●ワイドボディを得たグローバルカローラ

2006年10月、国内向けのカローラと時を同じくしてHBがフルモデルチェンジされた。 まさしく従来のランクス/アレックスのフルモデルチェンジ版となるわけだが、 プラットフォームを一新し、新MC低床プラットフォームを採用。 車名もオーリスという新しいネーミングを採用した。 オーリスは3ドアと5ドアがあるが、国内向けはCVTの5ドアのみが投入される。

オーリスの開発コンセプトは「Distinctive Hatch Back」。 埋没しない個性的なスタイルと広くて使いやすいパッケージ。 感動のドライビングプレジャー。 5m走れば判る上質感「5mインプレッション」。 であるという。

先代までは日本仕様のボディを基本にしていたために、ライバルに対して車体寸法自体から 不利な状況となっており、これでようやく積年の鬱憤を晴らす事ができたのだ。 この頃、トヨタは初代ヴィッツが欧州で成功を収め、ヴィッツの買い替えの受け皿を しっかり作る事が求められたのだ。せっかく振り向いてもらったお客さんをみすみす逃すわけには行かない。 オーリスは基本性能を真面目に磨く事でそれに応えようとした。

全長は4220mm、全幅は1760mm、全高は1515mm、ホイールベース2600mm と欧州のライバルと伍して戦えるディメンジョンとなったが、 全高は高めに取られている。この理由は後述する。

エクステリアはヴィッツとの血縁を感じさせるハイトパッケージを採用している。 外形デザインコンセプトはこの頃、トヨタがデザインテーマとして言語化した “J-Factor〜世界的な価値に昇華した日本発の独創(二律背反を絶妙に両立する巧みさ)〜” これは、国内向けアクシオとフィールダーと共通のものである。 さらにオーリスは機能と走り、ルーミネスとスポーティなドライビング姿勢、シンプルでいて動感あるスタイルを表現した。 特に「100mインパクト」と称して100m先からでもオーリスと識別できるような個性を持つことを目標とした。 高い全高はそこから来ているのである。

フロントマスクは当時の欧州向けのトヨタ車共通のProud-T-Faceと呼ばれる意匠を継承している。 これはラジエーターグリルとエンブレムの造形によってTの字を想起させて共通のファミリーフェイスとしたものである。 このグリルを中心にバンパーのロア部は先代の形状を踏襲してファミリーを意識させ、 国内向けと同様に縦方向の彫りを入れてある。

サイド回りはAピラー部に三角窓を設定。Aピラーを前出ししたグリーンハウスでルーミーさを演出しつつ、 ベルトラインを下げてバランスを取っている。またホイールアーチをくっきり張り出させて走りそうなイメージを持たせた。 クオーターピラーはライバルの様に太いが、角度を寝かせて躍動感と軽快感を演出。

リア回りは先代のイメージを残したリアコンビランプを配置、ライセンスプレートは先代同様にバックドアに配置。 欧州サイズのプレートが収まるような形状を選択した。

内装はインパネシフトを採用。シフトノブからセンターコンソールは独創的な「フライング・バットレス」という 欧州の建築様式からインスピレーションを得た形状を採用。 パーキングブレーキレバーもゼロから新設するほど情熱を傾けて表現されている。 (操作性が悪かったので後のマイナーチェンジで一般的なレバー式に改められた) 計器盤は標準とオプティトロンの二種類。後者にはマルチインフォエーションディスプレイが装着される。 液晶画面を速度計、タコメータの軸中心に設置し、針が浮いているかのような処理がされている。 また、空調も欧州流のアッパーベントを1800シリーズに採用。 これはセンタークラスター部に上向きの空調吹出し口を設定し、 直接冷風が乗員に当たらないようにする事ができる他、後席の乗員にも冷風を当てる事ができる。 当時、国産の他社もアッパーベントを設定するなど一時期流行した装備である。 筆者も使用した事があるが、確かに快適性は高かった。 他にもシートは全車サイドサポートが張り出したスポーティなタイプを採用するなど、 欧州=走りの良さを連想させる装備が数多く設定された。

エンジンは国内向けには1500ccと1800ccの二種類が用意される。 1500は先代同様1NZ-FE型エンジン、1800は2ZR-FE型が搭載される点は 国内向けと同じだ。トランスミッションはCVT-iのみ。従来あったスポーツエンジンが廃止された事で 共連れでMTが廃止されたのはスポーティを謳うオーリスの矛盾点であったが、 当時、2000年ごろをピークに数々のチャレンジ精神で革新的な車を生み出していた時期から、 一点守りに入り始めた時期だけにユーザーの切捨ては盛んに行われた。逆に言えば、国内向けの カローラを5ナンバーで残し、1500シリーズに限りMTを残した決断はどれだけ大変な事であったか想像に難くない。

ちなみに、欧州向けのエンジンは ガソリンが従来からのキャリーオーバーである4ZZ-FE型と 新開発の1ZR-FE型、国内と同仕様の2ZR−FE型の3種類。 しかしディーゼルがメインの欧州を意識してディーゼルも3種類が選べる。。 1400ccの1ND−TV型と2000ccの1AD-FTV型、2200ccの2AD-FHV型が搭載される。 新開発のAD系エンジンはトヨタの中排気量4気筒ディーゼルエンジンの中核的な型式で 設計開発、製造は豊田自動織機が担当した。 ディーゼルエンジンの最上級機種の2AD-FHV型は 最大出力130kW(177ps)/3600rpm、最大トルク400Nm(40.8kgm)/2000-2600rpmという圧倒的な 高出力を誇る。

シャシー関係は前後サスともに国内向けと同形式であるが、 トレッドが異なる事からFF車のリアサスは幅広タイプを使用している。 (欧州向け最上級グレードのみリアサスはダブルウィッシュボーンを採用している) パワステは従来からのEPSだが、1800シリーズは高出力が特徴のブラシレスモーターを採用した。 ギアレシオも1500シリーズのロックtoロック回転数が3.56であるのに対し、2.90とクイックな味付けにしている。 さらにステアリングはチルト機構に加え、前後方向も調整できるテレスコピック機構が全車に採用された。 上下調整量はニュートラル位置から上下に15mmずつ、前後調整量は前後に20mmずつである。 テレスコピック機構はトヨタでは1985年のカリーナEDで初めて採用された。これはドラポジが今までに無いほど寝そべっており、 身長の高いドライバーが乗車すると、リクライニングしなければ車内に乗り込む事ができない。 こうしてリクライニングさせてシートバックを寝かせるとステアリングの位置が遠くなってしまう為に 開発された機構であるが、10代目カローラやオーリスが発売されたこの時期から一般的な車種にも幅広く採用され始めた。 さらに、ブレーキは全車が4輪ディスク式を採用、ハブボルトも5本付くなど従来の感覚からすると随分と奢られたメカニズムを採用していた。 今までの借りを返すかのような思い切った仕様のあり方にトヨタの欧州へかけた意気込みが窺い知れる。

このようなオーリスだが、実際に運転してみると従来の5ナンバーサイズのカローラよりも安心感のある走りが 楽しめた事は事実だが、全高の高さや幅の広さが扱いにくさを感じさせるシーンもあった。 車両価格も130万円台から選べたランクス/アレックスに比べ154.5万円というスタート価格も 割高感を感じさせるものであった。 (高めの価格設定は国内向けカローラも含めこの時代のトヨタ車全体に言える事だった) その価格を考えると、内装や外装は少し寂しく、飛躍的に加飾のレベルがアップした欧州車には 太刀打ちできないレベルとなっている。この10年で「走りの欧州車・見た目の日本車」という評判が 「走りも見た目も欧州車」という時代に映りつつあった。大きな決断をしたオーリスであったが、 日本国内ではドイツ製ハッチバックよりも販売台数が振るわないと言う結果に終わった。 また、海外では走りの良さではなく、実用性が高い、居住性が良いというイメージが強く、 作り手が思ったような受け止められ方をしなかった、と藤田CEが後に語っている。

セダンボディは中国のモーターショー「オートチャイナ」にてワールドプレミアを飾った。 中国市場は先代でも投入されていたが、10代目カローラでは急成長する 中国市場を重視してグローバルモデルのセダンは中国でワールドプレミアを飾る事となった。 英国やドイツ、フランスの様にHBメインの国を除いてセダン人気がある国は多いが、 特に中国は成長著しい新興国であり、特にセダンの販売が期待できる国である。 最も影響力のある国でワールドプレミアを果たす事が多いが、 カローラはこれまでのアメリカ同様に中国でもかなりの販売が見込まれると期待して ワールドプレミアの場所に選んだと考えられる。

セダンボディは全長4540mm、全幅1760mm、全高1490mmという堂々としたサイズを誇る。 全長は主にスタイリングに使われているだけのことはあり、 伸びやかで高い全高を感じさせない。 欧州向けと北米向けでは顔つきが異なるが、 バンパーの見切りをフード直前までもって行き、ラジエーターグリルと一体化させたことで 仕向けによって意匠を大きく変える事ができるほか、飛び石によるチッピング錆にも対処している。 (国内向けはラジエーターグリルを別体とすることで装飾性を高めて国内のニーズに合わせている)

欧州仕様のカローラに組み合わされるエンジンは多岐に渡る。 欧州では1400ccの4ZZ-FE型、1600ccの1ZR-FE型、 1400ディーゼルターボの1ND-TV型、2000ディーゼルターボの1CD-FTV型が、 北米では基本グレードは1800ccガソリンの2ZR-FE型が、 最上級グレード用の2400ccガソリンの2AZ-FE型が搭載される。

10代目カローラ目次
トップページ