●New Century Valueの意味―9代目カローラ

2000年8月、5年3ヶ月ぶりにカローラがフルモデルチェンジを果たし9世代目にスイッチした。 9代目カローラは時代の変化によって大幅な車種整理が行われ、スプリンターブランドを廃止した。 更にカローラクーペ(レビン)を廃止し、セダンとワゴン「フィールダー」との2本立てで再出発することと なった。

先代カローラがデビューしてからはカローラをはじめとする従来からのスタンダードであった セダンにとって非常に厳しい時代となっていた。 クロスカントリー4WDやステーションワゴンといったRVの台頭、その後のMPV人気や カローラユーザー層の高齢化、さらにはそれに伴うコンセプトの古さ等がカローラを苦しめていた。 また1998年1月にトヨタが満を満たしてデビューさせた新リッターカー「ヴィッツ」の大ヒットにより 三十数年の間守り通してきた国内ベストセラーの地位を明け渡さざるを得なくなったという事実も カローラの立場を揺るがしていた。 アジアカー「ソルーナ」を開発した後に 8代目カローラ後期、9代目カローラのCEを務めた吉田健氏は 「カローラという名前を忘れて開発しよう」と指示したそうである。 吉田氏はこれまでのカローラはカローラというブランドに縛られすぎていた感じたそうだ。 カローラはこんなクルマだ、カローラはこんなユーザーのためのクルマだ、という既成概念にとらわれ過ぎていた。 そういったメーカー自身の思い込みからも脱却して新しい時代のコンパクトカーを作るべきだというのが彼の 意味する「カローラという名前を忘れる」という指示なのである。

これまでに無い雰囲気の中開発された9代目カローラは「21世紀をリードするグローバルコンパクトNCVの創造」 をスローガンに掲げ、
・トヨタ最量販世界戦略車として世界サイズのロングホイールベースと 徹底したキャブフォワードパッケージング、
新パッケージと調和した若々しいスタイリング。
・安全・環境への積極的な対応、同クラス車を凌駕する21世紀の基本性能、新技術。
・適正な価格での提供。
・30年間国内販売台数1位を継続中の「カローラ」ブランドの再生にトライ。
という目標をあげて開発されたという。

ボディサイズは全長4365mm(従来比+50)、全幅1695mm(従来比+5)全高1470mm(従来比+85)と 特に高さが大幅にアップした。 またホイールベースも2600mmと従来型と比較して135ミリも大型化されている。

9代目カローラの外装デザインは、それまでのカローラのイメージからは考えられない、 ロングホイールベース、キャブフォワードを表現したものとなった。 ホイールベースがかなり大きくなっているものの全長の伸びはそれ程ではないため、 フロントオーバーハングが短縮されている。デザインの狙いは、エモーショナルで若々しいスタイリング、 骨太でがっちりした(ロバストネスという)塊の強さの表現、永続性のある飽きの来ない質感の高いデザインの 三点だという。 フロントビューではカローラのシンボルマークを強調したボンネット形状で遠くからでも 一目でカローラだと分かる個性的なデザインとなっている。シンボルマーク自体は長年親しまれてきた 花かんむりマークが廃止され、NCVをデザインした新デザインに変更された。ヘッドライトは 明るさの機能を優先しかなり大型のヘッドライトとなっている。 サイドビューではピラー、特にCピラーを力強い印象にし、ビックキャビンを意識させないように ベルトラインを持ち上げた。結果的にドアがかなり分厚い印象だが、下級グレード以外では サイドプロテクションモールを採用して視覚的バランスを取っている。またドアハンドルは 爪の長い人でも容易に操作できるグリップタイプを採用した。 リアビューはマルチリフレクター式の深みのある構成に琥珀色のレンズを組み合わせた新しい高級感を 狙ったコンビランプやフロントグリルと同様のイメージのガーニッシュが取り付けられている。 この他、ホイールサイズを全車共に14インチに大型化して走りデザイン面で有利になった。 全体的に、ずんぐりむっくりしたデザインだが、これまでのカローラにないデザインである。 カローラ以前に、ビスタやプラッツで背高セダンにトライしてきたが市場での評価は芳しくなかった。 それは、サイドのベルトラインが低めだったためにグラスエリアが広く、 それが腰高な印象を与えてしまっていた。カローラではグラスエリアを従来並みにしつつ、 全高アップはドアで消化したので同じように背が高くても従来型の背が低いセダンのように見える。 これはかつてマーク||で行った処理である。

また室内に目をやると立体的なインパネ、インパネの面にインテグレートされたオーディオ、 プッシュ式液晶表示エアコンパネル、オプティトロンメーターやシルエット式メーター、 ゲート式シフト(ラグゼールのみ)等 これまで一クラス上のクルマにしか装備されなかった装備が数多く9代目カローラに採用されている。 またシートもたっぷりとしたサイズのシートが奢られ、ほぼ全車にシート上下調節機構が装備され どんな人でもよりジャストフィットするシートポジションが得られるようになっている。 リアシートには引き続きリアヘッドレストが装備されているが、センターアームレスト装着車では 後席用カップホルダーが新たに採用された。

メカニズム面でも大幅な躍進を遂げている。 エンジンはガソリンエンジンはすべてBEAMSエンジンとなり、1300が長らく愛された4E-FE型エンジンから 2NZ-FE型エンジンへ。1500が5A-FE型エンジンから1NZ-FE型エンジンへと置き換えられた。 1600は国内向けでは廃止され、新たに2輪駆動1800シリーズが復活 (4輪駆動はカリブ用7A-FE型エンジンがあった)し、1ZZ-FE型エンジンと2ZZ-GE型エンジンが設定された。 ディーゼルエンジンは従来の3C-E型エンジンを排ガス浄化性能を向上させて搭載されている。 足回りも新開発プラットフォームを用いた事により従来のF/Rマクファーソン式ストラットから マクファーソンストラット/イータビーム式トーションビームサスペンションへと変更された。 また空力特性にも工夫が見られ、ボディ全体で空気の流れを最適化した空力フォルムにすると同時に ガラス〜各ピラーやルーフ段差の極小化、 カウルルーバー形状によるワイパー面の面一化などにより空気抵抗や風切り音の低減を図っている。 この他、電動パワーステアリング等燃費に対して効果的な新技術は、積極的に取り入れられている。 9代目カローラは21世紀も世界のファミリーカーとして十分通用する高い資質を持ちあわせた New Century Vehiclesへと生まれかわった。9代目カローラは、好評となり 後にハッチバックボディのランクスや小型MPVのスパシオを追加し、更にたくさんの派生車種を生んだ。

2001年10月には9代目としては初めての一部改良が加えられた。 セダンのラグゼール系グレードに新色ダークグリーンマイカP.I.Oが追加された。 これは、愛知県で限定販売された色がカタログモデルとして昇格したものである。 更にセダンでは初の本革シートが標準装備されるプレミアムセレクションも追加された。 外装ではワイドビューミラーの採用とフィールダーのアンテナがピラータイプ からショートポール式のルーフアンテナとなった以外に、大きな変更は無い。

2002年9月には初の大規模なマイナーチェンジを行った。 バンパーや灯火類の意匠変更により、より高級感を表現したものとなった。 セダンのリアコンビランプは、琥珀色レンズからアクアグリーンのレンズとなった他、 ワゴンではバックランプも赤色(点灯時は白くなる)となった。 ヘッドライトは新しくHID式ヘッドランプが1800シリーズに設定され、 これには欧州仕様の4灯式レンズが組み合わせられた。 さらに、1800シリーズには電動パワーステアリングも採用拡大されている。(2ZZ-GE型エンジン搭載車を除く) 内装もステアリングのデザインが変更された他、シルエット式メーターは一般的な透過式照明を採用したものになった。 これは、明るすぎて見難いというユーザーからの声に応えた変更である。 また、コンライトが上級グレードに新採用されほか、ラグゼールには雨滴感知式ワイパーが採用された。 さらに、後席中央ヘッドレスト追加やウェザストリップが二重となるなど細かいところに至るまで商品性の向上が図られている。

2004年4月には、再び大規模なマイナーチェンジが行われた。この少し前、トヨタ自動車では カローラのフルモデルチェンジのタイミングを延長し、 2006年にフルモデルチェンジを行うと発表したところであった。 このために、フロントマスクのフェイスリフトやトランクリッドなどの金型変更も行われている。 新しいフロントマスクはそれまでの丸みを帯びたファニーなものからややオーソドックスな シャープなデザインへと変更された。リアビューはリフレクター別体式となり、バックランプは ナンバー両脇に移された。フィールダーのコンビランプは一足早くLED化されて省電力に貢献している。 大きく変わったのは外装だけではない。内装はシート生地の一新に加え、 上部インストゥルメントパネルが前面維新されている。 内装と外装のデザイン時期が異なっていたためにインパネのボリューム感がありすぎて、 圧迫感を感じさせるデザインであった事は9代目カローラの数少ない欠点であった。 マイナーチェンジモデルではデザインを一新してスッキリとしたものとされている。 また、インパネ上部と下部の間にはメタル調/木目調(グレードにより異なる)のパネルが装着されて 高級感を演出している。また、空調のレジスター(噴き出し口)はシャッター風に閉じることができる デザインが採用されている。ちょっとしたことだが、先進感が良く演出できている。 インパネ変更に伴い、スピードメーターは楕円をモチーフとしたデザインに変更されている。 1800シリーズにはマルチインフォメーションディスプレイが標準装備された。 これは、7代目のセレスで初登場した装備であるがメーター内に小型液晶が配置されている点が新しい。 メカニズム面でもナビゲーションシステムがG-BOOK対応DVDボイスナビゲーションへとバージョンアップされ、 キーを使わずにドアロックの施錠、開錠ができるスマートドアロックリモートコントロールが採用された。 従来のキーレスエントリーと違って車両に搭載された発信機から電波を受信し、車両とスマートキーとの間で 電子IDコードを照合する点が従来品とは異なっている。 また安全装備も待望のSRSカーテンシールドエアバッグが設定されている。 このほか、スポーティグレードにはローダウンサスペンションとパフォーマンスダンパーが追加されるなど、 改良は多岐にわたる。

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大河のような存在―9代目カローラの開発