気 功 的 寓 話


 
 
 亀の呼吸法

 そうだなあ。明の時代の北京の話。当時、もう庶民もベッドを使っていたんだな。日本では畳というものが発明されて、ベッドがなくなってしまったのだが、中国では今でも床と言えばベッドのことで地板というのが床のことなんだ。
 ベッドがどうもがたついて寝にくい。ベッドの脚が一本短いわけ。そこでちょうどいいものはないかと探してみると、庭に亀が歩いていた。ベッドの短い脚にたしてみると、亀の甲羅がぴったりだった。そんなことも忘れて何年も経って、ベッドを移動すると、なんと亀がまだ生きていたわけ。亀の息は長い。息が長いというのは長生きということで、そこで亀の呼吸法が考案されたというわけだ。



 
 これまた亀の話

 西安の郊外の山の中腹に古井戸があった。普段は草でおおわれているので、気をつけてみないとわからない。夏の盛りのある日村の12歳になる少女が山菜を採りに山へ入ってきた。夢中で採っているうちに日が暮れて道にまよった。月明かりを頼りに歩いているうちに古井戸に落ちてしまったというわけさ。村人はひとさらいにでもあったものとあきらめた。冬がめぐってきて薪とりに村人が山に入るようになった。古井戸の周辺は草が枯れて、ぽっかりと井戸の口が顔を出していた。屈強な青年が薪を山のように背負って歩いていると、古井戸があるのが見えた。これは幸い、水でも飲もうかと近寄って、井戸をのぞいておどろいた。美しい少女が中で座っているではないか。
 青年が「おーい」と声をかけると、少女は収功をして「お待ちしていました」と澄んだ声で答えた。てっきり青年は井戸の精霊と思い込んで、手をあわせていたが、少女が青年の名を呼ぶので、失踪していた少女だと気がついた。
 少女は、落ちたときは恐怖で気が動転していたが、井戸に住んでいた亀を見ているうちに落ち着いてきた。幸い草がクッションとなって怪我はなかった。なんでこんな狭いところで亀は生きていけるのだろうと思いながら、観察をしているといろいろなことがわかってきた。亀は呼吸がゆっくりでまるで瞑想中のようにじっとしている。こうすればエネルギーはすくなくてすむ。そうして安静にしていると、心も落ち着いて、食べなくても苦にならなくなってくる。水や空気、少しのやわらかい草で十分生きていけることがわかった。



 
 かささぎと蛇

 中国では勉強することを読書と言う。本を読むことが勉強と考えられていたのだ。本は大変貴重なもので、本があれば勉強できるのだった。武術の心得のある男が儒学を勉強していると庭で、騒いでいる声が聞こえてきた。窓を空けて庭を見てみると、庭に一本ある木の枝にかささぎの巣があり、木の下にかささぎの卵を狙う大きな蛇が鎌首をもたげているのである。かささぎは、猛然と蛇に襲い掛かり、蛇はふらりふらりとそれをかわしている。男はそれを見ているうちに柔は剛を制することを体得し、太極拳を編み出した。


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