●9代目カローラのバリエーション

カローラセダンとフィールダーのデビューから半年後の2001年1月、 カローラに6年ぶりのハッチバックボディ「ランクス/アレックス」が国内投入された。 カローラのハッチバックと言えば1984年にデビューしたカローラFXが記憶に新しいが、 90年代にハッチバックの人気が下降し、1995年にモデル廃止されてしまった。 しかしトヨタではRV車を持て余す様な層からハッチバック市場が再び注目されると想定し、 ランクス/アレックスをデビューさせた。 ランクスはカローラ店で販売されNCVカローラを名乗るが、 アレックスはネッツ店での新型車として投入され、カローラの名を名乗らない。 ランクスとアレックスの違いは、グリルとドアのモールなど細部に限られる。 ランクスは「欧州製ハッチバックを圧倒するスタイリッシュで存在感のあるスタイリング」、 「NCVシリーズ中最もショートなボディ(セダン比:マイナス190mm)を持つ合理的なパッケージング」、 「NCVシリーズ中最も高い基本性能」を大きなセールスポイントとしている。

カローラランクスはライバルとなる欧州車を強く意識した塊感のあるスタイルを採用しており、 特にリアビューはドイツ車を彷彿とさせる。 搭載されるエンジンはフィールダーでおなじみの新世代スポーツツインカムエンジン2ZZ-GE型エンジンがZ系グレードに、 カローラでおなじみの1NZ-FE型エンジンがX系グレード用にラインナップされている。 ランクスのZ系はセリカ譲りの高性能エンジンにフィールダーよりも20kg軽量なボディ (代表的な欧州車に並ぶレベルの剛性を確保)を組み合わせ、ランクス専用の味付けのブッシュや ショックアブソーバー、スプリングを専用開発し、加えてパワーステアリングの油圧ポンプも新たに専用品 とすることで欧州製ライバル車を凌駕する走りを実現しているという。 また欧州車的な乗り味を求めてミシュラン製のタイヤを採用するとこだわりようである。 内装は基本的にはフィールダ−と全く共通のイメージを持つ若々しいアイボリーの内装色(X系) に代表される高級かつ知的なインテリアデザインを引き継いでいる。 シート生地は専用のデザインが採用され「普段着にブランドバッグを組み合わせるような、こじゃれた感じ」 を目指したのだという。 シートアレンジもフィールダーと同じ、リクライニングつきの分割可倒式である。 ラゲッジ容量はVDA法で271Lとなっていて、 テレビなどの電化製品やちょっとした家具ならリアシートを倒せば十分な 広さのラゲッジがあるので容量上のデメリットよりも短い全長が生む キビキビした走りや車両感覚のつかみ易さが際立つだろう。

2001年9月にドイツで開催されたフランクフルトショーでは翌年1月に発売される 輸出仕様のカローラが出展されて日本国内からも注目を集めた。 ショーモデルの輸出仕様のカローラは国内仕様とは違う専用のシャープなフロントマスクを持ち、 国内に設定のないスポーティな3ドア仕様であったからである。 国内のホットハッチ市場をトヨタではヴィッツRSが担っており、この3ドアの カローラ3ドアが国内投入されることは無かった。 2001年11月にはセダン/フィールダーの改良に準じてドアミラーがワイドビュータイプに変更され、 6MT車のシフトノブのデザイン変更や一部ボディカラーが廃止された。 2002年のマイナーチェンジでは欧州仕様の精悍なマスクが採用され話題となった他、 リアコンビランプの意匠変更、内装の小変更が行われた。この時にランクスにも1ZZ-FE型エンジンが 搭載されたSグレードが追加された。 ラグゼールやフィールダーのSグレードに採用されていたゲート式ATノブも採用されている。 ランクスでの位置づけはフィールダー同様スポーティグレードであるが、アレックスでは エレガントな茶木目調パネルを装着した高級グレードとして仕立てられて欧州プレミアムハッチ風を 装っている。 2004年5月の改良ではフロントマスクがヴィッツを強く意識した涙目型のヘッドランプとなった。 その他の装備はセダン/フィールダーに準じている。

2001年4月にはWillブランド第2弾の男性向け車種としてNCVプラットホームを利用した Will Vsが発売された。 そもそもWillとは、21世紀における新しい消費スタイルへの適応と新市場創出を目指した 異業種合同プロジェクトのことでキーワードは「遊びゴコロと本物感」である。 現在トヨタ自動車のほか、アサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、江崎グリコ、コクヨ、松下電器産業が参加している。 従来は女性をターゲットにしていたWillブランド車であるが、今回のターゲットは30歳代の独身男性である。 トヨタはこのモデルを作るにあたり、30歳代の独身男性がクルマに何を求めているか調査、分析した。 その結果、プライオリティの高いほうから、
1)理屈抜きにカッコイイといえるスタイリング
2)クルマで遊びに行くときに友達に文句を言われない、必要十分な荷物が積めるスペースとドア数
3)走りの面でエンジン性能もさることながら、高速走行時ストレスを感じないとか ワインディングを気持ちよく走れるといった高速安定性、操縦性。
という順に並んだ。その結果「クール」と言う言葉をキーワードに、徹底的と言えるまでにエクステリア、 インテリア共に「自動車離れ」したデザインをあえて採用し、 意外にルーミーな室内、カーゴスペースを確保し更には高い走行安定性も実現されている。

エクステリア全体のフォルムは、複数の面を貼り合わせて構成するという手法で作られており、 アメリカ空軍のF117ステルス戦闘機を連想させる。 また一般的にはこの手のスペシャルティカーは車高をできるだけ落とす傾向があるが、 Will Vsでは車高を1430mmと高くとった事でユーティリティ面で有利となっている。 しかし、ただ車高を高くとっただけではコンセプトの「クール」が実現できない。 そこでベルトラインを高くする事により腰高感を払拭することに成功している。 (これはカローラセダンからの手法である) インテリアもエクステリアデザインに負けてはいない。 内部骨格はカローラと共通であるが低いインパネにレーダーをイメージした 赤いオプティトロンメーターや航空機のスロットルレバーをイメージしたシフトレバーが採用され、 完全にデザイン優先の造りとなっている。しかし室内は高い室内高とロングホイールベースの恩恵で 広く、特に後席は従来のスペシャルティカーでは不可能な広々とした快適性を確保している。 エンジンはカローラ系のものを流用している。 搭載されたエンジンは2種類で共に1800ccのエンジンであるが、 1つは効率重視型の1ZZ-FE型エンジン、2つ目は高回転型の2ZZ-GE型エンジンである。 これに組み合わせられる変速機はオートマチックのみであるが、特に2ZZ-GE型エンジンは ギアをドライバーが選択できるMモード付きのステアマチックが装備されている。このWill Vs でMT車を設定しなかった事についてメーカーでは 「Vsは都会の夜をクルージングするイメージにMT車はそぐわないので設定していない」とコメントしている。 足回りはカローラの4穴ホイールとは違う5穴ホイールを採用し、またサスペンションのブッシュも専用チューンして 全体的にスポーティにチューンされている。 またブレーキも全車ディスクブレーキが採用されている。 ただ、WillVsはあくまでもスポーツ性能よりもスタイル重視されている点が従来のスペシャルティカーと 違う点である。

Will VSは驚きをもって市場に受け入れられたが、販売状況は芳しくなく、 最終的に当初は設定しなかった2ZZ-GE型エンジンを搭載したMT車を インターネット限定ながら販売し、その後クールとは程遠いボディカラーのスーパーホワイトや 1500ccの廉価グレードを設定して完全に当初のコンセプトを棄ててしまった。 そして最終的には2004年3月にはビスタ店とネッツ店が統合されるのを機にモデル廃止となってしまった。

2001年5月にはNCVの第四弾としてカローラスパシオがデビューした。 スパシオは1996年にデビューしたトヨタ最小(当時)の3列シートミニバンである。 先代のスパシオはフルに3列シートを活用する目的で企画されたため、カローラクラスの全長には 寸法的に若干の無理があった感は否めなかった。 また、モデルライフ途中では2列シートの5人乗りを設定したところそれが思いのほか好評であった ということからトヨタは3列シートを補助的に使用するものとして考え、 代わりに3列目シートを使用しないときの広大な荷室スペースの確保と、 2列目の快適性を大幅に向上させている。

エクステリアデザインは、かわいいと好評だった先代のスタイルを踏襲しつつ、 最新のトヨタデザインのお約束を守った絶妙なデザインが採用され、 その他のNCVファミリーと同様に細部まで品質感の高さにこだわったエクステリアは見逃せないポイントである。 インテリアはエアコンやオーディオなど内装品のデザインや材質はその他のファミリーと共通品を 用いているが、インストルメントパネル自体はインパネシフトを採用した専用のデザインとなっている。 シートはスパシオ専用のものが採用されており、1列目にはアームレスト(一部グレード除く)つきのシートが、 2列目は先代モデルでは実現できなかったシートスライドとリクライニング機構が採用されて快適性、 実用性を高めている。2列目シートには先代で好評だったチャイルドシート内蔵タイプも メーカーOPで選択が可能である。そして3列目シートは新たに簡素な格納式のシートが採用された。 普段はラゲッジスペースとして利用し、7人乗車時のみシートを引き起こして使用するという想定のため、 3列目にはほとんど快適なスペースは残っていない。 しかもシートそのものも座面部はネットを用いた薄型のシートが採用されているので快適性という点でも 不利である。このシートはあくまでもコンパクトに収納できるという点を重視して作られている。

エンジンは1ZZ-FE型エンジンと1NZ-FE型エンジンが設定された。 先代モデルでは1800ccモデルは4輪駆動のみの設定であったが、 新型では更に高い走行性能を目指してセダンやフィールダーでおなじみの1ZZ-FE型エンジンを 前輪駆動のSエアロツアラーとX系グレードに採用した。 先代のメインエンジンであった1600cc(4A-FE型エンジン)は税制上若干不利になる事から 新たに1NZ-FE型エンジンが採用された。 サスペンションの味付けも重量の変化が大きいミニバン専用のセッティングがなされていること以外は 共通の足回りを持つ。その他、セダンやフィールダーなどに先駆けてシリーズ初のディスチャージヘッドランプが設定されている。 2001年7月にはセダン/フィールダー共通のシステムを用いた4輪駆動が追加された。 ちなみに、この4輪駆動には専用のカラードマッドガードとリアガーニッシュが装着されており駆動方式判別のポイントとなっている。 2004年2月には他のバリエーションより遅れてマイナーチェンジが行われている。主な改良項目は、他バリエーションに 準じているがLED式リアコンビランプやブラインドコーナーモニターの採用など、2004年5月の改良を 先取りした内容の改良が既に加えられている。モデルチェンジされてまだ3年しか経っていないが、 欧州仕様は早くもモデルチェンジされた。欧州サイドから見ればボディサイズが若干小さすぎた事が 理由だと言うが、車体は大きくなりスポーティな内外装をまとっている。

2002年8月にはカリブ後継と噂されたヴォルツが発表された。 このヴォルツは1984年にアメリカ合衆国に設立されたNUMMI(トヨタとGMの合弁企業)で生産され、 ネッツ店で販売される。ヴォルツはアメリカで販売されるポンティアックヴァイブという車種を国内向けに 仕立て直したモデルである。アメリカでの兄弟者としては、カローラ・マトリックスという車種がある。 こちらは、バタ臭いデザインが採用され、いかにもアメリカ向けという大味な感じがするモデルである。 国内向けとするために装備品やスイッチ類、カラーリングが調整されている。 ジャンルとしては、ライトクロカンであり、RAV4程の本格的なものではないがアメリカの 大学生が遊びに使う車として支持されているジャンルである。 外装はシャープなイメージでルーフ後半からルーフラインが下がるのにつれて ルーフレールが現れるデザイン処理が特徴的である。またガラスハッチが採用され利便性を考慮している。 内装も外装同様にアクティブで楽しいイメージであるが、よく見るとインパネ骨格はカローラのものを うまく流用している。メーターはシルバーリングをあしらった赤指針のオプティトロンメーターや、 左右のウォークスルーを実現するインパネシフトも採用されている。 また、ラゲッジスペースは硬質プラスチックで覆われて汚れたものを積んでも 汚れを落としやすいように配慮されている。 エンジンは1800ccの二種類で1ZZ-FE型エンジンと2ZZ-GEの型エンジンである。 駆動方式もFFと4WDが選べる。グレードは国内のカローラのグレードに合わせてSとZの二種類である。 Sは1ZZ-FE型エンジンが組み合わされ、FFか4WDかが選べるが、ATしか用意されない。 Zグレードでは2ZZ-GE型エンジンが組み合わされ、6速MTと4ATが選べるが、駆動方式はFFのみである。 エンジニアリング面で一番違うのはATである。1ZZ-FE型エンジンに組み合わされるATには フレックスロックアップは採用されていない点と、2ZZ-GE型エンジンに組み合わされるATに ステアマチックが装備されていない点が異なる。このヴォルツも2004年にビスタ店とネッツ店が 統合される際にモデル廃止となった。

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