●安全性と7代目カローラ

7代目カローラが開発中のころ、NHKスペシャルという番組で国産車の国内仕様と輸出仕様の安全性の格差を 告発する衝撃的な番組が放送された。番組ではアメリカ仕様と日本仕様の5代目カローラが一台ずつ用意された。 その二台を比較すると輸出仕様の方が何故か重いのである。 両者のドアを電動グラインダーで切断して内部を開き観察すると、 輸出仕様車には側面衝突に対して効果を発揮するサイドインパクトバーがついているのである。 トヨタに限らず、国産車メーカーでは安全装備を取り付け可能なように設計しているのにも関わらず、 国内向けにはそれを取り付けないという行為が行われていたのだ。 この番組が放送されるやいなや、国産自動車メーカーはバッシングを受けることとなった。 これ以降、国産車に次々にエアバッグやABSをオプション設定するようになった。 その番組が放送されるまで、国産車では安全は金にならないという考えが主流であった。 安全にお金をかけ過ぎることなく、アクセサリーを充実させるなど他の部分に回したほうが良いとさえ考えられてきた。 保安基準も安全性に関してはまだまだ基準が緩いものであった。海外では日本よりも自動車を高速で 使用するため交通事故も多い事も手伝って行政側から厳しい安全基準が示された。 国産車メーカーは輸出によって多額の利益を得ており、その重要なマーケット(主にアメリカ)で 着実に販売するためその安全基準にパスするようにきっちり作られていたが、 国内仕様にはその対策が行われないのである。

一応、国内仕様車にも数々の安全装備が付けられてきたが一部の高級車に限られたために贅沢品とみなされ なかなか浸透しなかった。安全装備は高価な上に効果を体験する機会になかなかめぐり合えないため、 ユーザーにその意味が理解されなかった。 更に悪いことには、国内仕様ではグレードによっても安全性に格差をつけていたのである。 ABSやエアバッグはそれまでにも設定自体はあった。しかしそれは最上級グレードにのみ組み合わせられたもので 所詮は「安全です」という宣伝用の設定に他ならない。 本当は取り付けられるのにも関わらず、「需要が無い」と下級グレードにはオプション設定さえしないことは 現代人の目から見れば、明らかに安全差別である。 このように安全への意識が低いことを隠れ蓑に安全装備を簡略化、差別化するという手法は日本に限られたことではなかった。 とある国の輸出仕様は、追突時のむち打ち症を軽減する前席のヘッドレストさえ装備されていないのである。 安全に対する関心が薄かった1960年代のモデルではなく1980年代の乗用車とはとても思えない。 これまではこのようなことが当たり前に行われていたのである。 1990年代に入ると日本では安全への意識が急速に上がったが、外国ではまだまだ発展途上の国がある。 現在でも例えば台湾仕様のカローラの廉価グレードにはエアバッグは装備されない。 現地での価格はれっきとした高級車クラスの価格であるのにも関わらずである。 つい最近でも国内向け仕様には後席中央に3点式シートベルトやヘッドレストが装備されていなかったが、 これも近年国内向けに採用され始めている。 今日では安全性をセールスポイントして最大限活用するようになったのである。

7代目カローラでは、安全意識が向上した国内のユーザーに向けて様々な安全デバイスが設定された。 従来からのものに加え、 予防安全の観点からは4輪ABSが全車にオプション設定された。(スーパーストラットサスペンション車は 横Gセンサー付き) 更に、後続車からの被視認性を高めるハイマウントストップランプを全車にオプション設定した。 衝突安全に対しても、世界各国の事故データを元にコンピュータ解析した衝突安全ボディ、 シートに直付けされた前席シートベルト、後席3点式シートベルト(中央席は2点式)、機械式SRSエアバッグ(全車にオプション)、 サイドドアビーム、室内難燃化材料の採用などが挙げられる。またエアバッグ装着車以外にも、 ステアリングのパッド部分にエネルギー吸収機構を採用してドライバーへのショックを和らげようとしている。 このように、世論の強い要望があったおかげで7代目カローラでは現代車並の装備を得られるようになった。 特に安全装備が高級グレードにのみオプション設定されたのとは違い、 あらゆるグレードで選べるようになったことで外国と日本との格差よりも深刻な 「上級グレードと下級グレードの格差」が埋められたことが重要である。

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