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Royal Society of Chemistry, "How to make a Perfect Cup of Tea", 24/06/03

 訳者前文:最近、英国王立化学協会サイトを眺めていたら楽しそうなプレスリリースが出ていた。英国といえば紅茶、紅茶といえば英国というまさに英国の王道である紅茶道について、英国といえばウイット、ウイットといえば英国というまさに英国の王道であるウイットあふれる書き方で書かれていた。さっそく転載翻訳についてのページを探したら、再配布禁止であった。

 しかし翻訳については何も書かれていない。英語の文章を英語で転載すればそれは間違いなく100%の再配布である。しかし日本語に翻訳した文章の読者は英語で書かれた原文の読者とは競合しない。英国王立化学協会が日本語訳を自ら手がけていない以上、僕が翻訳を掲載することは英国王立化学協会の「布教」となるはずである。
 …と、あくまでも自分にやさしくなった僕は英国王立化学協会にメールを送り、日本語訳のウェブ掲載許可を求めたのであった。僕にとってEverything is Possibleを謳うHewlett Packard以外はEverything is Possibleであるというジンクスは今回もきっちりと発揮され、あっという間に英国王立化学協会から許可の返事が送られてきた。村上春樹のやれやれとは用法が違うものの、やれやれ。

 そんなわけでthe Royal Society of Chemistry発行のHow to make a Perfect Cup of Teaを(おそらくはじめて。だって誰も返事くれないんだもの。このサイトが闇翻訳だらけとはいえ、僕だってちゃんとがんばってるんだぁー、の)合法的な翻訳でお届けします。翻訳およびウェブ掲載の許可はもらったけれど、翻訳転載に関しては何のアクションも起こしていないので、もし奇特にも転載を試みようとする方は自己責任で都合してください。ここへのリンクとか訳者クレジットなんか入れていただくとここにくるお客さんが増えるかも知れないからうれしいなあ。まあいないだろうけれど。

 あとBlitish Standard発行のBS6008(もしくはInternational Organization for Standardization発行のISO3103)も紅茶の淹れ方を規定しているが、ドキュメントが有料なので日本語訳をするかどうかはちょっと考慮中。というか、販売しているぐらいだから不可だろうなあ。

英国王立化学協会『一杯の完璧な紅茶の入れ方』

材料:缶入りのアッサム紅茶、軟水、新鮮な冷たい牛乳、白砂糖
調理器具:やかん、磁器製紅茶ポット、大きな磁器製マグカップ、メッシュの細かい紅茶濾し、ティースプーン、電子レンジ

 やかんに新鮮な軟水を注いで火にかける。時間、水、火力を無駄にしないように適量だけを火にかける。

 湯が沸くのを待つ間、4分の1カップの水を入れた磁器製紅茶ポットを電子レンジに入れて1分間最大出力でチンする。

 やかんのお湯が沸くのと同時にチンしたポットからお湯をあけているように行動を同期させる。

 カップ一杯あたりティースプーン1杯の茶葉をポットに入れる。

 沸騰しているやかんまでポットを持っていき、茶葉の上に注いでかき混ぜる。

 蒸らすために3分間放置する。

 理想的な入れ物は磁器製マグカップか、あなたのお気に入りの自分用マグカップである。

 先ず牛乳をそのカップに注ぎ、続けて紅茶を注ぎ、豊かでおいしそうな色合いの完成を目指す。

 味わいのために砂糖を加える。

 熱すぎる紅茶を飲もうとすることで起こりうる下品な飲み方を避けるため、摂氏60度から65度で飲む。

 個人的な化学:紅茶を楽しむための最適な環境を手に入れるために、静かで落ちつきある自宅のお気に入りの場所で紅茶を飲むための位置を完成させようとする試みは、紅茶のひと時を特別な次元へと引き上げる。最高の結果のためには、あらかじめ冷たい雨がひどく降る中で少なくとも30分は重い買い物袋を担ぎ、犬を散歩させる。この準備は紅茶の味をこの世のものとは思えないものに変える。

 一杯の完璧な紅茶と一緒に読むことを推奨する理想の読み物:ジョージ・オーウェル『Down and Out in Paris and London

 ラフボロー大学Andrew Stapley博士がこう記述している。

  • あらかじめ沸かしたことのない新鮮な注ぎたての水を使うこと。あらかじめ沸かしたお湯は、紅茶の風味を引き出すために大切な混入酸素を失っている
  • 硬水は避けること。硬水中のミネラルが不快な紅茶の不純物を引き出す。硬水地域に住んでいるならば軟化処理(濾過)された水を使う。同じ理由でミネラルウォーターは使わない。
  • 完璧を期すために、われわれは紅茶ポットと缶入り紅茶の使用を薦める。紅茶ポットは磁器製であるべきである。金属製ポットは紅茶の風味を損なうことがある。ティーバッグはお手軽ではあるものの、ティーバッグは抽出を遅らせ、遅い抽出はよいことではあるが、分子量の大きいタンニンには好ましくない(以下を見ろ)。
  • 茶葉を多量に使う必要はない。カップあたり2グラム(ティースプーン1杯)が通常は適量である。
  • 紅茶の抽出はできる限り高温でおこなわれる必要があり、また適当に余熱されたポットが必要である。少量のお湯をポットに入れ何秒か回しても十分ではない。沸騰したお湯を少なくともポット4分の1は注ぎ、30秒以上置かなければならない。それからすばやく流れるように、紅茶ポットからお湯をあけ茶葉を加え、やかんから沸騰したお湯を注ぐ。
     よりよい代替案は、電子レンジを使って紅茶ポットを予熱する! 紅茶ポットに4分の1水を注ぎ、1分間最高出力でチンする。その後お湯をあけ、茶葉を入れお湯をやかんから注ぐ。お湯をあけた直後、まさにそれと同時にやかんのお湯が沸いた直後にお湯を注ぐことが同期するように目指す。「紅茶ポットをやかんのそばに」持ってくることは、温度を高く保つ一助となる。
  • 通常3分から4分蒸らす(茶葉による)。より長く蒸らせばそれだけ濃いカフェインが紅茶に抽出されるというのは神話である。カフェインは比較的早期抽出されるものであり、カフェイン抽出はおおむね最初の1分間で完了する。しかしながらそれ以上の時間をかけることは、紅茶に色とある種の香りを与えるポリフェノール複合体(タンニン類)が出てくるために必要とされる。とはいえ3分以上の抽出では、いやな後味を残す分子量の大きなタンニン類を出してしまう。
  • お気に入りのカップを使う。ポリスチレンのカップは決して使用してはいけない。これは紅茶をいつまでも飲めないほど熱いままにする(そしてまた牛乳をダメにする。以下を見ろ)。大きなマグカップは小さなカップに比べ熱をより長く持続させ、なおかつ余計な紅茶を必要とする!
  • 変性蛋白を含むUHT牛乳ではなく、冷えた新鮮な牛乳を加える。さもないと味が悪くなる。牛乳は紅茶の前に注がれるべきである。なぜなら牛乳蛋白の変性(変質)は、牛乳が摂氏75度になると生じることが確かだからである。もし牛乳がお湯の中に注がれると、それぞれの牛乳滴は牛乳としてのまとまりから外れ、確実に変性が生じるだけの時間を紅茶の高温に取り囲まれる。もしお湯が冷たい牛乳に注がれるならば、このような状況ははるかに起こりにくい。一度完全に混ざってしまえば、ポリエチレンのカップが使われていない限り液体の温度は摂氏75度を下回るはずである。
  • 味を調えるための砂糖は最後に加える。牛乳と砂糖はともに紅茶が持つ刺激性を和らげるように働く。
  • 紅茶を飲む完璧な温度は摂氏60度から65度の間であり、もし上記の手引きが使われるならば、この温度は1分以内に得られるはずである。これ以上高い温度は、紅茶を飲む際飲み手に対して紅茶の過剰な空冷を必要とさせ、また毎日の会話中に下品な音が伴うことになる。ティースプーンを何秒か紅茶の中に浸しておくことは、とても効果的な冷却のための対案である。
  • 以上

    更新履歴など

    2003年07月05日 リリース:1.0

    思ったこと(訳注)

     UHT牛乳:Ultra High Temperature(超高温殺菌法)で殺菌処理した牛乳のこと。摂氏120度で2秒間加熱する牛乳の殺菌法。摂氏63度で30分間殺菌することをLTLT法(Low Temperature Long Time)、摂氏75度で15秒間殺菌することをHTST法(High Temperature Short Time)という。

    その他

    いちおうGPLにしておきます。
    訳:たろ。 掲責:たろ。mail : taro-m@geocities.co.jp

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