●8代目カローラのエンジン

デビュー直後のエンジンラインナップは1300ccの4E-FE型エンジン、1500ccの5A-FE型エン ジン、1600ccの4A-FE型エンジン、2000ccディーゼルの2C-III型エンジン、1600ccスポーツ ツインカムの4A-GE型エンジンが搭載された。 セダンには4A-GE以外のエンジンが、レビンには2C-III型と4E-FE型以外のエンジンが搭載されている。 今回のフルモデルチェンジを機に、主力エンジンが実用性を重視して最高出力を落としたことが 大きな話題となった。それまでは馬力はできるだけ高くすることが常識とされており、 排ガス規制やグロスからネットへ表示法が変わったとき以外は馬力が落ちることは無かったといってよい。 8代目カローラではより使いやすくするために、中低速型重視に改良・チューニングを行った結果、 パワーがダウンしたのである。逆にスポーツエンジンである4A-GE型は燃焼室等の改良により パワーがアップしている。

1300ccの4E-FE型エンジンは1989年に3代目スターレットに初めて搭載され、 その後7代目カローラに搭載されてきたトヨタの国内におけるボトムエンドを受け持つエンジンである。 初期型では高性能イメージを追及するために1500ccに匹敵する100psという高出力を発揮していた。 ところがその後扱いにくいというクレームがついたのだろうか、途中から97psにパワーダウンさせている。 そして8代目カローラに搭載されるにあたって初めて本格的な改良が加えられた。 改良箇所は吸排気系を中心に多岐に渡る。これらの目的は中低速トルクを増大することで燃費を改善しようとするものである。 吸排気系の改良箇所を先に紹介する。エアクリーナは表面を曲面化することで面剛性を高め、放射音レベルの低減と 薄肉化による軽量化を実現。スロットルボディはボア径を50mmから45mmに変更し発進時の運転性向上を実現した。 インテークマニホールドは従来でも長めであった吸気ポートを更に延長し、中低速トルクと燃費の向上を図った。 またエキゾーストマニホールドも従来通り鋳造品であったが各気筒のポートブランチを長くすることで排気干渉を低減させて 中低速トルクの向上を図っている。また従来よりも出口に近い部分にO2センサーを取り付けることで 排気ガスが十分に混ざり、空燃比制御性を高めた。エキゾーストパイプはメインマフラーおよびサブマフラーの曲率をアップさせて 排気放射音を低減させると共に、テールパイプの支持点数を従来の3点から1点に減らすことで部品点数の削減、軽量化、また 振動の伝達経路が一箇所になるため静粛性向上にも寄与している。また、エキゾーストマニホールドと マフラーを接続する部分には5代目カローラから採用されていたフレキシブルパイプからボールジョイント機構に変更した。 これはエキパイとガスケット、マフラー接触面を球面に加工して接触させ、 それをスプリングで押し付けることでコンパクト化を図ったものである。 またマフラー自体も3分割から2分割へ変更しているが、交換の際の補給部品は3分割となっている。 このため、実際の交換作業ではパイプの一部を切断してU字型クランプで締め付ける方式をとっている。 エンジン本体ではバルブスプリングの張力の低減、バルブリフターの軽量化によりエンジンフリクションの低減を図った。 この他、ピストンの頭部形状を変更して圧縮比を高め、燃費向上と中低速トルクを向上させている。 また圧縮比を高めたために起き得るノッキングを回避するノックコントロールシステムを採用した。 この他、フューエルポンプのインペラの形状変更、燃料流路の最適化でポンプの低回転化、省電力化を図っている。 またエンジンコントロールコンピュータのプログラム変更によりエアコンカット制御と負荷に応じて アイドリング回転数もエアコン負荷に応じて最低限の回転数に保つことで動力性能と燃費性能を向上させている。 このようにエンジン自体の構造はより高級なメカニズムを採用しているが、 エンジンを低回転化したことで馬力はダウンしている。 しかし逆にトルクは上がると共に低中回転域でトルクが厚くなってカローラらしい実用域でパワフルで低燃費な エンジンとなっている。
スペックは最高出力が88ps/5600rpm、最大トルクが11.8kgm/4600rpmとなった。

1500の5A-FE型も4E-FE型と同様の改良が施されている。 つまり、実際に良く用いる回転域での性能を優先したコンセプトで 4E-FE型と違う点はインテークマニホールドの吸気管長さを延長しただけにとどまらず 、サージタンクとインテークマニホールドを一体化した点である。エキゾーストマニホールドも 各気筒のポートブランチ長の延長に加え、集合部の容積を拡大させたことで 排気干渉を減少させ中低速トルクの向上を図った。 それらの改良点に加え、シリンダヘッドの形状を変更して点火プラグ付近の 水路を狭めて冷却水の流速を上げ、プラグ付近の肉厚を減らして冷却性能を高めてアンチノック性を高めたほか、 バルブタイミングを変更しバルブオーバーラップの少ない低速型としたほか、 リフト量をアップさせて燃費向上と中低速トルクを向上させた。 またシリンダーブロックを一部削除することで軽量化を図っている。 さらに従来で、触媒の過熱を防ぐためには行われてきたフューエルカットを 燃費向上のために使う方法へと変更し、フューエルカット領域を増やした。 これにより減速時などアクセルペダルから足を離している間は燃料を消費せずに 走行できるようになった。これにあわせてAT車の場合、車速70km/h未満のOD走行時に 減速すると3速へ自動的にシフトダウンすることで低燃費化を図っている。
スペックは最高出力が100ps/5600rpm、最大トルクが14.0kgm/4400rpmとなった。
数値的には最高出力が下がっているものの、最大トルクは向上しており チューニングによって低回転域でより多くのトルクを発生するようにしている。

4A-FE型は大きな変更はない。従来どおり5A-FE型をベースに1587ccのシリンダブロックを 持っているが、そのリブの一部を廃止し軽量化を行い、エキゾーストマフラーを一点支持化した他、 エアコン使用時のアイドリング回転数を下げたことも他のエンジン共通の改良点である。
スペックは最高出力が115ps/6000rpm、最大トルクが15.0kgm/4800rpmである。

スポーツツインカムの4A-GE型は、従来型と比較してより高回転化を図り更なる高出力を得た。 このエンジンの改良点は多岐にわたっている。 シリンダヘッドカバーは従来の銀色から黒一色のスパルタンなものとなった。 またカムシャフトは吸気のリフト量を増大し吸排気効率を高めると共に バルブタイミングを変更して実用域トルクの確保と高出力化の両立を図った上に、 カムシャフトの基円部分の肉取りを行って軽量化を図っている。 シリンダヘッドは吸気ポートの径、形状を変更すると共にバルブガイドの短縮により ポートへの突き出し量を低減し、通気抵抗の低減を図った。 この他、吸気ポート燃焼室入口付近で、各ポートを独立させると共に形状を丸型ポートとして 吸気慣性を促進して吸気効率とスワール生成効果を高めた。 燃焼室形状はスキッシュを増加させ、良い燃焼が得られるように最適化を行った。 カムシャフトを駆動するタイミングベルトはベルト歯型の変更、ベルト幅を拡大すると共に 新素材水素添加ニトリルゴム(H-NBR)を採用した。 このゴムは、従来のニトリルゴムよりも優れた耐熱性を持ち、 引張強さ、耐熱老化性、耐摩耗性に優れている。この素材を選んだことで 「どんなに荒く扱われても保証期間内以上の耐久性を持つ」とトヨタはコメントしている。 また4A-FE型と共通のシリンダブロックであるために、同じ箇所でリブを削除している。 ピストンは頂面形状を変更してフラット化して火炎の広がりをスムースにすると共に 圧縮比を高めた。この他コネクティングロッド、クランクシャフトプーリー、 フライホイール等の軽量化は徹底的に行われた。 エキゾーストマフラーは他のエンジン同様に一点支持に変更された他、従来の二本出しマフラーから 可変バルブつきの一本出しマフラーへと変更された。 可変バルブとはメインマフラーの内部に作用する背圧に対応して排気ガス通路を変化させる バルブで、低回転時の静粛性と高回転時の背圧低減に寄与する。構造は簡単なもので 低回転時には排気ガスはバネによって閉じられバイパス経路を通らずに排出される。 高回転時にはメインマフラー内の圧力が高まりバルブが開く。この時排気ガスは バイパス経路も通るので低回転時に共鳴室として使用していた部分が拡張室として作用し 背圧と排気音を低減する役割を持つ。このようなマフラーは従来から採用例があったが 電磁式のアクチュエータが必要であったりと構造が複雑でコストも高かったが、 8代目カローラに採用された可変マフラーはバネ式の単純なものであるために 重量面、コストで有利である。ただ、腐食の問題が残っていたのでドイツ製の インコネル合金718という特殊合金を採用した。この合金はニッケルとクロムに 各種の金属を組み合わせたもので合金自体は非常に高価だが、二本出しマフラーよりも コスト的に有利なため採用された。これによりマフラーの大幅な軽量化ができた。
スペックは最高出力が165ps/7800rpm、最大トルクが16.5kgm/5600rpmとなった。
この改良により4A-GE型エンジンは20バルブの魅力を最大限に発揮することとなった。

2C-III型は、平成6年度規制に対応するため、噴射ポンプの噴射特性を変更を行い 平成6年排出規制への適合を図った。細かい点ではオイルフィルターを大型化して ろ過性能を高めている。スペックとしてはトルクが若干減っているがパワーに変わりはない。
スペックは最高出力が73ps/4700rpm、最大トルクが13.2kgm/2800rpmとなった。

1995年8月に8年ぶりにフルモデルチェンジを受けたスプリンターカリブには新たに7A-FE型が採用された。 このエンジンは北米仕様のカローラセダンに積まれていたエンジンで、 国内ではカリーナのリーンバーンエンジン用に使用されていたエンジンである。 今回はフルタイム4WDのカリブのために適合を図った。A系エンジン一族であるために、 縦型吸気ポートやノッキング対策を施した水周りは5A-FE型に似ているが、 4A-GE型に採用された吸気先行冷却方式や、 ステンレス化されブランチ部が延長されたエキゾーストマニホールド やバルブタイミングを見る限りはアクティブなカリブらしい性格を狙ったようにも思われる。
スペックは最高出力が120ps/6000rpm、最大トルクが16.0kgm/4400rpmと、 カリーナより15%ほど出力が高くなっている。

1997年1月にカローラに追加されたスパシオに設定されたエンジンは1995年5月のものに改良が施された4A-FE型である。 改良された4A-FE型は前期型で大幅に改良された5A-FE型と今回改良された4E-FE型の改良点に近い改良を施している。 シリンダヘッドの改良により耐ノック性の向上、アイドル回転数の低下、 バルブタイミングの変更やバルブスプリング、ピストンリング、エンジンオイルなどによるフリクション低減などの 改良が施されたほか、独自に触媒成分の変更も行われている。 性能的には中低回転域では完全に従来型を上回るトルクを発生するが、高回転では伸び悩む性格である。 スパシオに搭載された後、1997年4月のマイナーチェンジでセダンとレビンにも採用が拡大されている。 燃費的にはレビンXZのマニュアル車で比較して10・15モードで14.6km/lから16.0km/lへ、60km/h定地燃費では 25.0km/lから25.5km/lへと向上している。
スペックは最高出力が110ps/5800rpm、最大トルクが15.2kgm/4800rpmとなった。

1997年5月に行われたマイナーチェンジ時に4E-FE型に大きい改良が更に加えられた。 4E-FE型は、低燃費化を更に推し進め更に吸排気系、動弁系、制御系を見直し、常用回転域でのトルクを 一層高めた。また燃費も向上している。5A-FE型同様にオーバーラップを減らした バルブタイミングを採用し、中低速域のトルクを向上させたほかピストン頂面形状を変更し圧縮比を 下げることでフリクションとポンピングロスを低減させた。 シリンダブロックはトランスアクスルとの結合部を強化して振動、騒音の発生を抑えた。 さらにシリンダボア周りの剛性を向上させて、ボアの歪みを低減し低張力ピストンリングの 採用を可能とした。 インテークマニホールドは更に延長化され、ついにスチールパイプ製のインテークマニホールドが採用された。 これによりポート長の延長(326mm→380mm)、吸気音の低減が可能となった上、軽量化にも成功した。 この他にも徹底した軽量化はコネクティングロッドやピストンピン、インジェクター、スロットルに及んでいる。 この他、点火系ではディストリビュータを廃止しTDI(Toyota Direct Ignition system)が採用された。 TDIとは、エンジンの点火時期をディストリビュータのように機械的に分配するのではなく 電気的に行う装置で一般的にはDLIという。 TDIにより点火時期制御精度を高めると共に点火時期の完全無制御化を実現した。 また高電圧負荷部分の損失を大幅に低減することができ、電波雑音も少ないことから構造及び構成部品の簡素化も図ることができる。 TDIは従来から高級車やスポーツカーのエンジンに採用されていた技術だが、トヨタはこの時期の実用車にも TDI化を展開した。またTDIの採用に伴い、小型二極プラグが採用された。 設置電極の二極化により安定した火花を確保し、かつプラグギャップの増加を抑えたという。 また、エンジンコントロールシステム全般としては、コンピューターに16ビットマイコンを使用して 従来の8ビットマイコンよりも精度が高い燃料噴射、点火時期制御が可能となり、燃費とドライバビリティの 向上を図っている。従来からあったエアコンカット制御も進化し、 全開加速時のみではなく減速時にもエアコンカットを行うことで、フューエルカット領域を拡大し、 エアコン使用時の燃費を向上させている。 また、工場で封入されるエンジンオイルには従来のSH級10W-30からより低粘度タイプのSJ級5W-30に変更されている。 結果的に、再び最高出力が3ps減ってしまったがトルクは逆に低回転で0.2kgm程向上しており、燃費もXEサルーンマニュアル車の 10・15モードでは18.6km/lから18.8km/lへと向上した。60km/h定地燃費では26.5km/lから27.5km/lへ向上している。
スペックは最高出力が85ps/5500rpm、最大トルクが12.0kgm/4400rpmとなった。

1998年8月の一部改良ではディーゼルエンジンが従来の2C-III型に 代わって2200ccにスープアップされ、電子制御燃料噴射装置が採用された 3C-E型が新搭載された。このエンジンは、従来のエンジンから排気量アップしたことに加え、 電子制御化することで高性能、高出力化しつつ環境性能を向上させたエンジンである。 シリンダヘッドは従来の2C型から比較してバルブ間距離を拡大しバルブ間の冷却性能を向上させた。 またピストンは形状、処理を変更することで高出力と軽量化を実現している。 電子制御装置はガソリンエンジン同様TCCSであり燃料噴射量制御、燃料噴射時期制御等を総合的に 管理することでスモークを目に見えないレベルまで低減することに成功したという。 従来型のディーゼルエンジンではスロットル開度に応じて機械的に燃料が燃焼室に噴射されていたが、 これでは過度にスロットルを開けた際に、燃料が濃くなりすぎて不完全燃焼が発生し、 スモークの発生が避けられなかった。 燃料噴射を電子制御で管理する事によりディーゼル車のスモークは急速に減少した。
スペックは最高出力が79ps/4400rpm、最大トルクが15.0kgm/2400rpmとパワフルになっている。

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