●8代目カローラのメカニズム

8代目カローラは基本的な構造を7代目カローラと共有するためにドラスティックな変化こそしなかったが、 先代で大きく改良した部分を継承しその技術を更に熟成させている。

マニュアルトランスミッションは、全車のシフトストロークが短縮されたほか、シフトレバーリテーナを 樹脂化して軽量化を行っているが、今回のフルモデルチェンジでは レビンにヘリカルLSDが採用されたことが一番の変更点である。 従来はビスカス式のLSDを装着していたが、FF車では初めてヘリカルLSDを採用した。 このヘリカルLSDはFF車に適したバイアス比(LSDの効き具合を示す数値)が設定可能なトルク感応型LSDである。 このため強いトラクションが得られ、アクセル操作に対する応答性が高いためスポーティな走行が可能となるほか、 小型軽量でシンプルであるため、 従来とは違いオープンデフそのものに組み込むことができる点が軽量化に大きく貢献している。 この他1500のマニュアル車ではギア比を変更してハイギアード化して燃費向上を図っている。 また、1997年5月のビッグマイナーチェンジでは4A-GE型エンジン搭載車には新開発の 6速マニュアルトランスミッションが採用された。6速部は従来の5速のギアの後ろ側に追加した。 1〜5速ではローギアード化して加速性能や接続感を向上させて、 従来のギアレシオで問題となっていた2速と3速の間を埋めることができた。 一方で新しい6速は従来の5速よりも若干ハイギアードな設定となっており、 高速巡航時の静粛性、燃費向上に貢献する。

オートマチックトランスミッションでは、 エンジン特性に合わせて構成部品の強度を見直したり油圧特性の変更を行ったほかは、 樹脂部品の採用を増やしたことで軽量化を図っている事が新しい。 ただし、軽量化に腐心するあまりに初期モデルに限ってはシフトロックを 樹脂化した際に樹脂製ロッドが折れる恐れがあるために金属製に変更するリコールが 届出が出されたことがある。

サスペンション形式は従来どおり前/後共にマクファーソンストラット式の4輪独立懸架式である。 ワイドトレッド化は先代で実施済みのために今回は主に軽量化を中心に改良が行われた。 セダンの40kgの軽量化のうちで15kgがシャーシ関係での軽量化である。 主なものではフロントナックルで1.6kg、ロワーアーム1.9kgである。 軽量化が剛性低下を引き起こすことは絶対にあってはならないことであり、 そのあたりは当時の最新技術を駆使して応力解析が行われている。 L型ロアアームを持つフロントサスペンションでは形状を見直すことで板圧を薄くして軽量化したほか 鋼板の材質に銅、リンを配合して防錆性能を高めている。また、車輪取付部のブッシュは特性と取付方向を 見直して不快なハーシュネスに配慮しながら操縦性と安定性を高めたという。 また軽量化したためにサスペンションのスプリングもより柔らかくすることができ、 ショックアブソーバーの減衰特性も最適化した。またサスペンションストロークは変更していないが バンプストップラバーに当たるまでのクリアランスをセダンのフロント側で10mm大きくしたという。 このほか、オイルシールの低摩擦化など大きくは変えていないが、細かい部分をコツコツと改良していることがわかる。

スポーツ系グレードのフロントに採用された スーパーストラットサスペンションも継続して採用されているが、 従来型から旋回限界点付近でのステアリング応答性のフィールや巻き込み挙動の発生が あったため、8代目開発過程ではキャスター角を増やしたりキングピン軸を立てるなどの トライが行われたそうだが、轍にステアリングを取られやすくなったり、ステアリング操作上の スムースなつながり感が損なわれるということで、脚の基本設計をそのままにしてヘリカルLSD採用につながったという。 結局、サスペンションとしてはコイルスプリング、ショックアブソーバなどの仕様を見直したほか、 軸受(ベアリング)をサイズアップして剛性の向上、オイルシールの低摩擦化をはかり、操縦性や旋回性を向上させたという。

リアサスペンションも軽量化が徹底され、リアアーム類で1.1kgもの軽量化に成功している。 またブッシュの特性も変更し、リアグリップ向上をはかった。特に、4WDのリアサスペンションメンバーを 中空パイプで製作し軽量化を図っている。 このほか、低燃費化に欠かせない、ハブの低摩擦化にも注意が向けられており、フロントアクスルのベアリングには アンギュラボールベアリングが採用され、FF車には後輪にもアンギュラボールベアリングが、4WD車には テーパードローラーベアリング採用された。

ブレーキは大きく変更されていない。ただ、 マスターシリンダーやブーツ、スペーサの廃止など、構成部品の見直しによって計量化を行ったほか、 ブレーキブースターのピストン形状、ダイヤフラム形状の変更などを見直して軽量化をはかるとともに フィーリングの向上をはかった。リアディスクブレーキ車はブレーキパッドの形状を見直し、 無効部分を削除して軽量化を徹底した。また、1996年の一部改良では全車にABSが標準化された。

安全装備は基本的に先代のキャリーオーバーで、 サイドドアビームはもちろん、ハイマウントストップランプも全車に標準装備した。 ABSは1995年5月の段階では全車にオプション設定、運転席エアバッグはSE-サルーンとXZには標準装備としたが、 その他のグレードにはオプション設定とされていた。その後、1996年5月には全車に助手席エアバッグと合わせて標準装備された。 また、1997年4月のマイナーチェンジではリアの分離式ヘッドレストが採用されたほか 室内内装との二次衝突に対応して樹脂製衝撃吸収リブが衝撃を吸収する ソフトアッパーインテリアが全車に装備された(スパシオには採用済)。このほか、衝突時に瞬間的にシートベルト のたるみを巻き取って乗員拘束効果を著しく向上させるプリテンショナーと 乗員拘束時にかかる乗員へのダメージを最小限にとどめるフォースリミッターも装備された。 また、運転席だけではなく助手席にもシートベルトの着用を促す「助手席シートベルト警告灯」や タイヤのバネ定数によってタイヤ空気圧を監視し、あらかじめ決められた値以下になった場合に点灯する 「タイヤ空気圧警告灯」も低扁平率タイヤ装着車以外の全車に採用されている。

プラットホームを踏襲したことでボディは大きく変わっていない。 ボディサイズも変わっていないが軽量化の努力はここにも注がれている。 主要テーマは衝突安全性向上、振動・騒音面からの剛性向上、防錆性能向上、コストオブオーナーシップの低減、 リサイクル対応、である。骨格は安全性の面からフロントサイドフレームを50mm延長したほか、 前側リインホースメントも強化。リアサイドフレーム後端にもエネルギー吸収ボックスを設置した。 この他側面衝突に対応してクロスメンバーなど横方向の骨格も強化されている。この他にも板厚を上げたり 断面を大きくしたり細かい点で衝突安全性を向上させており、従来同様に衝撃吸収機構CIASを名乗った。 1997年4月のビックマイナーチェンジではボディ骨格が見直されて、GOAを名乗った。GOAとはGlobal Outstanding Assesment の略で世界トップレベルでの安全評価という意味である。 トヨタではオフセット衝突やロールオーバー試験を実施し法規制値よりも厳しい独自の社内基準を設け これをクリアしたクルマにのみGOAとカタログに書くことができるというものである。 安全ボディに名前をつけるという考え方は当時としては新しい試みであり他社もこれに追随した。 カローラをGOA化するにあたり、ボディ骨格の変更や衝撃吸収材を追加して対応している。

静粛性を高めるために、ボディの強化はもちろんのこと、フロントガラスのモールの形状を 最適化することでモールの微振動を大幅に低減したほか、建てつけに左右されにくい新形状の ウェザーストリップの採用など細かい点で当時最新のコンピュータ解析技術活用されている。 空力性能も向上し、先代のCD値0.33から0.31へと向上することとなった。 防錆性能も防錆鋼板を重量比88%に増やした結果、水はけの良いルーフと一部部品以外は 全て防錆鋼板になっていると言って良い。もともと世界各地で各様に使われるカローラにおいては 防錆対策はどこまでやってもやりすぎにはならない。

コスト低減は7代目カローラの反省点として徹底された。 まず、内装部品ではリサイクルしやすいTSOPを大幅に採用した計器盤となった。 フロントガラスに近いほうには硬質樹脂を、運転席に近く人の手に触れる部分には ソフトパッドを採用しているが、この二層の間に空洞を作り、エアコンのダクトとして利用している。 こうすることで部品点数を減らしている。この他8代目カローラにおいて最も有名な部分として 語られることの多いものにニ分割バンパーが挙げられる。 ニ分割バンパーとはバンパーを上下ニ分割構造としたバンパーで、軽微な損傷の場合は 片側だけの交換で済むというものである。特に損傷する頻度が高い上部は無塗装の黒として リサイクルに貢献するだけではなく傷を目立たなくする役割も担う。 このアイデアは、1994年にデビューした4代目カローラ||のコーナー部だけ交換できるバンパー を更に発展させたものである。ニ分割バンパーとなると、バンパー製造時の工数が倍になると 思われがちであるが、一つの型で同時に上下を造るために合理的である。 またサービス性を考慮して取付性と剛性を高めてある。 このことでフロント部分の交換で従来の半分以下、リア部分の交換で30%以上の時間短縮を実現したことで、 作業時間で決められる作業工賃も削減できるというわけである。 部品代そのものも安くなっている。一例として7代目のフロントバンパーカバーが34400円(1997年7月現在)であったが、 8代目のフロントバンパーカバー上部/下部は8800円/14600円(1996年8月現在)と非常に安い。合計でも23400円と安い。 しかし、1996年の一部改良ではニ分割バンパーとサイドプロテクションモールに塗装が施された。 デビュー時に「格好が悪い」という理由で評判が芳しくなかったからである。 ユーザー心理というものは非常に難しい。価格も色を塗ったために価格が安かった上部も14700円に値上がりしてしまい ニ分割バンパーのありがたみも薄れてしまった。 さらにその後、1997年4月のビックマイナーチェンジで一般的な 一体型カラードバンパーに逆戻りしてしまった。

1997年7月には、それまでの安っぽいイメージを払拭するために大規模なマイナーチェンジが行われた。 エンジンの項で詳しい解説を書いたがエンジンそのものにも大きな改良が入った他、 外装では、マルチリフレクターヘッドランプの採用や、リアボディの変更でコンビランプが変更され トランクリッド開口部を拡大。トランクリッド面にもコンビランプを延長した。レビンにおいても マルチリフレクター4灯式ヘッドランプ、6連コンビランプ、大型リアスポイラーの採用など 安っぽさを完全に払拭したものとなった。また品質が大きく落ち込んでしまった内装も一新され、 特にセダンは全面にソフトパッドを採用し、オーディオ/カーナビのスペースを確保した 新デザインのインパネが採用された。 このほか、カーナビゲーションシステムの普及に伴って、 メーカーオプションでワイドマルチAVステーション||がこのとき初めてセダンに設定された (スパシオには設定済み)。

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