●まず無国籍カローラから―10代目カローラの開発

従来のカローラは国内向けの開発を行い、それをベースに海外仕向けを開発してきた。 しかし、2000年代になるとそのやり方が通用しなくなってきた。 それは先にも述べたように仕向け先のライバルが大型化していることや、 日本国内の販売比率が小さくなってしまったことから、これまでの開発を続けていても 世界中で受け入れられるカローラを作る事が難しくなってきた。 今まで国内で作り、海外に輸出してきた日本の自動車産業のモデルが大きく変わり、 現地生産にどんどん舵を切った。 カローラもこの傾向に習い、カローラ自体の生産台数は伸びているが相対的に日本市場向けの カローラの存在感が埋没していった。実際に2001年には全販売台数の中で28%が国内で売られていたカローラが、 2006年には全販売台数の10%に落ち込んでしまった。 日本は言うまでも無くカローラのルーツである国であるが、既にカローラにとって最重要国ではなくなったのだ。

つまり、15年前の7代目カローラ開発時に チーフエンジニアの斎藤氏が言っていたことを実行に移す時が来たのだ。 すなわち、カローラを日本向けと海外仕向けで分けてしまう。 ただ、実際には日本向けと海外仕向けを全く変えてしまうことは今回はせず、特殊な作戦をとった。 それがチーフエンジニアの奥平氏がいうところの「素カローラ」だ。

もはやマイナーな市場になった日本向けに設計したカローラをメジャーな市場に向けて手直しするサイクルは もはや開発の効率が低くなる。最大市場は北米だが、その北米向けをベースに他国仕向けを開発するのも実は非効率だ。 何故なら、北米とその他の地域の法規や車に求められる性能がかけ離れているからである。 世界中のあらゆる地域にきめ細かく対応した車を作りたい、そういうニーズを考えてトヨタが取った方策は、 全世界の設計要件をベンチマークし、どの国でもない「某国」を想定して「某国」の基準に沿ったカローラを設計することだった。 試作車は無いが図面までは存在するという。この図面を元に各国使用に最適化していく。 ある国は高速性能を高めるためコンポーネントを変える。ある国は衝突性能が厳しいので補強材を追加する。 このようにトッピングで対処するのだが、そのニュートラルを日本でも北米でもなく某国に持っていった。 「素カローラ」は各国の法規・要求性能を包括しているので、素カローラから引き算で仕様を決定できるようになる。 所々は足し算として補強を入れる必要があるが、このために必要な取り付け座面や穴は最初から素カローラに織り込んである。

このようなコンセプトから国内向けのカローラは従来のプラットフォームをキャリーオーバーしたMCプラットフォームで、 欧州のカローラは新MC低床プラットフォームを採用した。(ちなみに中国向けは新MC低床、北米向けはMCである) (欧州向けに新規にプラットフォームを開発したが、 全て切り替えると減価償却も進まないため、 北米向けも旧いものを残したのだと推測される)

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ワイドボディを得たグローバルカローラ