[ Home ] [ Back ]

レのシャープ君とミのフラット嬢

M. Ré-Dièze et Mlle Mi-Bémol / 1893

[レのシャープ君とミのフラット嬢]

illustré par Myrbach

== Data ==

== Editions ==

本邦未訳(2006年末に刊行か?)


== Story ==

舞台はスイスのアッペンツェル地方の山間にある小さな村。村の教会には立派なパイプオルガンがあり、村の子供たちで構成される聖歌隊はみんなの自慢だったのだが、少々困った問題が持ち上がっていた。専属のオルガン奏者が耳を悪くしてしまい、聖歌の伴奏も聖歌隊の指導もできなくなってしまったのだ。今年のクリスマスの夜のミサは、オルガン演奏なしの寂しいものになるかもしれない。そんな心配をしていたある夜、誰もいないはずの教会からオルガンの音が聞こえてきて…。

1893年のクリスマスに『フィガロ・イリュストレ』誌に掲載され、その後短篇集『昨日と明日』に再録された作品。ネモ船長のオルガンの例を挙げるまでもなく、ヴェルヌの音楽好きはよく知られているが、この作品はその顕著な例であり、初めから終わりまで音楽用語で埋め尽くされている。『ザカリウス親方』や『フリット・フラック』などと同様、仄暗く幻想的な作風で、クリスマスの夜にふさわしい小品である。

== Characters ==

  1. ヨーゼフ・ミュラー (Joseph Müller)
    あだ名は、レのシャープ君。ヴァルリュギス先生の小学校に通う十歳の男の子で、村の聖歌隊の一員。ベティとは大の仲良し。
  2. ベティ・クレール (Betty Clère)
    あだ名は、ミのフラット嬢。ヨーゼフのクラスメートで、聖歌隊にも一緒に入っている。両親は村の人々が集う旅籠を経営している。
  3. ヴァルリュギス先生 (M. Valrügis)
    カルフェルマット村の小さな小学校の先生。音楽以外ならどんな教科でも教えるが、中でも歴史には力を注いでおり、ことあるごとにスイスの英雄ヴィルヘルム・テルの話を繰り返し聞かせている。
  4. エグリサク (Eglisak)
    永遠に完成しないフーガを作曲し続けているオルガン奏者。村の聖歌隊で子供たちの指導をしているが、歳とともに耳が弱くなり、オルガンの演奏にも差し支えるようになってきている。
  5. エッファラネ親方 (Maître Effarane)
    ハンガリー出身のオルガン職人。ひとりの従者を連れて各地を渡り歩き、パイプオルガンの建造や修理を請け負って生計を立てている。全体的にひょろひょろと細長い体型で、羽根飾りをつけたトック帽がトレードマーク。

== Excerpt ==

Ils marchaient l'un derrière l'autre. L'un, de trente-cinq à quarante ans, efflanqué, maigre,... ... L'autre est trapu, tout en épaules, tout en buste, une grosse tête ébouriffée sous un feutre grisâtre, une face de taureau têtu, un ventre en clef de fa.

彼らは歩いていた。一人が前を、もう一人が後ろを。一人は三十五歳から四十歳くらいで、ひょろひょろと痩せこけていて…(中略)…もう一人はずんぐりとして肩も胸もやけに分厚く、大きなもじゃもじゃ頭には灰色がかったフェルト帽をかぶり、厳めしい牡牛のような顔に、まるでヘ音記号のような腹をしていた。

---5章より

last modified on 2005/12/04