
僕は小さいときから車が大好きで、母親とデパートへ行くたびミニカーをねだ った。カタカナが読めるようになると、買い与えられた車のカタログを一日中 飽きることなく眺め、道路を走る車のほとんどを見分けることができるように なっていた。やがてモーターで走るプラモデルを覚え、レーシングカーの格好 良さに夢中になった。もちろんスーパーカー・ブーム世代でもあり、必死の思 いでカードも集めていた。それがある日、5歳年上の兄が買ってきたバイク雑 誌を見る機会が与えられ、一気に2輪車へと興味は移っていった。一番最初に 欲しいと思ったバイクはRZ50だったと記憶している。当時はまだ小学校の 高学年でしかなかったが、最高速度が100km/hを超えていたことには驚愕し た記憶がある。しかし当時は免許を取るという概念がなかったためか、とにか く小型軽量こそがベストだと考えていた。それからしばらくしてRZ350を 好きになり、やがて免許を取れる年齢に達した頃、目標はRZV500Rとな っていた。エンジンのレイアウト云々ではなく、4本のチャンバーから吐き出 される紫煙に惚れてしまった。しかしRZVに乗るためには、お金はもちろん であったが、それ以上に限定解除という最大の難関が待ち構えていた。某バイ ク雑誌に、何回で合格したとか、その難しさを誇張する記事が毎月載せられて いた。半分絶望していたところにRG400Γが登場したのである。僕の通学 していた高校では、一応原付を含めて2輪車の免許は取得してはいけないこと になっていた。優等生を気取っていた僕には、禁を破ってまで免許を取得する 勢いがなかった。大学へ進学することも決めていたし、無理をする必要はない と自分に言い聞かせていた。だが、いざ大学に入ってみると、その時既に自動 車の免許を取得していた関係で、再び車への興味が強くなり、バイクへの情熱 はわき上がってこなかった。そして母親の乗っていたEP71スターレットを 経由して、ついにAE86トレノを入手するに至る。EP71では、速く走る ための基本を学んだ。ヒール・アンド・トゥやタック・イン、ライン取りなど である。そして当時既に、決して速くはなかったAE86で、アメリカ映画の カー・チェイスさながらのドリフト走行をマスターした。僕は走り屋と呼ばれ るようになっていた。しかし更なるポテンシャル・アップのための資金には恵 まれていなかった。メッシュのブレーキ・ホースに機械式のLSDを入れるの が精一杯だった。そして峠においては、性能の良い車に、どれだけお金をかけ たかで勝敗は左右された。虚無しい行為を繰り返すことに意味を感じられなく なった翌年の2月。僕は中型自動二輪の免許を取り、RG400Γを手に入れ ていた。それが全ての始まりだったのである。 |
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