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あなたの読んだことのある本はありますか?もしあったら、どんな感想を持ちましたか?お勧めの本があったらお知らせください。


目次

  1. 「星の衣」高橋治著(新潮文庫) 
  2. 「敦煌」井上靖著(新潮文庫)
  3. 「燃えつきた地図」安部公房著(新潮社)
  4. 「染と織の歴史手帖」吉岡幸雄著(PHP研究所)
  5. 「火車」宮部みゆき著(新潮文庫)
  6. 「奪われし未来」シーア・コルボーン他著 長尾力訳(翔泳社)
  7. 「源氏物語」第8巻 紫式部著 瀬戸内寂聴訳(講談社)
  8. 「ピーチ・ブロッサムへ」葉月奈津・若林尚司著(藤原書店)
  9. 「愛されなかった時どう生きるか」加藤諦三著(PHP研究所)
  10. 「寂聴 今昔物語」瀬戸内寂聴(中央公論新社)
  11. 「風の十字路」遠藤周作著(小学館)
  12. 「大原富枝の平家物語」大原富枝著(「わたしの古典第12巻」集英社)
  13. 「彩花へー「生きる力」をありがとう」山下京子著(河出書房新社)
  14. 「サル学の現在」立花隆著(平凡社)
  15. 「源氏物語」第7巻 紫式部著 瀬戸内寂聴訳(講談社)
  16. 「死ぬ瞬間」E・キューブラーロス著 川口正吉訳(読売新聞社)
  17. 「柳宗悦 美の菩薩」阿満利麿著(リブロポート)

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「敦煌」井上靖著(新潮文庫)

 敦煌とは中国内陸部の千仏洞で有名なところです。シルクロードを紹介するテレビ番組などで少し見た程度の知識しかなかったのですが、井上靖のこの名作はいつかは読んでみたいと思っていました。
 時は宋の時代。主人公の趙は国家試験の面接の日に寝過ごしてエリートコースを外れた男。その男が西部の新興国西夏に興味を持ち、

 

「燃えつきた地図」安部公房著(新潮社)

 宮古島に来るちょっと前に手に入れた本。当時、羽根木公園の近くに住んでいたのですが、公園内に世田谷区立図書館があってよく通っていました。そこでリサイクル資料になっていたこの本をもらってきたのです。ずいぶん時間がかかってしまいました。
 さて、お話は失踪した男を捜す探偵の話。最後には追いかけるものが追いかけられるようになるという、不思議な感覚で何度もページを戻って読んでしまいました。はっきり言って1回読んだだけではよく理解できませんでした。何日もかかって読んだせいもあるのでしょう。この手の本は一日で読み切ってしまうに限ります。

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「染と織の歴史手帖」吉岡幸雄著(PHP研究所)

 衣食住というように人間の生活の基本の一つである「衣」についての歴史を辿った本です。絹や麻が織られる以前の原始布や、大陸との交易が始まりシルクロードを経てはるばる日本へやってきた裂、平安の十二単、室町の能装束、戦国時代の武将の羽織、江戸の庶民の小袖など日本人が何を身にまとってきたかがわかります。沖縄の染織についても紙面をさいてあり、興味深く読みました。
 私自身は特に正倉院に納められた裂にとても惹かれました。染織の技術はすでにこのころ最高に達しており、人間の技術の歴史を思うと昔の人の手仕事の精密さ、繊細さに驚かされるばかりです。

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「火車」宮部みゆき著(新潮文庫)

 久々に日本のサスペンスものを読んだのですが、なかなか読み応えがあってよかったです。一気に最後まで読ませる構成力といい、おもしろさといい、この作品を高く評価する人が多いのもうなずけます。
 物語は失踪した一人の女性を捜し出すことがメインなのですが、この女性が実は全くの赤の他人になりすましていたということがわかります。彼女は一体誰なのか・・・?なぜ他人になりすましたのか・・・?そして彼女が語った名前の人物は今どこにいるのか・・・?クレジット社会の犠牲となった普通の人々の話です。自己破産という言葉を耳にするようになって随分たちますが、未だにその数が減少傾向になったとは聞きません。とすれば、この物語もあながちフィクションとは言えないかもしれないところに、今の社会のゆがみを感じてしまいます。
 自分の存在を消すという意味では、10年以上前に読んだ松本清張の「告訴せず」を思い起こさせる作品でした。

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「奪われし未来」シーア・コルボーン、ダイアン・ダマノスキ、
        ジョン・ピーターソン・マイヤーズ著 長尾力訳(翔泳社)

 「今、地球上の生物のすべてから検出されると言ってもいい合成化学物質。その恩恵を受けてきた人類の未来に危険信号がともっている。」この本は下手なホラーよりもよっぽどこわい本です。生物の体内でホルモンのように働く合成化学物質は、生物の特に生殖系に大きな影響を与えていたことをこの本は知らせます。例えば今までダイオキシンは発ガン性物質として主にガンの研究の対象となった化学物質でしたが、実はごくごく微量で人間の内分泌系をかく乱させてしまうという働きがあることが次第にわかってきました。そして、その極微量の化学物質が胎児や乳幼児の成長に大きな影響を与えていると言うことも。
 人間の精子数のこの数十年間での激減。ストレスに弱くすぐに「キレる」子供の増加。知能指数の低下。何に起因しているかわからないだけに恐ろしいことばかりですが、もしかしたら・・・と、合成化学物質を疑ってみるのも慎重派なら当然でしょう。すでに動物たちの世界ではオスのメス化など深刻な現象が普通に見られるようになってきています。私たちの未来は、どんな未来なのでしょうか?
 この本を読んだ後でプラスチック製品に熱いものを入れられなくなりました。まして、電子レンジにラップを使うのは、とても恐ろしくなっています。

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「源氏物語」第8巻 紫式部著 瀬戸内寂聴訳(講談社)

 今年中に全10巻を読了しようと思っている源氏物語も、とうとう8巻になりました。この巻は光源氏が亡くなった後、主人公を薫において宇治の八の宮の二人の娘の話が展開します。いわゆる宇治十帖の始まりです。
 それにつけても、この時代の女性が非常に運命に縛られて生きていることに悲しさを感じます。血筋や家柄にとらわれずに自由に生きることが出来れば、中の君などは結ばれはしてもただ遠くで愛しい人を無為に待つだけの日々などおくらずに済んだかもしれないと思います。また大君も人の心などいつかは変わってしまうものと、かたくなに結婚を拒んで生きる必要もなかったのかもしれないと思います。平安の時代に生きた女の悲しみが感じられる二人の姉妹の話でした。

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「ピーチ・ブロッサムへ」葉月奈津・若林尚司著(藤原書店)

 副題に「英国貴族軍人が変体仮名で綴る千の恋文」とあります。私がこの本の存在を知ったのは、NHKラジオでこの「千の恋文」が紹介されたからでした。この本はアイルランド貴族のサー・アーサー・ハート=シノットが軍人として日本駐在中に知り合った、鈴木まさに宛てた千にも及ぶ手紙をもとに書かれたノンフィクションです。
 前半は二人の愛の悲劇を中心に展開します。国際結婚が難しい当時、アーサーはまさと結婚することを切望するのですが、第一次世界大戦で両足を失い断念。イギリス人女性と結婚します。後半は、二人の間に生まれた清を中心にして、まさのその後の人生が描かれます。清は混血であることでいじめにあいながらも、運動や勉強に才能を発揮。フランスに留学して父親と再会をはたします。まもなく彼は第二次世界大戦で召集され、終戦後シベリアで短い人生を閉じます。清の幼なじみでほんの数ヶ月の新婚生活を送った哲子とまさ、二人は清の生還を待ち続けます。
 今も世界のどこかで「紛争」が起きています。「戦争」という言葉を使わないのはそれが地域的に限定されているからかもしれませんが、それでもそこに生きる人々にふりかかる悲劇は変わりありません。悲劇が繰り返されないためにも、戦争や紛争を絶対的に否定する世界であってほしいと思います。

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「愛されなかった時どう生きるか」加藤諦三著(PHP研究所)

 幼いときに両親に愛されなかった人は、どこかゆがんだ性格になってしまいがちである。そのような性格をかかえつつ、それでも人生を豊かに生きるにはどうしたらいいか。これがこの本の主題です。「甘えと劣等感の心理学」という副題がついています。
 読んでいてちょっと感情的な表現が気になりましたが、それでも前向きに豊かな人生を送りたいという気持ちで読めば、いろいろと見えてくるものがある気がしました。

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「寂聴 今昔物語」瀬戸内寂聴(中央公論新社)

 最近、中学・高校でなじんだ古典に興味があります。原文ではなく、口語訳されたものを読んでいるのですが、この今昔物語に対する認識も今までと多少違ったものになりました。
 内容を大きく3つに分類すると、1つは庶民の間に伝えられた伝説のようなもの、1つは宮廷の貴族の暮らしにまつわるもの(男女の微妙な関係が書かれている)、1つは印度や中国の仏教説話に関するものです。全体として仏教色の強い話が多いものの、庶民や貴族の宮廷での話は男女の性にまつわるものも多く、あるものはおどろおどろしく、あるものはおおらかであっけらかんと描かれており、当時の性に関する感覚も読みとれて面白く感じました。

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「風の十字路」遠藤周作著(小学館)

 久しぶりに遠藤周作のエッセーを読みました。晩年に書かれた「旅」をテーマとする抑制の利いた小品集で、遠藤文学の半分以上を読んだ私としては、それぞれの地に深い作品を思い出しながら読み進めることができました。特に、最後の長編となった「深い河」に至るまでの、インドへの思いがつづられているあたりは、いかにも遠藤周作らしい感覚で書かれており、読後、是非紹介された地を訪れたくなる衝動に駆られてしまいます。

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「大原富枝の平家物語」大原富枝著(「わたしの古典第12巻」集英社)

 誰もが冒頭部分を暗誦している、もっとも有名な作品のうちの一つ。「盛者必衰」の無常観は後々の日本人、例えば松尾芭蕉などに大きな影響を与えますが、解説にもあるように「平家物語」は読む文学ではなく、聞く文学であると思います。一度琵琶をかき鳴らしつつ語られる屋島や壇ノ浦の合戦、建礼門院の出家後のわびしい生活などを聞いてみたいものです。

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「彩花へ 「生きる力」をありがとう」山下京子著(河出書房新社)

 世間を震撼させた神戸の中学生による連続殺人事件の被害者の母親の書いた本。最愛の娘を理不尽な方法によってある日突然失ってしまった母親の気持ちの変化をつづったもので、とても考えさせられる一冊でした。
 私が普段考えていること、つまりよく生きるためには死についてもっとオープンに語る社会を作るべきという主張があって、読んでいて共感しました。脳死の問題にしろ、ターミナルケアの問題にしろ、今日本人の死生観が問われていると思います。日本が今まであまりに「死をタブー視する」文化だったことが、「死を語る」機会をつみ取ってきたのではないかと思います。ことに家庭での「生きること」「死ぬこと」の教育はずいぶん遅れてしまっているのではないでしょうか。
 著者の山下さんはこの命の教育をしていくのは、母親の役目だと言っています。最愛の娘の命を奪った少年にさえも「母親」として更生してほしいと願う気持ちは、人間としてもっともつらい経験をされたからこそ生まれたものではないかと思います。

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「サル学の現在」立花隆著(平凡社)

 以前から読んでみたかった一冊ですが、ためらっていたのはその分厚さのせい。700ページもありましたが、読み応えありの面白い本でした。
 サル学の分野で活躍する研究者のインタビュー集で、社会生態学から遺伝学、生化学、人類進化の謎にまで迫る内容です。ヒトをヒトたらしめているものはなにか?という一つのテーマから、サルを研究してみると様々なことが明らかになってくるのです。
 例えば、チンパンジーの赤血球の遺伝子などはほとんどヒトと変わらないのだそうです。実はヒトの遺伝子を調べるとそんなにチンパンジーと変わらないようなのです。進化の過程でヒトとサルは別れてしまいますが、それではなぜチンパンジーはチンパンジーに、ヒトはヒトになったのでしょうか?

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「源氏物語」第7巻 紫式部著 瀬戸内寂聴訳(講談社)

 いよいよこの巻では光源氏の生涯が閉じられます。光源氏が亡くなったことを暗示させる「雲隠」は本文が全くありません。これが紫式部の意図的なものなのか、それとも紛失してしまったのか、議論が分かれるところのようですが、訳者瀬戸内寂聴は意図的に本文なしの帖にしたのではないか、と推測しています。そうだとすれば、紫式部の才能にますます驚かされます。
 平安の頃の「出家」の意味について考えると、「源氏物語」の登場人物で光源氏と関わった女性の多くが出家しています。紫の上も死ぬまで出家の希望を光源氏に訴えますが、とうとう最期までそれが許されず亡くなります。思うに、光源氏に愛された女性で幸せになった人はいなかったのではないか・・・。世にまれな美貌と才能の持ち主であった人物でも、男として愛した女を幸せにする能力があるかというと、決してそうではなかった。おそらく紫の上をなくした光源氏は、そのことに気づいていたのではないでしょうか。そう思うとなんだか悲しい気がします。

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「柳宗悦 美の菩薩」阿満利麿著(リブロポート)

 昨年11月に平良市博物館で行われた企画展「宮古の織物展」に、日本民芸館から出展された琉球王朝時代の宮古の織物がありました。以前から、柳宗悦の名前は聞いていたのですが、日本民芸館を作って各地の伝統工芸品を集めて展示した人程度の知識しかなかったので、今回この本を読んでみました。
 あとがきにもありますが、実はこの本は伝記ではなく、柳宗悦が民芸運動を展開して行くに当たってそのバックボーンとなった宗教との結びつき、特に浄土真宗との結びつきについて書かれた評伝のようなものでした。これはこれで楽しめました。

 柳が1938年から1940年にかけて沖縄を数度訪問し、貴重な工芸品(といっても、当時はふつうにその辺にあったもの)を集めておいてくれたおかげで、それらのものは戦火を免れ今日私たちにそのすばらしさを伝えてくれています。何の変哲もない名もない職人が作り出したものに美しさを見つけることのできた、柳の審美眼に驚かされます。
 また、私が一番共感したのは、彼が沖縄訪問の際に当時沖縄でくりひろげられていた沖縄方言廃止運動に対して、反対意見を唱えたことです。標準語を話せないことにより差別を受けてきた人々は、彼の発言に対して激しい抗議をします。これに対し、彼は後に「沖縄県学務部に答ふるの書」のなかで自分の意見を展開します。下に彼のそのときの言葉を引用します。今、沖縄の文化をめぐる様々な問題に、そのまま当てはまるものと思われて、私は彼の考え方に深く共感するとともに、「結局変わらないんだ」という諦念も持ちました。

 「県民よ。公用の言葉としては標準語を勤めて勉強されよ。だが同時に諸氏の祖先から伝はつた土地の言葉を熱愛されよ。その言葉はあの女詩人恩納なべの雄渾無比なる詩歌を生んだその言葉なるを自覚されよ。諸氏の中から沖縄語を以て偉大なる文学を生むまでにそれを高揚せしめよ。・・・・・県民よ、再び言ふ。・・・・・諸君は日本国民として不必要な遠慮に堕してはならぬ。県民よ、沖縄県民たることを誇りとせられよ。」(『全集』第15巻)

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「死ぬ瞬間」E・キューブラーロス著 川口正吉訳(読売新聞社)

 以前から読んでみたかった本。柳田邦男の「ガン回廊」シリーズや立花隆・遠藤周作などの作品にあげられていたのでこの本の存在は知ってはいましたが、「今」読んでよかったと思います。すべての医療従事者に読んでほしい本です。
 簡単に紹介すると、これは専門的なお医者さんが書いた本で、致命的な病気で末期状態にある患者、その治療や看護に当たる病院スタッフ、患者の家族や親族の「人の死を受容する態度や精神状態」についての研究書といえます。
 人は必ずいつかは死にます。どんなに医学が発達してもそれは避けられません。(その意味で死は医学の敗北とはいえません)だからもう助からないとわかったとき、その病気と自分の状態をうけいれてよりよく人生の終わりを過ごす方法を考えるのは、必要なことなのではないでしょうか。また、そのような末期状態の人が周りにいた場合、どのような態度で接すればその人の人生の終わりを充実したものにしてあげられるかも考えるべきでしょう。家族でお互いの「死」について語り合うことの大切さを考えました。また、死を前にして「宗教」の大きさを知りました。私は特定の宗教に帰依していませんが、信仰を持つ人々の強さに驚きました。
 自分の人生の終わりが見えてきたときそれに耐えていけるか?家族や友人が人生の終わり近くにさしかかったとき自分がどんな態度をとることができるか?「死」をタブー視しないで正面から見つめていくと、今「生きている」自分の人生をよりよくしようと考えざるをえない気がします。

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