時は189x年、アメリカに《北極実用化協会》なる団体が設立され、未だ領有されていない北極の広大な土地を競売に掛けようと言い出した。どうやらこの団体には大きな後ろ盾があるらしく、世界各国を向こうに回して堂々と競り落とすつもりでいるらしい。近づくことさえままならない不毛な極寒の地を獲得しようとする、正体不明のこの協会の真の目的はいったい何なのであろうか? 呼びかけに応じて、イギリスやロシアをはじめとする各国は、競売会場として指定されたボルチモアに代表者を送り込んできたが…。
バービケインやJ. T. マストンらおなじみの連中が再び登場する、連作『月世界旅行』・『月世界一周』の後日談。アルベール・バドゥロー (Albert Badoureau) という数学者がヴェルヌに送った原案をもとにして書かれた作品で、登場人物のひとりアルシッド・ピエルドゥーはこの数学者がモデルになっている。前作では狂言回し的存在にすぎなかったマストンが主役を演じるが、ここにはもうミシェル・アルダンの熱狂はなく、どこか皮肉な視線が終始投げかけられている。ヴェルヌ的造語の傑作《メリ=メロナイト》をはじめとして、SF的アイデアよりも諷刺的・ほら話的な面白さを楽しむべき作品だろう。
Toutefois, de vastes territoires n'en disparaîtront pas moins sous ce déluge artificiel, entre autres l'angle de l'Afrique méridionale depuis la Guinée inférieure et le Kilimandjaro jusqu'au cap de Bonne-Espérance, et ce triangle du Sud-Amérique, formé par le Pérou, le Brésil central, le Chili, et la République Argentine jusqu'à la Terre de Feu et au cap Horn. Les Patagons, de si haute stature qu'ils soient, n'échapperont pas à l'immersion...
しかしながら、広大な陸地もまた、その人工的な大洪水によって消え去るだろう。とりわけ、低地ギニア、キリマンジャロから喜望峰までのアフリカ南部の一角、ペルー、中央ブラジル、チリ、アルゼンチン共和国からフエゴ諸島、ホーン岬に至る南アメリカの三角地帯がそうである。パタゴニア人は、たとえどんなに背が高くても水没を免れることはできず、…
---15章より