明治・大正期
日本軍艦 機関部データ集

第1章 基本計画



戦艦 富士。円缶10基を搭載し、煙路は第1煙突に6基、第2煙突に4基を導設。


1-1. 機関部の基本仕様


1-1-1. 戦艦

Name D Vd Qd B F Nb Pb Pe E Ns Rd Rs ds
Royal Sovereign 14,150 16.5 11,000 8 10.9 10.5 3VTE 2 108
富士・八島 12,450 18.25 13,500 10 10.9 10.5 3VTE 2 120 5.18
Majestic 14,820 17.0 12,000 8 10.9 10.5 3VTE 2 100 5.18
Canopus 12,950 18.0 13,500 20 21.1 17.6 3VTE 2 108
敷島 14,850 18.0 14,500 25 19.0 14.8 3VTE 2 120 5.18
初瀬 15,000
Formidable 15,000 18.0 15,000 20 21.1 17.6 3VTE 2 108
朝日 15,200 18.0 15,000 25 21.1 17.6 3VTE 2 108 5.41
三笠 15,120 18.0 15,000 25 21.1 17.6 3VTE 2 120 5.18
Duncan 14,000 19.0 18,000 24 21.1 17.6 4VTE 2 120 5.18
King Edward VII 16,500 18.5 18,000 10 14.8 4VTE 2 120
6
香取 15,950 18.5 16,320 20 16.2 14.1 4VTE 2 120 5.26
鹿島 16,400 18.5 15,600 20 16.2 14.1 4VTE 2 120 5.18
Lord Nelson 16,500 18.0 16,750 15 19.3 17.6 4VTE 2 125
薩摩 19,200 18.25 17,000 20 16.5 14.8 4VTE 2 120 5.33
Dreadnought 18,110 21.0 23,000 18 17.6 13.0 DT 4 320
安芸 19,800 20.0 21,600 15 18.3 17.6 DT 2 255 4.11
河内・摂津 20,800 20.0 25,000 16 19.3 17.6 DT 2 245 4.06
Orion 22,500 21.0 27,000 18 16.5 12.3 DT 4 320
扶桑 29,330 23.0 48,000 24 19.3 17.9 DT 4 280 3.35
3.43
山城 3.35
伊勢 29,900 24.0 56,000 24 19.3 17.9 PGT 4 290 3.43
日向 13.0 310
Queen Elizabeth 29,150 23.0 56,000 24 16.5 12.3 PGT 4 275 3.65
長門・陸奥 32,720 26.5 66,750 15 19.3 16.2 AGT 4 230 4.19
13,250 6
加賀・土佐 39,900 26.5 79,000 8 19.3 AGT 4 210
12,000 4

Name: 艦名
D: 常備排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [hp]、レシプロ機関は指示馬力ihp、タービン機関は軸馬力shpを示す
B: 主缶形式、円は円缶、べはベルヴィール式、ニはニクローズ式、バはバブコック・アンド・ウィルコックス式、宮は宮原式、ロはロ号艦本式を示す
F: 使用燃料、炭は石炭専焼、混は炭油混焼、油は重油専焼を示す
Nb: 主缶数
Pb: 主缶使用圧力 [kg/cm2]、太字は過熱式
Pe: 主機初圧力 [kg/cm2]
E: 主機形式、3VTEは3気筒直立3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、PGTはパーシャル・ギヤード・タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rd: 推進軸回転方向、内は内方回転、外は外方回転
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]、同一艦で2行記載は上段が翼軸(外舷軸)、下段が内側軸(内舷軸)を示す

<解説>
周知のように、英国建造の富士から鹿島までは石炭専焼缶・レシプロ機関、国産初の戦艦・薩摩は炭油混焼缶・レシプロ機関、安芸から伊勢級までが炭油混焼缶・直結タービン(伊勢級のみ巡航タービンを歯車減速装置により主タービンに結合したパーシャル・ギヤード・タービン)、長門級以降が重油専焼缶(一部炭油混焼缶)・オール・ギヤード・タービンです。

主缶の使用圧力は、円缶(戻管缶、スコッチ・ボイラ)は主機とほぼ同一ですが、水管缶、特にベルヴィール式は保有水量が小さいため、あらかじめ余裕を持たせて高く設定し、途中の加減弁(操縦弁)で機関使用圧力に合せて低減します。これは再蒸発によって蒸気の乾燥度を高め、蒸気の初期凝結(機関に進入した蒸気の一部が水に戻ってしまい膨張による有効仕事をしなくなること)を抑える効果も有ります。
蒸気温度はずっと飽和温度でしたが、安芸で日本戦艦初の過熱式が採用されました。これは発生蒸気を過熱器に通し、圧力により固有の飽和温度以上に過熱(スーパーヒート)するもので、蒸気の初期凝結を著しく低減しますので、数%の入熱(燃料)の追加で同一仕事量当り25%前後の蒸気消費量、ひいては燃料消費量の低減が図れます。
このように、作動流体の蒸気を高温・高圧とすることによって水と燃料の消費率が低減し、熱効率が向上します。換言すれば、蒸気機関の発達とは、使用蒸気の高温・高圧化による、高速化・大出力化・小型軽量化の過程です。

主機は、レシプロ機関では1基当りの出力が7,500ihp以下は3気筒直立3段膨張、それを超えるときは4気筒直立3段膨張となります。後者は高圧化・大出力化に伴って内径増大の著しい低圧シリンダを2分割したもので、往復部質量の釣合も改善されます(詳細は別項で述べます)。推進軸回転数はおおむね108〜120rpmでした。

タービン機関は、動作原理上レシプロ機関に比べて蒸気の初期凝結が少ないため燃料消費率を低減でき、回転運動のみのため機関自体が小型・軽量となり、また磨耗部分が軸受のみのため信頼性が高いことなどが艦艇の主機として適しています。ただし、当初は大馬力を伝達できる減速装置が得られず、推進軸(回転数はおおむね220〜300rpm)とタービン軸とを直結したため、タービンの外径が非常に大となり、推進器は逆に小径となりました。これは機関と推進器の双方に妥協を強いることとなり、お互いに効率が悪いため、まず出力の小さい巡航タービンのみに歯車式減速装置を介在させたパーシャル・ギヤード・タービンが採用され、巡航速力での燃料消費量を低減しました。次いで全部のタービンに歯車式減速装置を介在させたオール・ギヤード・タービンが実現し、機関と推進器の双方をそれぞれの最適速度範囲(オプティマム・スピード・レンジ)に合致させることにより、熱効率と推進効率の双方を改善できました。

推進軸数は、機関直結の場合はおおむね1軸当り12,500ihpを上限として決めていたようです。推進軸の回転方向は操艦上からは外方回転が有利とされていますが、レシプロ機関で内方回転の利点は、中央縦隔壁が無く機関室が一続きの場合、中央のポジションから左右両舷機の運動部分の監視をするのに便利なこととされ、一部の艦に採用されました。

扶桑級は計画速力22.5kt・計画出力40,000shp、伊勢級は計画速力23.0kt・計画出力45,000shpと公表されていましたが、防研資料により、実際の計画値は表中記載の通りと判明しました。


1-1-2. 装甲巡洋艦/巡洋戦艦

Name D Vd Qd B F Nb Pb Pe E Ns Rd Rs ds
O'Higgins 8,500 21.6 16,250 30 4VTE 2
浅間・常磐 9,700 21.5 18,000 12 10.9 10.9 4VTE 2 135 4.57
出雲・磐手 9,750 20.75 14,500 24 19.0 14.8 4VTE 2 155 4.57
Drake 14,150 23.0 30,000 43 21.1 17.6 4VTE 2 120 5.79
Monmouth 9,800 23.0 22,000 31 21.1 17.6 4VTE 2 140 4.95
八雲 9,646 20.5 15,500 24 18.0 14.0 4VTE 2 140 5.30
吾妻 9,307 20.0 16,765 24 19.0 15.0 4VTE 2 125 4.80
Giuseppe Garibaldi 7,350 19.7 14,000 24 15.0 3VTE 2 106
春日・日進 7,578 20.0 13,500 8 11.6 11.6 3VTE 2 106 5.10
Argyll 10,850 22.0 21,000 16 15.5 4VTE 2
6
Duke of Edinburgh 13,550 23.0 23,000 20 14.1 4VTE 2
6
Minotaur 14,600 23.0 27,000 24 14.8 4VTE 2
筑波 13,750 20.5 19,500 20 16.5 14.8 4VTE 2 150 5.03
生駒 20,500
Invincible 17,420 25.0 41,000 31 17.6 13.0 DT 4 275 3.35
3.05
鞍馬 14,500 21.25 22,500 28 16.5 14.8 4VTE 2 160 5.03
伊吹 14,850 22.0 21,600 18 18.3 17.6 DT 2 255 3.88
Indefatigable 18,500 25.0 44,000 32 17.6 13.0 DT 4 3.28
Lion 26,270 27.0 70,000 42 16.2 12.0 DT 4 275 3.45
3.73
金剛 26,330 27.5 75,000 36 19.3 14.4 DT 4 290 3.66
3.73
比叡
榛名 16.2
霧島 14.4
Tiger 28,430 28.0 85,000 39 16.5 DT 4 275 4.11
Renown 27,947 31.5 112,000 42 19.3 DT 4 275 4.11
Furious 19,513 31.5 90,000 18 16.5 AGT 4 330
Hood 41,200 31.0 144,000 24 16.5 AGT 4 210
天城・赤城 41,200 30.0 131,200 11 19.3 AGT 4 210
8

Name: 艦名
D: 常備排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [hp]、レシプロ機関は指示馬力ihp、タービン機関は軸馬力shpを示す
B: 主缶形式、べはベルヴィール式、円は円缶、ニはニクローズ式、宮は宮原式、ヤはヤーロー式、バはバブコック・アンド・ウィルコックス式、イはイ号艦本式、ロはロ号艦本式を示す
F: 使用燃料、炭は石炭専焼、混は炭油混焼、油は重油専焼を示す
Nb: 主缶数
Pb: 主缶使用圧力 [kg/cm2]、太字は過熱式
Pe: 主機初圧力 [kg/cm2]
E: 主機形式、3VTEは3気筒直立3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rd: 推進軸回転方向、内は内方回転、外は外方回転
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]、同一艦で2行記載は上段が翼軸(外舷軸)、下段が内側軸(内舷軸)を示す

<解説>
こちらも周知のように、英国建造の浅間級から国産初の装甲巡洋艦・筑波までは石炭専焼缶・レシプロ機関、生駒・鞍馬は炭油混焼缶・レシプロ機関、伊吹から金剛級までが炭油混焼缶・直結タービン、天城級以降が重油専焼缶(一部炭油混焼缶)・オール・ギヤード・タービンでした。なお、伊吹までが装甲巡洋艦、金剛級以降が巡洋戦艦の位置付けです。
オ・イギンズ(チリ)、浅間級、出雲級はいずれも英国の名造船官サー・フィリップ・ワッツの基本設計になるもので、建造はすべてアームストロング社エルジック造船所です。ちなみに、モンマウス級(別名ケント級、カウンティ級)はこれらの後に計画されたもので、出雲級がモンマウス級をベースにしたという説は時系列から見て誤りです。モンマウス級はむしろ先行するドレーク級の縮小版と言うべきものでしょう。

主缶の形式・燃料・使用圧力は、コレスポンド(対応)の戦艦とほぼ同一としていましたが、主機は戦艦が3気筒直立3段膨張機関であるのに対し、装甲巡洋艦は回転数が約15%大のため、釣合に優れた4気筒直立3段膨張機関を搭載しています。ただし、イタリア建造の春日級は購入の背景から他の諸艦と発達系列を異にしており、円缶と低速回転の3気筒直立3段膨張機関の組合わせでした。

生駒は建造時より重油噴燃装置を装備した初の軍艦で、バーナは圧力(空気)式でした。これにより、缶の力量(蒸発能力)が石炭専焼の場合と比べて10〜15%増大することが確認されました。

機関出力が前級より格段に向上したのは、巡洋戦艦金剛級と同天城級で、それぞれ前級の2.37倍、2.05倍の出力増大を達成しています。これを可能としたのは、前者のヤーロー式など小径水管缶、後者の重油専焼缶の採用でした。ちなみに、小径水管とは外径1-3/4in (44.5mm) 以下の水管に対する呼称です。

装甲巡洋艦は戦艦よりも3ノット程度優速のため、レシプロ機関では推進軸回転数は一部を除き125〜160rpmでした。回転数が戦艦よりもやや高いため、レシプロ機関では往復部質量の釣り合わせ(不釣合質量の影響は角速度つまり回転数の自乗に比例して増大)に配慮し、1基当りの出力が7,000ihp以下は3気筒直立3段膨張、それを超えるときは4気筒直立3段膨張となります。

巡洋戦艦もコレスポンドの戦艦より3〜4ノット優速のため、直結タービンでは推進軸回転数を戦艦と同等としながらも、推進器を一回り大型とし、おおむね1軸当り16,000ihpを上限として推進軸数を決めていたようです。

金剛級は計画速力27.5kt・計画出力64,000shpと公表されていましたが、タイプシップのライオン級と比べて計画出力が過小です。種々の資料の比較検討により、実際の計画出力は表中記載の通り75,000shpと推定されます。


1-1-3. 防禦巡洋艦/軽巡洋艦

Name D Vd Qd B F Nb Pb Pe E Ns Rd Rs ds
和泉 2,920 18.0 5,500 4 6.3 6.3 2HC 2 96 4.52
浪速 3,650 18.0 7,500 6 6.3 6.3 2HC 2 122 4.27
Charleston 3,730 18.9 7,650 6 2HC 2
畝傍 3,615 17.5 6,000 9 6.0 6.0 2SC 2
千代田 2,400 19.0 5,600 6 11.2 11.2 3VTE 2 206 3.12
松島 4,217 16.0 5,326 6 12.0 12.0 3HTE 2 108 4.40
Baltimore 4,413 19.0 10,750 4 3HTE 2
秋津洲 3,100 19.0 8,400 4 10.5 10.5 3HTE 2 154 4.10
須磨 2,657 20.0 8,384 8 10.5 10.5 3VTE 2 170 3.75
明石 2,756 19.5 7,890 9 150 3.80
25 de Mayo 3,180 22.4 14,050 4 VTE 2
吉野 4,150 23.0 15,500 12 10.9 10.5 4VTE 2 165 4.19
高砂 4,160 22.5 15,500 8 10.9 10.5 4VTE 2 165 4.19
Chacabuco 4,160 23.0 15,700 8 4VTE 2
笠置 4,900 22.5 17,000 12 10.9 10.5 4VTE 2 165 4.27
千歳 4,760 22.5 15,500 12 10.9 10.9 4VTE 2 153 3.96
新高 3,366 20.0 9,400 16 14.8 14.8 4VTE 2 185
音羽 3,000 21.0 10,000 10 16.2 14.1 4VTE 2 200
Amethyst 3,000 22.5 12,000 10 DT 3
利根 4,100 23.0 15,000 16 16.5 4VTE 2 160 3.96
筑摩 4,950 26.0 22,500 16 19.3 17.5 DT 2 340 3.20
矢矧 19.3 14.1 4
465 2.22
平戸 19.3 17.5 2 340 3.20
Arethusa 3,750 28.5 40,000 8 16.5 DT 2
天龍 3,230 33.0 46,100 8 18.3 16.2 AGT 3 400 3.05
4,900 2
球磨 5,100 36.0 84,000 10 18.3 16.2 AGT 4 380 3.35
6,000 2
長良 5,170 同上

Name: 艦名または級名
D: 常備排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [hp]、レシプロ機関は指示馬力ihp、タービン機関は軸馬力shpを示す
B: 主缶形式、円は円缶、低は低円缶、機は機関車型缶、ニはニクローズ式、宮は宮原式、イはイ号艦本式、ロはロ号艦本式を示す
F: 使用燃料、炭は石炭専焼、混は炭油混焼、油は重油専焼を示す
Nb: 主缶数
Pb: 主缶使用圧力 [kg/cm2]、太字は過熱式
Pe: 主機初圧力 [kg/cm2]
E: 主機形式、2HCは2気筒横置複式(2段)膨張、2SCは2気筒斜置複式膨張、3HTEは3気筒横置3段膨張、3VTEは3気筒直立3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rd: 推進軸回転方向、内は内方回転、外は外方回転を示す、同一艦で2行記載は上段が翼軸(外舷軸)、下段が内側軸(内舷軸)/中央軸を示す、3軸艦の中央軸は右回転
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]

<解説>
こちらはやや古いタイプの防禦巡洋艦から初期の軽巡洋艦までを含んでいます。ちなみに、防禦巡洋艦protected cruiserとは防禦甲板を有する巡洋艦で、厳密にはdeck protected cruiserとなります。これに水線部装甲帯を追加したものが既述の装甲巡洋艦arnoured cruiserで、厳密にはbelt armoured cruiserということになるでしょう。

初期の防禦巡洋艦は船体が小さいため、主缶は炉筒・燃焼室・煙管が折り返しでなく一直線の低円缶(ガンボート・ボイラ)や、缶胴と火室を別構造とした機関車型缶(ロコモーティヴ・ボイラ)を用いたものが存在した反面、缶の上部に節炭器を備えたベルヴィール式は高さが大のため用いられていません。

主機も初期のものは、機関室の高さに制約があるため、2気筒横置2段膨張、または3気筒横置3段膨張のレシプロ機関が採用されました。当時の世界最速巡洋艦と言われた吉野には日本巡洋艦で初めて4気筒直立3段膨張機関が採用され、以後利根まではこれが定着し、推進軸回転数はおおむね150〜200rpmと、装甲巡洋艦よりさらに高めとしています。

筑摩級以降は主機がタービン機関となり、イ号艦本式混焼缶の採用とあいまって、機関出力を前級の1.5倍としています。本級は筑摩と平戸が2軸推進、矢矧が4軸推進でした。次の天龍級ではロ号艦本式重油専焼缶とオール・ギヤード・タービンの搭載により、機関出力を一躍前級の2倍強とし、さらに次の球磨級では缶の大力量(大蒸発量)化によって機関出力を1.7倍強としています。後2者は水雷戦隊旗艦として、特に高速力が要求されたためでした。なお、天龍級は日本巡洋艦としては珍しく推進軸を3基とし、回転方向もタービン推進艦としては珍しく内方としていました。


1-1-4. 駆逐艦

Name D Vd Qd B F Nb Pb Pe E Ns Rd Rs ds
Desperate
(30-knotter)
310 30.0 5,700 3 15.5 4STE 2 390
東雲 275 30.0 5,400 3 15.5 15.5 4STE 2 400 1.93
305 31.0 6,000 4 17.6 17.6 4VTE 2 390
363 31.0 6,500 4 17.6 17.6 4VTE 2 390 2.13
白雲 373 31.0 7,000 4 16.2 15.9 4VTE 2 390 2.10
春雨 375 29.0 6,000 4 17.6 17.6 4VTE 2 380 2.13
神風 375 29.0 6,000 4 4VTE 2
Afridi (Tribal) 855 33.0 16,500 6 15.5 DT 3
海風 1,030 33.0 6,280 2 17.6 14.1 DT 3 700 1.88
1.83
14,220 6
山風 6,280 2 1.91
14,220 6
530 30.0 9,500 5 17.6 4VTE 3 390 2.06
1.98
浦風 810 30.0 22,000 3 18.3 PGT 2 2.34
595 30.0 5,700 2 17.6 4VTE 3 390
3,800 2
磯風 1,105 34.0 20,400 3 18.3 14.1 PGT 3 750 1.98
6,600 2
755 31.5 10,000 2 18.3 15.5 PGT 2 700 1.98
6,000 2
770 31.5 17,500 2 18.3 16.2 PGT 2 730 1.98
2
谷風 1,180 37.5 34,000 4 18.3 16.2 AGT 2 400 2.90
770 36.0 21,500 3 18.3 16.2 AGT 2 400 2.59
若竹 820 35.5 21,500 3 18.3 16.2 AGT 2 400
峯風 1,215 39.0 38,500 4 18.3 14.4 AGT 2 400 2.90
神風(2代) 1,270 37.25 38,500 4 18.3 14.4 AGT 2 400

Name: 艦名または級名
D: 常備排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [hp]、レシプロ機関は指示馬力ihp、タービン機関は軸馬力shpを示す
B: 主缶形式、ソはソーニクロフト式、ヤはヤーロー式、イはイ号艦本式、ロはロ号艦本式を示す
F: 使用燃料、炭は石炭専焼、混は炭油混焼、油は重油専焼を示す
Nb: 主缶数
Pb: 主缶使用圧力 [kg/cm2]、太字は過熱式
Pe: 主機初圧力 [kg/cm2]
E: 主機形式、4STEは4気筒傾斜3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、PGTはパーシャル・ギヤード・タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rd: 推進軸回転方向、内は内方回転、外は外方回転を示す、3軸艦の中央軸は右回転
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]、同一艦で2行記載は上段が翼軸(外舷軸)、下段が中央軸を示す

<解説>
東雲級から白雲級までが英国建造、春雨級以降が国産で、当初は日本近海での作戦を前提とした小型のもの(のちに3等駆逐艦に類別)でしたが、日露戦争後に太平洋方面に予想作戦海域が広がったのに対応し、海風・山風の2艦が初の航洋型駆逐艦として誕生し、以後大型(1等駆逐艦に類別)・中型(2等駆逐艦に類別)の2本立てで発達しています。

駆逐艦は当初、敵水雷艇の撃退と敵主力艦への水雷攻撃が任務で、高速力が必須要件とされ、小型の船体に大出力機関を搭載するため、主缶は当初より小型・軽量で水管式のソーニクロフト式、ヤーロー式、および後者をベースにした艦本式が用いられました。海風・山風級では重油専焼缶と炭油混焼缶との混載となり、さらに浦風では重油専焼缶のみとなって大力量化が進みました。重油専焼缶のみの装備が定着するのは谷風級以降です。

主機は、推進軸回転数がおおむね380〜400rpmと高速であるため、当初からダイナミック・バランスを重視した4気筒3段膨張のレシプロ機関が採用されていました。海風級では初めて直結式タービン機関を採用し、機関出力を一挙に前級の約3倍としています。直結式の推進軸回転数はおおむね700〜750rpmと、レシプロ機関に比べて2倍近くにはね上がりましたが、これは推進器の効率を若干犠牲としても、主機の小型軽量化を重視したものです。谷風級以降はオール・ギヤード・タービンとなり、機関出力も30,000shpを超え、計画最大速力も37.5ノットとなりました。推進軸回転数は400rpmとレシプロ機関並みに戻っています。次の峯風級では機関出力38,500shp、計画最大速力39.0ノットとなり、そのうち島風(初代)は公式試験で最大速力40.698ノットを記録し、日本の駆逐艦で初めて40ノットの大台に乗せています。

なお、浦風級は日本駆逐艦として最後の外国(英国ヤーロー社)建造艦で、巡航時の燃料節減のためタービン・ディーゼル併用を企図していましたが、WW1の勃発に伴ってドイツからフェッティンガー式流体継手の輸入が不可となったため、やむなく純タービン推進式として竣工したものです。


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