アイヌモシリ1万年祭でフラッグセレモニー

 平成15年8月16日、北海道沙流郡平取町で開かれた「アイヌモシリ1万年祭」で世界各国の平和を祈るフラッグセレモニーが行なわれました。

 

この祭りは、アイヌ文化の継承者アシリ・レラさんが中心になって15年前から催しているものです。レラさんは、平取町二風谷に若者たちを集めて、アイヌ語やアイヌ文化の継承をしている方です。今年は8月15日から20日にかけてこのお祭りが開かれましたが、16日にフラッグセレモニーがプログラムに取り上げられました。

 「アイヌモシリ」とは?

 
アシリ・レラさんとお孫さん

 さて、北海道は例年、それほど大きな台風は来ないのですが、今年は行事の1週間ほど前に台風10号が上陸し、10名以上の死者・行方不明者を出す大きな被害をもたらしました。車で川沿いの道を行くと、台風のために冠水した水田や畑、道路がえぐられたり陥没した箇所、破壊された人家がありました。二風谷ダムには大量の流木が引っかかり、それを除去するために、また道路や橋の復旧のために、数十億のお金が必要ということでした。

 
流木で埋まった二風谷ダム

 二風谷はアイヌの聖地でした。アイヌの人々の反対にもかかわらず、ここにダムが造られ、聖地が水没しました。ダムの目的は苫小牧工業団地に電力と水を供給するということでしたが、苫小牧工業団地に入居する企業はなく、今は閑古鳥が鳴いています。ダムはしばらくすると土砂で埋まり、使い物にならなくなるといいます。ムダなダムのために、かけがえのない歴史と自然が破壊されたのです。ダムは今回の台風による洪水を防いでくれたのか、それとも被害を激化させたのかわかりませんが、いずれにせよ、復旧のために膨大な費用がかかります。今回の台風は、このダムがはたして人間の幸福になるのかということを強く警告し、自然への感謝と畏敬の念の重要性を教えているような気がしました。

 ところで、台風10号の被害が集中した日高地方の平取、新冠、門別、静内という地域は、かつてアイヌ民族が栄えていた地域でした。現在でもアイヌ系の人々がもっとも多く居住しています。

 少し歴史の勉強になりますが、1669年にここで「シャクシャインの戦い」が起こりました。シャクシャインはアイヌの長老の名前で、これは和人に対するアイヌ最大の反乱でした。この反乱は松前藩によって武力弾圧され、シャクシャインをはじめ、多くのアイヌが惨殺されました。この戦い以降、アイヌは和人に完全に従属させられていきます。明治以降、アイヌは「土人」として二流国民に位置づけられ、アイヌの土地は政府に没収されました。この地方には広大な馬牧場が作られました。日本の競馬はアイヌから奪った土地によって可能になっているのです。

 日本におけるアイヌ民族のこのような運命は、白人に虐殺され、土地を奪われ、差別されてきた南北アメリカの先住民(インディアン、イヌイット、インディオ)やオーストラリアの先住民(アボリジニ)ときわめて似ています。

近年、地球環境問題の深刻化にともない、自然と一体になって生きていた先住民族の知恵が新たな脚光を浴びています。それとともに、いわゆる文明民族が先住民族に対して行なった虐殺と支配の歴史を反省し、先住民族の復権をはかる機運が少しずつ高まってきています。レラさんは、アイヌ復権運動の中心人物の一人で、世界各地の先住民族の人々とも広いネットワークを持っているようです。

 祭りの会場は、平取町内や二風谷から車でさらに2,30キロ奥に入った川沿い(沙流川の支流の貫気別川)にありました。会場も台風の被害を受けました。会場は元来、小川に向かってなだらかに下がっていく傾斜地でであったのですが、傾斜地部分が台風で増水した川によってえぐり取られ、途中から、眼下の濁流に向かって垂直の崖になっています。洪水の激しさを示しています。

 
舞台向かって左側がすぐ崖になっている
舞台右側にはピースポールが建っている

そもそもこの会場は、シャクシャインの戦いのときに大勢のアイヌが虐殺された場所だといいます。川向こうには、アイヌの墓地があるそうです。

 今回、台風、アイヌモシリ祭、フラッグセレモニーが重なり、アイヌと和人との過去の歴史が大きく浮かび上がってきたことは、不思議な「意味のある偶然の一致」ですが、それにさらに、日本テレビの放映という偶然の一致が加わりました。

 フラッグセレモニーが開催される8月16日(土)の朝、日本テレビ系列で放映される桂文珍の「ウェイクアップ」という番組にレラさんが登場し、アイヌ民族の自然との共生という英知について語りました。あとで聞くと、このビデオは8月初めに収録されたものだということです。フラッグセレモニーが開かれるその当日にレラさんがテレビに登場するというのも、不思議なことです。

 会場にはたくさんのブースや小屋があって、食べ物や手作りの装飾品などを売っています。周囲には数多くのテントが並び、キャンプ場になっています。

 

16日の午後1時ころからフラッグセレモニーが開催されました。国旗旗手に7カ国ずつ舞台前に整列してもらい、それらの国旗に向かい、

  世界人類が平和でありますように
  ピリカ・ウレシパ・モシリ(アイヌ語)
  May Peace Prevail on Earth

と唱和しました。子供たち、若者、外国人がおおぜい旗手になってくれました。行事が進むにつれ、会場には喜びの波動が広がっていきました。

    

 アイヌと和人の因縁の土地でフラッグセレモニーが開催できたことは、たいへん有意義だったと思います。

 今後、「アイヌモシリ1万年祭」がやがて、平取町や北海道の理解と支援を得て、世界中の先住民族の代表がつどい、フラッグセレモニーと地球生命体への感謝が行なわれる一大イベントになることを期待いたします。


【関連行事】
  2004年8月17日、アイヌモシリ1万年祭でフラッグセレモニー

  2004年6月22日、先住民族とともに地球の平和を祈る行事

【関連ページ】

  ボランティアの手によって開かれた五井平和財団World Peace Prayer Society関係の行事

  地球生命体感謝プロジェクト


【参考情報】
田口ランディ「アイヌのシャーマンに教えられたこと」