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ヴェルヌに関する和書

川戸道昭[他編] :: 明治翻訳文学全集 :: 大空社 1996--2003
《新聞雑誌編》第27, 28巻のヴェルヌ集および《翻訳家編》第3巻の井上勤集、《翻訳家編》第6巻の森田思軒集に、明治時代のヴェルヌの翻訳が多数復刻されている。ほとんどが思軒の翻訳だが、郵便報知新聞などに掲載されただけで本としては出版されなかったものが多いため、とても貴重である。しかし何といっても圧巻なのは井上勤集に収録された『九十七時二十分間 月世界旅行』で、英語からの重訳とはいえ井上の誠実な翻訳と、森琴石の素晴らしい銅版画挿絵に容易に接することができるのは大変ありがたい。巻末の解説やヴェルヌの翻訳年表なども有用である。
週刊 朝日百科 世界の文学 19号 :: 朝日新聞社 1999
1999年から全120号に亙って隔週発行された雑誌で、19号ではH. G. ウェルズとジュール・ヴェルヌを中心に、ヨーロッパの古典SFが特集された。多色刷(一部は白黒の原画に彩色)の図版が多数挿入されており、それだけでも一見の価値がある。ヴェルヌについては「未来はバラ色か」と題して私市保彦氏による入門的な解説文が掲載されている。それ以外にもチャペック、ツィオルコフスキー、ジュワフスキー、シェーアバルトについての写真入りの紹介記事があり、古典SFに興味のある向きには必読であろう。この雑誌ではその他、デュマやルブランを特集した16号(裏表紙にエッツェルについての紹介記事あり)や、メルヴィルやポーを特集した33号(裏表紙はドレ)などが要チェック。
日本児童文学 1978年6月号 :: 偕成社
「古典を考える」と題したシリーズの第四回としてヴェルヌ(表記はジュール・ベルヌ)が特集された。児童文学としてのヴェルヌのみを扱ったものであり、ちょうど一年前の『ユリイカ』の特集号と比べると内容的にまったく物足りないのはやむを得ないところだろう。すでにほとんどの全集が出揃っていたにも拘わらず、多くの評者がごく僅かの作品を読んだ印象だけからヴェルヌを語っているように思われるのも残念なところである。興味を惹く記事として『二年間の休暇』の翻訳者である朝倉剛氏による「ベルヌ翻訳に寄せて」では、前述の『ユリイカ』に掲載されていた大西赤人氏の誤謬に満ちた記事(新潮文庫の欠陥翻訳しか読まずに批判を書いている)への真っ当な反論がなされており、ヴェルヌの日本における翻訳を考える上で一読の価値のあるものとなっている。また、根本正義氏による翻訳書誌では児童向けの翻訳が網羅されている。
篠田浩一郎 :: 空間のコスモロジー :: 岩波書店 1981
製塩所を中心に所員と労働者が住む長円形の都市を設計した18世紀の建築家クロード=ニコラ・ルドゥーについての考察から始まり、ピエール・ルルー、ジュール・ヴェルヌ、そしてジュール・ミシュレに至る八人の思想家・文学者の著作を分析し、その背後にある各人各様の、しかし相互間の影響も見られる宇宙像について論じた評論集。全体的にやや難解だが、『ユークロニー』と題する架空の歴史書を著わした哲学者シャルル・ルヌヴィエを扱った第二章は、知名度の低さゆえか親切な紹介がされており面白く読める。第八章「アダムの時間」ではタイトルが示すとおり、晩年の傑作短篇『永遠のアダム』[EA]で描かれた輪廻思想を中心に、ルルー、フーリエ、ミシュレらとの影響関係が論じられている。特に第七章がその著作の分析に充てられているピエール・ルルーに関しては、ジョルジュ・サンドへの影響ということでは有名だが、ヴェルヌを論じた文脈で触れられているのは貴重ではないだろうか。
中島廣子 :: 「驚異」の楽園---フランス世紀末文学の一断面 :: 国書刊行会 1997
未来趣味 5号 :: 日本古典SF研究会 1997
ジュール・ヴェルヌ特集号。第16回「日本SFファンジン大賞」評論部門賞を受賞。
富田仁 :: ジュール・ヴェルヌと日本 :: 花林書房 1984
私市保彦 :: フランスの子どもの本 :: 白水社 2001
歴史的背景も含めてとても親切に書かれたフランス児童文学入門書。 カラデックの『フランス児童文学史』のように児童文学の在り方を厳しく批評したりはせずに、定番の作品を偏りなく紹介している。 ひとつの章を充てていたカラデックに較べると、ヴェルヌの扱いは小さい。
私市保彦 :: 幻想物語の文法---『ギルガメシュ』から『ゲド戦記』へ :: 晶文社 1987; ちくま学芸文庫 1997
私市保彦 :: ネモ船長と青ひげ :: 晶文社 1978
著者が『ユリイカ』や『牧神』に発表してきた児童文学や幻想文学に関する論説を集成したもの。
谷川渥 :: 幻想の地誌学 :: トレヴィル 1996; ちくま学芸文庫 2000
島への旅、月への旅、地底への旅などのテーマごとに古典から現代までの様々な空想旅行文学を渉猟した書。ポーからメルヴィル、そしてヴェルヌへと連なる連鎖を解き明かしている。文学作品だけでなく、『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』の本が登場するマグリットの絵や『老水夫行』のギュスターヴ・ドレによる挿絵なども引き合いに出されており、幻想的な地図や絵画が豊富に収められた美しい本である。出版元の倒産のため絶版となったが、2000年にちくま学芸文庫から増補されて再刊になった。
鹿島茂 :: 文学は別解で行こう :: 白水社 2001
著者が斬新な切り口でさまざまなフランス文学を読み解いた論説を一冊にまとめたもの。旅をする間も周囲の風景には目もくれず機械のように精確に地球を廻るフォッグ氏を鮮やかに分析した「信用(ペーパー・マネー)の旅としての『八十日間世界一周』」 (pp.13--29) をはじめ、抱腹絶倒の「予想屋マルクス」やヴェルヌとも縁の深い「奇巖城を訪ねる」(アンティフェール岬の写真入り)など。
松村喜雄 :: 怪盗対名探偵---フランス・ミステリーの歴史 :: 晶文社 1985
第8章「ネモ船長と探偵小説」 (pp.105--125) では探偵小説という観点から『八十日間世界一周』を再評価し、さらに晩年に書かれた探偵小説『ドナウ河の水先案内人』、『リヴォニアの悲劇』、『キップ兄弟』を紹介している。かなり詳細なヴェルヌ著作・翻訳一覧に加え、ポール・ディヴォワの紹介もある。2000年に双葉文庫から再刊。
山田登世子 :: リゾート世紀末---水の記憶の旅 :: 筑摩書房 1998
無菌ユートピア、電気の楽園、世界一周ツアーなどをテーマに、プルースト、ロティ、ヴェルヌ、モーパッサンなど、世紀末の旅の文学を海浜リゾートという文化的側面から解読する。ポーラ文化研究所の雑誌「is」に1994年(65号)から1997年(75号)まで連載された記事をまとめたもの。
喜多尾道冬 :: 気球の夢---空のユートピア :: 朝日新聞社 1996
石澤小枝子 :: フランス児童文学の研究 :: 久山社 1991
末松氷海子 :: フランス児童文学への招待 :: 西村書店 1997
岩尾龍太郎 :: ロビンソン変形譚小史---物語の漂流 :: みすず書房 2000
1719年のデフォー以来延々と生み出され続けてきたロビンソン変形譚について、その背後にある欧米社会の国家観・教育観を考察しながら、その特徴や影響関係を論じた研究書。翻訳・模倣・改造など膨大な数に上る作品群にまずは圧倒され、一般的にはほとんど意識されていないその政治性の根深さに暗澹たる気分にさせられる。全体的にフランス語文献への言及が少ないのが残念。
田村道美・近藤健児・瀬戸洋一・中野光夫 :: 絶版文庫四重奏 :: 青弓社 2001
ヴェルヌの邦訳書の中でも最も稀少なものである角川文庫版『地の果ての燈台』[PM]について瀬戸洋一氏による紹介がある。当サイトについても言及していただきました。多謝。

last modified on 2005/04/29