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ある冬の朝



断っておきたいのですが、僕の体温は三十七度、一般的な微熱状態にあります。
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二00一年十二月三十一日、大晦日の今日、僕は実家である宮城の栗駒に帰ろうとしています。今年も三十日まで市場のバイトが入っていたため今日まで帰れなかったという訳です。
 東京にある僕のマンションの向には十五階建てのやたら大きいマンションが建っています。その白くのっぺりとした壁には数百個の窓が付いていて、夜になるとそれらは一斉にひかりを帯びます。その光は夜十時くらいをピークにその数を減らしていきます。だから、何時の間にか暗くなるまで昼寝をした時など、その光の数が多ければ、「まだ時間がある。」と安心したりするのでした。
 昨晩は、風邪をひいていたので早く寝てしまいたかったのですが、どうしたものかなかなか寝付けず、その数が十三個になるまで起きていました。
 帰省のための新幹線に乗る前はいつも不思議な気分で、生まれたときから一七年間過ごした場所に戻るということはなかなか慣れないものでした。今年は、三年ぶりに家族七人が揃うとあって、その不思議さはいつも以上なのです。
 僕は、東北地方に降り積もる雪が好きで、冬の帰省の時はいつも新幹線の窓から見える雪景色を期待しているのですが、今年は福島を過ぎた辺りでも、一面に広がる枯野原は褐色のままでした。それは家に着いても白には変わりませんでした。そこにあったのは、肌を突き刺す冷たい風だけです。僕はいささかがっかりしました。
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 家族の久しぶりの再会に、酒を飲みすぎ泥酔した僕は、十二時を過ぎ初詣を済ませると、早々と寝てしまいました。眠りについたベッドは十年以上僕が使っていたもので、帰省の度に母親が布団を用意していてくれるのです。
   
                   *   *   *   *
 翌朝、カーテンの外があまりに眩しくて、僕は目を覚まさずにはいられませんでした。カーテンを開けると、目に映ったものは一面の雪景色。それが太陽のギラギラ輝く光を反射しています。反射した光は幾つもの方向に乱反射し、その景色は実に眩いものでした。よくそり滑りをした遠くの丘も真っ白、畑も田んぼも真っ白です。電線は、白く膨らんで積もった雪の重さに耐え切れず、だらりと下方に垂れかけています。遠くを見ると、向かいにある家のおじいさんが、庭の雪を掃っています。
一年に数回の、こんな綺麗な景色に遭遇したことに僕はなんだか嬉しくなりました。
 その時、下の階から母親の声が響きます。
「しゅうじ、学校遅れるわよ!」
何がなんだかわからない僕は、その雪景色をもう一度見渡した後、階段を下りました。
「今日から学校でしょ」
 僕は腕組みをして考えたかったのですが、その時感じ始めた二日酔いの気持ち悪さも手伝って、多くを考えませんでした。すぐに、昨日の残りの餅を食べさせられ、身支度をしました。僕の横には、中学に入ったばかりの姉がいて、そして小学生である妹がいます。胸には「三年 千葉聡美」と書いてあるバッジがついています。二人とも、美味しそうに餅を食べています。
 顔を洗いに鏡を覗くと驚くことに、小学生の僕の顔が映っているのです。もちろん、頭は混乱しましたが、わくわくしていたのも事実です。
 家を出た僕は、いつも通り隣のノリちゃんを待って、一緒に自転車で学校に向かいます。雪の上を走るのは慣れたもので、僕らはわざとブレーキを握って、スリップしたりしながら学校に向かいました。外の世界は以前のままで、今は亡くなった三浦商店のおばちゃんは店先の雪をかいていたし、角を曲がったところの、カズオんちのじじいはいつも通り怒り顔をしています。今はショベルカーで削り取られてなくなった、夏には沢山のカブトムシが取れた山もそのままで、雪に埋もれています。
 学校に近づくにつれ、沢山の友達に会いました。久しぶりに会う友達はみな嬉しそうな顔をしています。僕はあけましておめでとうを何度も言ったし、ノリちゃんは、ハッピ・ニュイヤーと言いました。ペダルを漕ぐ足にも力が入ります。
 道の両端にある木々から、雪の重さに耐えきれなくなって落ちてきた雪が、僕らの行く手を歓迎します。見上げた空は雲ひとつ無い青空で、やはり冷たい風が頬を突き刺します。しかし、真っ赤な頬をした僕にはそんなことお構いなしです。
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 そして、学校に着きました。教室はみんなの冬休みの思い出で話で、賑やかです。
 教室に先生が来ました。
そして、笑顔を浮かべて言いました。
「明けましておめでとう。今日は人生で一度きり、小学校の同窓会です。」




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