[ Home ] [ Back ]

ヴェルヌに関する翻訳書

ミシェル・ラミ; 高尾謙史[訳] :: ジュール・ヴェルヌの暗号 :: 工作舎 1997
Michel Lamy: Jules Verne, initié et initiateur, 1984
ヴェルヌのテキストを詳細に読み込んで、ヴェルヌと「レンヌ=ル=シャトーの謎」や秘密結社「薔薇十字団」との関係を論じた書。…と言うと何やら胡散臭そうに聞こえるが、実際にヴェルヌの生涯には未だに解明されていない謎が多く、例えば甥のガストンによる襲撃事件に新しい解釈の可能性が指摘されたりすると、つい信じ込まされてしまう説得力がある。しかしそれよりも注目すべき点は、ジョルジュ・サンドやガストン・ルルー、モーリス・ルブランといった作家との影響関係など、ヴェルヌの作品論としても充実した内容になっていることで、オカルティックな話に興味のない人にも是非一読をお勧めしたい研究書である。
フランソワ・カラデック; 石澤小枝子[監訳] :: フランス児童文学史 :: 青山社 1994
François Caradec: Histoire de la littérature enfantine en France, 1977
アンドレ・ローリーをはじめとして、日本では全く知られていない大衆作家も多数紹介されたフランス児童文学史の教科書。単にフランス児童文学の歴史を紹介するだけでなく、子供向けにテキストを改竄したり大人の都合を優先して児童書を作ったりすることに対して舌鋒鋭く批判しているのが印象深い。特に児童出版に携わる人などにはぜひとも読んでもらいたい好著なのだが、それを思うと、500部の限定出版とは余りにも少なすぎる。大手出版社から復刊されることを望みたい。ヴェルヌについてはひとつの章が割かれており、入門的ながらきちんとした作品論になっている。
ロジェ・カイヨワ; 塚崎幹夫[訳] :: 蛸---想像の世界を支配する論理をさぐる :: 中央公論社 1975
Roger Caillois: La Pieuvre, essai sur la logique de l'imaginaire, 1973
蛸は本来巨大化したり人間を襲ったりするような動物ではないが、欧米では悪魔の魚として忌み嫌われてきた。本書ではこのような偏見が比較的新しい時代のものであることを明らかにし、特に19世紀初頭のドニ=モンフォールの著書が大きな役割を果たしたと指摘する。そのうえでミシュレ、ユゴー、ヴェルヌらによって開花する「蛸文学」に至るまでのイメージの変遷を、多彩な先行文献を引きながら解明してゆく。その手法の鮮やかさもさることながら、著者の蛸への愛情が文章の端々ににじみ出た快著である。 NEW!!
ロザリンド・ウィリアムズ; 市場泰男[訳] :: 地下世界---イメージの変容・表象・寓意 :: 平凡社 1992
Rosalind Williams: Notes on the Underground, 1990
主に19世紀の英仏において地下世界へのイメージがどのように変容していったかを、技術史と文学史の双方を視野に入れながら論じた書。地下世界を描いた文学の総覧ならほかにもあるだろうが、技術史と並列に論じた点に本書の特徴がある。本文で扱われるのはヴェルヌの『黒いダイヤモンド』や『地底旅行』をはじめウェルズ、フォースター、ブルワー=リットンらの限られた作品だけだが、原注にはかなり多くの地下世界文学が参照されていて一見の価値がある。ただし、翻訳者にはもう少し文学的素養がある人を選ぶべきだっただろう。
ダルコ・スーヴィン; 大橋洋一[訳] :: SFの変容---ある文学ジャンルの詩学と歴史 :: 国文社 1991
Darko Suvin: Metamorphoses of Science Fiction, on the Poetics and History of a Literary Genre, 1979
SFという文学ジャンルの歴史を研究した大著。「詩学」、つまりSFとは何かという定義づけを与えた前半と「歴史」として年代順に重要な作家を論じた後半からなる。本書の読みどころは、メアリー・シェリーとともにウィリアム・ブレイクやP. B. シェリーといった英国ロマン派詩人にもページが割かれた6章や、東欧出身者の強みを生かしてロシアSFを俯瞰した11章、そしてなによりも、著者がSF史の転換点と位置づける『タイム・マシン』を痛快に分析した10章だろう。それに比べると7章のヴェルヌ論は、当時までの批評史を押さえつつ過不足なくまとまってはいるものの、これといった特色は見当たらない。また、ユートピアの追究をSFの目的と位置づけ、ユートピア小説の長い歴史を取り込んだまではよいが、いわゆるスペース・オペラやファンタジー、怪奇幻想小説などのいっさいを排除してしまうのは偏狭に過ぎるのではないだろうか。 NEW!!
M. H. ニコルソン; 高山宏[訳] :: 月世界への旅 :: 国書刊行会 1986
Marjorie Hope Nicolson: Voyages to the Moon, 1948
18世紀までにイギリスで読まれてきた月旅行の物語を渉猟し、詳細に分析した先駆的な著作。殊に『ガリヴァー旅行記』のラピュータ島への飛行の分析などは見事というほかない。一応対象外とされてはいるものの、ヴェルヌのような近代以降の作家についても軽く触れられている。
A. マングェル; G. グアダルーピ; 高橋康也[監訳] :: 世界文学にみる架空地名大事典 :: 講談社 1984; 2002
A. Manguel; G. Guadalupi: The Dictionary of Imaginary Places, 1980
欧米の文学作品に登場する地球上の架空地名を集めた事典。もちろんヴェルヌに関する項目もたくさんある。講談社版の初版(1984)では原著の三分の一が無惨にも削除されてしまっていたが、このたび完訳版(2002)が出版された。空想旅行記の案内書としてとても有用であるが、地図類が杜撰なのが残念なところ。ついでながら、邦題の「世界文学」という語は適切ではない。
ミシェル・カルージュ; 高山宏・森永徹[訳] :: 独身者の機械 :: ありな書房 1991
Michel Carrouges: Les Machines célibataires, Arcanes 1954
ルチアン・ボイア; 守矢信明[訳] :: 世界の終末---終わりなき歴史 :: パピルス 1992
Lucian Boia: La Fin du monde, une histoire sans fin, 1989
M. B. グリーン; 岩尾龍太郎[訳] :: ロビンソン・クルーソー物語 :: みすず書房 1993
M. B. Green: The Robinson Crusoe Story, 1990
F.-B. ユイグ; 丸岡高弘[訳] :: 未来予測の幻想---ジュール・ヴェルヌからビル・ゲイツまで :: 産業図書 1997
F.-B. Hoyghe: Les experts ou l'art de se tromper de Jules Verne à Bill Gates, 1996
副題にヴェルヌの名前が挙げられているが、これは単なる惹句であって、ヴェルヌやロビダらの未来予測については申しわけ程度に言及されているに過ぎない。文学に描かれた未来像に興味のある向きにはお薦めできない。
last modified on 2005/04/29