは音色に大きく関与します(もっとも、それ以上に遥かに大きく音色に関与するのが微妙な音程差です)。
また、材料と音色の関係で一番重要な要素は、材料本来の重さと硬さといわれます。
一般的には、使われる材料が重ければ重い程、
音色は柔らかくなり、大きな音量が得られる傾向にあります。
加えて、材料が柔らかければ柔らかい程、音色は暗くなる傾向があります。
例えば、同じ条件下で金を材料に使えば、柔らかく音量もあり、暗い音色になるというわけです。
Johnはalloyの中ではもっとも硬いalloy 260を使って、重く厚みのある丈夫なマウスピースをつくりました。
という事は、柔らかく明るい音、とくに音の柔らかさを追求しているのかもしれません。
またマウスピース部の材料に重みと厚みを加える事で、材料の特に硬さによって起こる音色の差異が出にくくなり、
たとえsterling silverを使用した場合でさえも、違いが表に殆どあらわれなくなったのでしょう。
つまり、John Sindtは、可能な限り材料に左右されずに一貫した音色を追求出来るように努力しているのではないでしょうか?
例えば、Johnはかつてstainless steel(ステンレス)製マウスピースを$150で扱っていましたが、現在は扱っていません。
そして、sterling silver(純銀)製のものはD管のみ一応つくっていますが、他のキー用にあえてつくるつもりはないそうです。
さらに、この私の推測を補強する意見として、おそらく世界で最も多くの高価なwhistleを経験している一人であるJessie Kislinは、
「銀製のSindt D管と真鍮製のSindt D管は、演奏性も音色も全く同じです」
とコメントしていますし(もしその通りならば、Johnは非常にひかえめに「取るに足らない程わずか」と言っているのでしょうね)、
「John Sindtが(高価なwhistleメーカーの中では)もっとも仕事に一貫性があると思います。」
「彼のwhistleは、私の経験では、同じキーならばいつも同じ品質です。」
とも述べています。


<John Sindt>

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