●3代目カローラのエンジン

1974年4月に登場した3代目カローラのエンジンは2代目からのキャリーオーバーの3K-H型・ T型と、新たに1600のシングルキャブレターの2T型が追加された。DOHCの2T-G型もHTとなったレビンに継続して搭載された。 排ガス規制を考慮してできるだけ性能を高めておこうという目的で3K系、T系エンジンは改良が施された。 3K型ではパワーアップを図るために燃焼室形状の変更、吸入ガスの流速を高めるために吸気ポートの 内径が27から25へと細くされた。またエキゾーストマニホールドもデュアルタイプに変更、フライホイールの 軽量化を行い中高速時の出力/トルク特性を改良したという。公害対策、連続高速運転でのオーバーヒートを防ぐ為 クランクシャフトジャーナル周辺、オイルポンプ、冷却ファンの強化したほか、 オイルパン容量を2.7Lから3.5Lに拡大しラジエータもリザーバタンクつきに変更された。 この結果、3K型は「高性能バージョン」という意味でHの記号が付けられ3K-H型となっている。 T型ではクランクシャフトメインベアリングの材質変更、リザーバタンク付きラジエータの採用、 ピストンリングの面圧低減、マフラーに亜鉛コートを施して耐久性を向上させ、容量も増加させて騒音を減らすなど 細かい点ではかなりの変更が見られる。 スロットルリンクを操作の軽い滑車式に変更するなど が行われ冷却性能やフリクションロスの低減、騒音の低減が図られている。 2T型系はT型に準じた改良内容である。とりあえずのところブローバイガス還元装置や燃料蒸発ガス排出抑制装置 、アイドルリミッタ付キャブレター等の公害対策は最初から施されている。

3K-H型は最高出力71ps/6000rpm、最大トルク9.7kgm/3800rpmを発生した。
ツインキャブの3K-BR型では74ps/6000rpm、9.7kgm/4200rpmと若干パワフルになった。
ハードトップのみにハイオクガソリン対応の3K-B型が残され77ps/6600rpm、9.8kgm/4200rpmを発生した。
T型は86ps/6000rpm、12.0kgm/3800rpmを発生し、T-BR型は91ps/6000rpm、12.0kgm/4000rpmを発生した。
2T型は100ps/6000rpm、13.7kgm/3800rpmを発生した。

しかしそれらのエンジンがカタログに載っていたのは1975年10月までで、 それからは1600ccの2T-U型を皮切りに、次々に50年規制対策車を発売した。 一番最初に50年規制をパスしたのは2T-U型・T-U型の2種だった。 それまでは、シングルキャブレター車、ツインキャブレター車と二種類のバリエーションがあったが、 全てシングルキャブレターの酸化触媒装着エンジンに一本化された。 その際に主力の3K-H型は対策が間に合わず生産中止になってしまった。 またDOHCの2T-G型はキャブレターなど様々な構造上の理由で対策の優先順位が 後回しになり、その結果‘ソレックスキャブ付き’2T-G型も11月末日に生産が中止された。 主力の1200やイメージリーダーのDOHCエンジンが無くなってしまうのは大きな痛手になっただろうと思われる。

1976年1月には希薄燃焼方式による51年対策車が発売され、1600の12T型エンジンがデビューした。(TTC-L) 12T型は2T-U型をベースに当時のお金で数十億円の開発費を投じて開発され、最高出力85ps/最大トルク12.5kgmという性能を発揮した。 この12T型のポイントは、エンジン型式名からも分かるように触媒を用いないで排ガス規制に適合させたエンジンである。 12T型は燃焼室内にTGP(乱流生成ポット)と呼ばれる副燃焼室を主燃焼室とは別に持つのが最大の特徴である。 吸気はキャブレターを通じて混合気となるがこの時、空気を多めにした希薄混合気となる。 希薄混合気が燃焼室へ吸入されるが、そのうちの一部はTGPに入る。 TGPには点火プラグが設置され圧縮後はそこが爆発すると、TGPから主燃焼室へ噴流火炎として吐き出される。 この火炎によって燃焼室内の均質な希薄混合気を十分にかき混ぜて乱流燃焼させることで迅速かつ安定した燃焼を 実現できた。燃焼が早いということはその分高温になる時間を短縮できて最高燃焼温度が上がらないためNoxの発生を 低く抑えることができる。そして元々混合気が希薄なためCO、HCも少なくなる。 排気の中にも酸素が残っておりこれを廃熱で酸化させるためにエキゾーストマニホールドの容量を拡大し、 更に断熱材を入れた二重構造にすることで更なる排ガスの浄化を可能とした。 このシステムはエンジン単体での浄化が可能である点が大きなアピールポイントであった。 このため12T型を搭載したカローラはドライバビリティが他の対策者より優れ、ごく自然な 運転フィーリングが得られたという。トヨタではこの方式をTTC-L(LはリーンのL)と読んで触媒方式 (TTC-C)と区別した。 この12T型は本来1975年の秋には既に生産準備に入っていたが耐久試験中に、 シリンダとシリンダヘッドの間のガスケットが吹き飛ぶというトラブルで大騒ぎになった。 結局シリンダヘッドを設計変更し、耐久試験などは年末年始の休業を返上し大急ぎで対策を 行ったという冷や汗モノのエピソードがあった。

1976年2月には一時的に生産が中断されていた1200の3K-U型の追加により1200シリーズが復活した。 この3K-U型エンジンは1974年の3代目デビュー当初の3K-H型をベースにTTC-C システムを取り入れたものだったが、最高出力は64psにダウンしていた。 それに続いて5月には、12T型のベースとなった2T-U型も3K-U型と同じTTC-Cを採用して 51年対策車が登場し、最高出力は90psとなった。やはりこの時代では排ガス対策を行うとエンジン出力が 軒並み低下してしまうことは避けられないようで走りっぷりは低下せざるを得なかった。特にそれまで高出力を 誇ったエンジンが新しくなるにつれて性能低下するのは非常に辛いことだったと思われる。現代では最初から 排ガス対策された状態を前提にエンジン開発されているので動力性能の低下は感じないが、カローラの場合は 特にモデルチェンジのせいで重くなったボディとのダブルパンチは辛かった。

1977年1月にはT-U型とトヨタ屈指のスポーツエンジン2T-G型の51年規制適合車が発売された。 特に2T-G型はソレックスキャブレターを電子制御燃料噴射装置であるEFIに変更し、 酸化触媒を組み合わせることでようやく規制をクリアすることができた。 T-U型は最高出力82ps/5800rpm、最大トルク11.6kgm/3400rpmと若干パワーを取り戻した。
2T-GEU型は110ps/6000rpm、14.5kgm/4800rpmとなった。
EFI仕様になってソレックスキャブレター仕様と比べて高回転でのパワーは減ったが、 これはプレミアム仕様との比較での話でレギュラー仕様同士での比較では、 出力は据置きでトルクが増大していることがわかる。特に燃費が向上した点が見逃せない。

その後の1977年8月にはついに53年対策車が登場した。今回の対策で12T型TGP(乱流生成ポット) 燃焼方式+酸化触媒を組み合わせた独自のシステムを採用しエンジン形式は12T-U型となった。
最高出力が88ps/5600rpm、最大トルクが13.3kgm/3400rpmとこれも若干ながら向上した。
9月には53年規制適合の新エンジンである4K-U型を搭載した1300シリーズを追加した。 従来型の3K-U型は排ガス規制でパワーの落ち込みが激しくその分、 3K-U型エンジンのストロークを伸ばして排気量を1300ccとしたものである。
最高出力は72ps/5600rpm、最大トルクは10.5kgm/3600rpmとなった。
パワーは規制前を上回るパワーを取り戻し、燃費も改善されていた。 市場では4K-U型は大好評で、特に4K-U型と組み合わせた特別仕様車が非常に良く売れた。 これはセールスマン自身が乗ってみて「非常に良く走るようになった、これなら売れる」と 自信を持ったのが大きな原因だと言われている。 このエンジンはトヨタのベーシックエンジンとしてその後たくさんの車種に搭載された。 4K-U型と3K-U型はしばらく併売されたがマイナーチェンジを機に3K-U型その使命を終えた。

1978年4月には三元触媒を組み合わせた2T-GEU型がレビンに乗せられた。 最終的に最高出力115ps/6000rpm、最大トルク 15.0kgm/4800rpmとなり、かつてのソレックスキャブ仕様の性能を上回る高性能エンジンとなった。 一方三代目カローラのモデル末期の1979年2月には、約9年間カローラの主力エンジンとして親しまれてきたT型 が生産中止となった。カローラのエンジンは初めての試練と言える排ガス対策によって 一度は性能は大きく落ち込んだものの、技術者達の血のにじむような努力によって 性能や燃費悪化を食い止め、更には性能向上を図っていったっことがわかる。 排ガス規制を乗り越えたことで、日本の自動車メーカーはエンジンに関するノウハウを蓄積し、 80年代の新時代を迎える足がかりをつかんだ。

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