●大幅改良を受けた4A-GE型エンジン

今回のフルモデルチェンジで4A-GE型は『全面新設計エンジン』と呼べる程の、 大改良が施された。今回の改良は、VTECを搭載した本田技研のエンジンに対抗した もので20バルブエンジンとなり、可変バルブタイミング機構を装備してリッターあたり100psを達成した。 このエンジンにはヤマハ発動機は技術提供せず、デビューする4年前からトヨタ社内の若いエンジニアが 試作を繰り返したという。

シリンダヘッドは一新され銀色に塗装され、TWINCAM20と書かれた美しいヘッドカバーが目を引く。 そして一気筒あたり5バルブのヘッドが採用された。 エンジン性能を向上させるに当たって吸入空気量を増大したい。 そのために有効吸気バルブ面積を拡大したいのだが、搭載要件から エンジン全高を従来型と同等にする必要がある。 そこで直打式DOHC5バルブを採用して吸入空気量を大幅にアップさせることができた。 従来の吸気2バルブと比較して吸気3バルブとなるとバルブリフト量を最適化することで吸入空気量が 大きく変わるという。 それでは排気側も3バルブにして一気に6バルブにすれば良いのではないかという考えも思い浮かぶが、 6バルブになると有効バルブ面積(バルブの軸の部分を除いた面積)が少なくなって 有効バルブ面積が確保できないために5バルブエンジンが最適とされた。 従来の16バルブエンジンよりもバルブ一本あたりの重量低減が可能となり、 バルブの追従性を向上できて高回転化、馬力損失低減を実現した。 バルブ径は吸気が従来の30.5mmから26.5mmへと小さくなり、排気が従来の25.5mmから26mmへと大きくなった。 このほかシリンダヘッド新設計に伴い、5A-FE型でも実現した縦型細径吸気ポートを採用して吸気効率を上げた。

カムシャフトも変更を受けた。吸気側カムシャフトは5バルブ化及びVVT(Variable Valve Timing)の採用で、 カムシャフトの全長が412mmから463mmに変更されている。また5バルブ化のメリットを最大限生かすために バルブリフト量は従来型よりも吸気側で従来の7.10mmから7.97mmへ、排気側で従来の 7.10mmから7.60mmへ増大した。そしてタインミングベルトで駆動されるプーリーには 可変バルブタイミング機構(VVT)が組み込まれた。VVTは運転状態によりカムシャフトの位相を切り替えるシステムで エンジンの総合性能の向上に寄与する。スポーツエンジンでは高速よりのバルブタイミングが選ばれるので 低中速トルクが細くなる傾向がある。この欠点を補うのがVVTである。 VVTにはOSV(オイルスイッチングバルブ)が内蔵されている。このOSVに運転状態により油圧をかけて カムシャフトの軸を回転させてクランク角で30°変化させる。これによりバルブオーバーラップを増やした低回転型のバルブタイミングと、 吸気バルブ閉じ直のオーバーラップを早くした高回転に強いバルブタイミングを両立することができるのである。 つまりアイドリング時、OSVはOFFなってバルブオーバーラップが少なくアイドル回転は安定する。 中低速ではOSVをONにして吸気バルブの閉じる時期を早くして低速トルクを向上させ、高速域ではOSVを OFFにして吸気バルブの閉じる時期を遅くして高速域での吸気効率を向上させるという仕組みになっている。 これを数値で示すと回転数6900rpm以下の場合、スロットル開度が大きいときはON、小さいときはOFFとなる。 回転数が6900rpm以上の場合にはOFFとなる。 余談だが、筆者がAT210系カリーナGTに試乗した際、8000rpmまで綺麗に回るスポーツエンジンの魅力に感動した。 普通に乗っても特にトルクが薄いという印象は無かったが、試しにVVTのコネクタを外してVVTカットの状態で試乗すると 確かに低速トルクが薄くなった。しかし、逆に高回転でのパワーの盛り上がりが強く感じられて スポーティな印象を持てたが普段の街乗りで低中速トルクが低いのは扱いにくい。 やはり全域での高性能を得るにはVVTが必要不可欠なのである。

エンジン本体にも改良が加えられた。コネクティングロッドは温間鍛造による高強度のコネクティングロッドを 採用した。従来はブランク(素材)を赤熱させて型鍛造を行っていたが、鍛造温度を従来よりも若干下げて 表面の肌を緻密にすることで疲労強度を上げ、その分従来品より軽量化している。 (生産技術的にはブランクを加熱するエネルギーが節約できる) ピストンは頭部形状を変更すると共にショートスカートにしてフリクション低減、レスポンス向上、 低騒音化に配慮した。また圧縮比は従来の10.3から10.5にわずかに向上している。

冷却性能も向上した。ラジエータの性能アップや外気の効果的な導入はもちろん、 ラジエータからの冷却水をシリンダヘッドの吸気側下部冷却水路に流して シリンダブロックより先に通す吸気側先行冷却方式を採用した。これによって吸気温度を下げて耐ノック性と 体積効率の向上を図った。また冷却水をシリンダボア外周に強制的にUターンさせる 冷却水ブロックUターン方式を採用し、燃焼室壁温を各部均一に低下させて 信頼性の向上を図った。

また吸排気系にも改良が加えられている。従来一つだったスロットルを4連化し各気筒独立スロットルとなった。 吸気ポート近くにスロットルを配置することによりドライバーの意思に機敏に反応する優れたレスポンスを実現した。 特にMT車には二軸連結の非線形スロットルリンクを採用してドライバビリティの向上を図ったている。 また、サージタンクは制震鋼板を採用し騒音低減に貢献した。 エキゾーストマニホールドをパイプ式のステンレス製となった。耐熱性が向上したことで、 高速域の空燃比のリーン化が達成でき高速燃費が向上した。またブランチ長のチューニングにより 排気脈動効果を利用し、排気工程末期に負圧波を発生させ燃焼室の排出ガスを吸いだして体積効率を向上させた。

このような様々な技術を取り入れて最高出力160ps/7400rpm、最大トルク16.5kgm/5200rpmを得た。 この4A-GE型エンジンはハイテク高出力エンジンとして売り出されたが、 このエンジンを実際にテスターにかけて出力を計測したチューニングショップや ライバルメーカーによると、実際には140ps程度しか出ていないという実験結果もあったという。 メーカーがチューニングに苦戦して発売までに間に合わなかったという噂も囁かれた。 このような状況を払拭するには1995年のフルモデルチェンジを待つほか無かった。

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