"ほっこりすと"の皆様      1999/3/30(火)
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ほっこり#134【幸せの理由を探す】
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★本日のメニュー

 1.スクラップブック「SEE YOU」
 2.ガテマラのホームレス男性
 3.幸せの理由を探す

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1.スクラップブック「SEE YOU」  .。o○
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          産経新聞(99年3月30日付)より


  第3回 約束(プロミス)エッセー大賞 佳作


       「SEE YOU」


         小倉美恵子 38歳(大阪府豊中市)



四年前の二月、差出人の名に記憶のない一通のエアメー
ルが、実家から転送されてきた。


「親愛なる友人、
 あなたは生きているのですか。
 食べ物や寝る所はありますか。
 今すぐ次の住所へあなたの銀行口座番号を連絡してく
 ださい。少しばかり送金したいのです。

 ああ、ごめんなさい。
 あなたは私を覚えているのでしょうか。
 数年前に、パリのメトロで迷ったあなたを、オランダ
 行きの列車まで送っていったシリルです。
 そして、本当にごめんなさい。すぐに手紙を書くと約
 束したのに、二年も連絡をしませんでした」


そこまで読んではっきりと思い出した。


真冬のヨーロッパ単身旅行だった。夜行寝台に乗るた
め、メトロで北駅に移動しなければならない。数回訪れ
ていたパリを甘く見ていた。フランス語なまりの英語は
聞き取りにくく、駅員に何度確認してもどっちへ行けば
いいのかさっぱり分からなかった。


おどおどと方向指示の看板を見回す。すぐに誰かが声を
かけてくれるはずだった。しかし誰もが足早に私の横を
すりぬけていく。ふと時計が目に入る。ラッシュアワー
だったことにやっと気づいた。必死で善良そうな顔を探
すが、誰もが私と視線を逸らした。家路を急ぐ者達に
とって、大きな荷物を抱えた東洋人の女にかかわってい
る余裕はない。都会のラッシュアワーはどこも同じだ。
私は、ごったがえす地下鉄駅の構内で立ちすくんでい
た。


「どうしたの。迷っているのなら僕が教えてあげるよ」


突然の声に振り向くと、黒人の青年が立っていた。彼
は、とまどいを隠しきれない私をうながし、誤解されな
いよう荷物を私に持たせたまま、先を歩く。時々振り返
りながら自己紹介をした。シリルと名乗るその青年は、
俳優になるために、深夜のビル掃除で学費を稼いでいる
と言った。


「僕たちはね、夢を見たけりゃ、
 スポーツ選手かアーティストになるしかないんだ」


おどけた調子で話す表情に暗さはない。そして、同じ方
向だからと地下鉄に乗り、ついに北駅の長距離列車ター
ミナルまで連れていってくれたのだった。彼は私の荷物
を持ちプラットホームに入って行く。チケットを確認し
ながら、私の席を探し歩いた。


「ここの下の段が君の場所だよ」


雑踏の中にシリルの大きな声が響く。彼は私が席に着く
まで、窓の外から覗き込んでいた。荷物を置き、窓を開
けた。

「本当にどうもありがとう。日本に来ることがあれば、
必ず連絡して」


私達は住所を交換した。


「すぐに手紙を書くよ。気をつけて」
彼は外灯に照らされた長い影を連れて帰っていった。


数分して窓がたたかれた。シリルだった。
「飲み物だよ」


そう言って紙袋を手渡す。中には、熱いコーヒーとサン
ドイッチが入っていた。


私は駅で迷ったことを神に感謝しないわけにはいかな
かった。心から礼を言い、両頬にキスしてもう一度別れ
を告げる。

「See you」


普通は身近な人同士で交わす別れの言葉だが、「さよな
ら」ではなく「また会おう」と言う。「じゃあね」くら
いの意味の簡単な挨拶。それは、守られなくてもよい約
束。


わずか一時間ばかりのシリルとのひとときは、私の心に
強い印象を残していたが、結婚をまぢかに控えた私は慌
ただしさに紛れ、手紙を出すきっかけを失っていた。し
かし四年前の大地震のとき、彼は当時神戸に住んでいた
私が被災したものと思い込み、実家に手紙を寄越してき
たのだった。出会いの時と同じく、突然差し延べられた
救済の手だった。


感謝のあまり、その場でパリに電話をした。彼は家にい
た。私は地震の一年前に引っ越して、大した被害を受け
なかったことや、結婚して穏やかに暮らしていることな
どを話し、彼の喜ぶ声を聞いた。そしてこう言った。


「映画館のスクリーンで、あなたに会える日を楽しみに
しているわ」


彼も答えた。
「OK、 see you!」




2.ガテマラのホームレス男性
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マザーテレサは、痛みが伴うまで与えてほしいと教えて
いる。この男性の与え方は、まさにそんなふうだ。なけ
なしの元気を分け与えると、新鮮な生きる力を授かるか
のようだ。


--引用開始----------------------------------------

ガテマラのシスターから素晴らしい話を聞きました。


彼女は街の通りから、一人の貧しい男性をホームに連れ
ていきました。彼はとてもひどい病気にかかっており、
体も不自由で、ひどく飢えていたといいます。身寄りな
どない彼でしたが、ホームのみんなに助けられて、体も
どうにか回復に向かっていきました。


ある日彼は、シスターにこんなことを言い出したので
す。


「私は外に出たいと思います。私がここに来た頃のよう
に、このホームを必要としている人がほかにもいると思
うのです。その人のために、このベッドは空けておきた
いのです」


今、彼は自分の力で働いています。たくさんのお金は稼
げないかもしれませんが、働いて少しでもお金が入った
ら、その度にホームを訪れるのです。そして、体の不自
由な人のために、いつも何かプレゼントを持って来てく
れます。彼はわずかなものしか持っていないはずなの
に、その中から何かを持ってくるのです。これが彼のプ
レゼントなのです。

-------------------引用終了(P.130-131より引用)--
「マザーテレサの『愛』という仕事」
(ホセ・ルイス・ゴンザレス-バラド他、青春出版社)




3.幸せの理由を探す         φ(.. ) 
―――――――――――――――――――――――――

シリルさんって、何か良いよねぇ。そういう人。


英会話教師の松藤さんが、
由美かおるさんに教えたフレーズ

「We were born under the luckystar.」
(私たちは幸運の星の元に生まれた)


ふむ。
感じの良い言葉だと思って、口ずさんでみる。


そうしているうちに、自分はラッキーな星の下に生まれ
たという前提に立って物を見たことがないことに気づい
た。見直したほうがいいかもしれない。見えなかったも
のが、見えるかもしれない。自分は幸せだという大前提
に立って、幸せの理由を探してみたらどうなるんだろ
う。


いま私の心の中には、気がかりなことが65パーセントを
塞いでいる。残りの35パーセントに幸せが入っている。


原因のないふさぎの虫にとりつかれることがある。原因
が取り除けるものなら、具体的に取り除く努力をすれば
いい。取り除けないものは、慣れるしかない。しかし、
原因が分からないと対処の仕方が分からなくて、買い物
や運動をして追い払おうとする。


もっと手軽な方法がある。鬱と感謝の気持ちは同時に存
在しない。心の中を感謝の気持ちでいっぱいにして自動
的にふさぎの虫を退散させるのだ。


「日本の心理療法」(三木善彦/黒木賢一[共編]、朱
鷺書房、1998年)の中で、「建設的生き方」を提唱する
レイノルズ博士も同じようなことを書いていた。


博士が主催する「建設的生き方」の講座では、おもしろ
い宿題を出す。


 ●引き出しの中を空にしてしまう。

  いったん引き出しの中の物をすべて取りだして奇麗
  にして、再び1品目ずつ引き出しに戻していく。

  ★物を引き出しに戻す際、
   その一つ一つが自分にいままでしてくれたことに
   感謝を述べる。


私たちは、人々だけではなく、エネルギーや物からも
さまざまな恩恵を受けている。だから、私たちは積極的
に感謝しない限り、受け取る一方で「負債」がたまって
しまうと言う。


なるほど。

これは、
道徳とか、自分を律するとか、そんな話じゃない。
元気に生きていくためのサバイバル法だ。


自分は世の中に冷遇されているから「ラッキーな星の下
に生まれた」とは嘘でも口にできないという人は、せめ
て物にお礼を言ったらどうだろう。


博士から大事なことを学んだ。

人間には、好きな感情と嫌いな感情がある。嫌いな感情
を抱くと、追い払おうと努力したり、そんな感情を抱い
た自分を嫌悪したりする。


しかし、そうしたところで感情をコントロールすること
はできない。できるのは、行動をコントロールすること
だけだ。

┌───────────────────────┐
|感情(たとえば、自然に沸いてくる感謝の念)  |
|はコントロールできないものであり、      |
|誰もそれに対して責任を負う必要はない。    |
|                       |
|一方、                    |
|                       |
|行動(感謝を述べることや贈り物をすること)  |
|は自分のコントロールの範囲内にあるものである。|
└───────────────────────┘


感情に向きすぎている注意を、行動に向けるのだ。
感情は行動を変えることで間接的に変えられるのだから。


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