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南十字星

L'Étoile du Sud: le pays des diamants / 1884

[南十字星---ダイヤモンドの国]

Chukou Bunko

== Data ==

== Editions ==

== Story ==

舞台は南アフリカ内陸の町グリカランド。空前のダイヤモンド・ラッシュに湧くこの町では、一攫千金を夢見るあらゆる人種、あらゆる国籍の人びとが鉱山師として日夜採掘に励んでいた。ダイヤモンドの科学的調査のためにその地を訪れていた若いフランス人鉱山技師シプリアン・メレは、大地主のひとり娘アリス・ワトキンズと恋に落ち、その父親のもとへ結婚の申し込みに訪れる。しかし、財産がないことを理由にその申し込みを断られたシプリアンは、ダイヤモンドで一山当ててやろうと一念発起し、科学者のプライドを棄てて自ら採掘に乗り出す。そして、ついに彼は前代未聞の巨大ダイヤモンド《南十字星》の発見者となるのだが……。

『インド王妃の遺産』と同様に、アンドレ・ローリー(パスカル・グルーセ)の書いた草稿をヴェルヌが書き改めた作品。ダイヤモンド盗難事件の真犯人をめぐってストーリーは二転三転し、いかにもヴェルヌらしい地理学的トリックも重要な役割を果たす。金銭欲の強い大地主と頑固者の宝石細工師の対立をはじめ、さまざまなタイプの登場人物が生き生きと描かれた波瀾万丈の冒険活劇である。

== Characters ==

  1. シプリアン・メレ (Cyprien Méré)
    若い鉱山技師。エコール・ポリテクニクを優秀な成績で卒業したフランス人で、ワトキンズ氏の空き家を借りて研究に励んでいる。後先を考えずに行動するタイプだが、友人には恵まれていて、たびたび窮地を救われる。
  2. ジョン・ワトキンズ (John Watkins)
    グリカランドの大地主。ダイヤモンドで財を成したイギリス人で、金銭欲が人一倍強く、長年の贅沢な暮らしですっかり思い上がっている。食後のパイプとジンと他愛もない世間話をこよなく愛する。
  3. アリス・ワトキンズ (Alice Watkins)
    ジョン・ワトキンズのひとり娘。高い教養のある才色兼備の女性で、趣味はピアノを弾くことと、飼っている駝鳥の世話をすること。シプリアンとは相思相愛の仲で、彼の影響で化学にも興味を示す。
  4. ヤコブス・ファンデルガールト (Jacobus Vandergaart)
    採掘されたダイヤモンドの加工を請け負う宝石細工師。早くからこの地に住み着いたオランダ人で、職人気質の頑固な老人。イギリスの身勝手な政策に積年の恨みがあり、ワトキンズ氏とは長年のライバル関係にある。
  5. ファラモン・バルテス (Pharamond Barthès)
    狩猟で生活する冒険家。シプリアンとは昔の学友で、一緒に南アフリカに渡ってきたあとは、独りで気ままな放浪生活をしている。原住民の有力部族の長とも交際があり、シプリアンを大いに助ける。
  6. マタキット (Matakit)
    シプリアンの下で働くことになったカフラリヤ人。ごく簡単な外科の知識や手品の心得があり、仲間内からは占い師として評判である。聡明でフランス語の読み書きもすぐに覚えるが、少々盗癖がある。
  7. (Lî)
    広東生まれの中国人。セイロンやオーストラリアを渡り歩いたが、幸運に恵まれず、この地にやってきた。木函に入れた洗濯道具一式を後生大事に持ち歩き、鉱山師たちを相手に洗濯屋を始める。
illustration by Benett

== Excerpt ==

Cyprien ouvrit la boîte et resta ébloui. Sur un lit de coton blanc, un énorme cristal noir, en forme de rhomboïde dodécaèdre, jetait des feux prismatiques d'un éclat tel que le laboratoire en semblait illuminé. Cette combinaison, d'une couleur d'encre, d'une transparence adamantine, absolument parfaite, d'un pouvoir réfringent sans égal, produisait l'effet le plus merveilleux et le plus troublant. On se sentait en présence d'un phénomène vraiment unique, d'un jeu de la nature probablement sans précédent.

シプリアンは函をひらくと目が眩んで動けなかった。白綿の台座の上に、斜方十二面体をなす大粒の黒い結晶が、この実験室を照らしだすような明るさで七彩の光を放っているのだった。インクそのままの色、完全にダイヤモンド特有の透明度、比類のない屈折力、それらの結合の妙が世にもすばらしく心ときめかせる効果を生じていた。真に無類の天然現象、おそらく先例を見ない自然のたわむれを目のあたりにする思いであった。

--- 10章より、曽根元吉[訳]、一部改変

last modified on 2005/07/22