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ザカリウス親方

Maître Zacharius / 1854

[ザカリウス親方]

== Editions ==

== Story ==

時計の歯車を精確に動かすための雁木車の発明者であるザカリウス親方は、ジュネーヴ市の一帯では右に出る者のいない時計職人だった。ところが、自らの製作した時計が原因不明の故障で修理に持ち込まれる出来事が頻発し、ついにはただ一つの時計を除きすべてが止まってしまった。その最後の一つの時計の持ち主は実に奇妙な人物で、度々ザカリウス親方の周辺に出没するのだが…。

1854年に雑誌『家庭博物館』に掲載された短篇で、のちに短篇集『ドクター・オクス』に収録された。ヴェルヌの20篇ほどの短篇作品のなかで最良のものであり、さまざまなアンソロジーに収録されている。ジュール・ヴェルヌに対して世間一般に思われているイメージとは全く正反対のゴシック調の幻想小説で、テオフィル・シューラーの強烈な挿絵とともに、一読忘れがたい印象を残さずにはおかない。

== Characters ==

  1. ザカリウス親方 (Maître Zacharius)
    ジュネーヴ市に住む天才的な時計職人。年齢の推測しがたい特異な容貌の持ち主。自分の才能から来る傲慢さに、時計の原因不明の故障という出来事が重なり、次第に精神を害するようになる。
  2. ジェランド (Gérande)
    ザカリウス親方の一人娘。信心深く、朝晩のお祈りをかかさない。
  3. オベール・チュン (Aubert Thün)
    ザカリウス親方のただ一人の弟子で、ジェランドの婚約者。
  4. スコラスティク (Scholastique)
    お喋りな老女中。
  5. ピットナッチオ (Pittonaccio)
    アンデルナット城に住む奇怪な風貌の小男。ザカリウス親方の製作した、定時ごとに宗教的な金言が表示される精巧な時計を所有している。

== Excerpt ==

« Qui êtes-vous? demanda brusquement l'horloger.
- Un confrère. C'est moi qui suis chargé de régler le soleil.
- Ah! c'est vous qui réglez le soleil? répliqua vivement maître Zacharius sans sourciller. Eh bien! je ne vous en complimente guère! Votre soleil va mal, et, pour nous trouver d'accord avec lui, nous sommes obligés tantôt d'avancer nos horloges et tantôt de les retarder! »

「きみはだれだ」と、時計師は素っ気なくたずねた。
「同業の者です。太陽を調整するのがわたしの仕事です。」
「ああ、きみかい、太陽を調整しているのは」と、ザカリウス親方は眉一つ動かさずに、きびしい口調できき返した。「じゃ、きみをほめたりはできん。きみの太陽の調子はよくないからな。あれの調子に合わせようとしたら、こちらは時計を進めたり遅らせたり、いろいろしなければならないのだ。」

窪田般弥[訳]、句読点変更

last modified on 2005/03/29