馬力とトルクは反比例する?
「馬力とトルクは反比例する」、「馬力とトルクは相反する関係にある」
という言葉をしばし耳にしますが、実際はどうなのでしょうか?
結論から言いますと、馬力とトルクは比例関係にあります。
決して相反するものではありません。
馬力とは仕事率、トルクとは回転させる力です。
力と仕事率の二つは力学の分野において非常に結びつきが強い要素です。
トルク(kgm)に、その発生回転数(rpm)を掛けて、さらに0.001396という定数を掛けると馬力が出ます。
8000回転で、6kgmのトルクを発生している状態では、67馬力の出力が出ています。
8000回転のトルクを7kgmになるようチューンした場合、78馬力の出力が出ます。
このように、基本的に馬力とトルクは比例関係にあります。
馬力型とトルク型エンジン
では、なぜこのような誤解が生まれたのでしょうか。
おそらく、「トルク型エンジンと馬力型エンジンは両立が難しい。」
という言葉から生まれた誤解なのではないかと考えています。
高回転のトルクを多少犠牲にすることで、低速トルクを重視したタイプのエンジンを
「トルク型エンジン」と称することがあります。
逆に、低速トルクを犠牲にして、高回転でのトルクを稼いで、馬力を追求したエンジンを
「馬力型エンジン」と称する場合もあります。
特定の回転域のトルクを求めてチューンを煮詰めていくと、
ある程度のところで他の回転域のトルクを犠牲にすることは避けられなくなります。
いわゆるパワーバンドが狭くなるという状態です。
このレベルまでチューンをした経験のある人や、
レーサーの開発などに携わっている人が、
チューンの難しさを語った言葉なのでしょう。
馬力とトルクの両立
あと、最近よく思うのですが、公道用市販車というのはレーサーとは別の意味で
相当ハイレベルなチューン(最適化)をされているのではないでしょうか?
公道で、私のようなへっぽこライダーに運転されるということは、
ある意味サーキットよりも過酷な要求がバイクに突きつけられます。
下手くそな私でもエンストせずに発進し、高速域での加速もこなすなど、
公道用市販車は、低速トルクと出力をかなり高い次元で両立しています。
さらに、耐久性もかなりの余裕があります。
これらの要求を達成するのは、レース車両の開発以上に難しいのかもしれません。
「トルク型エンジンと馬力型エンジンは両立が難しい。」という言葉は
もしかしたらメーカー系技術者の方の嘆きから生まれた言葉なのかも知れません。
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