ンダは不思議な魅力を秘めた自動車メーカーである。ホンダ・ブランドを冠して送り出されるクルマとオートバイは、すべてが個性的だし、趣味性が強く打ち出されている。また、クルマにかけるエンジニアの思い入れも極めて強い。その典型といえるのがホンダS500に始まるSシリーズだ。

 S500からの10年間、ホンダは独創的なクルマばかり世に放ってきた。DOHCエンジンを積む高性能スポーツカーのSシリーズを筆頭に、軽自動車の価値観を変えたN360、FWDの楽しさを人々に知らしめたホンダ1300、軽自動車の世界に新風を吹き込んだスペシャリティ・ミニのホンダZ、スペース効率を徹底追求したコンパクト2ボックスのシビックと、いずれも強い個性の持ち主である。

 して、忘れることができないのが、72年秋に発表されたホンダ・ライフ・ステップバンである。これは、街で見かけることが多く竹内聡氏(クラブメンバー)によるイラストなったクイック・デリバリーバンの元祖といえるユニークなミニ・ミニバンだった。

 最大の特徴は、商用車でありながらRV感覚を打ち出し、スペース効率の高いミニバンに仕立てたことである。「軽の枠」ともいうべき、全長と全幅が厳しく制限されたミニマムなサイズの中で、広くて使い勝手のいい空間をホンダ流に徹底追求した結果が、元祖トールボーイになった。そして、それを高いレベルで商品にした。
 元祖トールボーイのディメンジョンは、全長2995mm×全幅1295mm×全高1620mmである。

 ステップバンの特徴一杯のボディは、4ドア4人・2人乗りで、リアには便利な上下分割式のドアを持つ。そしてリア・クォーターにもやや小さなウィンドウがある6ライト。窓は背の高さからすると小さめだが、室内はとてもルーミィーな仕上がりである。

 
ンダ・ライフ・ステップバンという車名からもわかるように、ステップバンはNの後継車たる軽乗用車のライフをベースに開発されたセミキャブオーバータイプの軽商用車だ。パワーユニットやミッション、サスペンション、ブレーキなどのメカニカルコンポーネンツは、すべてライフから流用されている。


 短いノーズに収められているエンジンは水冷直列2気筒SOHCのEA型で、排気量は356ccだ。パワースぺックはライフの標準版のグロス30ps/8000rpm、2.9kg・m/6000rpmで、ミッションは4段、もちろん駆動方式はライフと同じ前輪駆動のFWDを採用した。足回りもライフに準じており、フロント/マクファーソン・ストラット+コイル、リア/半楕円リーフのリジッドである。ラックアンドピニオン式のステアリングは、ジョイントを利用した衝撃吸収式を備えている。また、ステアリングホイールは、そのボディ形状やシートポジションに合わせて、ぐっと寝ている。ちょうどミニクーパーのようなナッフィールド・スタンスで走らせることになる。

 テップバンのすごさは、コスト低減を図るために流用部品を多く使ったことと合理的な設計を行ったことだ。ドアは同じプレスで作られた左右対称ドアで、前の右ドアと後ろの左ドア、前の左ドアと後ろの右ドアは共通部品である。フロントグリルはTN360のものだし、2分割式のリアゲートも、アンダーゲートとリアランプはLN360から流用された。

 カー、カラーテレビ、クーラー(エアコン)が身近なものとなり、3C時代の幕が開けたのが、70年代前半だ。カラーテレビが茶の間に浸透し、ミュンヘン・オリンピックをカラーで観戦した家族も多かった。だが、マイカーを新車で持てる人はまだ少ない。中古車が精一杯で、商用車をセダン代わりに使っていた人も多かったのである。

 ステップバン・スーパーデラックスの価格は40万3000円(スタンダードは37万6000円。ともに東京地区店頭渡し現金価格。)だった。コーヒー1杯の平均価格が115円、ラーメンでも125円で食べられた時代だから、けして安いとはいえない。が、乗用車よりはるかに安かったし、ステップバンの機能を考えれば満足感は高かった。この価格でユーザーに提供できたのは徹底したコストダウンに負うところが大きい。RV感覚を先取りしたステップバン。これこそ70年代のクリエイティブ・ムーバーだったのである。のちにかわいいピックアップもラインアップされている。


カタログの雰囲気を復刻しました(^^ゞ

楽しさもドンと運べる5ドアの新鮮バンHONDA LifeStepvan新発売
!!
 まったく新しい商用車、5ドア4人乗りの<ライフ>ステップ・バン。
 ミニボンネットにハイルーフ、走っている姿をみたら、だれだってひとめで好きになってしまう、おかしなスタイルです。
いちど乗ったら、こんどはその働きやすさが気に入ります。
 5ドアだから、らくに乗りおりでき、どこからでも積みおろしできます。
低い床面、高い天井で、かさばるもの、長いものもらくらくです。
デスクタイプのインストルメントパネルなど「走るオフィス」ともいえる便利なアイデアの数々。
そしてキビキビした走行性と、ひときわ静かな室内は、傑作車<ライフ>そのまま。
 ご商売をもっと現代感覚にあわせて展開しようとお考えの方。
ライバルに先がけてフレッシュにイメージチェンジをお考えの方。
<ライフ>ステップ・バンでいきに走りだしてください。
「変わりましたね!」と驚かれることうけあいです。
低い荷台。
積み荷をえらばぬハイルーフ。
どこからでも積みおろしができる5ドア。
これが新しいバンのかたちです。

大きなサイドドア、上下2枚開きのリアドア
 どこから手でも機敏に積みおろしできます。
地上からわずか49cmの低床で、かさばる荷物も苦になりません。
そして、ハイルーフ。
荷室の天地が113.5cmもあるので、長い荷物も難なく積めます。
荷室も、リアシートを倒すと奥行127cm幅110cmとたっぷりした広さです。

積み荷のためのアイデアもたくさん
 上だけ開いて荷物をとりだせるリアドア、ガードパイプ兼用の後席用ハンドグリップ、アシスタントシート下の物入れスペースなどです。
傑作車<ライフ>の安定したメカニズムを、そっくり受けつぎました。

ハンドルを切った方向へすなおに進んでいくFF。
前がマクファーソン式独立懸架、後がリーフスプリングで走破性・乗り心地ともに抜群のサスペンションです。

エンジンは、ホンダ独自のバランサー機構がついた4サイクルOHC水冷。静かさ、なめらかさ、フラットトルクの粘り強さには定評があります。
低鉛ガソリンが使えるなど、公害対策も盛りこまれています。

安全設計・安全装備も充実しています。

@頑丈なモノコックボディA衝撃吸収式ステアリングハンドルB室内に配管されたブレーキパイプC後部からのショックを吸収する位置においた盗難防止機構つきスペアタイヤDアンチバースト型ドアロックE大型リアコンビネーションランプF座ったままで簡単に調節できる大型ドアミラーなど、ステップ・バンの積極安全設計は、数かぎりありません。
HONDA 本田技研工業株式会社東京都中央区八重洲5―5
安全は正しい運転と整備から

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