ステファニ・レナト神父ニカラグァ視察報告会

平澤 由美

日時:1月17日(日)14:00−16:00

内容:
 神父が昨年12月15−22日まで、ニカラグァを訪れた時の様子のビデオ上映(状況説明入り)と質疑応答。


ビデオ内容:

  1. カレテラ・ノルテにかかっている日本政府援助の橋。
     橋は残っているが、その周りの道路は水に流されてしまい残ってない。これは、今回の水害がどれほど大きかったかの証拠。また、荒れて川幅が広くなった川、濁ったマナグァ湖も写っており、水害の恐ろしさがよく分かる絵でした。
  2. カシータ火山(遠景)
     遠くから見ると、土砂が崩れた所が肌色の裸になっており目立つが、人の住んでいない山のように見える。
  3. カシータ火山ふもとの村村の跡地。
     かって4つの村があったところは、見事に何もなくなっている。ただ裸の地面があるのみ。映像の中の場所には以前教会、家があったそうだが、この風景からそれを想像するのは難しい。ここの1800名ほどの住民で、生き残ったのは200数名のみとのこと。
  4. ポソルデガ市役所
     カシータ麓の村の管轄である、ポソルテガ市役所の市長は、サンディニスタで女性であるとのこと。土砂崩れが起こった時点で、市長はアレマン大統領に支援を求める連絡を入れたが、狂人のたわごとと取り合ってもらえず、多数の行方不明者を出す結果となった。その後、政府は態度を改めたが、援助を市長のかわりに同地区の牧師に対して提供しようとしたそうである。この時点で、市長は政府の援助が得られないので、外国に支援を求めに出張中であり、ビデオには写っていない。
  5. ポソルテガ市被災所
     学校に避難している人たちへのインタビュー。
     ―ステファニ神父のコメントー今回のニカラグァ滞在中によく聞いた話は、支援側では、政府はよくやっているといっているが、支援される側では、実際何もしてくれないという不満のが多かった。支援する側、される側で認識の不一致がある。北部にはフランスの援助が入っていて、一日200体の死者を掘り出したとのこと。

    ポソルテガで被災している人の談話。
     政府の食糧援助は3日間分のみ。これでどうすればいいのだろうか?今後、また植林をして、薪をうって生活できるようになりたいが、土地をもらえるようになるのだろうか?という将来への不安ばかりだとのこと。

     ニカラオの会支援によるフンデシは今回の義援金の一部をこちらでの医療活動にあてている。

  6. マタガルパ・女性の家
     今回の被害によって発生が増加している、女性特有の問題(家庭内暴力など)の対処に関する会議の様子。他の被災者の家の建て直しなどを手伝う様子。
     こちらの地区で浸水した家々の泥を取り除く作業に1月かけて行っているが、それでも再び住める様にするためにはまだ時間がかかるとのこと。住民へのインタビューでは、ほとんどの人がかなりの怒りで政府を批判していた。ここにも援助の手はとどいていないそうである。ニュースでも報道されたように、アレマンはサンディニスタ系の地区には援助を出し惜しみしているようだ。

     フシデシはこちらに建築資材の援助を行っている。


質疑応答:

1. アメリカは支援をしているのか?

2. 今回訪れた場所は具体的にはどこか?

3. 説明の途中で、ニカラグァの家族について、70%が母子家庭という説明があったが、それは本当ですか?そして、どうしてですか?

報告会に出席した感想:
 ステファニ神父のように、これまで長い間ニカラグァ支援を行ってきた人から、ニカラグァの問題を聞くと、そうなんだと納得します。神父がここで強調していたのは、今回の災害は森林伐採に始まり、政府のイデオロー問題、貧乏人を完全に無視する政策などの人災であるということが一点。実際に被災された方々に支援しているのは政府間の援助より、NGO団体であり、まとまって行動をとれるニカラグァの人々であるという二点でした。災害支援もさることながら、ここにはもっと長期的な支援が必要なんだとあらためて考えました。
 そして、会場にきていた「ニカラオの会」の支援者の人々にあって、自分は協力隊でこの地に派遣されたという関わりのために行動しているだけであるのに比べ、出席者の方々は、ニカラグァを実際に知らないのに、十数年という長い月日をかけニカラグァ支援を行っていて、すごいと思いました。本当に大切なのは、この人たちのように、息の長い支援を続けてゆくことなのだとおもいました。ニカラオの会メンバーの皆さん素晴らしいです。私は深く尊敬しております。


ステファニ神父よりの報告文:
 12月15日−22日まだ「ニカラグァに医療品を送る会」の代表としてニカラグァへ行き、現地でハリケーンの被災状況と支援の取り組みを見てきた。
 自然がどれだけの力を持っているかには驚かされた。大雨の時ぐらいしか水が流れていない幅2メートル程度の場所は、深さ3メ−トル、幅100メートルの川底になっていた。その周辺にあった畑や農家、家畜、大木はみななくなっていた。しかもそれは1個所ではなく、山の多い国境地帯のいたるところに同じ風景が見られた。
 鉄砲水は山をかけ降りて、場合によっては、巨大な岩を転がしながら数十キロ走ってから国道にはばまれてとまり、すべての橋を破壊してしまった。橋についてだが、日本人の協力で作られた橋自体は崩れなかったものの、周囲の道路が流された光景もあった。
 「ラカシタ」火山の被災地をみた時も、大きな驚きを覚えた。人口およそ1500人の村はきれいさっぱりなくなっていた。ここに村があったことを思わせるようなものは何もない。土石流はすべてを埋め尽くしていた。生き残った人は274名といわれている。被災者の一人から「ここに教会があり、ここに学校があった」と言われても、ピンと来ないよりも信じられない。死体焼却場が今でも黒ずんだ姿を見せつけてた。

どうして災害が起きたか
 災害を大きくしたのは、普段でも人が住めない、住んでは行けない所に多くの貧しい農民が住んでいることだ。火山の斜面は農業にあまり適していないし、元々危険な場所だ。川畔やダムの下流に住むことも危険だ。一番危険な所に住む貧しい人々が犠牲になった。
 すなわち今回の災害はニカラグァ社会の貧乏人無視の構造的な問題を暴露した。
 「ラカシタ」火山の場合、火口に大量の雨がたまり、火口壁が崩れたのが災害の原因だ。これは十分に予知できた災害だ。事実、市長(女性)は政府に危険性を訴えたが、大統領に「市民を惑わせる女」としてあざけられた。
 災害が起きてからも被害の規模を「死者20人」と発表したに過ぎない。その後、土砂に埋まったままの死体があまりにも多いので探し出す変わりに被災地を国定墓地と指定した。ところが被災者には代替の土地を与えていない。最近、被災者が仮住まいしている小学校から出ていってもらうために電線まで切られた。

被災者の話
 私たちが支援している現地の支援団体フンデシ(代表:デスコト神父)に案内された6個所の避難民の話は「政府は何もしてくれない、援助物資は来ない。これからどうすればいいのか解らない」にまとめられる。災害が起きてから1ヶ月半が経っているが、復興の見通しはたたないままだ。被災者は農民なので、一番求めているのは農民としての暮らしを続けたいということだ:土地、農具と穀物の種、その他は何も要らないという。

政府の態度
 災害が起きてから大統領はカトリック教会に支援体制を任せると発表したが、教会は断った。それで次に大統領夫人を任命した。
 彼女はどうしたらよいか解らないので周囲の人にやらせている。結果はさんさんたるものだ。誰が何をやっているか誰もつかんでいない。援助物資はどうなっているかもはっきりしない。
 政府はもらった支援金を橋や道路、学校と診療所建設のために使う予定で、被災者のためではない。物資の一部が避難所に届けられたが、一度だけ、しかも3日分のみ。物資を配っている人に聞くと「政府はよくやっている」という。受ける側からは反対の意見が出ている。支援物資が市場に横流しされているといううわさが絶えない。米国から最大級の飛行機で大量の米が空港に着いたが、その米の大部分の行方は不明だ。

イデオロギーの問題
 現大統領は軍事独裁者ソモサの親友だった。当然、サンディニスタの人々を心から嫌っている。今回の災害が起きた地域の市長の大半はサンティニスタだ。そのため大統領はサンディニスタを選んだ地域の住民と関わりたくないと宣言している。彼らの陳情も訴えも聞こうとしないありさまだ。

結論
 今回のハリケーンによって一番得したのは政府だ。債務のかなりの部分が帳消しにされたからだ。その上に復興のための資金提供も受けた。債務は60億ドルだが、キューバは700万ドル、メキシコは10億ドル、ロシアは30億ドル、パリクラブは10億ドル(40億ドルを残している)。キューバの場合、ニカラグァ政府は債務の帳消しを喜んで受け入れたが、40人の医師団を断った。その後、国民の強い批判にあって受け入れることにしたが。
 ハリケーン以前の経済は再建不能な状態であったが、現在では、そのおかげでかなり復帰してきた。
 日本政府は40万ドルをニカラグァ政府に災害援助のために寄付したが、そのお金はどこに使われているかを大使館を通じて正確に調べてほしい。市民団体に助成金を出す前には大変なチェックを行うが、同じような姿勢でやってほしい。

支援体制
 「ニカラグァに医療品を送る会」は「フンデシ」に義援金を送り、彼らは被災者に必要なものを買い、配っている。今回の視察で被災者から「フンデシだけは助けてくれる」という言葉をよく聞かされた。現地に医師のチームを送り、無料健康診断を行ったり、物資を配布したり、土地を与えたりしている。「フンデシ」は各地域に担当者を置き、担当者は直接人々の意見を汲み、それに答えようとしている。大変よい地に付いた活動をしていると感心した。それでも経済的な制限が活動の足かせになっている。より多くの義援金を送りたいので、引き続き支援お願いいたします。

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